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5・神々のから騒ぎ
第45話 神々の(下世話な)交渉
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「神様がお風呂覗くんですか」
『そりゃあ覗くだろ。おいらはな、ついこの数年の間にようやく再実体化できたんだ。前のおいらは悪いことを考えてな。セブンセンスを混乱のどん底に叩き込んで暗躍していたんだが、風呂に入ってるあの王女の先祖がやって来てな。夫婦揃っておいらをぶっ倒したんだ』
「そうなんですか」
「それ、オレも聞いたことあるな。闇に落ちた技巧神イサルデを、建国王マナビとその妻カオルンが討伐する物語」
『それそれ。いやー、あの頃のおいらは本当に退屈しててね。こういう小さな喜びを見出すことをさぼってたんだ。いかんね、こういうのは』
イサルデはウンウン頷きながら、俺たちを率いて茂みの中を進む。
不思議なことに、彼と全く同じルートを歩くと、茂みが全く音を立てないのだ。
「すげえ不思議だ……」
『そりゃあな。おいらは技巧神だぞ? 木々の間をすり抜けても、全く音も気配も感じさせない走り方ってのがやれるんだ。ついてこれるお前らもなかなか悪くはないな。うん』
偉そうだけど、どうやら本物の神様だ。
そしてその神様が覗きを……?
「ミスティの裸を誰かに見られるのはなんだか嫌だなって思ってきたぞ」
『けちけちすんな。それにお前の後ろの大男もついてきてるじゃないか』
「そう言えば……」
「気、気にするな」
「ゴウももしやミスティを……!?」
「いや、俺はそういうのではない」
ミスティではない?
だとしたら……?
『野暮な事を詮索すんなよ! 行くぜ行くぜ』
なんだか押し切られてしまった。
イサルデがここだ、と言う木々の合間から、そっと覗く。
うわーっ、見える!
思った以上に近い距離で見える。
騎士アンナは、鍛え抜かれた長身を惜しげもなく晒しながら湯船に足をつけている。
横には剣を置いていて、警護するという心構えのままなんだな。
でも、全然俺たちに気付いてない。
『まあ、神殿騎士なんかそんなもんだろ。節穴でもあいつが悪いわけじゃない。いやあ、眼福眼福』
イサルデが満足そうだ。
彼のささやき声は、大浴場周辺に満ちる葉の擦れる音や、鳥たちの囀りに紛れてしまっている。
「なるほど、鍛え抜かれたいい体だ」
ゴウは冷静である。
俺はなんか、ムズムズしてきていてもたってもいられない気分なのに。
次に、騒がしい二人がやって来る。
「姫が先に入ろうと思ったら、アンナが先にいるんだけど! 不敬じゃない!? アンナじゃなかったら処してるとこだわ!」
プリプリ怒るシェリィ王女。
ふむ、あんまり凹凸のない体……。まだまだ子どもだな……。
「むっ!!」
ゴウが唸って前かがみになった。
えっ!?
ま、まさか王女様目当て!?
エルトー商業国にいたとき、全然浮いた話が無かったらしいけど、それってつまり……!
ちなみに王女様は、背中に小さな翼があった。
これが光を発して、あのピンク色の輝く羽を作り出すんだな。
「走らない走らない! 転んじゃうっしょ!」
「姫はころばないに決まってるじゃない! その辺のザコと違うんだから! あんたは転びそうね! へん、ザーコ! あっ! あひー!」
あっ、王女が滑って転んだ。
尻を打って泣きそうになってる。
やって来たミスティが、王女を助け起こしてよしよしした。
「ほらぁー。気をつけなきゃ。お尻赤くなってるし……」
うおお、ミスティの白い肌! お尻がこっちを向いてる! 思ってたより大きい!
俺は頭に血が上って、何も考えられなくなった。
イサルデは、俺とゴウを見てうんうん頷いている。
『若いってのはホント、いいもんだなあ! よし、じゃあおいら、今夜はアンナちゃんをいただいちゃおうかな』
なんかとんでもない事を言っている気がする。
結局そのまま気付かれることもなく、三人が上がるまで俺たちはそこにいた。
彼女たちが立ち去ってしばらく、俺もゴウも上手く立ち上がれない状態だった。
『はっはっは、未熟だなあ人の子たちよ! おいらほどの技巧神になると、興奮していてもいつものように走れるぞ! 見ろ、こうだ!』
イサルデはスタタタタッと茂みの中を走って見せて、狭い隙間を通り抜け……。
『いってー!!』
どこかが引っかかったらしい。
俺たちが赤い顔をして戻ってきたら、真っ先に王女様がいた。
「なんであんたたちも赤い顔してんの!? あ、別にお風呂入ってきたのね。ふーん、姫たちが大きいお風呂使ったから、狭ーいところに入ったんでしょー。かーわいそー」
上から目線で小馬鹿にするような目つきと口調。
なるほど、これで森王国の男たちはイラッとしたりしたんだろうなあ。
だけど、あの可愛い姿を覗き見た後では、この仕草も可愛く思えてくる。
もうしばらくしたら、ゆったりしたローブを纏い、頭に布を巻いたミスティとアンナがやって来た。
「あー、護衛なのにお風呂をいただいてリラックスしちゃいました……。真面目な顔してましたけど、何も分からなかったですね……」
リラックスしてたら、それはそう。
「お待たせウーサー。次入ってー。……ん? んんー?」
ミスティが近づいてくる。
お風呂に香りのする花が浮かべてあったらしく、凄くいい匂いがする。
ローブの間から、彼女の谷間が見えた。
う、う、うわー!
