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第二章

第39話 謎はだいたい解けた?

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 隣村の襲撃を完膚なきまでに撃破したお陰で、エリカと俺たちは英雄として出迎えられた。

「婿殿! なんだったんださっきの攻撃は!」「婿じゃないぞ」「まるで魔法みたいな攻撃だった!」

 全然話を聞いちゃいない。
 一同は俺の青魔法を、わあわあ言いながら褒め称えた。
 そして隣村の連中をボッコボコに殴り飛ばしたエリカにも、称賛の声が届く。

「騎士になるなんて言って家を飛び出したから、悪い男に引っかかってひどいことになってるか、きっと野垂れ死んでるだろうと思ったら! 本当に強くなって戻ってきたんだねえ」

「エリカおばさんかっこよかったー!」

 エリカが褒められてニヤニヤしている。
 身内の人達、前半は褒めてないからな!

 そして一同、アベルを見て無言になった。

「……この人は?」

「ちょっと縁があるヤツでな。敵対して戦ったことがほとんどなんだが、大体最後は仲間になる系の男だ」

「ははあ……」

「エリカが二人も男を連れている……ってわけじゃないのね」

「婿殿の方が愛嬌があっていいわよね」

 だから婿じゃないって。
 そのような話になったが、アベルはまあいいかと受け入れられたらしい。

 隣村の連中がけちょんけちょんになったので、エリカの実家の人達は心から安心し、寛大になっているのだ。

「お祝いの用意をしなくちゃね!」

「ご馳走を作ろう!」

「逃げ出した隣村も追撃しないとな!」

 キャッキャと盛り上がるこちら側の村の人々の間で、エリカの祖父……トニーが微笑みながらこちらを見ていた。

「青魔道士殿。記憶が蘇って参りました」

「蘇って来たか」

「昨日のことのように鮮明に。いやあ……どろ魔人の上に落とされた時は、これで死ぬのかと絶望しましたな。だが、わしの目の前で青魔道士殿がやってくれた。巨大なモンスターだって、殺せば死ぬと教えてくれた」

「良くない教育だなあ……。あ、それと若い頃のトニーって、オレって言ってなかった?」

「年を取ってからわしにしました」

「あ、そういうものなんだ」

「そして、わしをレーナに預けていったでしょう。そうそう、あれが妻との縁で……」

「あの後、トニーとレーナがくっつくの? 先の展開がすごいところからもたらされたな」

「わしからすると後の展開ですなあ」

「そりゃあそうか」

 二人でわっはっはっはっは、と笑っていると、エリカが不思議そうな顔をした。

「なあドルマ。なんでお祖父様とそんなに仲良しなんだ?」

「色々分かり合うところがあるんだ」

「そうか! ところでドルマ! 次はどこに行こうかという話で……」

 そこまで離したところで、エリカは二人の姉に両脇をガッチリ抱えられ、母親にひょいと抱え上げられてしまった。

「な、なにをするー!」

「今日の主役はエリカなんだもの! おめかししてあげないとね!」

「うわー、助けてくれドルマー」

 運ばれていってしまった。
 あれは助けなくていいだろう。

 別のところでは、アベルが村人たちに報酬の交渉をしている。
 破格の安い値段を提示した上で、三食昼寝付きを条件にしているな。

 あの竜騎士、「高い報酬に目がくらんで雇われたら、死の束縛をされたり、モンスターみたいな男だったりした。今後は雇い主の人となりを見て選ぶ」と反省の言葉を述べていた。
 早速実行している。
 報酬も村からすれば、そう大したものではなかったらしい。

 めでたくアベルはこの村に雇われることとなった。

「それでですな、青魔道士殿」

「おう。俺は時間を超えて、今と過去を行き来できる。隣村のボスだった土のカイナギオという男は、俺から時を超える技を習ったそうだ」

「なるほど。ではそうなるのでしょうな。そしてこれからも、青魔道士殿は時代を超えた事件に挑むことになるでしょう」

「そうなのか? どうしてだろう」

 トニーの目がきらりと光った。

「過去に戻った時、騎士フォンテインはどうなっておりましたか?」

「死んでた」

「でしょう。ですが、フォンテインの伝説はあちこちに残っています。そして、地の底の魔人を倒した逸話はフォンテイン伝説のはしり。つまり……」

「俺たちフォンテインナイツが、他の逸話も再現していくことになるってことか」

 なるほど、そりゃあ面白い。
 つまり、騎士フォンテインとは俺たちのことだったのだ。

 遠からず、俺とエリカはまた過去に戻り、トニーを連れて新たな冒険に挑むことになるのだろう。
 風車の騎士とやらも気になるし。

 今の時代では、風車の魔法と伝えられる男だ。
 だが過去では、まだ人間の姿だった。

 過去のカイナギオがどろ魔人の欠片を食べていたりしたし、そういうイベントがあって人間じゃなくなったりするんだろうか。
 そう言う話をトニーにしたら。彼は首を傾げた。

「まだその辺りは、記憶がおぼろげでしてな……。青魔道士殿がエリカとともに、フォンテインの冒険をしていくことで、わしの記憶も戻ってくるようです」

「そうかそうか。そういう仕組みか」

 俺は、あることをあるがまま受け入れる主義である。
 なので、この話もそのまま受け入れた。

「うわー、ドレスは嫌だー!」

 エリカの叫び声が聞こえてくる。

「青魔道士殿、孫がワガママを言っております。顔を見せて大人しくさせてやってくれませんかな?」

「よし分かった。ドレス姿のエリカっていうのも見てみたいしな」

 俺はトニーに手を振りつつ、着替えさせられているであろうエリカの元に向かうのだった。


 第二章 終わり
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