外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

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6・世界漫遊編

第64話 遊牧民の大地へ

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 バイキングたちとすっかり打ち解けて、数日滞在した。
 彼らの武器や防具も見せてもらったりした。
 バイキング王に連れられて、王宮の地下を案内してもらう。

「こいつが先祖伝来の伝説の武器でな」

「三叉槍! 漁に使うようなのなんですね」

「おう。海に暮らす民にとって、漁ってのは最も身近な戦闘経験だからな。全ての基本になるってわけだ。こいつはな、魔法帝国よりも遥かに昔、海神ルサルカを守っていた最強の戦士が使っていたという槍なんだ。俺たちはトリトンスピアと呼んでいる」

 トリトンスピア……!
 触らせてもらった。
 なんだか、伝説の武器って感じがする。

「まあ、本物はとっくの昔に失われてて、レプリカなんだけどな」

「あ、そうなんですか! 本物だったら幾らくらいするんだろう……」

「値段か! 面白いやつだな」

 バイキング王は笑った後、顎を撫でた。

「そうだな。白金貨にして百枚は下らねえだろうな」

「そんなに!?」

「伝説の武器なんてものは、そもそも値段をつけるもんじゃねえよ。ああ、このレプリカは金貨三枚くらいだ!」

 がっはっは、と笑うバイキング王なのだった。
 こうして、楽しく日々を過ごしてから出立することになる。

 魔王が迫ってきているというし、どれくらい猶予があるかは分からないが、いつまでものんびりしていられないからだ。

「また来いよ! 俺たちは強い戦士は大歓迎だ!」

「うす! 遊びに来ます!」

 ということで、バイキング王と握手を交わした。
 周囲のバイキングたちが、ワーッと盛り上がる。

 出航は、たくさんの人たちに見守られることになった。
 俺が両替するところを見せて欲しいという話だったので、魔法の針を一掴み取り出す。

「じゃあ、お世話になりました! 魔王との戦いで、また!」

「おう!」

 バイキングたちに手を振り、彼らも手を振り返す。
 俺はその後、魔法の針を宙に放り投げた。

「両替! 大型帆船!!」

 針が輝き、その形を変える。
 一瞬で、そこにはバイキングたちが持つ、最大の帆船と同サイズの船が存在していた。

 バイキングたちが、ポカーンとする。

『よし、わしの出番じゃな。ほれ、この袋に中に奴らの髪の毛が入っておるわ。現われよ、スケルトンどもよ!』

 エグゾシーが俺の肩の上で宣言する。
 すると、陽光の下だと言うのに、何体ものスケルトンが元気いっぱいに出現する。

 バイキングたちがウワーッと叫んだ。
 スケルトンはそんな声などお構いなしに、船にどんどん乗り込んでいく。

 彼らは元となったバイキングの能力を受け継いでいるようで、それぞれの持ち場についた。

「はえー、エグゾシーの能力便利だねえ……」

『彼、準備さえできれば頭数が必要な事に関しては万能ですから。伊達に十頭蛇の二を張ってないですからねえ』

 ミスティに応えるニトリアだが、エグゾシーの凄さをちゃんと認めているみたいだ。

 せっせと働くスケルトンたち。
 あっという間に出港準備が整った。

 船は港を出て、どんどんとバイキングの島を離れていく。

 小舟に乗ったバイキングたちが、沖まで見送ってくれた。
 彼ら、身内だと認めた者にはとことん優しくなるのだ。

「そりゃあ、ウーサーはあの人たちが頭を悩ませていた問題を、スパッと解決してくれたわけでしょ。恩を感じるよねー」

「そっか。言われてみれば……」

「あたしの世界の言葉で、情けは人の為ならずっていうのがあってね。誰かにしてあげたことって、回り回って自分に返ってくるんだってさ」

「そうなんだ。俺って今まで、みんなに助けてもらってばっかりだったから。誰かを助けてるんだーっていうの、実感が無いなあ」

「これからかけてもらった情けの分、世界に返していくんじゃない? そしたら今度はまた、みんながウーサーを助けに来てくれるよ!」

「そっか! そうなんだなあ! なんか、すごくいい考えだな、ミスティの国の言葉って!」

 俺はなんだか嬉しくなってしまった。
 後ろでニトリアが、『異世界のことわざを持ち出すなんて卑怯な……。わたくし、差をつけられてしまいます!』とか言っていた。

 船はどんどん進んでいく。
 エグゾシーには悪いけど、彼が作った骨の船よりも、随分乗り心地がいい。
 船室だって確保されているから、ゆっくり眠れるし。

 どんどんと船は北上した。
 世界は北上するほど暖かくなる。

 このあたりはもう、セブンセンスを超えたところだろうか。
 エルトー商業国よりも北かもしれないな。
 だとしたら、俺がまだ行ったことが無い辺りだ。

 ゆっくりと、船は陸地に近づきつつある。
 一面の砂浜が見えた。
 砂浜の向こうは、背の低い草がたくさん生えた草原だ。

 馬が駆けているのが見える。

『ピークワイの大草原じゃな。まだ見たことがないか? この大陸でも最も広大な草原じゃ。遊牧民たちが暮らしておるぞ』

 エグゾシーが説明してくれる。

「じゃあ、今度はここで遊牧民の人たちに接触するといいんだ?」

『そうなるな。だが、この草原では馬に乗れることが一人前の証だ。乗れるか?』

「乗れないなあ……」

「ぶるるー」

 最近出番のない、ロバのライズが鳴いた。
 ライズはロバだもんなー。

『このロバ、あなたがたについて回って、世界中を巡ってるんですね』

 なんかニトリアがライズを撫でながらしみじみしている。
 それもまた、言われてみればそうだなあ。

『なに、乗馬ならわしが教えてやろう。アンデッドホースを作ってな。初代マナビ王もアンデッドホースを駆って世界を走り回ったそうじゃぞ』

「そうなんだ!?」

 そのせいか、アンデッドホースに関しては、みんなあまり嫌悪感を抱かないらしい。
 よし、エグゾシーに手伝ってもらいながら、遊牧民のいる草原で乗馬を覚えよう!
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