立ち上がれなくなった!
「……覗いたでしょ」
「えっ!?」
ミスティがニヤニヤする。
俺の隣に座り、耳元で囁いてきた。
「別にいいんだけどなー。でも、元気になっちゃうのは嬉しいかも? いつ頃お風呂に行けるようになるかなー?」
「く、くうー。ミスティには勝てねえー」
しみじみ思う俺なのだった。
ちなみに、技巧神イサルデは当たり前みたいな顔して俺たちの部屋に入ってきて、アンナが「ええーっ!? 技巧神様!?」なんて叫んでいた。
イサルデはアンナに、稽古をつけてやるとかそういう話をした後で、ゴウのところにトコトコやって来る。
「ちょっとアクシス……お前のとこではバルガイヤーか。繋いでくれ。何、繋ぎ方を知らない? 祈れ祈れ! 信者はいつでも神様と繋がってんだよ!」
ゴウが祈る。
するとイサルデが、ゴウの頭上を見た。
「よう至高神。あのな、お前の信者の女騎士な。おう、そう。いい? え? 代わりに? おうおう。本気で稽古つけてやるから。おいらの技巧の一つを教える。セブンセンス最強の騎士の一人になるぞ」
なんか神様同志でやり合ってる。
これ、凄い場面なんじゃないか。
「ねえウーサー、あのおサルみたいな人誰?」
「ああ、なんか神様。技巧神イサルデって言うんだってさ」
「ふーん……。尻尾がピコピコしてる」
触りたそうなミスティなのだった。
あれ、曲がりなりにも神様だからな。
『そりゃあ覗くだろ。おいらはな、ついこの数年の間にようやく再実体化できたんだ。前のおいらは悪いことを考えてな。セブンセンスを混乱のどん底に叩き込んで暗躍していたんだが、風呂に入ってるあの王女の先祖がやって来てな。夫婦揃っておいらをぶっ倒したんだ』
「そうなんですか」
「それ、オレも聞いたことあるな。闇に落ちた技巧神イサルデを、建国王マナビとその妻カオルンが討伐する物語」
『それそれ。いやー、あの頃のおいらは本当に退屈しててね。こういう小さな喜びを見出すことをさぼってたんだ。いかんね、こういうのは』
イサルデはウンウン頷きながら、俺たちを率いて茂みの中を進む。
不思議なことに、彼と全く同じルートを歩くと、茂みが全く音を立てないのだ。
「すげえ不思議だ……」
『そりゃあな。おいらは技巧神だぞ? 木々の間をすり抜けても、全く音も気配も感じさせない走り方ってのがやれるんだ。ついてこれるお前らもなかなか悪くはないな。うん』
偉そうだけど、どうやら本物の神様だ。
そしてその神様が覗きを……?
「ミスティの裸を誰かに見られるのはなんだか嫌だなって思ってきたぞ」
『けちけちすんな。それにお前の後ろの大男もついてきてるじゃないか』
「そう言えば……」
「気、気にするな」
「ゴウももしやミスティを……!?」
「いや、俺はそういうのではない」
ミスティではない?
だとしたら……?
『野暮な事を詮索すんなよ! 行くぜ行くぜ』
なんだか押し切られてしまった。
イサルデがここだ、と言う木々の合間から、そっと覗く。
うわーっ、見える!
思った以上に近い距離で見える。
騎士アンナは、鍛え抜かれた長身を惜しげもなく晒しながら湯船に足をつけている。
横には剣を置いていて、警護するという心構えのままなんだな。
でも、全然俺たちに気付いてない。
『まあ、神殿騎士なんかそんなもんだろ。節穴でもあいつが悪いわけじゃない。いやあ、眼福眼福』
イサルデが満足そうだ。
彼のささやき声は、大浴場周辺に満ちる葉の擦れる音や、鳥たちの囀りに紛れてしまっている。
「なるほど、鍛え抜かれたいい体だ」
ゴウは冷静である。
俺はなんか、ムズムズしてきていてもたってもいられない気分なのに。
次に、騒がしい二人がやって来る。
「姫が先に入ろうと思ったら、アンナが先にいるんだけど! 不敬じゃない!? アンナじゃなかったら処してるとこだわ!」
プリプリ怒るシェリィ王女。
ふむ、あんまり凹凸のない体……。まだまだ子どもだな……。
「むっ!!」
ゴウが唸って前かがみになった。
えっ!?
