70 / 83
第四章
第70話 バフルートとは一体
しおりを挟む
事が終わると、あちこちに隠れていたゴブリンがワーッと出てきた。
そして人間である俺達が状況を打開したことを知り、混乱する。
「俺達が! 召喚士を倒した! ゴブリン諸君は助かったぞ!!」
なので、俺がわかりやすく今どうなっているかを説明してあげたのだ。
ワールウインドに乗せて声を広める。
ゴブリン達は一斉にハッとした。
分かりやすさとは正義である。
『人間が助けてくれたのか!』
盛り上がるゴブリン達。
その中で、ちびゴブリンが駆け寄ってきて、俺の前でぴょんぴょん飛び跳ねた。
『なんで助けてくれたんだ!』
「そりゃ君、人間もゴブリンも困ってたら助けていいのだ。今は戦争してるわけじゃないんだからな」
『そ、そうなのかあ!』
ちびゴブリンが目を丸くした。
「まあ、また遠い未来に大変になったら、この俺、青魔道士とフォンテインナイツが助けに来るだろう……」
『青魔道士……! フォンテインナイツ……!』
心に刻み込まれたな。
……もしかしてこのちびさん、将来のゴブリンのご老人だったりしない?
するんだろうな。
世界は繋がってるなー。
『青魔道士!』
風水士少年が駆け寄ってきた。
『助かった。だけど、あの空を飛んでるヤツはなんなんだ』
「おう、さっきレーナがバフルートって言ってたな。ほら。空を飛んでる生き物って小さい鳥くらいしかいなかったじゃないか。多分、それの原因があれだ。一定以上でかい生き物が飛んでると、やって来て食っちゃうんだ」
『そんな化け物がいたのか……!!』
「いたのだ。今のところ、地上にいる限りは狙われないとは思うけど」
それなら安心だな、という事になる俺達なのだ。
だが、問題はそこではない。
『召喚士は他にも何人もいるんだ!』
ゴブリン達から上がってきた驚くべき報告!
『風車の模様がついた鎧の奴が、召喚士を何人も連れきた!』
『召喚士が一斉にモンスターを呼んで暴れさせたんだ!』
俺達が倒したのは、そのうちの一人に過ぎなかったらしい。
これは、召喚士討伐をせねばなるまい。
そしてあわよくば、魔竜バフルートもなんとかしたい。
せっかくこっちの時代に飛空艇でやって来たのに、飛べないのはよろしくない。
それに俺達の時代に、魔竜バフルートはいないのだ。
あれはフォンテインナイツがやっつけるか何かしてしまったのではないだろうか?
「ドルマ! どうするんだ! あの竜を追うのか? それとも別の目的があったりするのか?」
行動方針を失ったエリカが寄ってきた。
「うん、ここは召喚士を追おう。集団らしいぞ、あいつら」
「そうなのか! よし、分かった!」
そう言う事になった。
これを見ていたアベルが、
「フォンテインナイツの方向性を決めるのは、何気にこの男だな……」
などと呟いているのだ。
今回は金が絡まないので、アベルは実にやる気がなさそうだ。
だが過去の時代に置き去りは困るし、敵が来たら戦わねば身に危険があるので、渋々戦闘に加わる。
やる気があっても無くても、一定の戦闘力を発揮できる辺り、アベルはプロだよな。
「そう言えばアベル。竜騎士はジャンプして飛ぶけど、空を飛ぶ魔竜と何か関係が?」
「知らん。そういう金にならなそうなことは知らん」
ドライ!
