29 / 83
第二章
第29話 フォンテインナイツ・空中戦
しおりを挟む
ジャンプで飛び上がってきた俺たちを、でかい鳥は驚きの表情で迎えた。
……と思ったら、即座に攻撃態勢に入ったのだった。
大きく羽ばたき、さっきの竜巻みたいなのを起こそうとする。
「させないぞ。ワールウインド!」
俺も同じ技をラーニングしている。
即座に使用すると、鳥を囲むように竜巻的な風が4つ出現した。
これが鳥を巻き込みながら、ぐるぐると空中で螺旋を描く。
『ウグワーッ!?』
鳥は浮力を失い、錐揉み落下だ。
「よしドルマ、私を離してくれ!」
「おっ、よく分からないが分かったぞ。そいっ」
空中でエリカを放流する。
すると彼女は自由落下していって、途中で態勢を立て直した鳥の背中に乗った。
鳥が驚いている。
エリカは躊躇なく、鳥の頭にグレイブソードを叩き込んだな。
やはりバーサーカーなのではないか。
俺はジャンプの軌道からゆるゆると落下していく。
「ミサイルを撃つぞ! エリカ、俺に飛び移れー!」
「分かった!」
鳥の翼を蹴って、エリカが俺にしがみついてくる。
俺は空いている方の手を使って、空中に石をばらまいた。
「ミサイル!」
石が次々と鳥に飛来する。
これをでかい鳥は避けるが、石は空中で爆発した。
『ギエーッ!!』
鳥が動きを制限されているな。
エリカが思いっきり頭を叩き割ったのも相当効いている。
とどめなのだ。
「バッドステータスブレス!」
俺はくさい息を吐き出した。
「ワールウインド!」
風がくさい息を運び、鳥の周囲にお届けだ。
でかい鳥は白目を剥くと、『ウグワーッ!!』と叫んで落下した。
地面に激突し、ピクピクしている。
ゆったりと、俺たちも降りてきた。
うーん、このワールウインドは本当に便利。
ただ、くさい息をコントロールしきるのは無理なようで、ちょっとくさい息が流てきた。
やばいやばい。
「ウグワーッ!」
いかん、冒険者の一人が吸い込んでぶっ倒れた。
風で薄くなっているから、ダメージは少ないと思うけど。
「今、俺が毒のある息を吐いたのでこの辺りは危ない。出発しよう!」
俺の言葉に、キャラバンの商人がギョッとした。
でかい鳥と俺を見比べた後、慌ててキャラバンを出発させるのだった。
その間に、エリカはでかい鳥の風切羽みたいなものを抜き取っている。
切り飛ばした爪と一緒に、討伐の証にするらしい。
「あの大きい鳥はなんだったんだろうな!」
「よくわかんないよな」
二人で雑談していたら、幌馬車に乗っていた商人の部下が顔を出した。
「あれはですね、最近この辺りを荒らし回っていた、アーン・ズーという巨鳥のモンスターです。突然現れたそうですよ。まだ何頭もいると聞きます」
「物騒だなあ」
「だから冒険者を雇うようになってるんですよ。今回は飛び道具を持った人が少なかったのでどうなるかと思いましたが……。いやあ、謎の技を使うあなたは強い」
するとエリカが自慢げに俺を指し示した。
「ドルマはな、伝説の青魔道士なんだ! 今も、あのアーン・ズーというモンスターの技をラーニングしたんだぞ!」
「えっ、青魔道士!?」
てっきり、よく分からない話だと流されるとばかり思っていたら。
知っているのか、商人の部下!!
