39 / 83
第二章
第39話 謎はだいたい解けた?
しおりを挟む
隣村の襲撃を完膚なきまでに撃破したお陰で、エリカと俺たちは英雄として出迎えられた。
「婿殿! なんだったんださっきの攻撃は!」「婿じゃないぞ」「まるで魔法みたいな攻撃だった!」
全然話を聞いちゃいない。
一同は俺の青魔法を、わあわあ言いながら褒め称えた。
そして隣村の連中をボッコボコに殴り飛ばしたエリカにも、称賛の声が届く。
「騎士になるなんて言って家を飛び出したから、悪い男に引っかかってひどいことになってるか、きっと野垂れ死んでるだろうと思ったら! 本当に強くなって戻ってきたんだねえ」
「エリカおばさんかっこよかったー!」
エリカが褒められてニヤニヤしている。
身内の人達、前半は褒めてないからな!
そして一同、アベルを見て無言になった。
「……この人は?」
「ちょっと縁があるヤツでな。敵対して戦ったことがほとんどなんだが、大体最後は仲間になる系の男だ」
「ははあ……」
「エリカが二人も男を連れている……ってわけじゃないのね」
「婿殿の方が愛嬌があっていいわよね」
だから婿じゃないって。
そのような話になったが、アベルはまあいいかと受け入れられたらしい。
隣村の連中がけちょんけちょんになったので、エリカの実家の人達は心から安心し、寛大になっているのだ。
「お祝いの用意をしなくちゃね!」
「ご馳走を作ろう!」
「逃げ出した隣村も追撃しないとな!」
キャッキャと盛り上がるこちら側の村の人々の間で、エリカの祖父……トニーが微笑みながらこちらを見ていた。
「青魔道士殿。記憶が蘇って参りました」
「蘇って来たか」
「昨日のことのように鮮明に。いやあ……どろ魔人の上に落とされた時は、これで死ぬのかと絶望しましたな。だが、わしの目の前で青魔道士殿がやってくれた。巨大なモンスターだって、殺せば死ぬと教えてくれた」
「良くない教育だなあ……。あ、それと若い頃のトニーって、オレって言ってなかった?」
「年を取ってからわしにしました」
「あ、そういうものなんだ」
「そして、わしをレーナに預けていったでしょう。そうそう、あれが妻との縁で……」
「あの後、トニーとレーナがくっつくの? 先の展開がすごいところからもたらされたな」
「わしからすると後の展開ですなあ」
「そりゃあそうか」
二人でわっはっはっはっは、と笑っていると、エリカが不思議そうな顔をした。
「なあドルマ。なんでお祖父様とそんなに仲良しなんだ?」
「色々分かり合うところがあるんだ」
「そうか! ところでドルマ! 次はどこに行こうかという話で……」
そこまで離したところで、エリカは二人の姉に両脇をガッチリ抱えられ、母親にひょいと抱え上げられてしまった。
「な、なにをするー!」
「今日の主役はエリカなんだもの! おめかししてあげないとね!」
「うわー、助けてくれドルマー」
運ばれていってしまった。
あれは助けなくていいだろう。
別のところでは、アベルが村人たちに報酬の交渉をしている。
破格の安い値段を提示した上で、三食昼寝付きを条件にしているな。
あの竜騎士、「高い報酬に目がくらんで雇われたら、死の束縛をされたり、モンスターみたいな男だったりした。今後は雇い主の人となりを見て選ぶ」と反省の言葉を述べていた。
早速実行している。
報酬も村からすれば、そう大したものではなかったらしい。
めでたくアベルはこの村に雇われることとなった。
「それでですな、青魔道士殿」
「おう。俺は時間を超えて、今と過去を行き来できる。隣村のボスだった土のカイナギオという男は、俺から時を超える技を習ったそうだ」
「なるほど。ではそうなるのでしょうな。そしてこれからも、青魔道士殿は時代を超えた事件に挑むことになるでしょう」
「そうなのか? どうしてだろう」
トニーの目がきらりと光った。
「過去に戻った時、騎士フォンテインはどうなっておりましたか?」
「死んでた」
「でしょう。ですが、フォンテインの伝説はあちこちに残っています。そして、地の底の魔人を倒した逸話はフォンテイン伝説のはしり。つまり……」
「俺たちフォンテインナイツが、他の逸話も再現していくことになるってことか」
なるほど、そりゃあ面白い。
つまり、騎士フォンテインとは俺たちのことだったのだ。
遠からず、俺とエリカはまた過去に戻り、トニーを連れて新たな冒険に挑むことになるのだろう。
風車の騎士とやらも気になるし。
今の時代では、風車の魔法と伝えられる男だ。
だが過去では、まだ人間の姿だった。
過去のカイナギオがどろ魔人の欠片を食べていたりしたし、そういうイベントがあって人間じゃなくなったりするんだろうか。
そう言う話をトニーにしたら。彼は首を傾げた。
「まだその辺りは、記憶がおぼろげでしてな……。青魔道士殿がエリカとともに、フォンテインの冒険をしていくことで、わしの記憶も戻ってくるようです」
「そうかそうか。そういう仕組みか」
俺は、あることをあるがまま受け入れる主義である。
なので、この話もそのまま受け入れた。
「うわー、ドレスは嫌だー!」
エリカの叫び声が聞こえてくる。
「青魔道士殿、孫がワガママを言っております。顔を見せて大人しくさせてやってくれませんかな?」
「よし分かった。ドレス姿のエリカっていうのも見てみたいしな」
俺はトニーに手を振りつつ、着替えさせられているであろうエリカの元に向かうのだった。
第二章 終わり
「婿殿! なんだったんださっきの攻撃は!」「婿じゃないぞ」「まるで魔法みたいな攻撃だった!」
全然話を聞いちゃいない。
一同は俺の青魔法を、わあわあ言いながら褒め称えた。
そして隣村の連中をボッコボコに殴り飛ばしたエリカにも、称賛の声が届く。
「騎士になるなんて言って家を飛び出したから、悪い男に引っかかってひどいことになってるか、きっと野垂れ死んでるだろうと思ったら! 本当に強くなって戻ってきたんだねえ」
「エリカおばさんかっこよかったー!」
エリカが褒められてニヤニヤしている。
身内の人達、前半は褒めてないからな!
