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第四章
第69話 召喚士を探せ
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「ハウリングブラスト! アワワワワワワワワ~!」
なんか声を発さねばならない技らしいので、俺は適当な言語を放った。
すると俺のアワワワワワワワワ~は拡大され、音のハンマーとなって三つ首の犬を殴りつけるではないか。
『ギャウグワー!』
『地形:ランドシャーク!』
『ギャウグワー!』
犬のモンスターがダメージの蓄積で、フラフラに。
そこへ、上空からアベルが飛び込んできた。
槍が三つ首の中心を地面に縫い留める。
矢と投擲されてきたナイフが、三つ首の右側に突き刺さった。
そして走ってきたエリカが、左側の首を文字通り粉砕する。
どうっと音を立て、犬のモンスターが倒れ込んだ。
「チェック! これはケルベロス。伝説に謳われるモンスターの一体ね。だけど、生きている個体が出現したという話は知らないけど……」
レーナが首を傾げる前で、ケルベロスは全身をモヤのようなものに変えて消えていってしまった。
「あっ」
「消えた」
『こいつは召喚士が呼び出したモンスターだ。こういう連中が幾らでもいる』
風水士は険しい表情で辺りを見回した。
あちこちからゴブリン達の悲鳴が聞こえる。
最初は、ゴブリンを助けるなんて……と言っていた義勇騎士団だが、どうやら状況が大変なことになっていると理解したらしい。
「これが人間の国にもやって来たら大変だ」
「ここで召喚士とやらを倒さねば」
そういう方向で、仕事へのモチベーションを得たらしい。
まあ、人間、自分とあまりにも異なる存在に共感するのは難しいからな。
その後、俺達はゴブリン王国をくまなく歩きまわり、たくさんいたケルベロスを全て駆逐したのだった。
でかくて、謎の技を使ってくるモンスターだが、大きな弱点があった。
それを見つけてからは倒すのが早くなったのだ。
こいつ、頭が三つあってそれぞれに意思もあるから、別方向から異なる攻撃をすると体の動きが鈍るのだ。
そこを後ろからガツンとやる。
これだ。
義勇騎士団のメンバーでも、割りとサクサク倒せた。
やがて、ゴブリン王国は静かになる。
こうなれば気になるのは、召喚士の居所だ。
「レーナ、召喚士について知らない?」
無茶振りかなーとは思ったが聞いてみた。
彼女はふんふん頷くと、手にしている本をパラパラめくる。
「本に書いてあるのか?」
エリカの質問に、レーナが笑って答える。
「何にも書いてないわよ。頭の中にある知識をね、こうやって呼び出すのよね。ええと……召喚士は強さのレベルがあって、弱いものはゴブリンを呼んだりするわ。強くなるほど召喚できるモンスターが強くなるけれど……。ケルベロスなら、中くらいのレベルじゃないかしら。でも、これだけたくさん召喚したとなると」
レーナがきょろきょろする。
「本来、魔法を使うにはその人のキャパシティっていうのがあるのよ。だけどこれだけの数の召喚魔法は、普通におかしいわ。それに、ケルベロスよりも強いモンスターがいない。まるで命がけで、自分が召喚できるモンスターを呼びまくったみたい。ああ、ほら」
レーナが指さした先に、瓦礫の山があった。
そこから、足が突き出している。
人間の足だ。
「なんだこれ!」
エリカが走っていって、ズボッと引き抜いた。
それは、全身血まみれになった男だった。
「ひ、ひいっ! 助けてくれ! 助けて!」
なんか暴れているので、エリカはそいつをポイッと投げ捨てた。
『待て! その男は召喚士だ! そいつがゴブリン王国を襲ったんだ!』
「なんだって!」
血まみれの男、召喚士に注目が集まる。
召喚士は半笑いになりながら、手にした指輪を見せた。
