50 / 83
第三章
第50話 戦争始まり、おかしな男との遭遇
しおりを挟む
ゴブリン王国討伐は、冒険と言うか戦争だった。
武装した各国の義勇軍と、やはり武装したゴブリン王国軍がぶつかり合う。
始まって早々、大混戦の様相を呈していた。
「ここにくさい息を流し込めば敵味方もろとも一網打尽だなあ」
「やめろドルマ」
アベルが真顔で止めてきた。
「俺の仕事へ金を払う者がいなくなる」
「そっちを心配してたか」
アベル、基本的に個人主義なのだ。
うちのエリカはと言うと、顔をしかめている。
「こういうのは好きじゃないな。なんか嫌」
「そうかそうか。じゃあ、俺たちは別働隊で動こう」
そう言う話になった。
もともと、カイナギオとの話では、ゴブリンを一方的に叩きのめすのは現実的ではないという話だった。
彼らもたくさんおり、国を作っている以上、これを滅ぼすというのは簡単にできることではない。
カタクリーコ地方と国境を接する三国は、お世辞にも味方ではないし、それぞれの国も隙あらば国土を奪い取ってやろうと狙っている。
つまり、ゴブリンに全力を注ぎ込んだら横からやられるわけだ。
戦争をさっさと片付けなければ。
そのためには何が必要か。
この辺りを、ゴブリン王国側とやり取りして模索せねばという話だった。
カイナギオ、ゴブリン王国につてがあるのか。
今は戦場に出向いていていないが、あいつもモンスターだし、ゴブリンの仲間がいてもおかしくないかもしれない。
ぬおお、頭を使いすぎてクラクラしてきた。
「ドルマ、大丈夫か!? 顔が赤くなって頭から煙が出ているようにみえるぞ!」
「俺はもともと、難しいことを考えない人間だったのだが、最近妙に難しいことばかり起きるのだ……。うおお」
「これは、案ずるより産むが易しでござるな! 拙者らでちょっと戦場を覗いたりしてみるでござるよー!」
ホムラの意見があり、そうしようということになった。
とりあえず手近な戦場に動くと、俺のミサイルが無差別に降り注ぎ、アベルが上空から次々ゴブリンを攻撃し、エリカが蹴散らし、ホムラが武器を投げまくる。
あっという間に戦場は静かになった。
今回のテーマは、非殺傷。
運が悪ければ死ぬが、運が良ければ死なない。
カイナギオ発案の作戦で、これで俺たちの存在をゴブリン王国に印象付けるというものだ。
死なせてないのは、それなりに腕があるやつなら気付くんだと。
それくらの火力をイメージしてみんなで攻撃してみたぞ。
敵味方が死屍累々だが、戦場にぽっかり穴が空いた形になり、これはたいへん目立つ。
「ゴブリン王国に、こちらに通じようとするのがいれば、これで目立つはずだけど……」
大雑把な作戦ではある。
何も起きないかもしれないし、そもそもゴブリンは交渉可能な相手ではないかもしれない。
俺のイメージだと、人間に敵対するモンスターって感じだしな。
だが、相手はやって来た。
紫色のマントを纏ったやつで、なんと戦場をスゴイ勢いで跳躍したり疾走したりして、こちらに近づいてくる。
アベルに匹敵する動きだ。
「むっ。ジャンプ!」
アベルが跳躍した。
迎え撃つつもりである。
マント姿も跳躍して、アベルと激突した。
「むおっ!?」
突然風が吹き荒れ、アベルが体勢を崩される。
だが、竜騎士は慌てない。
すぐに着地のために降下していった。
その頭上をマント姿が通り過ぎる。
向かうは俺たちのところ。
「敵か!?」
「戦場を見渡しているでござるな。あと、跳躍が不自然に長いでござる」
確かに、マント姿、跳んだっきりなかなか降りてこない。
ついに俺たちの上までやって来たのである。
そして、こちらにだけ聞こえる程度の声で、
『我と出会う前の青魔道士たちか。なんとも懐かしい顔が揃ったものだ。どれ、挨拶をしてやる』
そう聞こえてきた。
あれ?
俺を知ってる?