そして一同、アベルを見て無言になった。
「……この人は?」
「ちょっと縁があるヤツでな。敵対して戦ったことがほとんどなんだが、大体最後は仲間になる系の男だ」
「ははあ……」
「エリカが二人も男を連れている……ってわけじゃないのね」
「婿殿の方が愛嬌があっていいわよね」
だから婿じゃないって。
そのような話になったが、アベルはまあいいかと受け入れられたらしい。
隣村の連中がけちょんけちょんになったので、エリカの実家の人達は心から安心し、寛大になっているのだ。
「お祝いの用意をしなくちゃね!」
「ご馳走を作ろう!」
「逃げ出した隣村も追撃しないとな!」
キャッキャと盛り上がるこちら側の村の人々の間で、エリカの祖父……トニーが微笑みながらこちらを見ていた。
「青魔道士殿。記憶が蘇って参りました」
「蘇って来たか」
「昨日のことのように鮮明に。いやあ……どろ魔人の上に落とされた時は、これで死ぬのかと絶望しましたな。だが、わしの目の前で青魔道士殿がやってくれた。巨大なモンスターだって、殺せば死ぬと教えてくれた」
「良くない教育だなあ……。あ、それと若い頃のトニーって、オレって言ってなかった?」
「年を取ってからわしにしました」
「あ、そういうものなんだ」
「そして、わしをレーナに預けていったでしょう。そうそう、あれが妻との縁で……」
「あの後、トニーとレーナがくっつくの? 先の展開がすごいところからもたらされたな」
「わしからすると後の展開ですなあ」
「そりゃあそうか」
二人でわっはっはっはっは、と笑っていると、エリカが不思議そうな顔をした。
「なあドルマ。なんでお祖父様とそんなに仲良しなんだ?」
「色々分かり合うところがあるんだ」
「そうか! ところでドルマ! 次はどこに行こうかという話で……」
そこまで離したところで、エリカは二人の姉に両脇をガッチリ抱えられ、母親にひょいと抱え上げられてしまった。
「な、なにをするー!」
「今日の主役はエリカなんだもの! おめかししてあげないとね!」
「うわー、助けてくれドルマー」
運ばれていってしまった。
あれは助けなくていいだろう。
別のところでは、アベルが村人たちに報酬の交渉をしている。
破格の安い値段を提示した上で、三食昼寝付きを条件にしているな。
あの竜騎士、「高い報酬に目がくらんで雇われたら、死の束縛をされたり、モンスターみたいな男だったりした。今後は雇い主の人となりを見て選ぶ」と反省の言葉を述べていた。
早速実行している。
報酬も村からすれば、そう大したものではなかったらしい。
めでたくアベルはこの村に雇われることとなった。
「それでですな、青魔道士殿」
「おう。俺は時間を超えて、今と過去を行き来できる。隣村のボスだった土のカイナギオという男は、俺から時を超える技を習ったそうだ」
「なるほど。ではそうなるのでしょうな。そしてこれからも、青魔道士殿は時代を超えた事件に挑むことになるでしょう」
「そうなのか? どうしてだろう」
トニーの目がきらりと光った。
「過去に戻った時、騎士フォンテインはどうなっておりましたか?」
「死んでた」
「でしょう。ですが、フォンテインの伝説はあちこちに残っています。そして、地の底の魔人を倒した逸話はフォンテイン伝説のはしり。つまり……」
「俺たちフォンテインナイツが、他の逸話も再現していくことになるってことか」
なるほど、そりゃあ面白い。
つまり、騎士フォンテインとは俺たちのことだったのだ。
遠からず、俺とエリカはまた過去に戻り、トニーを連れて新たな冒険に挑むことになるのだろう。
風車の騎士とやらも気になるし。
今の時代では、風車の魔法と伝えられる男だ。
だが過去では、まだ人間の姿だった。
過去のカイナギオがどろ魔人の欠片を食べていたりしたし、そういうイベントがあって人間じゃなくなったりするんだろうか。
そう言う話をトニーにしたら。彼は首を傾げた。
「まだその辺りは、記憶がおぼろげでしてな……。青魔道士殿がエリカとともに、フォンテインの冒険をしていくことで、わしの記憶も戻ってくるようです」
「そうかそうか。そういう仕組みか」
俺は、あることをあるがまま受け入れる主義である。
なので、この話もそのまま受け入れた。
「うわー、ドレスは嫌だー!」
エリカの叫び声が聞こえてくる。
「青魔道士殿、孫がワガママを言っております。顔を見せて大人しくさせてやってくれませんかな?」
「よし分かった。ドレス姿のエリカっていうのも見てみたいしな」
俺はトニーに手を振りつつ、着替えさせられているであろうエリカの元に向かうのだった。
第二章 終わり
1
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる