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3・魔剣鍛冶の里編
第22話 迎撃はお風呂の後で
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『アンデッドは自然発生しません。本来、死の女神ルサルカの加護がなければ生み出せない存在です。そして今、ルサルカが敵対的なアンデッドを生み出すことはアリえません』
スミスの口調が真剣だった。
まるで、ルサルカという神をよく知っているみたいに。
『これは間違いなく、スキル能力者によって作成されたアンデッドでしょう。つまり、敵対的アンデッドを作り出す、我々への害意を持ったスキル能力者がこの地域に入り込んだことになります。狙いはカトーさんで間違いありません』
「凄い、推理してる。名探偵スミスさんじゃん。体はカエルみたいな人、頭脳は名探偵!」
なんか妙に感動しているミスティなのだ。
そのワードはなんだろう?
「じゃあスミスさん、俺たちはどうしたらいい?」
『手がかりがありませんし、もう日が暮れます。日暮れはアンデッドが活発に動く時間。危険ですからね。宿に籠もって朝まで出てこないようにしてください』
朝まで待つ。
そういうことになった。
外で弁当を買ってきて、部屋の中で食べる。
「なんかさ、楽しい観光気分だったんだけど……。いきなりホラー映画とかホラゲーの世界に入ったっぽくね? 別の意味でちょっとドキドキしてる」
「よく分からないけど、大丈夫だ。俺がミスティを守るからな!」
「うわーっ、さらに別の意味でドキドキしてきた」
ミスティはちょっと赤くなった頬を、ぺちぺち叩いているのだ。
「それで、そのホラーエイガってなんなんだ?」
「それはね、あたしの世界でも、アンデッドとかゾンビって出てくるの。ま、映画ってのの中だけど。人が演じてる、お話なのよ」
「見たこと無いけど、劇みたいなもんか」
「そそ。今度劇を見に行こうね」
「お、おう!」
めちゃくちゃ楽しみなお誘いを受けてしまった。
デートじゃん!
これは、何があってもこの状況をくぐり抜けなければいけない。
ただ、今部屋の中にいてできることはあまりない。
俺は床にバラバラと針を散らして、これを金貨に変え、さらに金貨二十枚相当の魔剣に変える練習を始めた。
スミスが持っていた短剣が、金貨二十枚相当らしい。
両替して作り出してみる。
怪しい輝きを放つ、物凄く作りのいい短剣だ。
だけどこう……全然強そうに見えないな。
「スミスさん言ってたけどさ」
ミスティがひょいっと魔剣を拾い上げた。
「魔剣って言っても別に強いわけじゃなくって、こういうのは家宝みたいに飾っといたり、偉い人が家臣に与えて褒美にしたりするもんなんだって。飾り物ってこと」
「そうだったのかあ」
高いから強いというわけじゃない。
この魔法の針だって、所詮は針だ。
武器としては使い物にならない。
「金貨五十枚からだってさ、強い魔剣って。そっから別世界だって」
「気が遠くなるような話だー!」
その頂点に、白金貨十枚の魔剣がいるわけだろ?
ミスティに数を色々教えてもらっているから、白金貨十枚が金貨千枚だってことが分かる。
信じられないような量だ。
「それもさ、カトーさんが適当に付けた値段で、市場に出るとその何十倍に値段が跳ね上がるって」
「あ、頭がパンクするー」
大きすぎる数字の話をされると、想像ができなくなってクラクラするのだ。
「お湯お持ちしましたー」
「あ、来た! じゃあ、ちょっと廊下出ててねウーサー」
「お、おう!」
ミスティの体を洗う時間だ。
運び込まれてくるお湯の量は相変わらず多い。
これのために俺たちは毎日金を稼いでいるところはあるけど……。
今日は、魔法の針もたくさん手に入ったことで、お湯の量が一段と多い。
豪遊だ。
扉の向こうで、鼻歌をうたうミスティなのだった。
衣擦れの音がする。
チャプチャプ言う音が聞こえる。
おお……想像してしまう……。
まだ一度も、彼女の裸とかちゃんと見たことないからな。
付き合いはそこそこ長くなってきたけど、そこらへんのガードが、ミスティはとても堅い。
普通はそう言うものなのかもしれないな……。
ひたすらチャプチャプする音を聴きながら、想像をたくましくしていても仕方がない。
俺は気晴らしに、廊下から窓の外を眺めることにした。
外は真っ暗。
月明かりだけが頼りだ。
宿の中も、廊下に明かりは点いていない。
燃料の節約だって。
あんなに高い宿代取ってるくせにな。
窓から顔を出して、キョロキョロと辺りを見回す。
すると……。
真っ暗な中を、ゆっくり歩く人影が幾つも見えた。
足を引きずるように、ゆっくりゆっくり。
腕を前に突き出して、何かを探るように歩いている。
ボロボロの衣服を身にまとい、よく見たら頭が半分無かったり、骨がむき出しだったり。
アンデッドの、ゾンビってやつか!