ま、まさか王女様目当て!?
エルトー商業国にいたとき、全然浮いた話が無かったらしいけど、それってつまり……!
ちなみに王女様は、背中に小さな翼があった。
これが光を発して、あのピンク色の輝く羽を作り出すんだな。
「走らない走らない! 転んじゃうっしょ!」
「姫はころばないに決まってるじゃない! その辺のザコと違うんだから! あんたは転びそうね! へん、ザーコ! あっ! あひー!」
あっ、王女が滑って転んだ。
尻を打って泣きそうになってる。
やって来たミスティが、王女を助け起こしてよしよしした。
「ほらぁー。気をつけなきゃ。お尻赤くなってるし……」
うおお、ミスティの白い肌! お尻がこっちを向いてる! 思ってたより大きい!
俺は頭に血が上って、何も考えられなくなった。
イサルデは、俺とゴウを見てうんうん頷いている。
『若いってのはホント、いいもんだなあ! よし、じゃあおいら、今夜はアンナちゃんをいただいちゃおうかな』
なんかとんでもない事を言っている気がする。
結局そのまま気付かれることもなく、三人が上がるまで俺たちはそこにいた。
彼女たちが立ち去ってしばらく、俺もゴウも上手く立ち上がれない状態だった。
『はっはっは、未熟だなあ人の子たちよ! おいらほどの技巧神になると、興奮していてもいつものように走れるぞ! 見ろ、こうだ!』
イサルデはスタタタタッと茂みの中を走って見せて、狭い隙間を通り抜け……。
『いってー!!』
どこかが引っかかったらしい。
俺たちが赤い顔をして戻ってきたら、真っ先に王女様がいた。
「なんであんたたちも赤い顔してんの!? あ、別にお風呂入ってきたのね。ふーん、姫たちが大きいお風呂使ったから、狭ーいところに入ったんでしょー。かーわいそー」
上から目線で小馬鹿にするような目つきと口調。
なるほど、これで森王国の男たちはイラッとしたりしたんだろうなあ。
だけど、あの可愛い姿を覗き見た後では、この仕草も可愛く思えてくる。
もうしばらくしたら、ゆったりしたローブを纏い、頭に布を巻いたミスティとアンナがやって来た。
「あー、護衛なのにお風呂をいただいてリラックスしちゃいました……。真面目な顔してましたけど、何も分からなかったですね……」
リラックスしてたら、それはそう。
「お待たせウーサー。次入ってー。……ん? んんー?」
ミスティが近づいてくる。
お風呂に香りのする花が浮かべてあったらしく、凄くいい匂いがする。
ローブの間から、彼女の谷間が見えた。
う、う、うわー!
立ち上がれなくなった!
「……覗いたでしょ」
「えっ!?」
ミスティがニヤニヤする。
俺の隣に座り、耳元で囁いてきた。
「別にいいんだけどなー。でも、元気になっちゃうのは嬉しいかも? いつ頃お風呂に行けるようになるかなー?」
「く、くうー。ミスティには勝てねえー」
しみじみ思う俺なのだった。
ちなみに、技巧神イサルデは当たり前みたいな顔して俺たちの部屋に入ってきて、アンナが「ええーっ!? 技巧神様!?」なんて叫んでいた。
イサルデはアンナに、稽古をつけてやるとかそういう話をした後で、ゴウのところにトコトコやって来る。
「ちょっとアクシス……お前のとこではバルガイヤーか。繋いでくれ。何、繋ぎ方を知らない? 祈れ祈れ! 信者はいつでも神様と繋がってんだよ!」
ゴウが祈る。
するとイサルデが、ゴウの頭上を見た。
「よう至高神。あのな、お前の信者の女騎士な。おう、そう。いい? え? 代わりに? おうおう。本気で稽古つけてやるから。おいらの技巧の一つを教える。セブンセンス最強の騎士の一人になるぞ」
なんか神様同志でやり合ってる。
これ、凄い場面なんじゃないか。
「ねえウーサー、あのおサルみたいな人誰?」
「ああ、なんか神様。技巧神イサルデって言うんだってさ」
「ふーん……。尻尾がピコピコしてる」
触りたそうなミスティなのだった。
あれ、曲がりなりにも神様だからな。
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