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第二章
第38話 なんか持ってったヤツがいる
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「じゃあ行ってくるので。ほら、一緒に来いトニー」
「ウグワーッ!? お、俺もーっ!?」
「騎士見習いということは騎士になるんだろう。ならでかいモンスターの一体でも倒さないとな」
「うううっ、や、やあってやるぜ!!」
なかなかいい意気込みだ。
軍隊も、「オー」「あの若者がやるのか」「すごい」とかどよめいている。
これで完全に、トニーは後に引けなくなった。
「我々も飛び道具で援護する!」
「おう、無理しないで頼む」
ということで、トニーを連れてジャンプするのだった。
どろ魔人は周囲に、どろの塊みたいなのを吐き散らしながら暴れている。
これをアベルがジャンプを繰り返しながら何度も攻撃しており、エリカはと言うと頭にしがみつきながらグレイブソードを叩き込んでいるではないか。
「よし、俺到着だ。トニー、他に何が持ち物あるか」
「こ、これ水袋」
「よし、拡散渦潮カッター!!」
渦潮カッターは自動的に敵だけを攻撃するので、誤射というものがないのだ。
こういう乱戦には便利だね。
『もがーっ!! 人間どもめーっ! 俺様の頭から離れろー!!』
「来たなドルマ! どろ魔人、頭は攻撃が効くぞ! 下でなんかみんなが矢を射ってるけど、あれ効いてないから!」
「冷静だなエリカー」
どろ魔人の頭に着地する。
『コラーッ!!』
コラと言われても、立てる場所がどろ魔神の頭しかない。
あまりにもデカすぎるし、どろ魔人はどろどろーっとしてる姿なので、俺たちを振り落とすことが難しいのだ。
結果、ここが安全地帯ということになる。
「よし、じゃあとどめを刺してしまおう」
「やれるのか!? 早くやれ!」
アベルに怒られてしまった。
「じゃあやりまーす。エリカ、穴開けてくれ」
「おう!」
ドスッと全力でグレイブソードが突き刺される。
『ウグワーッ!』
「トニー、穴広げて、穴」
「お、おう!!」
トニーが剣を振り上げ、思い切りグレイブソードに叩きつける。
後で知ったのだが、どうやらこの姿がどろ魔人に向かって勇ましく最後の一撃を叩きつけたように見えていたらしい。
実際は、広がった穴に俺がどろ魔人の破片を流し込みつつ、
「ミサイル」
とやっていたわけだ。
『ウッ、ウグワーッ!!』
どろ魔人の目から、口から、爆発が溢れ出した。
頭は粉々になり、変わった色の破片みたいななものが飛び散った。
どろ魔人の巨体が崩れ、どろの波になって流れていく。
周りからは大歓声が上がった。
どうやらどろ魔人の動向を各国が注視していたらしいな。
「騎士フォンテイン!」
「フォンテインがやってくれた!」
「見たか、あの勇ましい一撃!」
ワーッと盛り上がっているな。
トニー、慌てる。
「な、な、なんだってーっ!? お、オレじゃないぞーっ!!」
「トニーってことにしておけよ」
俺はほほえみながら、トニーの肩をポンと叩いた。
レーナが向こうから、手を振りつつ駆け寄ってくる。
どろの波を無視してザブザブ来る辺り、強いな。
「レーナ、これで一旦俺たちは元の時代に帰る。トニーをよろしくな!」
「はい? 元の世界? なんか分からないけど、了解したわよー!」
レーナがトニーを受け取る。
俺たちはどろ魔人の頭上に集まった。
おや?
遠くで、どろ魔人の頭の破片を拾っている兵士がいる。
そいつは破片をパクっと食べたりしており。
「おいカイナギオ、そんなもん食ったら腹壊すぞ」
他の兵士にそんなことを言われていた。
カイナギオ?
聞いたことがある気がするなあ……なんて思いつつ、俺は技の名を唱えたのだった。
「タイムリープ」
俺たちの姿は、その時代から消えた。
計算外だったのは、俺たちが乗っていたどろ魔人の死体ごと移動してきたことだろう。
突然、そこにどろの波が発生した。
「ウグワーッ!?」
なんか見覚えのある村人たちがどろの波に押し流されていった。
で、さらに見覚えのある骸骨みたいな容貌の男が、俺たちを見て愕然としている。
『な……なぜ……! わしはさっき、お前たちをタイムリープで過去の時代に送り込んだはず……!! この技は過去に青魔道士殿に教わった技で、他に使える者などいない! だがこの技を使わねば戻ってくることなど……』
カイナギオは俺をじっと見て、徐々にその顔が強張っていく。
『あ、青魔道士殿……!? そんな、そんな馬鹿な! じゃあ、青魔道士殿はわしのタイムリープをコピーして使えるように!? そして過去のわしは青魔道士殿からタイムリープを教わった……!? そ、それでは最初のタイムリープは一体……うごごごごご』
「カイナギオ様! なんかやばそうですぜ!」
「逃げましょうぜー!!」
『そ、そうしよう!!』
彼らはそのまま、全力で逃げ出したのだった。
「うーん、どうやら俺たちが過去に送られてから、大して時間が経過してないみたいだな」
「お前、さっきのやり取りを聞いていてその感想か。本当に細かいことを気にしない男だな」
何故かアベルが呆れているではないか。
「しかし、こんな怪しい連中に雇われたとは。俺もヤキが回ったな。おいエリカ。お前の家が近いのだろう? しばらくはそちらで用心棒をやってやろう」
