13 / 83
第一章
第13話 女騎士(自称)は姫君の旅を護衛したい
しおりを挟む
俺たちが暮らす国が、商業都市ポータル。
この国から山を一つ越えた先にあるのが、リエンタール公国だ。
ロッテはこの国の第二公女。
「リエンタール公国は、あの地域の楔となっているのじゃ! わらわは楔の資格を持つ。じゃから、外国で色々勉強をしていたのじゃ。じゃが、リエンタール公国で反乱が起こった! 国を手にするために姉上が、外国の勢力を引き入れたのじゃ! わらわは国に戻らねばならんのじゃ!」
「それは大変だ! 護衛しなくちゃ!!」
「エリカ、話があまりにも早いぞ……!」
凄い勢いで先走るエリカを止める俺。
俺の行動に指針を与えてくれるエリカだが、所々でストッパーをしておかないと、暴走していくのだ。
「だが、ドルマ。ロッテ公女は護衛がいなくなってしまった。ここは私たちが行くべきだろう」
「おう、それには同意だ。だが、問題は先立つものでな」
ロッテ公女がきょとんとする。
「……は? お、お、お前たち、わらわを護衛するというのか? いきなり出会ったばかりのわらわの話を信用して、それで護衛するじゃと? 嘘だったらどうするのじゃ。このような話、すぐに信じてしまうようでは騙されてしまうことも多いのではないか」
「うーん、なんていうか、本当のにおいがする!」
エリカが断言した。
彼女は何も考えずに猪突猛進するが、その判断が間違いだったことはない。
「そんな……勘で動くようなものではないのか! そんなので、わらわの味方につくのか? わらわとて、会ったばかりの者たちを信用など……」
そこで、俺が竜騎士と戦っていたのを思い出したらしい。
「良いか? わらわを護衛するということは、あの男のようなバケモノを次々に相手することになるということじゃ。命が幾つあっても足りんぞ……! 外国から来た、怪しげな技を使う、人とも魔ともつかぬ連中じゃぞ!」
「皇女殿下、安心してください。私はこれからどんどん強くなるし、ドルマはモンスターの技を覚えてどんどん強くなります! つまり、私たちは強いので!」
「エリカの言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい自信だということだけは伝わったな」
ポカンとしたロッテ公女の顔を見て判断する。
「で、公女。報酬の方を……」
「お、おお、そうじゃ! 馬車の中に金はある! わらわの旅費と、それに貯金じゃ。これをくれてやる!」
「ありがたい! 鍋がダメになってどうしようかと考えてたんだ……」
俺とエリカは軍資金を受け取った。
これで、さっさと装備を固めてしまうことにする。
エリカは革鎧に金属片を編み込んだスケイルアーマー。
俺は要所要所だけを金属で補強したレザーアーマーだ。
「凄い……本物の鎧だ!」
「ああ、鎧を着てしまった。これは凄いことだな!」
エリカとともに大はしゃぎする俺。
この装備なら、ゴブリン砦だってやれそうな気がする。
それはエリカも同じ考えだったようだ。
「公女殿下、ちょっとだけいいですか!」
「なんじゃ?」
「ちょっとゴブリン砦に寄って行こうかなって。そっちの仕事が先約だったので」
「な、なんじゃとーっ!?」
目を見開くロッテ公女なのだった。
気持ちは分かる。
「ロッテ公女、相手はきっと、俺たちがすぐに公国に向かってくると思ってるはずだ。だけど、そこであえて寄り道してから行く……! 相手のタイミングをずらすんだ。これは高度な作戦なんだ」
「そ、そうなのか!?」
ロッテ公女が混乱しているな。
俺が今回、ゴブリン砦襲撃に前向きなのは、勝算があるからだ。
まず、ジャンプ。
これで一気に砦まで行って奇襲できる。
それから、エリカに戦闘経験を積んでもらう。
ゴブリンの耳を集めれば、旅費やら何やら、必要なお金の足しにすることだってできるだろう。
いいことばかりだ。
「時に公女、何かできたりしますかね」
「わらわか? わらわは白魔道士としての才能を持っている。じゃから、怪我や毒などを治すことができるのじゃ。……ふむ、追手の目をくらませる意味ではありじゃな。わらわをしっかり護衛できるか? やれるなら、付き合ってやらんでもないのじゃ。なにせ、このまま一人だと、わらわは絶対に死ぬからの……!」
