「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
69 / 83
第四章

第69話 召喚士を探せ

しおりを挟む
「ハウリングブラスト! アワワワワワワワワ~!」

 なんか声を発さねばならない技らしいので、俺は適当な言語を放った。
 すると俺のアワワワワワワワワ~は拡大され、音のハンマーとなって三つ首の犬を殴りつけるではないか。

『ギャウグワー!』

『地形:ランドシャーク!』

『ギャウグワー!』

 犬のモンスターがダメージの蓄積で、フラフラに。
 そこへ、上空からアベルが飛び込んできた。

 槍が三つ首の中心を地面に縫い留める。
 矢と投擲されてきたナイフが、三つ首の右側に突き刺さった。
 そして走ってきたエリカが、左側の首を文字通り粉砕する。

 どうっと音を立て、犬のモンスターが倒れ込んだ。

「チェック! これはケルベロス。伝説に謳われるモンスターの一体ね。だけど、生きている個体が出現したという話は知らないけど……」

 レーナが首を傾げる前で、ケルベロスは全身をモヤのようなものに変えて消えていってしまった。

「あっ」

「消えた」

『こいつは召喚士が呼び出したモンスターだ。こういう連中が幾らでもいる』

 風水士は険しい表情で辺りを見回した。
 あちこちからゴブリン達の悲鳴が聞こえる。

 最初は、ゴブリンを助けるなんて……と言っていた義勇騎士団だが、どうやら状況が大変なことになっていると理解したらしい。

「これが人間の国にもやって来たら大変だ」

「ここで召喚士とやらを倒さねば」

 そういう方向で、仕事へのモチベーションを得たらしい。
 まあ、人間、自分とあまりにも異なる存在に共感するのは難しいからな。

 その後、俺達はゴブリン王国をくまなく歩きまわり、たくさんいたケルベロスを全て駆逐したのだった。
 でかくて、謎の技を使ってくるモンスターだが、大きな弱点があった。
 それを見つけてからは倒すのが早くなったのだ。

 こいつ、頭が三つあってそれぞれに意思もあるから、別方向から異なる攻撃をすると体の動きが鈍るのだ。
 そこを後ろからガツンとやる。

 これだ。
 義勇騎士団のメンバーでも、割りとサクサク倒せた。

 やがて、ゴブリン王国は静かになる。
 こうなれば気になるのは、召喚士の居所だ。

「レーナ、召喚士について知らない?」

 無茶振りかなーとは思ったが聞いてみた。
 彼女はふんふん頷くと、手にしている本をパラパラめくる。

「本に書いてあるのか?」

 エリカの質問に、レーナが笑って答える。

「何にも書いてないわよ。頭の中にある知識をね、こうやって呼び出すのよね。ええと……召喚士は強さのレベルがあって、弱いものはゴブリンを呼んだりするわ。強くなるほど召喚できるモンスターが強くなるけれど……。ケルベロスなら、中くらいのレベルじゃないかしら。でも、これだけたくさん召喚したとなると」

 レーナがきょろきょろする。

「本来、魔法を使うにはその人のキャパシティっていうのがあるのよ。だけどこれだけの数の召喚魔法は、普通におかしいわ。それに、ケルベロスよりも強いモンスターがいない。まるで命がけで、自分が召喚できるモンスターを呼びまくったみたい。ああ、ほら」

 レーナが指さした先に、瓦礫の山があった。
 そこから、足が突き出している。
 人間の足だ。

「なんだこれ!」

 エリカが走っていって、ズボッと引き抜いた。
 それは、全身血まみれになった男だった。

「ひ、ひいっ! 助けてくれ! 助けて!」

 なんか暴れているので、エリカはそいつをポイッと投げ捨てた。

『待て! その男は召喚士だ! そいつがゴブリン王国を襲ったんだ!』

「なんだって!」

 血まみれの男、召喚士に注目が集まる。
 召喚士は半笑いになりながら、手にした指輪を見せた。

「モンソロの指輪の力はすげえぜ。風車の騎士もいいものを俺達にくれたもんだ。まあ、召喚獣が馬鹿過ぎて、俺が隠れてる家屋ごとぶっ壊すとは思わなかったけどよ。召喚! ズー!!」

 召喚士は、見覚えのある巨大な鳥を呼び出した。
 ヤツがそれに捕まると、鳥は飛び立ち始める。

「しまった! やっつけておけばよかったなあ」

「エリカ殿、拙者におまかせでござるぞー!」

「飛んでるだけなら、撃ち落としゃいいんだよ」

 ホムラとゴメスが武器を構える。
 アベルは既に、跳躍の姿勢だ。

 だが、その必要は無かった。
 高らかに飛び上がったズー。
 その姿は、きっと遠方からもよく見えたのだろう。

 何かが飛来してきたのだ。
 そいつは、巨大な鳥であるズーよりも、遥かに大きかった。

『我以外に、空を飛ぶこと能わず』

 全身を銀色に輝かせ、一対の翼に四本の足を持つ。
 口からは炎をチラつかせ、金色の目がランランと輝く。

「飛竜だ!」

 ホムラが興奮気味に叫んだ。

「フォンテイン伝説の飛竜だ! とうとう出てきた!」

『愚かなる者よ。我が劫火で焼き尽くされよ。メガ・インフェルノ』

 飛竜の周囲に、一つ一つが飛空艇くらいはある炎の塊、火球が生まれた。
 それが、ズーめがけて飛来する。

「な、なんだお前!? ま、まさかこれが伝説の……! 大魔竜バフルート……!? ウグワーッ!!」

 逃げることなど許さない。
 メガ・インフェルノの炎が召喚士とズーを一瞬で焼き尽くした。

 バフルートと呼ばれた飛竜は、炎の中で消し炭になったこいつらを吸い込む。
 なーるほど、これが飛竜の食事なんだな。

 そして、俺達を見下ろした。

『奇妙な物を使い、飛んでいた者達か。次はない。一度目は物珍しくて思わず、ずっと観察してしまったが、次は本当にない』

「こいつ念押ししてきたぞ」

 バフルートは俺のツッコミを無視すると、そのままどこかへ飛び去ってしまった。

「飛竜……! 空の王だな! 分かったぞ! あいつがいるから、人間は空を飛べなかったんだ!」

 エリカがポンっと手をたたく。
 つまり……五十年前まで、空は大魔竜バフルートによって支配されていたってこと……!?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

我が家の会話を全て厨二病全開にしてみた結果

海林檎
恋愛
父親の一言で負けじと厨二病全開で会話してみた。 内容は本編で ジャンルが謎なので目がついたものにしてます

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...