外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

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4・森王国での修行編

第28話 いろいろウーサー

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 ルーンに連れられて、城壁の補修部分をペタペタ触る。
 おお、すっかり固まってる。

「これで強度も増すんだ。色々なものがぐちゃぐちゃに詰まってるからな。そうすると不思議と頑丈になる。問題は、見た目が悪いことと、城壁の中が通れなくなったことだ。今な、必死に中身を掘り進んでる奴らがいる」

「大変だなあ……」

 これだけ大きな建造物を破壊してしまう十頭蛇。
 やっぱり、あいつらはとんでもなく強いのだ。

 エグゾシーも、俺のやり方が相性良かっただけで、普通だったらどうやって倒したらいいか分からないもんな。

「でも、なんとなく分かった。ここからここまでが金貨五十枚なのか。再現できそうだ」

「すげえな!? お前、つまり金さえあれば一人で城壁を生み出したりもできるってことだぞ」

「見た目は悪いっすけどね」

「まあな!」

 二人でわっはっはっはっは、と笑った。
 ここでルーンが真顔になる。

「もしかしてお前、金を受け取ってあちこちにでかいバリケード作ってくれって依頼されたら、すぐにやれるんじゃないか?」

「やれると思う」

「そうかそうか! じゃあちょっと待ってろ」

 ルーンはそう言うなり、城壁の下に降りていった。
 しばらくしてから、パカポコと馬が走っていく音がする。

 なんだろう。

「お待たせ。国の偉い人がお前に興味があるみたいなんだが、これこれこういう案件受けられますよって手紙を送っておいたわ」

「えーっ!? お、俺が国の仕事を受けるの!?」

「だってお前はやれるじゃん。やれるやつがちゃんと評価されなくてどうする。でかい仕事をやるぞ!」

 なぜだかやる気のルーン。
 後で聞いた話だと、大きな仕事を受けると、ルーンの懐にもちょっとマージンが返ってくるのだそうだった。

 それから、彼に連れられて四方の城壁を見て回る。
 一日仕事になった。

 それぞれの見張り台と、城壁の様子をチェック。
 十頭蛇のヒュージが現れたところ以外は、大きく崩れてはいない。

 ちょっと壊れてるくらいなら、上からロープで吊るされた業者が、漆喰を塗ってちょいちょいっと補修できてしまうのだ。

「十頭蛇が出たところはな、めちゃくちゃにぶっ壊れてたから、まともな修理ができなかった。きちんと城壁を立て直すなら、金貨百枚は掛かるんだぞ」

「そんなに!!」

 ここで思うのは、カトーのところで見た魔剣だ。
 白金貨十枚とか言っていた。

 つまり……この国の四方の城壁を合わせたよりも、一本の魔剣の方が高価だってことだ。
 おかしいだろ。
 どんだけ凄いんだ、あの魔剣。

 それとも、他人が勝手に値段をつけてるから高くなってるだけとか……。
 いやいや、あれ、カトーとスミスが適当に値付けしてあの価格だから、市場に出たら多分、あの何倍にもなると思う。

 国が買える。
 想像もできないほど強力な魔剣に違いない。

「どうしたウーサー。青くなったり、スンッとなったりして」

「魔剣鍛冶の里で色々見てきてさ……」

「おうおう! 聞いたぞ聞いたぞ。もう、この国じゃ噂だぞ。十頭蛇をぶっ倒したガキがいるってな! やっぱお前かあ! 俺の見立ては正しかったな!」

 ルーンが肩をバシバシ叩いてきた。

「そ、そんなに噂になってるのかあ! うわあー」

「大丈夫だ。ウーサーは見た目はちょっとガッチリしてきたが、まだまだガキだからな。みんな気づかねえよ。だが、本当にすげえな。まさか十頭蛇の一角を崩すほどになるとは……。今度飯を奢るから、詳しい話聞かせてくれや」

 時刻は夕方。
 もうすぐ日が落ちるところだ。

 太陽が地平線にかかり、幻の太陽は薄くなり、消えていこうとしている。
 あの幻の太陽は、昔空に浮かんでいた魔力の星というやつの名残らしい。

 落ちた時に世界が大きく変わり、しばらくすると星があった場所に幻の太陽が生まれたのだそうだ。
 俺が物心ついた頃から、ずっと幻の太陽はある。

 すっかり消えてしまった幻の太陽を見て、俺はハッとした。

「やっべえ。丸一日ミスティをほったらかしじゃん!」

 家の中でゴロゴロすると言っても限度がある。

「おうおう、リア充様は大変だなあ」

「いきなりルーンが悪そうな目つきになった」

「俺も恋人が欲しいなあー」

「そ、そんなんじゃねえよ!」

 ということで、俺はダッシュで宿に戻る。
 いつもとは違う城壁から戻るから、土地勘がない。
 迷いそうになりながら、どうにか宿へたどり着いたころには、もう辺りは真っ暗だった。

 たしかこの国、暗くなったら出歩くなって言われてたよな。
 やばいのに出会わなくて、ラッキーだった。

 部屋に帰ったら、ミスティがベッドの上でふて寝していた。

「ミスティー」

 呼びかけたが、つーんとして振り返りもしない。

「ミスティ、一日ほっといてごめんってば」

「ふーん、丸一日どころか、真っ暗になるまで帰ってこないなんて、さぞや楽しい一日だったんでしょうねー」

「ごめんって! それに遠くまで行ってたから、帰ってくるのに必死で! まだ飯も食ってないから一緒に」

「えっ、ご飯まだなの!?」

 急に元気になってミスティが起き上がった。
 俺と肩を組んで、ぐいぐい引っ張っていく。

「いやー、一日ゴロゴロしてたけど、この世界って娯楽がないじゃん? 退屈で退屈で……そしたら余計なことばっか考えちゃってさあ。やっぱ仕事してないとだめだわ。ほらほらウーサー、今日あったこと、お姉さんに色々聞かせてみ?」

「めちゃくちゃ絡んでくるじゃん!」

 だけど、ミスティが嬉しそうなのは俺も嬉しいし、あとは柔らかかったりいい匂いがしたりするからいいか。
 外には出られないけど、宿の食堂で何か作ってもらおう。
 何がいいだろうな、なんて思いながら、俺たちは階段を降りていくのだった。
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