「モンソロの指輪の力はすげえぜ。風車の騎士もいいものを俺達にくれたもんだ。まあ、召喚獣が馬鹿過ぎて、俺が隠れてる家屋ごとぶっ壊すとは思わなかったけどよ。召喚! ズー!!」
召喚士は、見覚えのある巨大な鳥を呼び出した。
ヤツがそれに捕まると、鳥は飛び立ち始める。
「しまった! やっつけておけばよかったなあ」
「エリカ殿、拙者におまかせでござるぞー!」
「飛んでるだけなら、撃ち落としゃいいんだよ」
ホムラとゴメスが武器を構える。
アベルは既に、跳躍の姿勢だ。
だが、その必要は無かった。
高らかに飛び上がったズー。
その姿は、きっと遠方からもよく見えたのだろう。
何かが飛来してきたのだ。
そいつは、巨大な鳥であるズーよりも、遥かに大きかった。
『我以外に、空を飛ぶこと能わず』
全身を銀色に輝かせ、一対の翼に四本の足を持つ。
口からは炎をチラつかせ、金色の目がランランと輝く。
「飛竜だ!」
ホムラが興奮気味に叫んだ。
「フォンテイン伝説の飛竜だ! とうとう出てきた!」
『愚かなる者よ。我が劫火で焼き尽くされよ。メガ・インフェルノ』
飛竜の周囲に、一つ一つが飛空艇くらいはある炎の塊、火球が生まれた。
それが、ズーめがけて飛来する。
「な、なんだお前!? ま、まさかこれが伝説の……! 大魔竜バフルート……!? ウグワーッ!!」
逃げることなど許さない。
メガ・インフェルノの炎が召喚士とズーを一瞬で焼き尽くした。
バフルートと呼ばれた飛竜は、炎の中で消し炭になったこいつらを吸い込む。
なーるほど、これが飛竜の食事なんだな。
そして、俺達を見下ろした。
『奇妙な物を使い、飛んでいた者達か。次はない。一度目は物珍しくて思わず、ずっと観察してしまったが、次は本当にない』
「こいつ念押ししてきたぞ」
バフルートは俺のツッコミを無視すると、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
「飛竜……! 空の王だな! 分かったぞ! あいつがいるから、人間は空を飛べなかったんだ!」
エリカがポンっと手をたたく。
つまり……五十年前まで、空は大魔竜バフルートによって支配されていたってこと……!?
なんか声を発さねばならない技らしいので、俺は適当な言語を放った。
すると俺のアワワワワワワワワ~は拡大され、音のハンマーとなって三つ首の犬を殴りつけるではないか。
『ギャウグワー!』
『地形:ランドシャーク!』
『ギャウグワー!』
犬のモンスターがダメージの蓄積で、フラフラに。
そこへ、上空からアベルが飛び込んできた。
槍が三つ首の中心を地面に縫い留める。
矢と投擲されてきたナイフが、三つ首の右側に突き刺さった。
そして走ってきたエリカが、左側の首を文字通り粉砕する。
どうっと音を立て、犬のモンスターが倒れ込んだ。
「チェック! これはケルベロス。伝説に謳われるモンスターの一体ね。だけど、生きている個体が出現したという話は知らないけど……」
レーナが首を傾げる前で、ケルベロスは全身をモヤのようなものに変えて消えていってしまった。
「あっ」
「消えた」
『こいつは召喚士が呼び出したモンスターだ。こういう連中が幾らでもいる』
風水士は険しい表情で辺りを見回した。
あちこちからゴブリン達の悲鳴が聞こえる。
最初は、ゴブリンを助けるなんて……と言っていた義勇騎士団だが、どうやら状況が大変なことになっていると理解したらしい。
「これが人間の国にもやって来たら大変だ」
「ここで召喚士とやらを倒さねば」
そういう方向で、仕事へのモチベーションを得たらしい。
まあ、人間、自分とあまりにも異なる存在に共感するのは難しいからな。
その後、俺達はゴブリン王国をくまなく歩きまわり、たくさんいたケルベロスを全て駆逐したのだった。
でかくて、謎の技を使ってくるモンスターだが、大きな弱点があった。
それを見つけてからは倒すのが早くなったのだ。
こいつ、頭が三つあってそれぞれに意思もあるから、別方向から異なる攻撃をすると体の動きが鈍るのだ。
