「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
2 / 83
第一章

第2話 こんにちは、理解のある女騎士(自称)です

しおりを挟む
「はぁ~」

 失意のどん底に落ちた俺。
 どうにかヒッチハイクしながら拠点の街に戻ってはこれた。
 だが、パーティから追放されて一人。

 ここは商業都市ポータル。
 俺はぽつんと冒険者の店のカウンター席に腰掛けていた。

 既に、冒険者の店には俺の噂が広がっている。

「ドルマはくさい息を吐くぞ」

「あいつといると飯が不味くなるのではないか」

「男として息が臭いとかサイッテーよね」

「近づくなよドルマ」

「えんがちょ」

 誰も!
 そう、誰も、俺とパーティを組んでくれるような者はいなくなってしまったのである!

 俺は孤独だった。
 おかしい、村から仲間たちとともに、希望をいだいて飛び出してきたはずだったのに。
 気がつけば、村と同じくさい息と呼ばれて誰も近づいてこない状況に。

 あの場を生きて切り抜けるためには、あれしか無かった。
 未だ、冒険者としては職業:すっぴんである俺ができる唯一にして最強の手段だった。
 俺はどうすれば良かったというのだ……!

「くっ、マスター、もう一杯! ……一番安いエールをくれ」

「一杯飲むのに時間かけたね……。お金無いんでしょ」

 マスターは鼻にハンカチを当てながら、そーっとエールを出してきた。
 マスターまで俺のくさい息を警戒して!?

「確かに、このエールで俺は一文無しになる……。だが仲間もいない俺は、ろくな仕事も受けることができない……。マスター、パーティメンバーをどうにかして集められないかな……」

「いや無理……む、難しいんじゃないかな」

「無理って言ったよね。それにそのハンカチ……!」

「ギクギクッ!」

 ギクッ、じゃないよ!

「はあ……。やっぱりダメかあ……」

 ため息をつきつつ、今夜の宿代も無くなった俺は、これからどうしようかなんて考える。
 例え金があったとしても、宿は最低二人から。
 一部屋ぶんの金を払うだけでも大出費なのだ。

 世の中は独り者に厳しいのだ。

 だが!

「ねえ、君!! 一人なのか?」

 俺に声を掛けてくる者がいた。
 茶色い髪に緑の瞳をした少女だ。

「うっ!! み、見ての通りだよ……!! 一人だよ……!!」

「そう!? そうなの!? やった! まだフリーの人がいたんだ……!!」

 彼女は俺の隣まで移動してきて、腰を下ろした。
 ガッツポーズまでしている。
 
 その時、俺は気づいた。
 彼女は、カウンターの主だ。
 というのも、彼女は自称、世界一の騎士の孫娘であり、自分は騎士としての才能があるから自分をリーダーとした正義のためのパーティを求める!と店中に宣言したことがあるのだ。

「ただの冒険者はいりません! 正義の志を持った戦士! 黄金の指先を持つ盗賊! 才能に満ちた大魔道士はここに来なさい!」

 当然来なかった。
 彼女の腕前は全く分からない。
 強いのかもしれないし弱いのかもしれない。

  冒険者は無駄なリスクは取らないところがあるので、こういう訳のわからない娘はパーティに入れないのだ。
 パーティの人数分、食費も宿代もかかるしな。

 それに、彼女はリーダーでなければやらないと言った。
 実力も素性も分からない娘にリーダーをやらせるバカはいない。

 ということで、この娘はずっと一人で、カウンターの主になっていた。
 エッチなことを企む冒険者が彼女を仲間に引き入れようとしたが、そこはマスターがさりげなく断ったようだ。
 男前だなあマスター。

