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第四章
第63話 せっかくなので空から襲撃などする
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少年風水士はああ言ったが、せっかく空を飛んでいるのだ。
ここからミサイルなど撃とう。
「ミサイルミサイルミサイルミサイル」
「ウグワーッ!? や、やつらドワーフの飛空艇を!」
「ええい、何をしている! 撃ち返せ撃ち返せ!」
矢がピュンピュン飛んできた。
だが、こういうのは空に向かって撃つと威力が減るのだ。
船底に当たった矢は、ぺちっと弾かれてへろへろ落ちていく。
「拙者も拙者も」
「風水士少年もやれやれ。降りるまで時間かかるからな。ワールウインドがいいぞ。いい練習になる」
『ええ……。こういう一方的なのはちょっとゴブリン的にも良心が痛むんだけど』
「そんな良心は勝ってから痛ませればいいんだ」
ということで。
俺とホムラと風水士少年で、風車の騎士の軍勢を爆撃するのだ。
かなり向こうを削った。
俺のミサイルのもとになる物も、ホムラの投擲武器も投げ尽くした。
風水士少年はすっかりクタクタで、ジャガラどころではない。
「タリホー!! 本隊が来たよー! 飛空艇も降下するよー!」
ドワーフの操縦士が告げる。
この言葉にウオーっと沸き立ったのはエリカだ。
「やっと戦えるな! 風車の騎士め、許さないぞ!」
飛空艇が高度をちょっと下げたかな? と言う頃合いで、ぴょーんと飛び出すエリカ。
危ないーっ!
俺は慌ててジャンプで飛び出し、彼女をキャッチした。
そのまま、風車の騎士と見られる豪華な鎧のやつの目の前に着地した。
「風車の騎士だな!?」
声を掛けながら、ベヒーモールをフルスイングで叩きつけるエリカ。
「ぬおわーっ!? な、な、なんだお前は!? うおお、受け止めた盾が砕けた!」
風車の騎士は慌てて後退する。
彼を守るように、騎士達が何人か現れた。
「よし、ランドシャークだ!」
「ウグワーッ!?」
ぶっ飛ぶ騎士達。
その間をエリカが駆け抜けて、得物を風車の騎士に叩き込む。
「ぐおおー! やらせはせんぞ、やらせは!!」
風車の騎士は、なんとこれを素手で受け止めた。
鎧がひび割れ、砕け散り、その下から隆々たる筋肉が見えるな。
いや、なんか異常に腕が太い。人間のそれじゃない気がする。
「エリカ、こいつモンスターの力を取り込んだりしてるぞ、多分」
俺はレーナじゃないので、この辺りの推測は多分でしか語れない。
早く本職の学者が到着しないものか。
「モンスターだって!? 好都合だ! どっちにしろやっつけるからな!」
エリカは一向にかまわないようだ。
ベヒーモールを振り回して、めちゃくちゃに風車の騎士を攻撃する。
これを、風車の騎士は必死に防ぐ。
「な、なんだこいつはー!! モンスターの力を使ってもなお、私が押し負けているだと!? やはり正面から戦うのはダメだ、正面からは!」
フォンテインを後ろから刺した男の言うことは違うな。
しかしまあ、風車の騎士はしぶとい。
どういうわけか、周囲の騎士が次々割り込んできて邪魔をする。
俺が蹴散らしても蹴散らしてもどんどん出てくる。
操られてるんじゃないかってくらいのペースだな。
「邪魔が入りまくるけど、こういう悪い騎士達を退治するのも楽しいな!」
エリカは実に充実していそうだ。
だんだん、風車の騎士から、次々に現れる悪の騎士を退治する方向に興味がシフトしていっている。
「あ、風車の騎士が逃げる」
凄い勢いで、走っていってしまった。
潔い逃げっぷりだ。
俺は今のところ、これを追撃できる技と道具を持ってないな。
ジャンプすると敵の集団にエリカを置いていくことになるし。
まあ、また今度出会ったら退治してやろう、風車の騎士。
それに風車の魔王が倒されるのはここじゃないしな。
おっと、風車の騎士軍の後ろに、ドワーフ・義勇騎士団連合が追いついてきた。
わあわあと叫び声が聞こえ、猛烈に戦い始めている。
「よし、みんな、今だ! やれー! 風車の騎士!? ああ、逃げていった!」
低空飛行する飛空艇の上で、トニーがなにか言っている。
「風車の騎士を退散させたのか!」「さすがはフォンテイン義勇騎士団のリーダーだ!」「まさにフォンテインだな!!」
「ち、違う! オレがやったんじゃなく……」
トニーの言い訳は、義勇騎士団の歓声でかき消されたな。
レーナが後ろでニコニコしている。
これでまた、トニーの評価が上がってしまうわけだ。
姫を護衛して戦った、フォンテインの伝説。
それはまさにここで生まれたわけだな。
しみじみしながら、俺はランドシャークとワールウインドで周囲を制圧する。
普通の騎士ばかりっぽいが、風車の騎士が消えた瞬間に弱体化した気がする。
これは……風車の騎士を潰さないと、こういうのと同じような軍勢が幾つも出てくるな?
何度かタイムリープをすることになるだろうが、その度にフォンテイン伝説は真実の姿に近づいていくというわけだ。
エリカもきっと喜ぶだろう。
風車の騎士よ、倒すに値する強大な敵に成長して、エリカを迎え撃ってくれ!
こっちもさらにパワーアップして叩き潰すからな……!
そう感慨にふける俺の横を、ゴブリンが一人、『アヒー』とか情けない声をあげながら、這って逃げていくのだった。
あれがジャガラかな?