そこを後ろからガツンとやる。
これだ。
義勇騎士団のメンバーでも、割りとサクサク倒せた。
やがて、ゴブリン王国は静かになる。
こうなれば気になるのは、召喚士の居所だ。
「レーナ、召喚士について知らない?」
無茶振りかなーとは思ったが聞いてみた。
彼女はふんふん頷くと、手にしている本をパラパラめくる。
「本に書いてあるのか?」
エリカの質問に、レーナが笑って答える。
「何にも書いてないわよ。頭の中にある知識をね、こうやって呼び出すのよね。ええと……召喚士は強さのレベルがあって、弱いものはゴブリンを呼んだりするわ。強くなるほど召喚できるモンスターが強くなるけれど……。ケルベロスなら、中くらいのレベルじゃないかしら。でも、これだけたくさん召喚したとなると」
レーナがきょろきょろする。
「本来、魔法を使うにはその人のキャパシティっていうのがあるのよ。だけどこれだけの数の召喚魔法は、普通におかしいわ。それに、ケルベロスよりも強いモンスターがいない。まるで命がけで、自分が召喚できるモンスターを呼びまくったみたい。ああ、ほら」
レーナが指さした先に、瓦礫の山があった。
そこから、足が突き出している。
人間の足だ。
「なんだこれ!」
エリカが走っていって、ズボッと引き抜いた。
それは、全身血まみれになった男だった。
「ひ、ひいっ! 助けてくれ! 助けて!」
なんか暴れているので、エリカはそいつをポイッと投げ捨てた。
『待て! その男は召喚士だ! そいつがゴブリン王国を襲ったんだ!』
「なんだって!」
血まみれの男、召喚士に注目が集まる。
召喚士は半笑いになりながら、手にした指輪を見せた。
「モンソロの指輪の力はすげえぜ。風車の騎士もいいものを俺達にくれたもんだ。まあ、召喚獣が馬鹿過ぎて、俺が隠れてる家屋ごとぶっ壊すとは思わなかったけどよ。召喚! ズー!!」
召喚士は、見覚えのある巨大な鳥を呼び出した。
ヤツがそれに捕まると、鳥は飛び立ち始める。
「しまった! やっつけておけばよかったなあ」
「エリカ殿、拙者におまかせでござるぞー!」
「飛んでるだけなら、撃ち落としゃいいんだよ」
ホムラとゴメスが武器を構える。
アベルは既に、跳躍の姿勢だ。
だが、その必要は無かった。
高らかに飛び上がったズー。
その姿は、きっと遠方からもよく見えたのだろう。
何かが飛来してきたのだ。
そいつは、巨大な鳥であるズーよりも、遥かに大きかった。
『我以外に、空を飛ぶこと能わず』
全身を銀色に輝かせ、一対の翼に四本の足を持つ。
口からは炎をチラつかせ、金色の目がランランと輝く。
「飛竜だ!」
ホムラが興奮気味に叫んだ。
「フォンテイン伝説の飛竜だ! とうとう出てきた!」
『愚かなる者よ。我が劫火で焼き尽くされよ。メガ・インフェルノ』
飛竜の周囲に、一つ一つが飛空艇くらいはある炎の塊、火球が生まれた。
それが、ズーめがけて飛来する。
「な、なんだお前!? ま、まさかこれが伝説の……! 大魔竜バフルート……!? ウグワーッ!!」
逃げることなど許さない。
メガ・インフェルノの炎が召喚士とズーを一瞬で焼き尽くした。
バフルートと呼ばれた飛竜は、炎の中で消し炭になったこいつらを吸い込む。
なーるほど、これが飛竜の食事なんだな。
そして、俺達を見下ろした。
『奇妙な物を使い、飛んでいた者達か。次はない。一度目は物珍しくて思わず、ずっと観察してしまったが、次は本当にない』
「こいつ念押ししてきたぞ」
バフルートは俺のツッコミを無視すると、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
「飛竜……! 空の王だな! 分かったぞ! あいつがいるから、人間は空を飛べなかったんだ!」
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