竜騎士には色々伝承やらがありそうだが、アベルはそういうのを一切覚えてなさそうだ。
闇の中だなあ。
「ゴブリンが……まるで人間と同じみたいに……」
トニーが衝撃を受けている。
人間社会で言われるゴブリンは、完全にモンスターだ。
だが、ここから見えるゴブリン達は街を築き、召喚士の襲撃をまぬがれて、お互いの無事を喜び合っている。
まるで人間のような仕草だからな。
今までの常識に縛られていたトニーとしては、価値観が揺らぐような状況ではないか……。
「あっ、ここかあ」
「どうしたんだドルマ!」
「なんでもない……」
「そうか!」
エリカに、ゴブリンも人間と同じようなものだと教え込んだのは、エリカの祖父……つまり未来のトニーだっただろう。
順調に未来を確定させて行っているじゃいか。
タイムリープ、奥深い。
うんうん頷きながら、俺は飛空艇に戻った。
「ドルマさん! 飛空艇だとバフルートが反応するわよ!」
レーナが慌てて駆け寄ってきた。
「ああ、それでいいんだ。未来に魔竜バフルートはいない。つまり、この時代で俺達が倒すのではないか」
「時代!?」
「つまりな、俺達はタイムリープを使ってこの時代に来ている。本当はもっと未来から来ていてるんだ。後はご想像におまかせする……。おーい、エリカ! アベル! ホムラ! 行くぞ!」
『俺も行くぞ!!』
「風水士少年もか。よし、こいこい」
「お、俺も! レーナ、行こう!」
トニーがレーナとともに乗り込み……。
飛空艇、フォンテイン・レジェンド号は、まさに伝説のパーティが初めて勢ぞろいした船となったのである。
後世にフォンテインと伝えられる、トニー。
トニーの孫でバーサーカーのエリカ。
青魔道士の俺。
竜騎士アベル。
エリカの祖母で学者のレーナ。
忍者のホムラ。
風水士少年。
フォンテインと六人の伝説の職業が揃った。
これはなかなか感慨深い。
「俺の作戦を伝えよう。飛空艇で飛んで、召喚士達を探す。ちょいちょい襲撃してくると思うバフルートを追っ払い、最終的には退治する。これだ」
「穴だらけじゃないの!?」
レーナがツッコミを入れた。
逆に言えばレーナしかツッコミを入れない。
彼女は「ええ……」と呟いて周囲を見回した。
「みんな、ドルマさんに感化されてない……?」
これでいいのだ。
恐怖に縛られていたら、一歩も先に進めなくなるからな。
そして人間である俺達が状況を打開したことを知り、混乱する。
「俺達が! 召喚士を倒した! ゴブリン諸君は助かったぞ!!」
なので、俺がわかりやすく今どうなっているかを説明してあげたのだ。
ワールウインドに乗せて声を広める。
ゴブリン達は一斉にハッとした。
分かりやすさとは正義である。
『人間が助けてくれたのか!』
盛り上がるゴブリン達。
その中で、ちびゴブリンが駆け寄ってきて、俺の前でぴょんぴょん飛び跳ねた。
『なんで助けてくれたんだ!』
「そりゃ君、人間もゴブリンも困ってたら助けていいのだ。今は戦争してるわけじゃないんだからな」
『そ、そうなのかあ!』
ちびゴブリンが目を丸くした。
「まあ、また遠い未来に大変になったら、この俺、青魔道士とフォンテインナイツが助けに来るだろう……」
『青魔道士……! フォンテインナイツ……!』
心に刻み込まれたな。
……もしかしてこのちびさん、将来のゴブリンのご老人だったりしない?
するんだろうな。
世界は繋がってるなー。
『青魔道士!』
風水士少年が駆け寄ってきた。
『助かった。だけど、あの空を飛んでるヤツはなんなんだ』
「おう、さっきレーナがバフルートって言ってたな。ほら。空を飛んでる生き物って小さい鳥くらいしかいなかったじゃないか。多分、それの原因があれだ。一定以上でかい生き物が飛んでると、やって来て食っちゃうんだ」
『そんな化け物がいたのか……!!』
「いたのだ。今のところ、地上にいる限りは狙われないとは思うけど」
それなら安心だな、という事になる俺達なのだ。
だが、問題はそこではない。
『召喚士は他にも何人もいるんだ!』
ゴブリン達から上がってきた驚くべき報告!
『風車の模様がついた鎧の奴が、召喚士を何人も連れきた!』
『召喚士が一斉にモンスターを呼んで暴れさせたんだ!』
俺達が倒したのは、そのうちの一人に過ぎなかったらしい。
これは、召喚士討伐をせねばなるまい。
そしてあわよくば、魔竜バフルートもなんとかしたい。
せっかくこっちの時代に飛空艇でやって来たのに、飛べないのはよろしくない。
それに俺達の時代に、魔竜バフルートはいないのだ。
あれはフォンテインナイツがやっつけるか何かしてしまったのではないだろうか?
「ドルマ! どうするんだ! あの竜を追うのか? それとも別の目的があったりするのか?」
行動方針を失ったエリカが寄ってきた。
「うん、ここは召喚士を追おう。集団らしいぞ、あいつら」
「そうなのか! よし、分かった!」
そう言う事になった。
これを見ていたアベルが、
「フォンテインナイツの方向性を決めるのは、何気にこの男だな……」
などと呟いているのだ。
今回は金が絡まないので、アベルは実にやる気がなさそうだ。
だが過去の時代に置き去りは困るし、敵が来たら戦わねば身に危険があるので、渋々戦闘に加わる。
やる気があっても無くても、一定の戦闘力を発揮できる辺り、アベルはプロだよな。
「そう言えばアベル。竜騎士はジャンプして飛ぶけど、空を飛ぶ魔竜と何か関係が?」
「知らん。そういう金にならなそうなことは知らん」
ドライ!