ということは……。
『地形……ワールウインド』
突然強烈なつむじ風が起こり、俺たちを包囲した。
これってモンスター技じゃん。
「なんの、ワールウインド返し!」
風で風を弾く。
その間に、マント姿は俺たちの目の前に着地していた。
「よし、行くぞ!」
エリカが攻撃を仕掛けた。
彼女はバーサーカーなのだが、今回は非殺傷モードなのでグレイブソードの背を使っている。
これをマント姿に叩きつけた。
『地形……ストーンウォール』
いきなり、エリカの目の前に壁状の地面が盛り上がってきた。
「わっ、なんだ!」
エリカ、それを全力で粉砕する。
すぐに攻撃目標を切り替えられる辺りは流石だな。
そしてその間に、マント姿はさらに俺へと接近していた。
「ツアーッ!」
ホムラが石を投げる。
軽石なので、たくさんヒットしても運が悪くないと死なない。
だが、マント姿はこれを、念のために防ぐことにしたらしい。
『地形……ストーンブラスト』
足元から、石つぶてが吹き上がる。
それが多段ヒットする軽石と激突し、相殺した。
「地形の技? もしかして、伝説の職業の風水士か!」
エリカがハッとした。
マント姿が、笑ったようだ。
『いかにも。我は風水士』
俺の目の前に立ったそいつは、フードをおろした。
そこにいるのは、ゴブリンである。
しかも明らかに、ゴブリンジェネラルのような上位ゴブリンだ。
『貴様らにとっては初めてとなろう。だが、我にとっては久方ぶりの再会。さて青魔道士、この戦に落とし所を設けるため、共闘しようではないか』
武装した各国の義勇軍と、やはり武装したゴブリン王国軍がぶつかり合う。
始まって早々、大混戦の様相を呈していた。
「ここにくさい息を流し込めば敵味方もろとも一網打尽だなあ」
「やめろドルマ」
アベルが真顔で止めてきた。
「俺の仕事へ金を払う者がいなくなる」
「そっちを心配してたか」
アベル、基本的に個人主義なのだ。
うちのエリカはと言うと、顔をしかめている。
「こういうのは好きじゃないな。なんか嫌」
「そうかそうか。じゃあ、俺たちは別働隊で動こう」
そう言う話になった。
もともと、カイナギオとの話では、ゴブリンを一方的に叩きのめすのは現実的ではないという話だった。
彼らもたくさんおり、国を作っている以上、これを滅ぼすというのは簡単にできることではない。
カタクリーコ地方と国境を接する三国は、お世辞にも味方ではないし、それぞれの国も隙あらば国土を奪い取ってやろうと狙っている。
つまり、ゴブリンに全力を注ぎ込んだら横からやられるわけだ。
戦争をさっさと片付けなければ。
そのためには何が必要か。
この辺りを、ゴブリン王国側とやり取りして模索せねばという話だった。
カイナギオ、ゴブリン王国につてがあるのか。
今は戦場に出向いていていないが、あいつもモンスターだし、ゴブリンの仲間がいてもおかしくないかもしれない。
ぬおお、頭を使いすぎてクラクラしてきた。
「ドルマ、大丈夫か!? 顔が赤くなって頭から煙が出ているようにみえるぞ!」
「俺はもともと、難しいことを考えない人間だったのだが、最近妙に難しいことばかり起きるのだ……。うおお」
「これは、案ずるより産むが易しでござるな! 拙者らでちょっと戦場を覗いたりしてみるでござるよー!」
ホムラの意見があり、そうしようということになった。
とりあえず手近な戦場に動くと、俺のミサイルが無差別に降り注ぎ、アベルが上空から次々ゴブリンを攻撃し、エリカが蹴散らし、ホムラが武器を投げまくる。
あっという間に戦場は静かになった。
今回のテーマは、非殺傷。
運が悪ければ死ぬが、運が良ければ死なない。
カイナギオ発案の作戦で、これで俺たちの存在をゴブリン王国に印象付けるというものだ。
死なせてないのは、それなりに腕があるやつなら気付くんだと。
それくらの火力をイメージしてみんなで攻撃してみたぞ。
敵味方が死屍累々だが、戦場にぽっかり穴が空いた形になり、これはたいへん目立つ。
「ゴブリン王国に、こちらに通じようとするのがいれば、これで目立つはずだけど……」
大雑把な作戦ではある。
何も起きないかもしれないし、そもそもゴブリンは交渉可能な相手ではないかもしれない。
俺のイメージだと、人間に敵対するモンスターって感じだしな。
だが、相手はやって来た。
紫色のマントを纏ったやつで、なんと戦場をスゴイ勢いで跳躍したり疾走したりして、こちらに近づいてくる。
アベルに匹敵する動きだ。
「むっ。ジャンプ!」
アベルが跳躍した。
迎え撃つつもりである。
マント姿も跳躍して、アベルと激突した。
「むおっ!?」
突然風が吹き荒れ、アベルが体勢を崩される。
だが、竜騎士は慌てない。
すぐに着地のために降下していった。
その頭上をマント姿が通り過ぎる。
向かうは俺たちのところ。
「敵か!?」
「戦場を見渡しているでござるな。あと、跳躍が不自然に長いでござる」
確かに、マント姿、跳んだっきりなかなか降りてこない。
ついに俺たちの上までやって来たのである。
そして、こちらにだけ聞こえる程度の声で、
『我と出会う前の青魔道士たちか。なんとも懐かしい顔が揃ったものだ。どれ、挨拶をしてやる』
そう聞こえてきた。
あれ?
俺を知ってる?
ということは……。
『地形……ワールウインド』
突然強烈なつむじ風が起こり、俺たちを包囲した。
これってモンスター技じゃん。
「なんの、ワールウインド返し!」
風で風を弾く。
その間に、マント姿は俺たちの目の前に着地していた。
「よし、行くぞ!」
エリカが攻撃を仕掛けた。
彼女はバーサーカーなのだが、今回は非殺傷モードなのでグレイブソードの背を使っている。
これをマント姿に叩きつけた。
『地形……ストーンウォール』
いきなり、エリカの目の前に壁状の地面が盛り上がってきた。
「わっ、なんだ!」
エリカ、それを全力で粉砕する。
すぐに攻撃目標を切り替えられる辺りは流石だな。
そしてその間に、マント姿はさらに俺へと接近していた。
「ツアーッ!」
ホムラが石を投げる。
軽石なので、たくさんヒットしても運が悪くないと死なない。
だが、マント姿はこれを、念のために防ぐことにしたらしい。
『地形……ストーンブラスト』
足元から、石つぶてが吹き上がる。
それが多段ヒットする軽石と激突し、相殺した。
「地形の技? もしかして、伝説の職業の風水士か!」
エリカがハッとした。
マント姿が、笑ったようだ。
『いかにも。我は風水士』
俺の目の前に立ったそいつは、フードをおろした。
そこにいるのは、ゴブリンである。
しかも明らかに、ゴブリンジェネラルのような上位ゴブリンだ。
『貴様らにとっては初めてとなろう。だが、我にとっては久方ぶりの再会。さて青魔道士、この戦に落とし所を設けるため、共闘しようではないか』
1
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる