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第四章

第61話 騎士がモンスターに乗ってやってきた

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「ゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー!!」

 ドワーフの戦闘リーダーみたいなのが叫ぶと、ガンを持ったドワーフ軍がウワーッと走っていく。
 迎え撃つ、風車の騎士軍団。
 こっちはなんと、門が開いて飛び出す、驚きのモンスターライダー集団だ。

 二本の角が生えた馬みたいなのや、金色の熊みたいなのに乗っている。
 どういうことだろう。

「タリホー! あいつらモンスターに乗ってるぞ!!」

「モンスターを避けろ! 乗ってるやつを撃ち落とせ! 後からモンスターを集中攻撃だ!」

「タリホー!!」

 ドワーフ達、普段の自由さからは想像もできないほど組織立って動いているな。

「よし、私達も行くぞ!!」

「待つんだエリカ」

「どうしたんだドルマ!」

 今にも走り出しそうだったエリカをガッチリ止めたのだ。

「騎士がモンスターに乗ってるのおかしくない?」

「風車の騎士だろう? あれがきっと伝説の途中で風車の魔王に変わるんだ! 秘宝の強奪とかしてたから、きっとそれを使うんだ!」

 エリカのシンプルな言葉に、俺はなるほどと頷いた。
 確かに、そう考えるのがいいのかもしれない。

 トニーや風水士やカイナギオは、俺たちと出会って変化して現在の彼らになった。
 風車の騎士もまた、変化をしていって伝説で語られる魔王になるのかもな。

「よし、それなら行くかあ」

「行こう!」

 そういうことになった。

「少年は俺の後についてこい。君の力だと、まだまだ普通に死ぬからな」

『くっそー! 絶対強くなってやるからな!!』

 ゴブリンの少年は、両目にメラメラと情熱の炎を燃やすのだ。

「ほいほい、では拙者が道を切り開くでござるよー。そりゃー、手投げ弾だあ!!」

 投擲された手投げ弾が、騎士たちの中ほどに落下、炸裂……おっと、30回ヒットした!
 ものっすごい大爆発が起こったな!

「なんだありゃあ!」

「手投げ弾!?」

「投げるもんが投げるとあんなにスゴイんじゃのう!!」

 騎士達が、ウグワーッと叫びながら吹っ飛んでいく。
 モンスターもウグワーッと吹っ飛ぶ。

 もうあれは大型の攻撃魔法みたいな威力だろう。

「す、凄いですー!! ふつうーの手投げ弾と、それを投げるのが上手い人の組み合わせでこんなにも!」

 アディ姫が興奮して、輿の上でぴょんぴょん飛び跳ねている。
 あれはホムラがやったからとんでもないことになってるだけじゃないかな。

「な、な、なんだこりゃあああああ!? ドワーフどもに凄腕の忍者が味方してるってのかあ!?」

 おや?
 騎士達の間を飛び回る小柄な影が。

 そいつは爆発を巧みに回避した後、ホムラを睨みつけた。

「てめえが忍者か! 東方からやって来てみたら、まさか西国にもすげえ忍者がいたとはな! おらあ!! 火遁の術!!」

 風車の騎士に与する忍者だ。
 なんと、忍術を使ってくる正統派だぞ!

 炎が地面を走ってきて、ホムラの目の前で巻き上がる。

「おっと! 忍術を使うとは……。効率というものが分かっていない忍者でござるなあ」

 ホムラ、余裕余裕。
 火遁の術めがけて、すくい上げた土の塊を投げつけた。
 それが火遁にぶつかった瞬間、20回ヒット! と表示が出る。土が増えて、あっという間に火遁を覆い尽くしてしまった。

「な、なんだと!? おのれ、水遁!!」

 今度は激しい水流が生まれ、騎士達ごとこっちに迫ってくる。

「ウグワーッ!? どうして我々までー!!」

「図体がでけえばかりで使い物にならねえからだよ!」

 忍者、ひどい物言いである。
 これを迎え撃つうちの忍者、ホムラは……。

「そーれっ、投擲でござるぞー!!」

 また土の塊を、今度は両手で連続して投げつけた。
 それが水の中に落下すると、明らかにその質量を増す。
 あっという間に堤防のようになり、水遁を防いでしまった。

 水遁の術が終わると、増えた土もなくなる。
 どういう仕掛けなんだろうな……。

『な、なんだよあれ』

「あれが忍者の戦いだぞ。ああいう凄まじいのはゴロゴロいる。少年も頑張って強くならないと、なかなか戦力になれないからな」

『比較対象がやべえよ……! めっちゃくちゃ努力しなくちゃ……』

 忍術VS投擲の対決はしばらく続いた。
 とりあえず、魔法のように繰り出される忍術に対して、ホムラの投擲は物を投げるだけで魔法みたいな効果を発揮するので、大変コストパフォーマンスが高い。
 なるほど、ホムラが忍術を使わなくなるわけだなあ。

 しかも自分は忍術を使えるから、その弱点がハッキリ分かっている。
 あっという間に、ホムラの投擲が忍者の忍術を上回った。

「ウグワーッ!?」

 小石を35回ヒットさせられ、忍者が吹っ飛んでいった。

「こっ、この恨み晴らさでおくべきかーっ!!」

「さらばでござるよ~!」

 のんきに手を振るホムラなのだった。
 彼女の投擲で、騎士団と、彼らの隠し玉であったろう忍者は壊滅状態だ。

「よーし、フォンテインナイツの忍者が切り開いてくれたですよー!! 突っ込むですよー!!」

「タリホー!!」

 アディの声に、一斉に応じるドワーフ達。

 倒れ伏す騎士達は、「フォンテインナイツだと……!?」「あのどろ魔人を倒し、ゴブリン砦を落としたという……!?」「フォンテイン……お館様が殺したはずではなかったのか……!!」

 愕然としている。
 こうしてまた、騎士フォンテインの偉業が伝わっていくのだろう。
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