竜騎士には色々伝承やらがありそうだが、アベルはそういうのを一切覚えてなさそうだ。
闇の中だなあ。
「ゴブリンが……まるで人間と同じみたいに……」
トニーが衝撃を受けている。
人間社会で言われるゴブリンは、完全にモンスターだ。
だが、ここから見えるゴブリン達は街を築き、召喚士の襲撃をまぬがれて、お互いの無事を喜び合っている。
まるで人間のような仕草だからな。
今までの常識に縛られていたトニーとしては、価値観が揺らぐような状況ではないか……。
「あっ、ここかあ」
「どうしたんだドルマ!」
「なんでもない……」
「そうか!」
エリカに、ゴブリンも人間と同じようなものだと教え込んだのは、エリカの祖父……つまり未来のトニーだっただろう。
順調に未来を確定させて行っているじゃいか。
タイムリープ、奥深い。
うんうん頷きながら、俺は飛空艇に戻った。
「ドルマさん! 飛空艇だとバフルートが反応するわよ!」
レーナが慌てて駆け寄ってきた。
「ああ、それでいいんだ。未来に魔竜バフルートはいない。つまり、この時代で俺達が倒すのではないか」
「時代!?」
「つまりな、俺達はタイムリープを使ってこの時代に来ている。本当はもっと未来から来ていてるんだ。後はご想像におまかせする……。おーい、エリカ! アベル! ホムラ! 行くぞ!」
『俺も行くぞ!!』
「風水士少年もか。よし、こいこい」
「お、俺も! レーナ、行こう!」
トニーがレーナとともに乗り込み……。
飛空艇、フォンテイン・レジェンド号は、まさに伝説のパーティが初めて勢ぞろいした船となったのである。
後世にフォンテインと伝えられる、トニー。
トニーの孫でバーサーカーのエリカ。
青魔道士の俺。
竜騎士アベル。
エリカの祖母で学者のレーナ。
忍者のホムラ。
風水士少年。
フォンテインと六人の伝説の職業が揃った。
これはなかなか感慨深い。
「俺の作戦を伝えよう。飛空艇で飛んで、召喚士達を探す。ちょいちょい襲撃してくると思うバフルートを追っ払い、最終的には退治する。これだ」
「穴だらけじゃないの!?」
レーナがツッコミを入れた。
逆に言えばレーナしかツッコミを入れない。
彼女は「ええ……」と呟いて周囲を見回した。
「みんな、ドルマさんに感化されてない……?」
これでいいのだ。
恐怖に縛られていたら、一歩も先に進めなくなるからな。
2
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる
まひる
ファンタジー
如月刀利は、生まれも育ちも山奥の農村。そして高校二年生の彼の学校はバスで一時間以上。
ある日の学校帰り、バス停に向かっていた刀利は村で唯一──とまではいかないけど、数個しかない貴重な交差点に侵入する白いイタチを見かける。そこへ迫る大型トラック。トラックの運転手はナビ画面でも見ているのか、小さなイタチには気付かない。刀利は家でフェレットを飼っている為、その手の生物が目の前で死ぬ姿を見たくなかった。そして、無謀にも車道へ飛び出す。響き渡るブレーキ音。宙を舞う鞄。
気付くと真っ白な空間に浮いていた刀利。
創造神と出会い、刀利が助けたイタチは神の使い魔である事を知る。助けてくれた御礼を刀利にしたいと言い出すが、彼は既に死亡した事になっていた。ちなみに神の前で目覚めるまでに一ヶ月以上経過。刀利が途方にくれるも、異世界でならその姿で再構築可能だという。見ず知らずの世界にただ独り存在を許されてもと、刀利は更に絶望感にうちひしがれた。そこで前世の創造神の使い魔であった白いイタチは、助けれくれた感謝にと刀利と共に異世界へ来てくれると言う。そして一人と一匹の異世界転生となった。
その世界は精霊が崇め奉られる世界。精霊に好かれた者だけが人権を得る。魔法も精霊の契約者とならなければ使えず、途中でも精霊に嫌われれば全てを失う。
そんな世界で、創造神の加護で『自然に好かれる』というスキルを与えられたトーリは、ウハウハなハッピーライフを送る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる