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7・魔王が来たりて編
第72話 戻ってきたエムズ王国
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幾つもの国を越えた。
ある国では干ばつで悩んでいたので、氷と炎の魔剣のあわせ技を使った。
偽物魔剣でも、猛烈な水蒸気が飛び出してきて、それが雲を呼ぶ力を持っていたらしい。
雨が降り出したりして、俺は大いに感謝された。
「なんでこうなったんだろうなあ」
「なんかこうなるって思ったんだよね」
ミスティの助言だったわけだ。
エグゾシー曰く、
『土地の魔力バランスが崩れておったのじゃな。それをウーサーが直したんじゃ。わしも気付かなかったのに、よく察したな? これが運命の能力というやつか』
なるほど、やっぱりミスティは凄い。
そしてそう言う能力を持っていると知られるのは危険だなあ。
次には、逆に洪水や浸水で困っている国に来た。
ここでは氷の魔剣で水を凍らせることになった。
何故かグラムが来てくれたので、全ての水が凍りついた。
これをみんなで掘って、海に捨てることになる。
その間に、干拓作業ができるようになった。
「次々にアクシデントに見舞われた土地に到着するぞ……」
「なんかこっちに行ったほうがいいと思ったんだよね」
運命と宿命を引き寄せる力……!
それらを克服する能力さえあれば、ミスティの力は世界にとって良いものになる気がする。
俺は結構、そんな克服能力を得てきたのではないか。
『寄り道が多くて、なかなか進みませんねえ。魔王星がどんどん大きくなってきています。いつ降ってくるんでしょうねえ』
ニトリアが空を見上げて、怖い怖いと呟く。
まったくだ。
俺も魔王に備えたいけど、一体どうすればいいのかさっぱり分からない。
どうしたもんだろう。
こうして、幾つもの国々を巡り、それぞれの国が色々な問題で困っていたのを解決し、俺たちはどんどんと進んだ。
船は昼は風の魔剣の力で進み、夜はアンデッドな船員たちの力で進む。
国を巡るたびに、船員の髪の毛とか爪の先をもらい、これをエグゾシーがアンデッド化して労働力にするのだ。
『基本、朝日に当たると崩れて消えてしまうからのう。昼間は船底でじっとしていてもらい、夜になったら外で働かせるのじゃ。しかし船の仕事はどうしても、きりがいいところで終わらせるわけにもいかん。ちょくちょく朝日を浴びて消滅するアンデッドがおるから、こうして都度ごとに補充せねばならん』
「大変だ……!」
後は、あら事がありそうな時はニトリアが解決する。
単身で相手の船に乗り込み、無力化して戻ってくる。
俺たちは構っている暇などないから、そのまま通過するだけだ。
相手は呆然としながらそんな俺たちを見送る。
「毎日、色々なことが起きるからもう頭が大混乱だ! なんか最近、一日が濃いなあ……」
俺は舳先に立ってそんな事を呟いた。
いつまでこの生活は続くだろう?
確か今、船はエムズ王国側に向かっているはずだよな?
「あれっ、ウーサー。この瓦礫の山、ちょっと見たことがあるかも」
いきなりミスティがそんな事を言った。
瓦礫の山?
ちょっと遠くに見えるのは、広大な平原。
そこにうず高く積み上がる、瓦礫の山がある。
近づくとよくわかったのだが、これは城壁だ。
城壁が破壊されて、雑多に積まれている。
もちろん、城壁の奥にある町も原型をとどめていない。
完膚なきまでに破壊されている。
これはひどい。
そして瓦礫の周辺に、たくさんの人々がいた。
みんな適当な布を貼って雨露をしのぎ、ここで生活しているようだ。
「まさかこれ……エムズ王国!?」
「みたい。とんでもないことになってるねえ……!」
俺とミスティは、かつて知った王国の変わり果てた姿に驚愕した。
慌てて船を岸につける。
『ここからは歩きじゃろう。船を消して構わんぞ』
「分かった! 両替!」
船を魔法の針に戻す。
これを見ていた現地の人たちが、目を丸くした。
「ふ……船が来たと思ったら、消えた!」
「なんだ!? 何が起きてるんだ!?」
「怪物が現れて国を滅ぼしてしまったと思ったら、今度は消える船……! 世界はどうなってしまうんだ!」
わいわい騒いでいる。
その中に、見知った顔を発見したので、俺は駆け寄った。
「おーい! おーい! 俺だよ、俺!」
騒いでいるうちの一人が、俺に気付いて飛び上がって驚く。
「えっ!? ウーサーかい!? あんた、ウーサーなのかい!?」
パン屋のおばちゃんだ。
この人のところで、黒パンを買ってた日々が懐かしいなあ……。
もうどれくらい前のことだろう。
おばちゃんの知り合いということで、周囲の人々もホッとしたようだ。
船が消えたのは一大事だが、それでも見知らぬ誰かではないというのは安心できるらしい。
「俺だよ、俺」
「ウーサーがなんかオレオレ言ってる」
なんでミスティそんなことを気にするんだ?
