「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
4 / 83
第一章

第4話 来ました、ラーニング!

しおりを挟む
「やって来ました、近所の村。まさか徒歩二時間で来れるとはなあ」

「近くて良かったな!」

 俺とエリカで並んで、村の姿を眺める。

「時にエリカ、それがフル装備……?」

「? そうだぞ?」

 革の袖なしベスト、そして短剣。
 他は普段着のまま。

「騎士……?」

「心は騎士だ!」

「なるほど、心は目に見えないからね!」

「そうだ! ドルマはいいことを言うなあ。私が欲しいセリフを言ってくれる!」

 エリカが微笑んで、俺の肩をつんつんした後で真顔になった。

「そういうドルマこそ、普段着じゃないか」

「鎧なんて高価なもの買えないからな……」

「武器はその棒?」

「かなりいい感じの棒を拾ったんだ」

「そうか! ドルマにはよく似合ってるぞ!」

「誉めてるのかdisってるのかかなり微妙なところが来たな」

 でもエリカは表裏がない性格だ。
 これは誉めてるんだろうな。
 そういうことで、村に入っていった。

「こんちはー。冒険者でーす」

「おー、よく来た! よく来てくれた!」

 ドタバタと現れたのは、老夫婦だった。
 彼らは俺たちの前に現れると、露骨にキョロキョロし始めた。

「おんやー? 冒険者の姿が見えねえが……」

「普段着の兄ちゃんと姉ちゃんしかいないねえ」

「その普段着である兄ちゃんと姉ちゃんが冒険者だぞ」

 現実逃避しているらしき老夫婦に、俺は現実を伝えてやった。

「そんな……。もっとちゃんとした冒険者が来ると思ってたのに……」

「ナイフと棒切れぶら下げた二人組しか来ないなんて」

 そんなにガックリしないで欲しい。
 依頼内容があまりにも曖昧で、どうやら他の冒険者達に避けられていたようなのだ。
 お陰で俺たちが引き受けられた。

「仕方ない……じゃあ、頼むとするかのう……」

 じいさんが渋々、俺たちを案内してくれた。
 だが、ネガティブな対応には慣れっこの俺たち。
 全く気にしないのだ。

「ところでおじいさん、その抱えている瓶は一体?」

「これか? これはわし秘蔵の梅酒じゃ! 長い間かけて育てて、ようやく飲めるようになったんじゃ! そう思った矢先に、井戸がよく分からんモンスターに占領されてしまった……」

「よく分からないモンスターだって!? どういうモンスターなんだ!」

 これに対して、おばあさんが首をひねる。

「さあねえ……? 私ら、村の外にはあまり出ないから。だけど気がついたら、いつの間にか井戸にいたんだよ。近づくと飛び出してきて暴れるし、その時に井戸水をこんな、渦巻きにして飛ばしてくるんだよ。これをご覧」

 おばあさんが指さした先には、家々に刻まれた傷跡がある。
 あれが井戸水によってつけられた傷跡……?

「これは大変そうな気配がしないだろうか」

「楽な仕事なんかない! どんなことでも全力で挑むだけだ!」

「それは確かに。エリカはいい事を言うなあ。それで、怪我人とか死者とか出てるの?」

「この村は年寄りばっかりじゃからな……。モンスターが出てきた瞬間にみんな腰を抜かしたんで、渦潮みたいなのが頭の上を通過していったわ……」

「お陰で怪我人はいないんだけどねえ……。腰を痛めちまって……あいたたた」

 色々情報は集まった気がする。
 エリカを呼んで、まとめることにした。

「まず、井戸にいるモンスターは近づくと攻撃してくる」

「慎重だな、ドルマ……!」

「俺、普段着だから当たると死ぬもんな」

「そうか! ……ということは、私も当たると死ぬ?」

「死ぬだろうな」

「慎重に行こう!」

「物わかりがいいなあ。で、こう、しゃがむとモンスターの攻撃は当たらなくなる。だけど、俺たちもしゃがんでいると戦えない。これはどうにかして、戦える状況に持ち込まないといけないわけだ」

「ふむ……。どうすればいいの?」

「情報を集めよう。怪我人がいないらしいから、誰か立ったままでモンスターの攻撃を凌いだ人がいるはずだ」

 くだんの井戸を遠巻きに眺めながら、周囲の家々を訪ねてみることにした。
 どの家でも、俺たちが冒険者だと名乗ると驚かれた。

「そんな軽装で……。仕事を舐めてるのかい!?」

「防具を買うお金が……」

「あっ……。苦労してるんだねえ……。これ、食べていくかい? うちの昼ごはんだけど」

 近所の家の奥さんに同情され、昼食をもらえることになった。
 そこで、俺の目は見逃さなかった。

「奥さん、これ、鍋に傷が入ってるけど」

「ああ、これねえ! 実はご飯を作りすぎたから、おすそ分けに向かう途中で、井戸のモンスターの縄張りに入っちゃったらしくて……」

 井戸水の攻撃が飛んできたのだそうだ。
 だが、それは鍋にあたって弾かれた。

「エリカ、これは……」

「ああ! 防具が見つかってしまったな!」

「奥さん、鍋を貸してくれ!」

「えっ!? な、鍋を!?」

 鍋の中身は美味しくいただいた。
 そして、これを洗って乾かして、紐で体に縛り付ける。

「よし!」

「よし!」

 エリカと互いを指差し確認し合う。

「よし、それじゃあ行くぞドルマ! ついて来い!」

「あっ、危ない危ない!」

 迷いなく井戸に駆け出すエリカを慌てて引き止める。
 その勢いで、一歩前に出た俺。

 そこがちょうど、井戸に潜んだモンスターの縄張りだったようだ。

 井戸の中から溢れ出す、真っ青なモンスター。
 そいつは竜巻みたいに回転しながら盛り上がり、青い顔に真っ赤な口でニヤリと笑ってみせた。

 一瞬の間も無く、繰り出されるのは渦巻く井戸水。
 刃になるほど高密度に圧縮されたそいつが、回転しながら俺へと炸裂した。

 鍋でちょうど弾けた!
 これ、鍋がなければ体が真っ二つだったねえ!

『ラーニング!!』

「は!?」

 俺の脳内に響き渡る言葉。
 以前、俺の視界に見えていた文字が、再び出現する。

名前:ドルマ・アオーマーホウ
職業:すっぴん
所有能力:
・バッドステータスブレス
・渦潮カッター NEW!

 の……能力が、増えてるーっ!?



 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

ディープラーニングから始まる青魔道士の快進撃

平尾正和/ほーち
ファンタジー
魔物からの攻撃を受けて〈ラーニング〉することでのみ成長できる希少ジョブ【青魔道士】のラークは、実力不足を理由に自らパーティーを離脱した。 元メンバーの栄達を祈りつつ、ラーク自身はジョブチェンジができるレアアイテム『ジョブペディア』獲得を目指してダンジョンにこもる。 長く苦しい戦いの末ジョブペディアを手に入れたラークは、ジョブチェンジ自体には失敗したものの〈ディープラーニング〉という新たなスキルを得た。 学んだことから、新たな学びを得る。 そんな効果のある〈ディープラーニング〉を得たラークは飛躍的に強くなり、ここから彼の快進撃がはじまるのだった。 不遇職が覚醒して活躍する王道の物語です。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...