外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
29 / 84
4・森王国での修行編

第29話 森王国へ向かえ

しおりを挟む
 仕事をしていたら、国の役人がやって来た。

「おう、なんだなんだ」

「アキサク、お前のところで働いているウーサーという男がいるだろう」

「おう、それがどうした」

「商業国議会から招集が掛かった。同行願いたい」

「なんだとぉ」

「落ち着けアキサク。悪い意味ではない。国の今後が掛かっている」

 ……ということで。
 俺とミスティが、エルトー商業国の中枢に呼ばれることになったのだった。

 保護者として、アキサクがついてきている。

「アキサク、店は良かったんすか」

「バカ言うな。お前を連れて行かれて、のんびり店をやってられるほど俺は図太くねえよ」

 いい人だなあ。

「アキサクさん優しいねえ」

 ミスティに褒められて、「バカ、よせやい!」と照れるアキサクなのだった。
 連れて行かれたのは、この国のど真ん中。

 思えば、一度も行ったことがなかったなあ。
 真四角な大きい建物があり、これが議会堂という、この国の政治を司るところなのだそうだ。

「王様に会うことになるのか……」

 俺が呟いたら、アキサクが笑った。

「この国に王はいねえよ!」

「えっ、そうなのか!?」

「おう。エルトー商業国は、この国で一番金を持ってる商人たち五人が動かしてるんだ。その内の一人が、最近城壁の修理をしたりして金が大いに動いて儲かってるらしいな」

 あの城壁修理か。
 しかし、王様がいない国というのは想像がつかない。
 どうなってるんだろう?

 どうなっているのか。
 すぐに分かった。

 この国、形式とかでのんびり人を待たせたりしないのだ。
 議会堂の扉をくぐった俺たちは、そのまますぐに建物の中央まで案内された。

 会議場になってるらしい。
 そこに、じいさんが二人いた。

「おう、来たか来たか」

「スムーズに来てくれて嬉しいよ。時は金なりだ」

 にこやかな感じだな。

「こいつらを呼びつけるって言うから、俺も付いてきたんだが、一体どういう了見だ?」

 アキサクが尋ねる。
 対するじいさん二人は、太っちょと細いのがいた。

 ニコニコしている太っちょが口を開いた。

「なに。そこにいる少年の両替能力と、少女の持つ運命を引き寄せる力についてだ」

「!?」

 俺とミスティは緊張した。
 全部知ってる……!?

 細いじいさんが言葉を続ける。

「我々とて馬鹿ではない。強大な力を持つスキル能力者を刺激して、争いを起こそうとは思わない。だが、先日の戦争はその少女を求めてエムス王国が起こしたものだろう? 戦争は出費にはなるが、勝って敵から賠償金を奪わねば赤字になる」

 そういうものなのか。
 戦争でまで金が動いているのだ。

「それでだな。エムス王国とエヌール公国が手を組み、そこの少女を目的にこちらへ再び侵攻しようとしている。ああ、そこの少女を召喚した大臣は処刑されたらしい。今度は国として、運命の女を手に入れるべく動くという話だ」

 とんでもない規模の話になっていた。

「お、俺たちをどうするんだ」

 喉がカラカラになる。
 めちゃくちゃ緊張する。

 アキサクが剣呑な空気を発した。
 偉い商人二人を前にして、怖いものが無いなこの人。

 だが商人たちは、ニヤリと笑った。

「チャンスだろう。あと三人は己の権益を確保するために動いている」

「我々はな、この機会にエムスかエヌール、どちらかを取り込み、市場にしてしまおうと考えているのだ」

「そのためには、ウーサー、ミスティ。お前たちは一時的に国を離れてもらう必要がある」

「奴らの大義名分を失わせるためだ。その話をするために呼びつけた」

 な、なんだってー!?

「化け物どもめ」

 アキサクがぶつぶつ言っている。
 まとめると、どうやら俺とミスティの事は、この国の上に知られていたらしい。
 その上で、俺たちを利用して、エムス王国とエヌール公国を罠にはめようという話なのだ。

「ガキどもを利用したらただじゃおかねえぞ!」

「アキサクくん、本当に君は若い頃から怖いものを知らんな」

 これにはじいさんたちも呆れたようだった。
 アキサク、自己保身とかそういう計算ができない男だ。

 こうして俺たちは、エルトー商業国から正式に依頼され、国を一旦離れることになった。

 離れるとしたらどこに行けばいいんだ?

 議会堂の食堂で飯を食いながら考える。
 だが、そこは特に問題無かったらしい。
 不機嫌そうなアキサクが教えてくれた。

「ゴウがいただろ」

「あ、はい。バーバリアンの」

「あいつがお前らを連れて、バルガイヤー森王国へ連れてくってよ」

「そうなんすか! いつの間に?」

「ゴウも議会と連絡を取ってたんだよ。というか、あいつは元々、バルガイヤー森王国からの大使なんだ」

「大使?」

「国を代表して来てる人ってこと!」

 ミスティは詳しいなあ。
 えっ!?
 つまり、ゴウって偉い人だったのか!!

「はえー」

 俺は驚いて言葉をなくしてしまった。
 そう言えばあの人、普段から何をやって生活してるのかよく分からなかったけど、そういうことだったのか。

「全く……。もっと早く俺に話してくれりゃなあ」

 アキサクがブツブツ言っている。
 ゴウと何かあったんだろうか?

 それはそれとして、なんとなく空を仰ぐ俺なのだ。

「あー、なんか状況に流されてる。ダメだなあ……」

「運命が導いてるのかもよ?」

「ミスティは前向きじゃん」

「そりゃあ、だって、ウーサーと一緒になってから、悪い方向に物事が動かないもの」

 そんなものだろうか?
 俺としてはもっと成長して、自分で何もかも動かせるようになっていきたい……!

 世の中ままならないのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...