この時代から、逃げ回るスタイルだったんだな……。
ここからミサイルなど撃とう。
「ミサイルミサイルミサイルミサイル」
「ウグワーッ!? や、やつらドワーフの飛空艇を!」
「ええい、何をしている! 撃ち返せ撃ち返せ!」
矢がピュンピュン飛んできた。
だが、こういうのは空に向かって撃つと威力が減るのだ。
船底に当たった矢は、ぺちっと弾かれてへろへろ落ちていく。
「拙者も拙者も」
「風水士少年もやれやれ。降りるまで時間かかるからな。ワールウインドがいいぞ。いい練習になる」
『ええ……。こういう一方的なのはちょっとゴブリン的にも良心が痛むんだけど』
「そんな良心は勝ってから痛ませればいいんだ」
ということで。
俺とホムラと風水士少年で、風車の騎士の軍勢を爆撃するのだ。
かなり向こうを削った。
俺のミサイルのもとになる物も、ホムラの投擲武器も投げ尽くした。
風水士少年はすっかりクタクタで、ジャガラどころではない。
「タリホー!! 本隊が来たよー! 飛空艇も降下するよー!」
ドワーフの操縦士が告げる。
この言葉にウオーっと沸き立ったのはエリカだ。
「やっと戦えるな! 風車の騎士め、許さないぞ!」
飛空艇が高度をちょっと下げたかな? と言う頃合いで、ぴょーんと飛び出すエリカ。
危ないーっ!
俺は慌ててジャンプで飛び出し、彼女をキャッチした。
そのまま、風車の騎士と見られる豪華な鎧のやつの目の前に着地した。
「風車の騎士だな!?」
声を掛けながら、ベヒーモールをフルスイングで叩きつけるエリカ。
「ぬおわーっ!? な、な、なんだお前は!? うおお、受け止めた盾が砕けた!」
風車の騎士は慌てて後退する。
彼を守るように、騎士達が何人か現れた。
「よし、ランドシャークだ!」
「ウグワーッ!?」
ぶっ飛ぶ騎士達。
その間をエリカが駆け抜けて、得物を風車の騎士に叩き込む。
「ぐおおー! やらせはせんぞ、やらせは!!」
風車の騎士は、なんとこれを素手で受け止めた。
鎧がひび割れ、砕け散り、その下から隆々たる筋肉が見えるな。
いや、なんか異常に腕が太い。人間のそれじゃない気がする。
「エリカ、こいつモンスターの力を取り込んだりしてるぞ、多分」
俺はレーナじゃないので、この辺りの推測は多分でしか語れない。
早く本職の学者が到着しないものか。
「モンスターだって!? 好都合だ! どっちにしろやっつけるからな!」
エリカは一向にかまわないようだ。
ベヒーモールを振り回して、めちゃくちゃに風車の騎士を攻撃する。
これを、風車の騎士は必死に防ぐ。
「な、なんだこいつはー!! モンスターの力を使ってもなお、私が押し負けているだと!? やはり正面から戦うのはダメだ、正面からは!」
フォンテインを後ろから刺した男の言うことは違うな。
しかしまあ、風車の騎士はしぶとい。
どういうわけか、周囲の騎士が次々割り込んできて邪魔をする。
俺が蹴散らしても蹴散らしてもどんどん出てくる。
操られてるんじゃないかってくらいのペースだな。
「邪魔が入りまくるけど、こういう悪い騎士達を退治するのも楽しいな!」
エリカは実に充実していそうだ。
だんだん、風車の騎士から、次々に現れる悪の騎士を退治する方向に興味がシフトしていっている。
「あ、風車の騎士が逃げる」
凄い勢いで、走っていってしまった。
潔い逃げっぷりだ。
俺は今のところ、これを追撃できる技と道具を持ってないな。
ジャンプすると敵の集団にエリカを置いていくことになるし。
まあ、また今度出会ったら退治してやろう、風車の騎士。
それに風車の魔王が倒されるのはここじゃないしな。
おっと、風車の騎士軍の後ろに、ドワーフ・義勇騎士団連合が追いついてきた。
わあわあと叫び声が聞こえ、猛烈に戦い始めている。
「よし、みんな、今だ! やれー! 風車の騎士!? ああ、逃げていった!」
低空飛行する飛空艇の上で、トニーがなにか言っている。
「風車の騎士を退散させたのか!」「さすがはフォンテイン義勇騎士団のリーダーだ!」「まさにフォンテインだな!!」
「ち、違う! オレがやったんじゃなく……」
トニーの言い訳は、義勇騎士団の歓声でかき消されたな。
レーナが後ろでニコニコしている。
これでまた、トニーの評価が上がってしまうわけだ。
姫を護衛して戦った、フォンテインの伝説。
それはまさにここで生まれたわけだな。
しみじみしながら、俺はランドシャークとワールウインドで周囲を制圧する。
普通の騎士ばかりっぽいが、風車の騎士が消えた瞬間に弱体化した気がする。
これは……風車の騎士を潰さないと、こういうのと同じような軍勢が幾つも出てくるな?
何度かタイムリープをすることになるだろうが、その度にフォンテイン伝説は真実の姿に近づいていくというわけだ。
エリカもきっと喜ぶだろう。
風車の騎士よ、倒すに値する強大な敵に成長して、エリカを迎え撃ってくれ!
こっちもさらにパワーアップして叩き潰すからな……!
そう感慨にふける俺の横を、ゴブリンが一人、『アヒー』とか情けない声をあげながら、這って逃げていくのだった。
あれがジャガラかな?
この時代から、逃げ回るスタイルだったんだな……。
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