何体もいるぞ。
やばいなあ。
魔剣鍛冶の里に入り込まれてしまってる。
「みんな、宿に閉じこもってるかな。外に出たらまずいだろ、これ」
浮かれてた気持ちが、一気に冷めてしまった。
俺がゾンビ行列を見ていると、その横をスタスタ歩いて行くローブ姿の影がある。
「気付かれたか。ふん、まあ構わん。里の連中をアンデッドとして取り込み、勢力を拡大する方針は変わらぬからな」
そいつの声が聞こえた。
しわがれた老人みたいな声だ。
とんでもない事を言ってる。
この里の人をアンデッドとして取り込むだって!?
カトーいわく、寄生虫みたいな連中なのかもしれないけど、ゾンビにするのはあんまりだろう。
これはどうにかしないと……!!
急いで戻って、扉をノックする。
「ひえーっ、まだお風呂の途中だよー!」
「あ、そ、そうか!」
しまった。
ミスティはお湯を浴びるのが終わらないと絶対に動かないのだ。
今は気を落ち着けて、どうやってあのアンデッドたちとやり合おうか考えなくてはいけない……!
「しまった、針も部屋の中だ! ますます、ミスティが出てくるの待つしか無いじゃないか! 早く……早く終わってくれミスティ」
「なになに!? 何か大変なこと起きてる!? ちょっと待ってー!! 体拭いて髪の水気吸わせて……急ぐから!」
部屋の中からは、バタバタと騒ぐ音が聴こえてくるのだった。
スミスの口調が真剣だった。
まるで、ルサルカという神をよく知っているみたいに。
『これは間違いなく、スキル能力者によって作成されたアンデッドでしょう。つまり、敵対的アンデッドを作り出す、我々への害意を持ったスキル能力者がこの地域に入り込んだことになります。狙いはカトーさんで間違いありません』
「凄い、推理してる。名探偵スミスさんじゃん。体はカエルみたいな人、頭脳は名探偵!」
なんか妙に感動しているミスティなのだ。
そのワードはなんだろう?
「じゃあスミスさん、俺たちはどうしたらいい?」
『手がかりがありませんし、もう日が暮れます。日暮れはアンデッドが活発に動く時間。危険ですからね。宿に籠もって朝まで出てこないようにしてください』
朝まで待つ。
そういうことになった。
外で弁当を買ってきて、部屋の中で食べる。
「なんかさ、楽しい観光気分だったんだけど……。いきなりホラー映画とかホラゲーの世界に入ったっぽくね? 別の意味でちょっとドキドキしてる」
「よく分からないけど、大丈夫だ。俺がミスティを守るからな!」
「うわーっ、さらに別の意味でドキドキしてきた」
ミスティはちょっと赤くなった頬を、ぺちぺち叩いているのだ。
「それで、そのホラーエイガってなんなんだ?」
「それはね、あたしの世界でも、アンデッドとかゾンビって出てくるの。ま、映画ってのの中だけど。人が演じてる、お話なのよ」
「見たこと無いけど、劇みたいなもんか」
「そそ。今度劇を見に行こうね」
「お、おう!」
めちゃくちゃ楽しみなお誘いを受けてしまった。
デートじゃん!