「おとぎ話に登場する、騎士フォンテインの仲間の一人ですよね。あらゆるモンスターの技を自分のものとして、人ならざる力を使いこなす! 本当にいたんだなあ。ちなみに物語中では、青魔道士は世界に一人しかいない、という語りがありまして」
「フォンテインの物語ガチ勢じゃん」
「ドルマ、引かないでくれ! あれはそれくらい素晴らしい物語なんだ!」
しかし、青魔道士が一人だけって言うなら、伝説に謳われた青魔道士と俺はどういう関係があるというのだ。
そもそも俺は由緒正しき農民の子だぞ。
だが、別にそんなことを考えていても、お金がもらえるわけでも腹がふくれるわけでもない。
俺は考えるのを辞めた。
その後の旅は、エリカと商人の部下にフォンテインの話を散々聞かされることになった。
かなり覚えてしまった。
伝説の職業と言われている連中、つまりはフォンテインの仲間なのだ。
青魔道士に竜騎士、風水士、バーサーカー、学者に忍者。
この六名だな。
で、どう聞いてもフォンテインそのものの情報が曖昧なんだが。
地方の郷士で、騎士であるという妄想を懐いて旅に出て、多くの人々に馬鹿にされたが次々と仲間を得て、やがて風車の魔王を倒す。
その後のフォンテインは突如、歴史から消え失せる。
風車の魔王と相討ったとも、終わらぬ旅を続けているのだとも。
フォンテイン物語のマニアは多いようで、いろいろな説が囁かれているんだそうだ。
どうなってるんだろうなあ。
考えているうちに、目的地が見えてきた。
エリカの村だ。
ここで俺たちは、キャラバンとお別れすることになる。
商人が飛び出してきて、俺と激しく握手した。
「ありがとう! ありがとう! 謎の技を使う男よ! そして勇ましい女戦士! まるで伝説のバーサーカーのようだった!」
「騎士! 騎士!」
エリカが抗議の声をあげているが、戦いぶりがなあ……。
報酬はちょっと弾んでくれた。
一割増だ。
これはありがたいなあ。
俺もエリカも笑顔になった。
お金は心を豊かにする。
「懐が暖かくなった勢いで、実家に挨拶してしまおう!」
エリカはそう告げ、俺を連れて村に凱旋するのだった。
そして、どうやら彼女の兄らしき人物と遭遇し。
「げえっ、エ、エリカ!?」
げえっ、とか言われてるんだが。
……と思ったら、即座に攻撃態勢に入ったのだった。
大きく羽ばたき、さっきの竜巻みたいなのを起こそうとする。
「させないぞ。ワールウインド!」
俺も同じ技をラーニングしている。
即座に使用すると、鳥を囲むように竜巻的な風が4つ出現した。
これが鳥を巻き込みながら、ぐるぐると空中で螺旋を描く。
『ウグワーッ!?』
鳥は浮力を失い、錐揉み落下だ。
「よしドルマ、私を離してくれ!」
「おっ、よく分からないが分かったぞ。そいっ」
空中でエリカを放流する。
すると彼女は自由落下していって、途中で態勢を立て直した鳥の背中に乗った。
鳥が驚いている。
エリカは躊躇なく、鳥の頭にグレイブソードを叩き込んだな。
やはりバーサーカーなのではないか。
俺はジャンプの軌道からゆるゆると落下していく。
「ミサイルを撃つぞ! エリカ、俺に飛び移れー!」
「分かった!」
鳥の翼を蹴って、エリカが俺にしがみついてくる。
俺は空いている方の手を使って、空中に石をばらまいた。
「ミサイル!」
石が次々と鳥に飛来する。
これをでかい鳥は避けるが、石は空中で爆発した。
『ギエーッ!!』
鳥が動きを制限されているな。
エリカが思いっきり頭を叩き割ったのも相当効いている。
とどめなのだ。
「バッドステータスブレス!」
俺はくさい息を吐き出した。
「ワールウインド!」
風がくさい息を運び、鳥の周囲にお届けだ。
でかい鳥は白目を剥くと、『ウグワーッ!!』と叫んで落下した。
地面に激突し、ピクピクしている。
ゆったりと、俺たちも降りてきた。
うーん、このワールウインドは本当に便利。