「よーし、ではみんなが得することがわかったな! それでは行こう、ゴブリン砦へ!」
そう言う事になった。
エリカの言う大義的なものも大事だが、大義をこなすためには実力をつけなきゃだし、それに冒険は楽しくやっていかねばならない。
こうして俺たちは、その足でゴブリン砦へと向かったのである。
公国に行くのとは全く違う道。
「……全然襲撃がなかったのじゃ!!」
「普通に考えて絶対行く必要がないルートだもんなあ。やるべきことがあるのに、無用な危険に突っ込むとかありえない」
「それが私たちならありえるかもなのだ! ドルマの発想力は凄いな!」
「エリカの決断力あってこそだよ。はっはっは」
二人でハイタッチしていたら、それをじーっとロッテが見ている。
「……二人はあれか? 恋人同士なのじゃ?」
「なん……だと……?」
「ち、違うぞ!」
硬直する俺と、むきになって否定するエリカなのだった。
ロッテ公女が、ははーんという顔になって笑った。
まあ、目下絶賛その命を狙われている公女に笑ってもらえたのでよしとしようか。
この国から山を一つ越えた先にあるのが、リエンタール公国だ。
ロッテはこの国の第二公女。
「リエンタール公国は、あの地域の楔となっているのじゃ! わらわは楔の資格を持つ。じゃから、外国で色々勉強をしていたのじゃ。じゃが、リエンタール公国で反乱が起こった! 国を手にするために姉上が、外国の勢力を引き入れたのじゃ! わらわは国に戻らねばならんのじゃ!」
「それは大変だ! 護衛しなくちゃ!!」
「エリカ、話があまりにも早いぞ……!」
凄い勢いで先走るエリカを止める俺。
俺の行動に指針を与えてくれるエリカだが、所々でストッパーをしておかないと、暴走していくのだ。
「だが、ドルマ。ロッテ公女は護衛がいなくなってしまった。ここは私たちが行くべきだろう」
「おう、それには同意だ。だが、問題は先立つものでな」
ロッテ公女がきょとんとする。
「……は? お、お、お前たち、わらわを護衛するというのか? いきなり出会ったばかりのわらわの話を信用して、それで護衛するじゃと? 嘘だったらどうするのじゃ。このような話、すぐに信じてしまうようでは騙されてしまうことも多いのではないか」
「うーん、なんていうか、本当のにおいがする!」
エリカが断言した。
彼女は何も考えずに猪突猛進するが、その判断が間違いだったことはない。
「そんな……勘で動くようなものではないのか! そんなので、わらわの味方につくのか? わらわとて、会ったばかりの者たちを信用など……」
そこで、俺が竜騎士と戦っていたのを思い出したらしい。
「良いか? わらわを護衛するということは、あの男のようなバケモノを次々に相手することになるということじゃ。命が幾つあっても足りんぞ……! 外国から来た、怪しげな技を使う、人とも魔ともつかぬ連中じゃぞ!」
「皇女殿下、安心してください。私はこれからどんどん強くなるし、ドルマはモンスターの技を覚えてどんどん強くなります! つまり、私たちは強いので!」
「エリカの言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい自信だということだけは伝わったな」
ポカンとしたロッテ公女の顔を見て判断する。
「で、公女。報酬の方を……」
「お、おお、そうじゃ! 馬車の中に金はある! わらわの旅費と、それに貯金じゃ。これをくれてやる!」
「ありがたい! 鍋がダメになってどうしようかと考えてたんだ……」
俺とエリカは軍資金を受け取った。
これで、さっさと装備を固めてしまうことにする。
エリカは革鎧に金属片を編み込んだスケイルアーマー。
俺は要所要所だけを金属で補強したレザーアーマーだ。
「凄い……本物の鎧だ!」
「ああ、鎧を着てしまった。これは凄いことだな!」
エリカとともに大はしゃぎする俺。
この装備なら、ゴブリン砦だってやれそうな気がする。
