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4・森王国での修行編

第33話 王女の挑戦?

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「能力が強いやつは強い。だが、体を鍛えてない場合、能力を磨き上げていない場合は、もっと弱いとされるスキル能力に簡単に破られる」

「うす」

 ゴウのコーチングを受けている俺である。
 生徒は俺一人。
 朝から夕方まで、主に基礎体力をつける訓練を行う。

 昼時になると、視線を感じるようになった。
 入り口や、天蓋に空いた穴から、この国の王女がじーっと俺を見ているのだ。

「なんであの人、俺のこと見てるんすかね」

「年が近いスキル能力者が少ないからだな。その中でも、森王国が注目するレベルの人間は初めてだ。自分と同レベルの相手かどうか気になるんだろうな……。姫様、力こそ全てって考えだから」

「ひい」

 なんという恐ろしい思想を持った王女なんだ。
 後でミスティに教えてやろう。

 そうだ。
 ミスティとは別々の部屋になってしまった。

 若者に間違いがあってはいけないし、今はラブラブすることにかまけている場合ではないから……だそうだ。
 ミスティがおろろーんと嘆き悲しんでいた。
 再開できるのは夕食の時だけ。

 うーん、寂しい。

「初代マナビ王が戦った、無数の魔剣を操る能力者がいた。そいつは空を飛ぶ魔剣で何もかも切り裂く恐ろしい力を持っていたが、力に全てを頼って己を鍛えいなかったんだな」

「強い力があるのに、どうして本体が鍛えないといけないんです?」

「そりゃあ、強い能力を掻い潜られたらどうする。というか、強いやつはどんな強い能力だろうが掻い潜って迫ってくる」

「ふええ」

 ゴウいわく、俺がエグゾシーを倒せたのも、相手が自分の能力に溺れ、俺を侮っていたからということらしい。

「ひょっとすると、完全には死んでいないかもしれんな。何百年も生きてきた魔神だろ。まだウーサーの能力は詰めが甘い。殺しきれてないかも知れん。ま、ここ何十年は悪さはできないだろうが」

「詳しいっすね」

「そりゃあ、俺も他の十頭蛇とやりあったことがあるからな。他のバーバリアンたちとともに戦い、それなりの数がやられたぞ。あいつらは一人一人が、一国の軍隊に匹敵する力を持っている」

 そんな恐ろしい連中だったのか。
 十頭蛇レベルのやつが油断しないで攻めてきたら、俺の能力だって隙を突かれてやられてしまう可能性があるというわけだ。

「納得したか」

「うす」

「じゃあ基礎練開始」

「うす!」

 ということで。
 ひたすらひたすら、地味な地味な訓練をした。
 毎日毎日した。

 食堂で顔を合わせるミスティはげっそりしていて、

「無理無理無理! 魔法なんか使えないって! そもそもあたし、勉強とか必死にやるタイプじゃないし……いや、命掛かってるけどさあ」

「一緒に頑張ろう、ミスティ!」

「お、おう、お姉さん頑張っちゃおうかな」

 やる気になったみたいだ。
 ミスティの先生らしきエルフの女性が、うんうんと嬉しそうに頷いている。

 さては……。
 俺とミスティを夕食で一緒にしてくれるのは、彼女のモチベーションのためか!
 考えてるなあ!

 その後、その日あったことを報告しあった。

「あー、雑談の話題が訓練のことしかないー! 娯楽がないー!」

「俺ら、それくらい重要みたいだし。俺たちの身を守るためでもあるしさ」

「それはそうだけどー。現代っ子としては、こういう食事とウーサーとのお喋りしか娯楽がない暮らしは辛いー」

 嘆くミスティなのだった。
 がんばれ……!!

 何日も基礎訓練をしてると、だんだん体の動きも変わってくる。

「若い男はもともと、強くなるポテンシャルがあるんだ。案の定、仕上がってきたな。お前がこれから戦うのは、世界から出てくるヤバい連中だ。普通以上に動けるようになっておかないと、即詰むからな」

「な、なんで俺がそんな強い奴らと……?」

「そりゃあ、力を示せば、他の力がある奴らとぶつかるからだよ。森王国みたいに強烈なのが一箇所にギュッと集まってたらまた違うけどな。十頭蛇もそうだ。あれも能力が判明していない強大な能力者が集まった集団だからな。大国レベルでも直接には喧嘩を売らない」

 そんなのとやり合うのか。
 気が遠くなる……。

「いいかウーサー。お前は肉体的には凡人だ。だから鍛えておいて損はない。能力を絶対視するな。確かに両替は強大なスキル能力だが、絶対にそれを突き抜けてくるヤバい奴はいる。常に油断をするな。力に驕るな」

「うす!!」

 常に慎重に行こう。
 俺は決心するのだった。

 そんな俺を見て、遠くにいる王女が何か口をパクパクさせた。

「姫様も『ほんと凡人はそういうことも分からないんだからホントバカ。バーカバーカ』って言ってるな」

 ゴウの声でやらないでくれよ!

 しかし、本当に俺をちょこちょこ観察してるな王女様は。
 なんでだろう。

「仕上がったお前と勝負する気なんだろう」

「ええっ!? マ、マジですか」

 震え上がる俺なのだった。
 心なしか、離れた所にいる王女の目がキラリと光った気がした。
 
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