まあいいや。
詳しい事情を聞いてみることにする。
「国は戦争が続いて、随分大変だったのさ。男たちは兵士として連れて行かれて、でも戦場ではエルトー商業国がのらりくらりと戦争をやり過ごしてね。人はあまり死なないけど、だらだらと続いていて、お陰で商品は入ってこないし働き手はいないし、大弱りだったんだよ」
そんなエムズ王国に、そいつはやって来たらしい。
星が欠けたのだ、と誰かが言った。
星からこぼれ落ちた破片は、エムズ王国へ向けて飛来した。
そいつは巨大な怪物の姿になった。
「空を覆い尽くすようなコウモリの翼を生やしててね……。バカでかい目が一つだけ……。目玉から炎やら氷やら光やらを放って、あっという間に国を滅ぼしてしまったのさ。今思い出しても恐ろしい……」
「ああ、間違いなく魔将だ。すっごいのが来たなあ……」
「ウーサーがこの間やっつけたやつの仲間でしょ?」
「だと思う」
俺とミスティが、やっつけたみたいな話をしているので、おばちゃんと周囲の人々が驚いた。
「えっ!? あの怪物を!? やっつける!?」
「ああ。俺、そういうのができるようになったみたいだ。その魔将、どこに行ったかわかる?」
俺が魔将を倒せるということを、みんな理解はできなかったようだった。
だけど、すがるような目をしながら、彼らは一斉に一箇所を指さした。
そこは瓦礫の奥。
かつて王宮があった場所だ。
エムズ王国の王宮、そう言えば見たこともなかったなあ……。
ある国では干ばつで悩んでいたので、氷と炎の魔剣のあわせ技を使った。
偽物魔剣でも、猛烈な水蒸気が飛び出してきて、それが雲を呼ぶ力を持っていたらしい。
雨が降り出したりして、俺は大いに感謝された。
「なんでこうなったんだろうなあ」
「なんかこうなるって思ったんだよね」
ミスティの助言だったわけだ。
エグゾシー曰く、
『土地の魔力バランスが崩れておったのじゃな。それをウーサーが直したんじゃ。わしも気付かなかったのに、よく察したな? これが運命の能力というやつか』
なるほど、やっぱりミスティは凄い。
そしてそう言う能力を持っていると知られるのは危険だなあ。
次には、逆に洪水や浸水で困っている国に来た。
ここでは氷の魔剣で水を凍らせることになった。
何故かグラムが来てくれたので、全ての水が凍りついた。
これをみんなで掘って、海に捨てることになる。
その間に、干拓作業ができるようになった。
「次々にアクシデントに見舞われた土地に到着するぞ……」
「なんかこっちに行ったほうがいいと思ったんだよね」
運命と宿命を引き寄せる力……!
それらを克服する能力さえあれば、ミスティの力は世界にとって良いものになる気がする。
俺は結構、そんな克服能力を得てきたのではないか。
『寄り道が多くて、なかなか進みませんねえ。魔王星がどんどん大きくなってきています。いつ降ってくるんでしょうねえ』
ニトリアが空を見上げて、怖い怖いと呟く。
まったくだ。
俺も魔王に備えたいけど、一体どうすればいいのかさっぱり分からない。
どうしたもんだろう。
こうして、幾つもの国々を巡り、それぞれの国が色々な問題で困っていたのを解決し、俺たちはどんどんと進んだ。
船は昼は風の魔剣の力で進み、夜はアンデッドな船員たちの力で進む。
国を巡るたびに、船員の髪の毛とか爪の先をもらい、これをエグゾシーがアンデッド化して労働力にするのだ。
『基本、朝日に当たると崩れて消えてしまうからのう。昼間は船底でじっとしていてもらい、夜になったら外で働かせるのじゃ。しかし船の仕事はどうしても、きりがいいところで終わらせるわけにもいかん。ちょくちょく朝日を浴びて消滅するアンデッドがおるから、こうして都度ごとに補充せねばならん』
「大変だ……!」
後は、あら事がありそうな時はニトリアが解決する。
単身で相手の船に乗り込み、無力化して戻ってくる。
俺たちは構っている暇などないから、そのまま通過するだけだ。
相手は呆然としながらそんな俺たちを見送る。
「毎日、色々なことが起きるからもう頭が大混乱だ! なんか最近、一日が濃いなあ……」
俺は舳先に立ってそんな事を呟いた。
いつまでこの生活は続くだろう?