それはエリカも同じ考えだったようだ。
「公女殿下、ちょっとだけいいですか!」
「なんじゃ?」
「ちょっとゴブリン砦に寄って行こうかなって。そっちの仕事が先約だったので」
「な、なんじゃとーっ!?」
目を見開くロッテ公女なのだった。
気持ちは分かる。
「ロッテ公女、相手はきっと、俺たちがすぐに公国に向かってくると思ってるはずだ。だけど、そこであえて寄り道してから行く……! 相手のタイミングをずらすんだ。これは高度な作戦なんだ」
「そ、そうなのか!?」
ロッテ公女が混乱しているな。
俺が今回、ゴブリン砦襲撃に前向きなのは、勝算があるからだ。
まず、ジャンプ。
これで一気に砦まで行って奇襲できる。
それから、エリカに戦闘経験を積んでもらう。
ゴブリンの耳を集めれば、旅費やら何やら、必要なお金の足しにすることだってできるだろう。
いいことばかりだ。
「時に公女、何かできたりしますかね」
「わらわか? わらわは白魔道士としての才能を持っている。じゃから、怪我や毒などを治すことができるのじゃ。……ふむ、追手の目をくらませる意味ではありじゃな。わらわをしっかり護衛できるか? やれるなら、付き合ってやらんでもないのじゃ。なにせ、このまま一人だと、わらわは絶対に死ぬからの……!」
「よーし、ではみんなが得することがわかったな! それでは行こう、ゴブリン砦へ!」
そう言う事になった。
エリカの言う大義的なものも大事だが、大義をこなすためには実力をつけなきゃだし、それに冒険は楽しくやっていかねばならない。
こうして俺たちは、その足でゴブリン砦へと向かったのである。
公国に行くのとは全く違う道。
「……全然襲撃がなかったのじゃ!!」
「普通に考えて絶対行く必要がないルートだもんなあ。やるべきことがあるのに、無用な危険に突っ込むとかありえない」
「それが私たちならありえるかもなのだ! ドルマの発想力は凄いな!」
「エリカの決断力あってこそだよ。はっはっは」
二人でハイタッチしていたら、それをじーっとロッテが見ている。
「……二人はあれか? 恋人同士なのじゃ?」
「なん……だと……?」
「ち、違うぞ!」
硬直する俺と、むきになって否定するエリカなのだった。
ロッテ公女が、ははーんという顔になって笑った。
まあ、目下絶賛その命を狙われている公女に笑ってもらえたのでよしとしようか。
1
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる
まひる
ファンタジー
如月刀利は、生まれも育ちも山奥の農村。そして高校二年生の彼の学校はバスで一時間以上。
ある日の学校帰り、バス停に向かっていた刀利は村で唯一──とまではいかないけど、数個しかない貴重な交差点に侵入する白いイタチを見かける。そこへ迫る大型トラック。トラックの運転手はナビ画面でも見ているのか、小さなイタチには気付かない。刀利は家でフェレットを飼っている為、その手の生物が目の前で死ぬ姿を見たくなかった。そして、無謀にも車道へ飛び出す。響き渡るブレーキ音。宙を舞う鞄。
気付くと真っ白な空間に浮いていた刀利。
創造神と出会い、刀利が助けたイタチは神の使い魔である事を知る。助けてくれた御礼を刀利にしたいと言い出すが、彼は既に死亡した事になっていた。ちなみに神の前で目覚めるまでに一ヶ月以上経過。刀利が途方にくれるも、異世界でならその姿で再構築可能だという。見ず知らずの世界にただ独り存在を許されてもと、刀利は更に絶望感にうちひしがれた。そこで前世の創造神の使い魔であった白いイタチは、助けれくれた感謝にと刀利と共に異世界へ来てくれると言う。そして一人と一匹の異世界転生となった。
その世界は精霊が崇め奉られる世界。精霊に好かれた者だけが人権を得る。魔法も精霊の契約者とならなければ使えず、途中でも精霊に嫌われれば全てを失う。
そんな世界で、創造神の加護で『自然に好かれる』というスキルを与えられたトーリは、ウハウハなハッピーライフを送る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる