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第四章
第59話 ゴブリンの少年を拾った
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「秘宝ってキングベヒーモスの卵だったのか」
「そうなんです!! わっちは大変なことになったですー!! と慌てて皆を率いて地上にやってきたのです! あの人間たちは盗人なのです!!」
アディ姫がプンプン怒り、ぴょんぴょこ飛び跳ねる。
ドワーフはちっちゃいから、そういう仕草がコミカルに見えて実にカワイイ。
横でアディ姫の侍従長らしきドワーフ男性もぴょんぴょん跳ねている。
ベールの下には髭面があるはずなのだが、やはり可愛く見えるな。
「よし、では秘宝を取り戻すために私達フォンテインナイツが全面的に協力しよう!!」
エリカが堂々と宣言した。
「ほうほう! そなたらはフォンテインと言うですか! では協力を頼むですよ!」
アディはすぐに受け入れた。
これに驚いたのは侍従長である。
「ひ、姫! そんなに気軽に人間を信用されては……」
「侍従長! その目玉は節穴ですかー! この人達が今、容赦なく、本当に容赦なく虫けらを踏み潰すように騎士たちを蹴散らしたのが見えなかったですか! ほら、結構死んでますよ!」
「あ、はい。確かにわしらもドン引きするくらいの勢いで騎士を駆逐しましたが」
「逃げていった騎士たちは、本気で恐怖してたですよ!」
「あ、はい。確かに仲間を踏みつけてでも必死に撤退して行きましたが」
「それでも信用しないですか! 敵の敵は味方です! わっちがそう決めたですよ!」
「いや、そうとは限らないのでは……」
アディに押されながらも、諫言はやめない侍従長。
めんどくさい男だが、強い忠義を感じるなあ。
「俺はこの侍従長が気に入ったので、俺からも同盟を申し入れるぞ」
「なん……だと……!? わしと……!? わしと同盟を……!」
「うむ。あんたがいいのだ」
俺が重々しく頷くと、侍従長は挙動不審になった。
そしてもじもじしながら、
「そ、そうか。そこまで言うなら……。では、こちらの女性は姫と、この男はわしと同盟を」
そういうことになった。
ドワーフたちがざわざわと、「侍従長いつもうるさがられているから、ああやって直接好意を向けられるのに慣れてないんだよな」「割りとちょろいんだよな」と話し合っている。
こうして、俺たちはアディの護衛とドワーフとの同盟を成し遂げたのだった。
やることは、風車の騎士たちの追跡だ。
ドワーフたちは、いつもタリホータリホーと陽気である。
これ、もともとは……。
「地下世界には、わっちらの天敵であるオークがいたですよ。はるか昔、闇の勢力に取り込まれたドワーフが堕ちた存在で、体が大きく、暴虐に満ちた恐ろしい連中だったですよ」
「ほうほう。そりゃあさぞ恐ろしい相手だっただろうな」
「そうなのですよー! だから、わっちらは技術を磨き上げてオークを狩り尽くしたですよ!」
「えっ、勝ったの?」
「勝ったですねー。わっちら、魔法はほとんど使えないですが、地下にある豊富な資源とこの技術力を使っていろいろなものを作れるですよ。例えばわっちらが持っているこれはガンというですよ」
「ほうほう、ガン」
「誰でも引き金を引くと弾丸をぶっ放して相手を倒せるですよ。他に、今回は騎士たちに壊されて持ってこれなかったですが、飛空艇もあるですよ! 空を飛ぶ船ですよー」
「そりゃあすごいなあ」
空を船が飛ぶなんて想像もできない。
ガンというのは、クロスボウのもっと簡単なやつなんだろう。
それをドワーフの手の中に収まるサイズにしてるんだから、確かに凄い。
なお、ガンなどドワーフ技術の産物は、あまりにも構造が独特でフクザツなので、常にドワーフのメンテナンスを必要とするそうだ。
「いいでござるなー。拙者もなにか投げられるものほしいでござるなー」
「おお、忍者! お主、すっごい投げる技を使ってたでござるなー。あれガンより全然強いとかおかしいですよ。これ、技術者!」
「はっ」
「手投げ弾持ってくるです!」
「はっ、こちらに」
「忍者、これをあげるです! 破壊力はあるけど、投げないと威力を発揮しないし、発射するには大きすぎるので持て余してたですよ。このピンを抜いてちょっとすると爆発するですよ」
「爆発する塊でござるな? ありがたやー! 手裏剣は高価ゆえ、ここぞという時以外には使いたくないんでござるよなー」
ホムラ、ベヒーモス戦でも手裏剣とやらを使って無かったもんな。
そんなこんなで旅を続ける途中、街道脇に転がっているものを見つけた。
人間?
あ、いや、これは……。
『ギギギ……ジャガラ……どうして……』
ゴブリンの少年であろう。
傷だらけである。
「おいおい、どうしたどうした」
『ギギ? グギッ!』
俺が覗き込んできたので、ゴブリンの少年はめちゃくちゃ警戒した。
だが、俺はこの間のゴブリン王国の件で、話が通じるゴブリンには優しくなっている。
「今ジャガラとか言ったな。もしかしてお前、過去の時代の風水士? ……と言ってもわからないか」
『な……なんだお前』
「俺はな、青魔道士のドルマだ。将来的にお前は俺たちと関わるのかもしれない。なので、ここでお前を助けることにする」
『お前、何を言って……。いや、騙されないぞ。ジャガラはお前みたいな人間とつるんで俺を裏切ったんだ! 大いなる力を手に入れるとか言って……』
大いなる力か。
未来のゴブリン王ジャガラと、それとつるんだ人間、大いなる力……。
ここでジャガラが、ベヒーモスを手に入れるわけか?