確か今、船はエムズ王国側に向かっているはずだよな?
「あれっ、ウーサー。この瓦礫の山、ちょっと見たことがあるかも」
いきなりミスティがそんな事を言った。
瓦礫の山?
ちょっと遠くに見えるのは、広大な平原。
そこにうず高く積み上がる、瓦礫の山がある。
近づくとよくわかったのだが、これは城壁だ。
城壁が破壊されて、雑多に積まれている。
もちろん、城壁の奥にある町も原型をとどめていない。
完膚なきまでに破壊されている。
これはひどい。
そして瓦礫の周辺に、たくさんの人々がいた。
みんな適当な布を貼って雨露をしのぎ、ここで生活しているようだ。
「まさかこれ……エムズ王国!?」
「みたい。とんでもないことになってるねえ……!」
俺とミスティは、かつて知った王国の変わり果てた姿に驚愕した。
慌てて船を岸につける。
『ここからは歩きじゃろう。船を消して構わんぞ』
「分かった! 両替!」
船を魔法の針に戻す。
これを見ていた現地の人たちが、目を丸くした。
「ふ……船が来たと思ったら、消えた!」
「なんだ!? 何が起きてるんだ!?」
「怪物が現れて国を滅ぼしてしまったと思ったら、今度は消える船……! 世界はどうなってしまうんだ!」
わいわい騒いでいる。
その中に、見知った顔を発見したので、俺は駆け寄った。
「おーい! おーい! 俺だよ、俺!」
騒いでいるうちの一人が、俺に気付いて飛び上がって驚く。
「えっ!? ウーサーかい!? あんた、ウーサーなのかい!?」
パン屋のおばちゃんだ。
この人のところで、黒パンを買ってた日々が懐かしいなあ……。
もうどれくらい前のことだろう。
おばちゃんの知り合いということで、周囲の人々もホッとしたようだ。
船が消えたのは一大事だが、それでも見知らぬ誰かではないというのは安心できるらしい。
「俺だよ、俺」
「ウーサーがなんかオレオレ言ってる」
なんでミスティそんなことを気にするんだ?
まあいいや。
詳しい事情を聞いてみることにする。
「国は戦争が続いて、随分大変だったのさ。男たちは兵士として連れて行かれて、でも戦場ではエルトー商業国がのらりくらりと戦争をやり過ごしてね。人はあまり死なないけど、だらだらと続いていて、お陰で商品は入ってこないし働き手はいないし、大弱りだったんだよ」
そんなエムズ王国に、そいつはやって来たらしい。
星が欠けたのだ、と誰かが言った。
星からこぼれ落ちた破片は、エムズ王国へ向けて飛来した。
そいつは巨大な怪物の姿になった。
「空を覆い尽くすようなコウモリの翼を生やしててね……。バカでかい目が一つだけ……。目玉から炎やら氷やら光やらを放って、あっという間に国を滅ぼしてしまったのさ。今思い出しても恐ろしい……」
「ああ、間違いなく魔将だ。すっごいのが来たなあ……」
「ウーサーがこの間やっつけたやつの仲間でしょ?」
「だと思う」
俺とミスティが、やっつけたみたいな話をしているので、おばちゃんと周囲の人々が驚いた。
「えっ!? あの怪物を!? やっつける!?」
「ああ。俺、そういうのができるようになったみたいだ。その魔将、どこに行ったかわかる?」
俺が魔将を倒せるということを、みんな理解はできなかったようだった。
だけど、すがるような目をしながら、彼らは一斉に一箇所を指さした。
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