これは、何があってもこの状況をくぐり抜けなければいけない。
ただ、今部屋の中にいてできることはあまりない。
俺は床にバラバラと針を散らして、これを金貨に変え、さらに金貨二十枚相当の魔剣に変える練習を始めた。
スミスが持っていた短剣が、金貨二十枚相当らしい。
両替して作り出してみる。
怪しい輝きを放つ、物凄く作りのいい短剣だ。
だけどこう……全然強そうに見えないな。
「スミスさん言ってたけどさ」
ミスティがひょいっと魔剣を拾い上げた。
「魔剣って言っても別に強いわけじゃなくって、こういうのは家宝みたいに飾っといたり、偉い人が家臣に与えて褒美にしたりするもんなんだって。飾り物ってこと」
「そうだったのかあ」
高いから強いというわけじゃない。
この魔法の針だって、所詮は針だ。
武器としては使い物にならない。
「金貨五十枚からだってさ、強い魔剣って。そっから別世界だって」
「気が遠くなるような話だー!」
その頂点に、白金貨十枚の魔剣がいるわけだろ?
ミスティに数を色々教えてもらっているから、白金貨十枚が金貨千枚だってことが分かる。
信じられないような量だ。
「それもさ、カトーさんが適当に付けた値段で、市場に出るとその何十倍に値段が跳ね上がるって」
「あ、頭がパンクするー」
大きすぎる数字の話をされると、想像ができなくなってクラクラするのだ。
「お湯お持ちしましたー」
「あ、来た! じゃあ、ちょっと廊下出ててねウーサー」
「お、おう!」
ミスティの体を洗う時間だ。
運び込まれてくるお湯の量は相変わらず多い。
これのために俺たちは毎日金を稼いでいるところはあるけど……。
今日は、魔法の針もたくさん手に入ったことで、お湯の量が一段と多い。
豪遊だ。
扉の向こうで、鼻歌をうたうミスティなのだった。
衣擦れの音がする。
チャプチャプ言う音が聞こえる。
おお……想像してしまう……。
まだ一度も、彼女の裸とかちゃんと見たことないからな。
付き合いはそこそこ長くなってきたけど、そこらへんのガードが、ミスティはとても堅い。
普通はそう言うものなのかもしれないな……。
ひたすらチャプチャプする音を聴きながら、想像をたくましくしていても仕方がない。
俺は気晴らしに、廊下から窓の外を眺めることにした。
外は真っ暗。
月明かりだけが頼りだ。
宿の中も、廊下に明かりは点いていない。
燃料の節約だって。
あんなに高い宿代取ってるくせにな。
窓から顔を出して、キョロキョロと辺りを見回す。
すると……。
真っ暗な中を、ゆっくり歩く人影が幾つも見えた。
足を引きずるように、ゆっくりゆっくり。
腕を前に突き出して、何かを探るように歩いている。
ボロボロの衣服を身にまとい、よく見たら頭が半分無かったり、骨がむき出しだったり。
アンデッドの、ゾンビってやつか!
何体もいるぞ。
やばいなあ。
魔剣鍛冶の里に入り込まれてしまってる。
「みんな、宿に閉じこもってるかな。外に出たらまずいだろ、これ」
浮かれてた気持ちが、一気に冷めてしまった。
俺がゾンビ行列を見ていると、その横をスタスタ歩いて行くローブ姿の影がある。
「気付かれたか。ふん、まあ構わん。里の連中をアンデッドとして取り込み、勢力を拡大する方針は変わらぬからな」
そいつの声が聞こえた。
しわがれた老人みたいな声だ。
とんでもない事を言ってる。
この里の人をアンデッドとして取り込むだって!?
カトーいわく、寄生虫みたいな連中なのかもしれないけど、ゾンビにするのはあんまりだろう。
これはどうにかしないと……!!
急いで戻って、扉をノックする。
「ひえーっ、まだお風呂の途中だよー!」
「あ、そ、そうか!」
しまった。
ミスティはお湯を浴びるのが終わらないと絶対に動かないのだ。
今は気を落ち着けて、どうやってあのアンデッドたちとやり合おうか考えなくてはいけない……!
「しまった、針も部屋の中だ! ますます、ミスティが出てくるの待つしか無いじゃないか! 早く……早く終わってくれミスティ」
「なになに!? 何か大変なこと起きてる!? ちょっと待ってー!! 体拭いて髪の水気吸わせて……急ぐから!」
部屋の中からは、バタバタと騒ぐ音が聴こえてくるのだった。
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