外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

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5・神々のから騒ぎ

第44話 あまりにも意外な出会い

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 法王は、細身の中年男性だった。
 彼は興味なさそうに俺を見た後、ミスティを見て笑顔になった。
 そして王女様を見て「ゲェっ、シェリィ王女!! やっぱり本当に来ていたのか!」と仰け反った。

「なんか舐め回すように見られたんだけど……?」

「姫に対して失礼が過ぎない!? 処すんだけど!」

 おっと、女性陣がいきり立ってる。
 ミスティに関しては、彼女はとてもカワイイので気持ちは分かる。

「だけど、ミスティを守るのは俺なので」

 彼女を後ろに隠すようにした。

「おおっ、ウーサー、かっこいい!」

 ミスティめちゃくちゃ嬉しそうだ。
 背中にぎゅっとくっついてくる。

「謁見の間でイチャイチャするのはやめろ! 余は真実の愛みたいなそういうのだいっきらいなのだ!」

 法王が怒った。
 その後、侍従の人が走ってきて法王の肩を小突いた。

「あっ、す、すまぬ。つい本音が」

「法王としての威厳を守ってくださいませ! さもないと、次の法王選挙で負けますよ!」

「う、うん」

 侍従の人がまた走ってどこかに消えた。
 法王というのも大変なんだなあ。

「猊下、そろそろ詳しい話を聞かせてもらってもいいですかね」

 ゴウがかなりへりくだった感じで尋ねた。
 ちなみに彼の腕は、飛び出しそうな王女様を抑えている。

「処すわ! 姫はおこなんだから! 処すわよあのザコ! むきぃ!」

 王女様、放っておいたら皆殺しにしそうなんだもんなあ。
 なんでこの人、自由にさせられてるんだ?
 あ、ゴウがいるからか。

 法王は王女様の勢いにドン引きしながら、語り始めた。

「実はな、各宗派ごとの対立なんてのは日常的なものだったのだ。だが、つい余が王位についてから対立が激しくなってきた。何度か武力で鎮圧する必要があるくらいだ。最近、戦神派の活動家を捕まえて処刑したのだが、それ以降は争いが収まってきてな」

 セブンセンスも大変なんだなあ。
 神様のお膝元なのに、人間は争いをやめられないのだ。

「そう思ったら、首謀者の部下みたいなのがまた暴れ出した。しかも外からスキル能力使いを雇い入れているらしい! 外部の人間でも、信者になればこの都に入れてしまうからな……。もう、大変な状況だよ……。余の胃に穴が空きそうだ……。しょっちゅう、慈愛の最高司祭のミルクちゃんに慰めてもらっている……」

 な、なるほど。
 ついに国内では片付かなくなり、森王国へ救援要請が来たと。

「なんだか頼りなさそうな王様だよねえ」

 ミスティの囁きに、俺も思わず頷くのだった。
 その後、お城に部屋を与えられた俺たち。

 かなり広い部屋が一つ、そこからベッドルームに続く扉が二つ。
 風呂なるものがあるらしく、ミスティはこれを聞いて大喜びしていた。

「あいつ失礼な男よね! 姫超怒ってるんだけど! あいつ処したいのよ! なんでゴウ邪魔するの!!」

「いやいや殿下。そりゃあまずいだろ。法王ぶっ殺したら国際問題になる。戦争だ。そうしたらどうなる? シクスゼクスがこの隙に仕掛けてくるに決まってるだろうが」

「だったら姫がシクスゼクスも滅ぼすわ!!」

「やりかねねえー!! だが殿下、シクスゼクスのスキル使いどもも強いぞ。魔族との混血だからな。スキルと生来の能力の組み合わせは馬鹿にならん。いかにあんたと言えど厳しいだろう……」

「じゃあフリズドライおばさま連れて行くわ!」

「隠居して畑耕してる魔神を駆り出すのやめてあげてくれない!?」

 仲いいなあ。

 そんな俺たちに、お世話係を拝命したアンナが色々教えてくれる。

「猊下はもともと知識神の大司祭だったのですが、女性人気が高くて、本人も遊び人で」

「はあ」

「法王選挙で圧倒的女性票を得て、今代の法王に即位されたのですが、研究と女遊び以外がとにかく苦手で」

「うへえ」

 俺とミスティ、揃って変な声が出る。

「お陰で、戦神側の首謀者も雑に処刑してしまって、結果恨みが溜まって騒ぎが大きく……。技巧神神殿が協力してくれているので、どうにかなっているのですが」

 大変だなあ、セブンセンスも!
 戦神の最高司祭が、今の法王と選挙を争った人物だったらしい。

 今、この国で起きている争いは、大本をたどれば戦神の最高司祭によるものだと推測される。
 だけど、そこを攻めるのはできない。
 どうにか落とし所をみつけなければ……。と言う話なんだとか。

「大変だなあ……。俺、まだガキだよ? 俺に何ができるんだあ」

「ウーサーならやれるやれる! だって、なんだかんだでウーサーを助けてくれる人がちょこちょこ出てくるじゃない。今回もきっとそうだよ!」

「そうなのかな?」

 ミスティに言われるとそんな気がしてきた。

「……ということで、じゃああたし、お風呂行ってくるから! ここのお風呂、超でっかいらしいよ! 楽しみー!」

「は? 姫を置いてお風呂行くわけ? 姫も行くんだから! あんたたち男子はそこで大人しく待ってなさいよねー! 覗いたらスパッとやっちゃうんだから!」

 なんだなんだ。
 急に女子たちがウキウキし始めたぞ。

 ミスティ、王女様、アンナが三人でお風呂に行ってしまった。

「誰が子どもの裸なんぞ覗くか。全く、あのガキィ……!」

 ゴウがなんかぶつぶつ言っている。
 だが動きたいのを我慢してる気配だ。
 実は覗きたいな……?

 俺はまあ、覗きたいか覗きたくないかで言うと、ちょっと気になる……。
 大浴場の近くまで様子を見に行ってみようかな?

 そう思って動くことにした。
 なぜかゴウもついてくる。

「なんでゴウが?」

「気にするな……」

 二人で真面目くさった顔をして、大浴場への道をたどる。
 この城の大浴場は、つい数年前に増築されたんだそうだ。
 今の法王の趣味なんだって。

 お城の離れにあって、庭園の中を天井付きの回廊で繋がっている。
 手入れされた木々や庭を見ながら入浴できる、開放式の大きな浴場になってるということだった。

 俺は、たらいに入ったお湯で体を洗うくらいのことしか知らない。
 なんだ、大浴場って……。
 それそのものに興味があるかも知れない。

 もちろん、ミスティにも興味があるけど……。

 ふと、視界の端をチョロチョロっと走るものがいることに気づく。
 そいつは、神官服を着た小柄なやつだった。

 尻尾がある?

「あれ?」

『ウキッ? うおっ、見つかった!』

 人間にしては毛深いというか、体に動物みたいな毛が生えていて、それと髪が繋がっている。

『お前もあれだろ? 覗きだろ。外国から来た女は珍しいからな! いい覗きスポットを教えてやろう。おいらについてこい』

 そいつは俺たちを手招きした。
 ゴウが目を見開いて、小柄なそいつを見ている。

「お、おい、あんた……。い、いや、あなたはもしかして……」

 小柄なそいつはニヤッと笑った。

『いかにも。おいらは技巧神イサルデ。ちょいと前に滅ぼされて、ここ数年でどうにか復活できたんだ。その神が直々に、お前らを導いてやろうってんだぞ』

 神様!?
 
 こうして俺は、大浴場を覗こうとする神様と一緒に、庭園へ踏み込むことになるのだった。
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