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第三章

第55話 さらばベヒーモス! あと戦争もさらば!

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 ベヒーモスは暴れる。
 戦場を駆け回り、地団駄を踏み、咆哮をあげる。
 戦場にいる連中が次々巻き込まれているなあ。

 これは犠牲者が結構出ているかもしれない。
 風水士め、これを狙っていたのではないか。

 止められるなら止めたいが、これがまあ、ベヒーモスがばかでかくてタフなのでそう簡単にはいかないのだ。

「エリカ、ドルマ、忍者。同じ箇所に攻撃を仕掛けるぞ。散発的にやっていては時間が掛かっていかん」

 ベヒーモスの頭に槍を深く突き刺し、アベルは俺たちを振り返る。

「珍しく指示してくるじゃん」

「ようやく俺以外に同じ仕事をするヤツがいるという状況に慣れてきた」

「お前、筋金入りのぼっちだな」

「うるさい。行くぞ」

 アベルがジャンプした。
 強制的に協力ミッションをスタートしやがった。

「よし! アベルがやる気になってるんだ! やるぞ! おりゃあ!!」

 暴れるベヒーモスの額まで這い上がったエリカ、グレイブソードを叩きつけた。
 ちょっと傷がつく。

「やるでござるかあ! そいそい!!」

 足でベヒーモスのたてがみに絡みついていたホムラ、いつの間にか、地上からたくさんの武器を拾い集めていたらしい。
 それを猛烈な勢いで投擲し始める。

「いやあ、戦場は武器がたくさん落ちてるでござるなあ! あ、これは頭部でござったな!」

 おおっ、兜に収まった誰かの頭が20回ヒットしてる!

「よーし、じゃあ俺はこの距離ならミサイルだな。ほいほい!」

 放たれるミサイルで、ベヒーモスの頭部が爆発の中に消え……あ、いっけね! エリカ上にいた!!

「煙い煙い!」

 慌ててエリカが飛び出してきた。
 無事だ。
 さすがの頑丈さ。

 俺は一旦ベヒーモスから離れ、ジャンプでエリカをキャッチした。

 そんな俺たちが作った戦場みたいなところに、降りてくるアベル。
 落下速度と質量が乗った槍の一撃が、ベヒーモスの頭をついにぶち抜いた。

『モギャグワーッ!!』

 ベヒーモスが激しく暴れる。
 だが、なんというかこの暴れ方はさっきまでと違うな。

 でたらめに暴れているだけだ。
 俺たちを振り落とそうとか、そういう意思がない。

 なので、じーっと見ていたら、ベヒーモスの動きはどんどん遅くなっていった。
 やがて、力なく崩れ落ちる。

『メテオ』

 あ、死に際にまたぶっ放しやがった。

『カウンターメテオ』

 ほい、迎撃。
 どうやらこれは、自動発動する技のようだ。
 相手が致命的な技を使ってきた時に、これを迎撃するみたいなものなんだな。

「ドルマ、ちょっと寄ってくれ! あと、抱きかかえるなら腰! 腰な! その、さっきは胸とか抱えてたので!」

「アッハイ」

 鎧の上からだったので感触分からなかったな! とか思いつつ、俺はまたエリカを抱えてジャンプした。
 倒れたベヒーモスに着地する。

「どれどれ……? あ、死んでる! 死んでる!」

 ベヒーモスの角の付け根をガンガン叩くエリカ。
 すると、角がポキっと折れた。
 エリカのグレイブソードもポキっと折れた。

「あっ!!」

「今まで酷使してきたからなあ」

 旅をともにしてきたグレイブソードよ、さらば!

「ベヒーモスの角も武器になるかな……」

 転んでもタダでは起きないエリカなのだった。

「やあやあやあ、お疲れでござる、お疲れでござる」

 忍者がたてがみを登ってきた。
 そして、つま先でベヒーモスをコンコンと蹴る。

「いやあ、見事にござるなあ。伝説の魔獣を一蹴したでござるなー」

「俺ら、ずっとこいつの頭にまとわりついて攻撃してたからな。なんかベヒーモスの実力の一割も発揮させないまま粉砕した気がする」

「空から落ちてくる石を、ドルマがなんとかしたからだな! やっぱりドルマは凄いな!」

 エリカがニコニコで俺の肩を叩いた。
 うむ、彼女が笑っているなら何もかも問題なかろう。
 戦場はもう、戦争をするどころではない状況になっているが、結果的に戦闘行為も完全に止まったし、こっちも問題なし……!

「よし、仕事終了。その角を討伐の記録として持って帰るぞ。あとは雇い主を待つ」

 アベルが宣言した。
 仕事に慣れているなあ。
 俺たちはベヒーモスの角をもう片方もへし折ると、これを背負って持ち帰るのだった。

 無論、帰還するのはゴブリン王国。

 俺たちがベヒーモスの角を背負って戻ってきたので、ゴブリンたちは大騒ぎになった。
 遠巻きにこれを見つめている。
 恐怖とか警戒みたいな感情ばかりなのだが……。

 そこに、義勇同盟のゴブリンたちが駆け寄ってきた。

『うおおーっ!! ジャガラの中に潜み、我らゴブリンを人間との全面戦争に追い立てていた恐ろしい怪物、ベヒーモスを討伐してくださったのか!!』

『これでゴブリンは救われる! 新たな王が平和に治めてくださるぞ!』

『全ての元凶であるベヒーモスは倒されたのだ!』

 彼らの説明くさいセリフが響き渡る!
 すると、周りのゴブリン達が『そうなのかな?』『そうかも!』『そう言えばジャガラ様の中からこいつ出てきたわ』みたいな雰囲気になった。

 うまいなー。
 義勇同盟のお陰で、俺たちはゴブリン王国の賓客として迎えられた。

 ゴブリンの長老みたいなのが出てきて、俺たちを指さしてこう言ったのが決め手になったのだ。

『こ、この方々は……! 風車の魔王から我らをお救いになった、騎士フォンテインの仲間たちじゃあ!!』

『な、なんだってー!!』

「な、なんだってー!!」

 ゴブリンたちと一緒に、どうしてエリカまで叫んでいるんだ。
 というか、どうやら俺たちは過去で、彼らをまた救うことになるらしい。

 そして出てきたな、風車の魔王というワードが。
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