外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
44 / 84
5・神々のから騒ぎ

第44話 あまりにも意外な出会い

しおりを挟む
 法王は、細身の中年男性だった。
 彼は興味なさそうに俺を見た後、ミスティを見て笑顔になった。
 そして王女様を見て「ゲェっ、シェリィ王女!! やっぱり本当に来ていたのか!」と仰け反った。

「なんか舐め回すように見られたんだけど……?」

「姫に対して失礼が過ぎない!? 処すんだけど!」

 おっと、女性陣がいきり立ってる。
 ミスティに関しては、彼女はとてもカワイイので気持ちは分かる。

「だけど、ミスティを守るのは俺なので」

 彼女を後ろに隠すようにした。

「おおっ、ウーサー、かっこいい!」

 ミスティめちゃくちゃ嬉しそうだ。
 背中にぎゅっとくっついてくる。

「謁見の間でイチャイチャするのはやめろ! 余は真実の愛みたいなそういうのだいっきらいなのだ!」

 法王が怒った。
 その後、侍従の人が走ってきて法王の肩を小突いた。

「あっ、す、すまぬ。つい本音が」

「法王としての威厳を守ってくださいませ! さもないと、次の法王選挙で負けますよ!」

「う、うん」

 侍従の人がまた走ってどこかに消えた。
 法王というのも大変なんだなあ。

「猊下、そろそろ詳しい話を聞かせてもらってもいいですかね」

 ゴウがかなりへりくだった感じで尋ねた。
 ちなみに彼の腕は、飛び出しそうな王女様を抑えている。

「処すわ! 姫はおこなんだから! 処すわよあのザコ! むきぃ!」

 王女様、放っておいたら皆殺しにしそうなんだもんなあ。
 なんでこの人、自由にさせられてるんだ?
 あ、ゴウがいるからか。

 法王は王女様の勢いにドン引きしながら、語り始めた。

「実はな、各宗派ごとの対立なんてのは日常的なものだったのだ。だが、つい余が王位についてから対立が激しくなってきた。何度か武力で鎮圧する必要があるくらいだ。最近、戦神派の活動家を捕まえて処刑したのだが、それ以降は争いが収まってきてな」

 セブンセンスも大変なんだなあ。
 神様のお膝元なのに、人間は争いをやめられないのだ。

「そう思ったら、首謀者の部下みたいなのがまた暴れ出した。しかも外からスキル能力使いを雇い入れているらしい! 外部の人間でも、信者になればこの都に入れてしまうからな……。もう、大変な状況だよ……。余の胃に穴が空きそうだ……。しょっちゅう、慈愛の最高司祭のミルクちゃんに慰めてもらっている……」

 な、なるほど。
 ついに国内では片付かなくなり、森王国へ救援要請が来たと。

「なんだか頼りなさそうな王様だよねえ」

 ミスティの囁きに、俺も思わず頷くのだった。
 その後、お城に部屋を与えられた俺たち。

 かなり広い部屋が一つ、そこからベッドルームに続く扉が二つ。
 風呂なるものがあるらしく、ミスティはこれを聞いて大喜びしていた。

「あいつ失礼な男よね! 姫超怒ってるんだけど! あいつ処したいのよ! なんでゴウ邪魔するの!!」

「いやいや殿下。そりゃあまずいだろ。法王ぶっ殺したら国際問題になる。戦争だ。そうしたらどうなる? シクスゼクスがこの隙に仕掛けてくるに決まってるだろうが」

「だったら姫がシクスゼクスも滅ぼすわ!!」

「やりかねねえー!! だが殿下、シクスゼクスのスキル使いどもも強いぞ。魔族との混血だからな。スキルと生来の能力の組み合わせは馬鹿にならん。いかにあんたと言えど厳しいだろう……」

「じゃあフリズドライおばさま連れて行くわ!」

「隠居して畑耕してる魔神を駆り出すのやめてあげてくれない!?」

 仲いいなあ。

 そんな俺たちに、お世話係を拝命したアンナが色々教えてくれる。

「猊下はもともと知識神の大司祭だったのですが、女性人気が高くて、本人も遊び人で」

「はあ」

「法王選挙で圧倒的女性票を得て、今代の法王に即位されたのですが、研究と女遊び以外がとにかく苦手で」

「うへえ」

 俺とミスティ、揃って変な声が出る。

「お陰で、戦神側の首謀者も雑に処刑してしまって、結果恨みが溜まって騒ぎが大きく……。技巧神神殿が協力してくれているので、どうにかなっているのですが」

 大変だなあ、セブンセンスも!
 戦神の最高司祭が、今の法王と選挙を争った人物だったらしい。

 今、この国で起きている争いは、大本をたどれば戦神の最高司祭によるものだと推測される。
 だけど、そこを攻めるのはできない。
 どうにか落とし所をみつけなければ……。と言う話なんだとか。