「おっ、そうなのか! じゃあアベルもうちに紹介しないとな!」
「俺とアベルが一緒に来ると、エリカの家が大騒ぎになりそうな予感もするな」
果たして、俺の予感は的中するのだった。
「ウグワーッ!? お、俺もーっ!?」
「騎士見習いということは騎士になるんだろう。ならでかいモンスターの一体でも倒さないとな」
「うううっ、や、やあってやるぜ!!」
なかなかいい意気込みだ。
軍隊も、「オー」「あの若者がやるのか」「すごい」とかどよめいている。
これで完全に、トニーは後に引けなくなった。
「我々も飛び道具で援護する!」
「おう、無理しないで頼む」
ということで、トニーを連れてジャンプするのだった。
どろ魔人は周囲に、どろの塊みたいなのを吐き散らしながら暴れている。
これをアベルがジャンプを繰り返しながら何度も攻撃しており、エリカはと言うと頭にしがみつきながらグレイブソードを叩き込んでいるではないか。
「よし、俺到着だ。トニー、他に何が持ち物あるか」
「こ、これ水袋」
「よし、拡散渦潮カッター!!」
渦潮カッターは自動的に敵だけを攻撃するので、誤射というものがないのだ。
こういう乱戦には便利だね。
『もがーっ!! 人間どもめーっ! 俺様の頭から離れろー!!』
「来たなドルマ! どろ魔人、頭は攻撃が効くぞ! 下でなんかみんなが矢を射ってるけど、あれ効いてないから!」
「冷静だなエリカー」
どろ魔人の頭に着地する。
『コラーッ!!』
コラと言われても、立てる場所がどろ魔神の頭しかない。
あまりにもデカすぎるし、どろ魔人はどろどろーっとしてる姿なので、俺たちを振り落とすことが難しいのだ。
結果、ここが安全地帯ということになる。
「よし、じゃあとどめを刺してしまおう」
「やれるのか!? 早くやれ!」
アベルに怒られてしまった。
「じゃあやりまーす。エリカ、穴開けてくれ」
「おう!」
ドスッと全力でグレイブソードが突き刺される。
『ウグワーッ!』
「トニー、穴広げて、穴」
「お、おう!!」
トニーが剣を振り上げ、思い切りグレイブソードに叩きつける。
後で知ったのだが、どうやらこの姿がどろ魔人に向かって勇ましく最後の一撃を叩きつけたように見えていたらしい。
実際は、広がった穴に俺がどろ魔人の破片を流し込みつつ、
「ミサイル」
とやっていたわけだ。
『ウッ、ウグワーッ!!』
どろ魔人の目から、口から、爆発が溢れ出した。
頭は粉々になり、変わった色の破片みたいななものが飛び散った。
どろ魔人の巨体が崩れ、どろの波になって流れていく。
周りからは大歓声が上がった。
どうやらどろ魔人の動向を各国が注視していたらしいな。
「騎士フォンテイン!」
「フォンテインがやってくれた!」
「見たか、あの勇ましい一撃!」
ワーッと盛り上がっているな。
トニー、慌てる。
「な、な、なんだってーっ!? お、オレじゃないぞーっ!!」
「トニーってことにしておけよ」
俺はほほえみながら、トニーの肩をポンと叩いた。
レーナが向こうから、手を振りつつ駆け寄ってくる。
どろの波を無視してザブザブ来る辺り、強いな。
「レーナ、これで一旦俺たちは元の時代に帰る。トニーをよろしくな!」
「はい? 元の世界? なんか分からないけど、了解したわよー!」
レーナがトニーを受け取る。
俺たちはどろ魔人の頭上に集まった。
おや?
遠くで、どろ魔人の頭の破片を拾っている兵士がいる。
そいつは破片をパクっと食べたりしており。
「おいカイナギオ、そんなもん食ったら腹壊すぞ」
他の兵士にそんなことを言われていた。
カイナギオ?
聞いたことがある気がするなあ……なんて思いつつ、俺は技の名を唱えたのだった。
「タイムリープ」
俺たちの姿は、その時代から消えた。
計算外だったのは、俺たちが乗っていたどろ魔人の死体ごと移動してきたことだろう。
突然、そこにどろの波が発生した。
「ウグワーッ!?」
なんか見覚えのある村人たちがどろの波に押し流されていった。
で、さらに見覚えのある骸骨みたいな容貌の男が、俺たちを見て愕然としている。
『な……なぜ……! わしはさっき、お前たちをタイムリープで過去の時代に送り込んだはず……!! この技は過去に青魔道士殿に教わった技で、他に使える者などいない! だがこの技を使わねば戻ってくることなど……』
カイナギオは俺をじっと見て、徐々にその顔が強張っていく。
『あ、青魔道士殿……!? そんな、そんな馬鹿な! じゃあ、青魔道士殿はわしのタイムリープをコピーして使えるように!? そして過去のわしは青魔道士殿からタイムリープを教わった……!? そ、それでは最初のタイムリープは一体……うごごごごご』
「カイナギオ様! なんかやばそうですぜ!」
「逃げましょうぜー!!」
『そ、そうしよう!!』
彼らはそのまま、全力で逃げ出したのだった。
「うーん、どうやら俺たちが過去に送られてから、大して時間が経過してないみたいだな」
「お前、さっきのやり取りを聞いていてその感想か。本当に細かいことを気にしない男だな」
何故かアベルが呆れているではないか。
「しかし、こんな怪しい連中に雇われたとは。俺もヤキが回ったな。おいエリカ。お前の家が近いのだろう? しばらくはそちらで用心棒をやってやろう」
「おっ、そうなのか! じゃあアベルもうちに紹介しないとな!」
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