色々つながってきたようなのだ。
「そうなんです!! わっちは大変なことになったですー!! と慌てて皆を率いて地上にやってきたのです! あの人間たちは盗人なのです!!」
アディ姫がプンプン怒り、ぴょんぴょこ飛び跳ねる。
ドワーフはちっちゃいから、そういう仕草がコミカルに見えて実にカワイイ。
横でアディ姫の侍従長らしきドワーフ男性もぴょんぴょん跳ねている。
ベールの下には髭面があるはずなのだが、やはり可愛く見えるな。
「よし、では秘宝を取り戻すために私達フォンテインナイツが全面的に協力しよう!!」
エリカが堂々と宣言した。
「ほうほう! そなたらはフォンテインと言うですか! では協力を頼むですよ!」
アディはすぐに受け入れた。
これに驚いたのは侍従長である。
「ひ、姫! そんなに気軽に人間を信用されては……」
「侍従長! その目玉は節穴ですかー! この人達が今、容赦なく、本当に容赦なく虫けらを踏み潰すように騎士たちを蹴散らしたのが見えなかったですか! ほら、結構死んでますよ!」
「あ、はい。確かにわしらもドン引きするくらいの勢いで騎士を駆逐しましたが」
「逃げていった騎士たちは、本気で恐怖してたですよ!」
「あ、はい。確かに仲間を踏みつけてでも必死に撤退して行きましたが」
「それでも信用しないですか! 敵の敵は味方です! わっちがそう決めたですよ!」
「いや、そうとは限らないのでは……」
アディに押されながらも、諫言はやめない侍従長。
めんどくさい男だが、強い忠義を感じるなあ。
「俺はこの侍従長が気に入ったので、俺からも同盟を申し入れるぞ」
「なん……だと……!? わしと……!? わしと同盟を……!」
「うむ。あんたがいいのだ」
俺が重々しく頷くと、侍従長は挙動不審になった。
そしてもじもじしながら、
「そ、そうか。そこまで言うなら……。では、こちらの女性は姫と、この男はわしと同盟を」
そういうことになった。
ドワーフたちがざわざわと、「侍従長いつもうるさがられているから、ああやって直接好意を向けられるのに慣れてないんだよな」「割りとちょろいんだよな」と話し合っている。
こうして、俺たちはアディの護衛とドワーフとの同盟を成し遂げたのだった。
やることは、風車の騎士たちの追跡だ。
ドワーフたちは、いつもタリホータリホーと陽気である。
これ、もともとは……。
「地下世界には、わっちらの天敵であるオークがいたですよ。はるか昔、闇の勢力に取り込まれたドワーフが堕ちた存在で、体が大きく、暴虐に満ちた恐ろしい連中だったですよ」
「ほうほう。そりゃあさぞ恐ろしい相手だっただろうな」
「そうなのですよー! だから、わっちらは技術を磨き上げてオークを狩り尽くしたですよ!」
「えっ、勝ったの?」
「勝ったですねー。わっちら、魔法はほとんど使えないですが、地下にある豊富な資源とこの技術力を使っていろいろなものを作れるですよ。例えばわっちらが持っているこれはガンというですよ」
「ほうほう、ガン」
「誰でも引き金を引くと弾丸をぶっ放して相手を倒せるですよ。他に、今回は騎士たちに壊されて持ってこれなかったですが、飛空艇もあるですよ! 空を飛ぶ船ですよー」
「そりゃあすごいなあ」
空を船が飛ぶなんて想像もできない。
ガンというのは、クロスボウのもっと簡単なやつなんだろう。
それをドワーフの手の中に収まるサイズにしてるんだから、確かに凄い。
なお、ガンなどドワーフ技術の産物は、あまりにも構造が独特でフクザツなので、常にドワーフのメンテナンスを必要とするそうだ。
「いいでござるなー。拙者もなにか投げられるものほしいでござるなー」
「おお、忍者! お主、すっごい投げる技を使ってたでござるなー。あれガンより全然強いとかおかしいですよ。これ、技術者!」
「はっ」
「手投げ弾持ってくるです!」
「はっ、こちらに」
「忍者、これをあげるです! 破壊力はあるけど、投げないと威力を発揮しないし、発射するには大きすぎるので持て余してたですよ。このピンを抜いてちょっとすると爆発するですよ」
「爆発する塊でござるな? ありがたやー! 手裏剣は高価ゆえ、ここぞという時以外には使いたくないんでござるよなー」
ホムラ、ベヒーモス戦でも手裏剣とやらを使って無かったもんな。
そんなこんなで旅を続ける途中、街道脇に転がっているものを見つけた。
人間?
あ、いや、これは……。
『ギギギ……ジャガラ……どうして……』
ゴブリンの少年であろう。
傷だらけである。
「おいおい、どうしたどうした」
『ギギ? グギッ!』
俺が覗き込んできたので、ゴブリンの少年はめちゃくちゃ警戒した。
だが、俺はこの間のゴブリン王国の件で、話が通じるゴブリンには優しくなっている。
「今ジャガラとか言ったな。もしかしてお前、過去の時代の風水士? ……と言ってもわからないか」
『な……なんだお前』
「俺はな、青魔道士のドルマだ。将来的にお前は俺たちと関わるのかもしれない。なので、ここでお前を助けることにする」
『お前、何を言って……。いや、騙されないぞ。ジャガラはお前みたいな人間とつるんで俺を裏切ったんだ! 大いなる力を手に入れるとか言って……』
大いなる力か。
未来のゴブリン王ジャガラと、それとつるんだ人間、大いなる力……。
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色々つながってきたようなのだ。
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