「大変だなあ……。俺、まだガキだよ? 俺に何ができるんだあ」

「ウーサーならやれるやれる! だって、なんだかんだでウーサーを助けてくれる人がちょこちょこ出てくるじゃない。今回もきっとそうだよ!」

「そうなのかな?」

 ミスティに言われるとそんな気がしてきた。

「……ということで、じゃああたし、お風呂行ってくるから! ここのお風呂、超でっかいらしいよ! 楽しみー!」

「は? 姫を置いてお風呂行くわけ? 姫も行くんだから! あんたたち男子はそこで大人しく待ってなさいよねー! 覗いたらスパッとやっちゃうんだから!」

 なんだなんだ。
 急に女子たちがウキウキし始めたぞ。

 ミスティ、王女様、アンナが三人でお風呂に行ってしまった。

「誰が子どもの裸なんぞ覗くか。全く、あのガキィ……!」

 ゴウがなんかぶつぶつ言っている。
 だが動きたいのを我慢してる気配だ。
 実は覗きたいな……?

 俺はまあ、覗きたいか覗きたくないかで言うと、ちょっと気になる……。
 大浴場の近くまで様子を見に行ってみようかな?

 そう思って動くことにした。
 なぜかゴウもついてくる。

「なんでゴウが?」

「気にするな……」

 二人で真面目くさった顔をして、大浴場への道をたどる。
 この城の大浴場は、つい数年前に増築されたんだそうだ。
 今の法王の趣味なんだって。

 お城の離れにあって、庭園の中を天井付きの回廊で繋がっている。
 手入れされた木々や庭を見ながら入浴できる、開放式の大きな浴場になってるということだった。

 俺は、たらいに入ったお湯で体を洗うくらいのことしか知らない。
 なんだ、大浴場って……。
 それそのものに興味があるかも知れない。

 もちろん、ミスティにも興味があるけど……。

 ふと、視界の端をチョロチョロっと走るものがいることに気づく。
 そいつは、神官服を着た小柄なやつだった。

 尻尾がある?

「あれ?」

『ウキッ? うおっ、見つかった!』

 人間にしては毛深いというか、体に動物みたいな毛が生えていて、それと髪が繋がっている。

『お前もあれだろ? 覗きだろ。外国から来た女は珍しいからな! いい覗きスポットを教えてやろう。おいらについてこい』

 そいつは俺たちを手招きした。
 ゴウが目を見開いて、小柄なそいつを見ている。

「お、おい、あんた……。い、いや、あなたはもしかして……」

 小柄なそいつはニヤッと笑った。

『いかにも。おいらは技巧神イサルデ。ちょいと前に滅ぼされて、ここ数年でどうにか復活できたんだ。その神が直々に、お前らを導いてやろうってんだぞ』

 神様!?
 
 こうして俺は、大浴場を覗こうとする神様と一緒に、庭園へ踏み込むことになるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき
ファンタジー
初級冒険者ドルマには特技があった。 それは、巻き込まれたもの全てを昏倒させるくっさいくっさい息、バッドステータスブレス。 かつてモンスターにやられた時に身に着けたこれが、彼の唯一にして最大の技だった。 彼はともに村を出た仲間たちとともに冒険者となり、依頼でピンチに陥る。 そこで放たれたバッドステータスブレスは、凄まじい威力を発揮する。 モンスターは全滅! 仲間も全滅! ということで、どうにか生きていた仲間たちから、くさい息は追放ですわーっ!!と追放されてしまう。 失意のドルマは、大騎士を目指す風変わりな少女エリカと出会う。 騎士は強いのでくさい息も我慢できると、エリカはドルマを仲間にする。 新の仲間を得たドルマは、数々の冒険の中、己の力を自覚した。 それは受けた敵の技をラーニングする、伝説の職業青魔道士。 敵が強ければ強いほどドルマも強くなる。 どんな危機でも、エリカの笑顔があれば頑張れる。 今ここに幕開く、ドルマの充実冒険ライフ! ……は、傍からは新たなる英雄の道行にしか見えなかったりするのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...