「カウンターの主よ。俺が何者か知って誘ってるの?」

 ここで断られたら再起不能なダメージを負うので、俺は牽制のジャブを放ってみる。

「カウンターの主とはご挨拶だね。私にはちゃんと名前があるぞ! エリカだ! エリカ・フォンテイン! かの大騎士フォンテインの孫なんだぞ!」

「えっ、本当か!? ……いやいや、フォンテインは大遠征の末に行方不明になっただろ? だから世の中にはフォンテインを名乗る奴がたくさんいるし。信じられないなあー」

 大騎士フォンテインの物語。
 それは田舎暮らしだった俺も知っているほどの、英雄伝説だ。

 地の底に潜んだ魔人との対決、ゴブリン砦の決闘、姫君を守っての旅、飛竜狩り、そして最後は、風車の魔王と戦うために旅立ち、戻っては来なかった。
 彼女がフォンテインの孫を名乗ったなら、それは誰も信用してくれないだろうとは思う。

 だが彼女は、真っ直ぐな目で俺を見るのだ。

「私の血を信じなくても構わないぞ! 私を信じろ!」

 言葉の意味はよく分からないが、とにかく凄い自信だ……!

「エリカ、あんたの何を信じろと? っていうか、俺を知ってるかどうかって話はどうなったの?」

 俺はヤケになっているので、安酒をあおりながら、据わった目で彼女をにらんだ。

「俺はくさい息のドルマ。バッドステータスブレスでモンスターと仲間を一度に攻撃する男だぞ」

 ああ、ついに言ってしまった。
 くさい息を恐れぬ者はいない。
 なぜならくさいからだ。

 だが……。
 彼女が俺に向ける目の輝きは、少しも薄れることは無かったのである。

「ああ、知ってる! 君は仲間を助けようとしてくさい息を使ったんだろう? そしてレッドキャップは倒された! まさに、英雄的行為だ! 君は普通の冒険者じゃない!」

 ……おや?

「すごい能力じゃないか……!! 未来の大騎士の仲間にふさわしいよ!」

 エリカは目をきらきらと輝かせた。
 よくよく見ると、彼女はかなりカワイイ。
 こんなにカワイイのに、大騎士になるとか言ってカウンターで一日中来るはずのない仲間を待ってるのか。

 ちょっと可愛そうになってきた。

「だけどさ、エリカ。どんなに凄い能力でも、仲間を巻き込むほどくさい息だったら意味がないんじゃないか?」

 でも、まだ気弱な俺なのだ。
 そんな俺の守りに入った心に、彼女はズドンと入り込んできた。

「いや、意味はある!!」

 エリカはカウンターをドン!と叩いた。

「なんだと……!?」

「私は、騎士だ!!」

「なんだと……!?」

「騎士は、強い!!」

「なんだと……!?」

「強いから、くさい息もがまんできる!!」

「なん……だと……!?」

 俺は息を呑んだ。

「本当か!?」

「騎士に二言はない!!」
「そう言って臭がったりしないか!?」

「うるさい! 行こう!」

 ドン!!

 その瞬間、俺のどんより濁っていた視界が、一気に晴れ渡った。
 世界が輝きに満ちて見える。
 中心で俺に手を差し伸べているのは、エリカだ。

「ああ、行こう!!」

 そういうことになった。
 こうして俺に、真の仲間ができたのである……!!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

ディープラーニングから始まる青魔道士の快進撃

平尾正和/ほーち
ファンタジー
魔物からの攻撃を受けて〈ラーニング〉することでのみ成長できる希少ジョブ【青魔道士】のラークは、実力不足を理由に自らパーティーを離脱した。 元メンバーの栄達を祈りつつ、ラーク自身はジョブチェンジができるレアアイテム『ジョブペディア』獲得を目指してダンジョンにこもる。 長く苦しい戦いの末ジョブペディアを手に入れたラークは、ジョブチェンジ自体には失敗したものの〈ディープラーニング〉という新たなスキルを得た。 学んだことから、新たな学びを得る。 そんな効果のある〈ディープラーニング〉を得たラークは飛躍的に強くなり、ここから彼の快進撃がはじまるのだった。 不遇職が覚醒して活躍する王道の物語です。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...