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第1章 気が付かない3人の関係
王妃の罠③
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【SIDE フレデリック第1王子】
王妃の元へ、そのまま押しかけても、ワインの存在を知らないと白を突き通す可能性もある。
ましてや王妃は、国王に次ぐ2番目の権力が与えられている立場。
下手に動けば、こちらが負ける可能性だってある。
あまりにも非道な行為に、王妃へ直接詰め寄りたいと、焦る気持ちを堪えて、正式に国王陛下へ謁見を願い出た。
第1王子の暗殺未遂事件は、陛下によって緊急招集が掛けられた。
順当な手筈を取って、国王陛下と王妃、この国の宰相、事務官長が揃えられた。
この場で王妃には、言い逃れはさせない。
「王妃がフレデリックへ、渡したワインに毒が仕込まれていたと、報告を受けている。王室内で起きたこととはいえ、王族の暗殺は極刑が免れない重要な事件だ。王妃からは何か言うことはあるか?」
「フレデリックは、わたしが貴方に毒を盛ったと思っていらっしゃるの? 確かにわたしは貴方にワインを贈りました。それは、あの婚約の顔合わせで、わたしが失言したから、謝罪のためですわ。ですから、わたしは貴方にワインを贈りましたけど、それに毒など入れていません」
「王妃殿下が私に贈られたワインに毒が入っていたことは、間違いありません。そうですよね、事務官長?」
「はい、間違いなく。フレデリック殿下の執務室にあったワインにも、器に入っていたワインにも毒が入っておりました。お飲みになる前にお気付きなったので、良かったのですが、あの盃に入っていたワインを飲んでいては、『命に関る毒が入っていた』と、王城の侍医が申していました」
「そんな毒をワインに仕込むなど、恐ろしいわ。ですが、わたしがフレデリックに贈るワインに、毒を入れるわけがないでしょう。フレデリックの自作自演ではないかしら?」
「自作自演で王妃のワインに毒を入れる理由がありません。これは間違いなく、初めから入っていたものです」
「わたしが、あんな失礼なことを言ったから、フレデリックは恨んでいるんじゃないかしら。けれども、そうじゃないって言うのね。――今回のことは、わたしでも、フレデリックでもないとしたら、貴方の側近じゃないかしら? わたしは、その者を介して、フレデリックへワインを渡してもらったのよ。ワインに毒が仕込まれたのが事実なら、犯人は必ずいる。それが、王妃でも王子でもないのであれば、そういうことでしょ」
「まさか、ラッセル侯爵家子息の、ファウラー・ロス・ラッセルが、そのようなことをするはずがありません。彼のことは、私が一番信用しており怪しいところは一つもありません」
「信用している側近に裏切られたと思うのが嫌なだけですわ。さあ陛下、御判断ください!」
王妃の言葉に静まり返った空気。
王子の暗殺未遂事件を明るみにした以上、なかったことだと撤回し、後戻りはできない。
ワインに毒を仕掛けたこの事件は、誰か犯人が見つからなければ解決しない。
王妃は、私を殺し損ねても、私からファウラーを奪うつもりで、ワインをやつに渡したのか。
性根の腐ったやり方に、さらに幻滅を深めた。
「この状況では誰が私の息子フレデリックに毒を盛ったのか判断はできん。もう少し、周囲を調べさせてくれ。今日は解散だ。だが、フレデリックはこのまま残れ、少し話がある」
焦る私の気持ちとは裏腹に、王妃は満足そうに部屋を出ていく。
陛下からもたらされた情報。そんことは、これまで一切知らなかった…………。
どういうことだ。
「――陛下、それは本当ですか?」
王妃の元へ、そのまま押しかけても、ワインの存在を知らないと白を突き通す可能性もある。
ましてや王妃は、国王に次ぐ2番目の権力が与えられている立場。
下手に動けば、こちらが負ける可能性だってある。
あまりにも非道な行為に、王妃へ直接詰め寄りたいと、焦る気持ちを堪えて、正式に国王陛下へ謁見を願い出た。
第1王子の暗殺未遂事件は、陛下によって緊急招集が掛けられた。
順当な手筈を取って、国王陛下と王妃、この国の宰相、事務官長が揃えられた。
この場で王妃には、言い逃れはさせない。
「王妃がフレデリックへ、渡したワインに毒が仕込まれていたと、報告を受けている。王室内で起きたこととはいえ、王族の暗殺は極刑が免れない重要な事件だ。王妃からは何か言うことはあるか?」
「フレデリックは、わたしが貴方に毒を盛ったと思っていらっしゃるの? 確かにわたしは貴方にワインを贈りました。それは、あの婚約の顔合わせで、わたしが失言したから、謝罪のためですわ。ですから、わたしは貴方にワインを贈りましたけど、それに毒など入れていません」
「王妃殿下が私に贈られたワインに毒が入っていたことは、間違いありません。そうですよね、事務官長?」
「はい、間違いなく。フレデリック殿下の執務室にあったワインにも、器に入っていたワインにも毒が入っておりました。お飲みになる前にお気付きなったので、良かったのですが、あの盃に入っていたワインを飲んでいては、『命に関る毒が入っていた』と、王城の侍医が申していました」
「そんな毒をワインに仕込むなど、恐ろしいわ。ですが、わたしがフレデリックに贈るワインに、毒を入れるわけがないでしょう。フレデリックの自作自演ではないかしら?」
「自作自演で王妃のワインに毒を入れる理由がありません。これは間違いなく、初めから入っていたものです」
「わたしが、あんな失礼なことを言ったから、フレデリックは恨んでいるんじゃないかしら。けれども、そうじゃないって言うのね。――今回のことは、わたしでも、フレデリックでもないとしたら、貴方の側近じゃないかしら? わたしは、その者を介して、フレデリックへワインを渡してもらったのよ。ワインに毒が仕込まれたのが事実なら、犯人は必ずいる。それが、王妃でも王子でもないのであれば、そういうことでしょ」
「まさか、ラッセル侯爵家子息の、ファウラー・ロス・ラッセルが、そのようなことをするはずがありません。彼のことは、私が一番信用しており怪しいところは一つもありません」
「信用している側近に裏切られたと思うのが嫌なだけですわ。さあ陛下、御判断ください!」
王妃の言葉に静まり返った空気。
王子の暗殺未遂事件を明るみにした以上、なかったことだと撤回し、後戻りはできない。
ワインに毒を仕掛けたこの事件は、誰か犯人が見つからなければ解決しない。
王妃は、私を殺し損ねても、私からファウラーを奪うつもりで、ワインをやつに渡したのか。
性根の腐ったやり方に、さらに幻滅を深めた。
「この状況では誰が私の息子フレデリックに毒を盛ったのか判断はできん。もう少し、周囲を調べさせてくれ。今日は解散だ。だが、フレデリックはこのまま残れ、少し話がある」
焦る私の気持ちとは裏腹に、王妃は満足そうに部屋を出ていく。
陛下からもたらされた情報。そんことは、これまで一切知らなかった…………。
どういうことだ。
「――陛下、それは本当ですか?」
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