「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

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第四章

第76話 魔王の世界

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「しかし、これは何が起きたのだろう」

 さすがのエリカも驚きすぎてか、語気がおとなしい。

「本当に風車の魔王の仕業だとしたら、この時代で私が風車の魔王を倒して大騎士になれる!! うおー! やるぞー!!」

「あ、ぜんぜんおとなしくなかった。溜めだった」

「エリカ殿は元気でござるなあ」

「何だ何だこの世界は。金を稼ぐどころではないではないか」

 おっ、アベルが俗な理由から危機感を抱いている。
 こいつが一番話が分かるかもしれない。

「おいドルマ、こいつらを黙らせろ。状況を調べないと危険だろう」

「アベルは金が絡むと常識的になっていいな」

 そういうことで、男二人が前に立ち、聞き込みなどをすることになった。
 心なしか、昨日と比べて道行く人々の元気はない。

「すみません。なんか元気がないけどどうしたんですかね」

 俺が通行人に聞いてみると、彼は俺を見てギョッとした。
 おや?
 ちょっとみすぼらしい格好をしているな。

「そんないい服を着て……。も、もしかしてあんたら、騎士団のお囲い冒険者か……? ひいい、すみませんすみません! 俺は何もやってませんから!」

「ふむ」

 俺とアベル、顔を見合わせて頷く。

「これは圧政が敷かれているのではないか」

「だろうな。何が起きたのかは分からんが、風車の魔王とやらは歴史を変えたらしい。だがどうやった……?」

「うーん。歴史に干渉するなんてのは、俺でなければやれないことだしな。だいいち、タイムリープがなければ時間を移動できないだろう」

「それだな。ドルマ。タイムリープを使える者があと一人いただろう」

「ああ、カイナギオか!」

 俺はポンと手を打った。
 もしや、過去に風車の魔王がカイナギオと接触したのではないか。

「ドルマ! どうなったんだ! 風車の魔王の手がかりはあったのか!!」

 エリカが大きい声を出した。
 すると、風車の魔王の名に、町の人々がざわっとなる。

「そ、その名を唱えてしまった……!」

「やばい、やばいぞ」

「ひい、奴らが来る!」

 何を怯えてるんだと思ったら、どうやら風車の魔王の名はタブーらしいな。
 で、彼らの怯えに呼応するように突如、何者かが出現した。

『あのお方の名を呼んだか!』 

『みだりにその名を唱えてはならん! もがーっ!』

 禍々しい甲冑に身を包んだ騎士達だ。
 何もないところから、突然現れたな。
 魔法かな?

「ツアーッ!!」

「ていっ!」

『ウグワーッ!!』

 おっと、ノータイムでホムラとエリカがぶっ倒した。
 多分、それなりに強いモンスター化してるんじゃないかと思うんだが、こっちは魔竜とやり合ったんだ。
 強い騎士程度では相手にならんぞ。

『こいつら反抗するぞ! 出会え出会え!』

 向こうからワーッと騎士達が走ってきた。
 たくさん来るぞ。

 町の人々が怯える。

「な、なんてことをしてくれたんだ!」

「あんたらのせいだぞ!」

「とうかどうやって一撃でぶっ倒したんだ!?」

「見ているがいい。こうだ!」

 俺は騎士の持ち物を手にして、ミサイルにした。
 イリュージョンアタックして、ミサイル。
 これで弾数が増えるし範囲も増えていいことばかり。

「おりゃ!」

『ウグワーッ!?』

 あちこちで爆発が起き、騎士が次々に吹っ飛んでいった。
 そこを抜けてきた騎士は、上空から飛び降りてきたアベルが串刺しにする。

 アベル、初期から戦い方も何も変わってないのにずっと通用する辺り、完璧なワンパターンという気がするな。
 そしてエリカが突っ込み、十人ぐらいをまとめてふっ飛ばした。

「さすが、魔竜に通用する突撃だな」

 俺が感心していたら、エリカのポケットからバフルートの角がポロッと落ちた。
 そう言えば、これをベヒーモールと合体させねばならないのだった。

 騎士達を蹂躙した後、俺は一つ提案をした。

「鍛冶屋でこれをくっつけてもらおう。んで、カイナギオに会いに行く。これでどうか」

「賛成!」

「賛成でござる!」

「うむ。早くこの状況を終わらせ、安心して金を稼げる世界を取り戻す」

 アベルのモチベーションが高い!!

 こうして、俺達は鍛冶屋へ。
 風車の魔王に支配されたっぽい世界だが、鍛冶屋は普通に営業してるのね。

 ベヒーモールとバフルートの角を、ミスリル銀をつなぎにしてくっつけてもらった。
 ベヒーモールの横からバフルートの角が生えているような、とんでもない形の武器になったぞ。

「こんなとんでもねえものを作ったのは初めてだぜ……」

 鍛冶屋、ちょっと興奮している。
 加工はものすごくやりやすかったらしい。

「むしろ、素材がこう加工しろって指示してくるみたいだったぜ……」

「バフルートだからな。指示してるんだろうなあ……」

「ドルマ! なんだか凄く強くなった気がするぞ! 今なら普通のベヒーモスなら正面から殴り倒せそうだ! 限界を突破した強さになった気がする」

「おっ、それは何よりだ!」

 エリカが嬉しそうなのが一番だ。

「ところで限界を突破って?」

「物理的な強さを超えた、というところだろう。感覚で分かる。例えば俺はこの槍で最初から突破している」

 アベルが意外な事を言ってきた。
 つまり、今の強くなった気がするエリカの領域に、この竜騎士は最初から至っていたということか。
 こいつ、何も言わないんだもんなー。

「あっ、拙者は手裏剣投げると突破した気分になるでござる! で、そういうドルマ殿は?」

「俺かあ。俺はなんかそう言うのわからないなあ」

 俺はこれからの男なのかもしれない。
 ともかく、武器も鍛えたことだし、これからカイナギオに会いに行こうではないか。
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