ただ、くさい息をコントロールしきるのは無理なようで、ちょっとくさい息が流てきた。
やばいやばい。
「ウグワーッ!」
いかん、冒険者の一人が吸い込んでぶっ倒れた。
風で薄くなっているから、ダメージは少ないと思うけど。
「今、俺が毒のある息を吐いたのでこの辺りは危ない。出発しよう!」
俺の言葉に、キャラバンの商人がギョッとした。
でかい鳥と俺を見比べた後、慌ててキャラバンを出発させるのだった。
その間に、エリカはでかい鳥の風切羽みたいなものを抜き取っている。
切り飛ばした爪と一緒に、討伐の証にするらしい。
「あの大きい鳥はなんだったんだろうな!」
「よくわかんないよな」
二人で雑談していたら、幌馬車に乗っていた商人の部下が顔を出した。
「あれはですね、最近この辺りを荒らし回っていた、アーン・ズーという巨鳥のモンスターです。突然現れたそうですよ。まだ何頭もいると聞きます」
「物騒だなあ」
「だから冒険者を雇うようになってるんですよ。今回は飛び道具を持った人が少なかったのでどうなるかと思いましたが……。いやあ、謎の技を使うあなたは強い」
するとエリカが自慢げに俺を指し示した。
「ドルマはな、伝説の青魔道士なんだ! 今も、あのアーン・ズーというモンスターの技をラーニングしたんだぞ!」
「えっ、青魔道士!?」
てっきり、よく分からない話だと流されるとばかり思っていたら。
知っているのか、商人の部下!!
「おとぎ話に登場する、騎士フォンテインの仲間の一人ですよね。あらゆるモンスターの技を自分のものとして、人ならざる力を使いこなす! 本当にいたんだなあ。ちなみに物語中では、青魔道士は世界に一人しかいない、という語りがありまして」
「フォンテインの物語ガチ勢じゃん」
「ドルマ、引かないでくれ! あれはそれくらい素晴らしい物語なんだ!」
しかし、青魔道士が一人だけって言うなら、伝説に謳われた青魔道士と俺はどういう関係があるというのだ。
そもそも俺は由緒正しき農民の子だぞ。
だが、別にそんなことを考えていても、お金がもらえるわけでも腹がふくれるわけでもない。
俺は考えるのを辞めた。
その後の旅は、エリカと商人の部下にフォンテインの話を散々聞かされることになった。
かなり覚えてしまった。
伝説の職業と言われている連中、つまりはフォンテインの仲間なのだ。
青魔道士に竜騎士、風水士、バーサーカー、学者に忍者。
この六名だな。
で、どう聞いてもフォンテインそのものの情報が曖昧なんだが。
地方の郷士で、騎士であるという妄想を懐いて旅に出て、多くの人々に馬鹿にされたが次々と仲間を得て、やがて風車の魔王を倒す。
その後のフォンテインは突如、歴史から消え失せる。
風車の魔王と相討ったとも、終わらぬ旅を続けているのだとも。
フォンテイン物語のマニアは多いようで、いろいろな説が囁かれているんだそうだ。
どうなってるんだろうなあ。
考えているうちに、目的地が見えてきた。
エリカの村だ。
ここで俺たちは、キャラバンとお別れすることになる。
商人が飛び出してきて、俺と激しく握手した。
「ありがとう! ありがとう! 謎の技を使う男よ! そして勇ましい女戦士! まるで伝説のバーサーカーのようだった!」
「騎士! 騎士!」
エリカが抗議の声をあげているが、戦いぶりがなあ……。
報酬はちょっと弾んでくれた。
一割増だ。
これはありがたいなあ。
俺もエリカも笑顔になった。
お金は心を豊かにする。
「懐が暖かくなった勢いで、実家に挨拶してしまおう!」
エリカはそう告げ、俺を連れて村に凱旋するのだった。
そして、どうやら彼女の兄らしき人物と遭遇し。
「げえっ、エ、エリカ!?」
げえっ、とか言われてるんだが。
2
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる