外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

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2・広がる世界編

第10話 理解者アキサク

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 仕事でもらったお金は、それなりの金額だった。
 これで、俺とミスティの服を揃えた。

「こんな作りでこんなにするの!? たかーい!!」

 ミスティが驚いていたが、高いんだろうか?
 俺はもらった古着をずっと着てたから、服の値段なんかよく分からないのだ。

「あたしの世界ではねー。もっとカワイイのが安くってねえ」

「出た、ミスティの世界の話。何回も聞いたけど、そんな世界があったらもう天国じゃん」

 天国というのは、神様が善行をした人間を死後に連れて行くっていう世界のこと。
 俺は別にどの神様も信じてないけど、天国行きたいなら信じたほうがいいのだろうか。

「そうだねえ。あっちにいたころは不満タラタラだったけど、こっちに来てからは日本は天国だったなあと思うね! ご飯美味しかったし」

 食べ物が美味しい世界なら、俺も行ってみたいな……!

 で、結局選んだ服は、俺は上着と半ズボン。
 ミスティは紐で止めるタイプの上着とスカートだった。
 露出度が減った……。

「これで、じろじろ見られなくて済むっしょ。あちこちで男に声かけられて大変だったんだから!」

「えっ、マジか!! ヤバいヤバい、それ絶対ダメだって」

「うおーっ、ウーサー、必死の形相で掴みかかってくるなー!? なんで焦ってるの」

 そりゃあもう、俺がちょっといいなって思ってる女が、他の男に取られると思っただけで、胃の辺りがキュッとなるからだ。
 ミスティを口説く男、許さんぞ。
 俺は強くなって、そういう男をぶっ飛ばせるようにならないといかん。

 そのためには、早く体をでかくしないと……!!

「ウーサーがなんか燃えてる! いいぞいいぞ! お姉さんはそういう男子が大好きなのだ」

 くっそー、まだ俺を子ども扱いか。
 どうすれば認められるようになるだろうな。

 やっぱり、強くなるしか無いな。

 ということで、武器屋で働きつつ、店主に相談したりするのだ。

「あのさ、年上の女がいて、俺をガキ扱いするんだけどさ」

「ふんふん。つまりお前はその女を女として見てるのに、相手はお前をガキとしか見てくれないのが辛いわけだな」

「すげえ!!」

 俺は驚愕した。
 このおっさん、俺の心の中を読めるのか!?

「顔に書いてあるんだよ。ってか、こんなのはガキの頃に誰でも通るもんだ。なるほどな、つまり一人前の男としてお前がその女に認められるためには……」

 店主は壁に掛かっていた、でかい剣を取り外した。

「このバスタードソードを振り回せるくらいにならねえとな!」

「えっ! この剣を振り回す!?」

「できないか?」

「できらあ! うおーっ!」

 店には武器を振り回せるスペースが設けてある。
 そこで振り回したら、俺の体が武器に持っていかれた。

「ウグワーッ!!」

 ぐるぐる回転してぶっ倒れる俺。
 店主爆笑。

「まだまだ力が足りねえなあ! 筋トレしろ筋トレ! 俺の飲み仲間にバーバリアンがいるからよ。そいつに訓練付けてくれるよう頼んでやるよ」

「ほ、ほんとか!! ありがとう! いや、ありがとうございます!」

「いいんだいいんだ。俺はお前みたいな、がむしゃらに突っ走るちびは好きだからな!」

 そんな話をしていたら、店の入口から「お待たせでーす」と声がした。

 なんと、そこにミスティがいるじゃないか。

「おっ、新しいウエイトレスか? 可愛いな。顔立ちとかちょっとこのあたりで見ない感じだ」

「えへへー、そうなんすよー。よろしくご贔屓に」

 ミスティがニコニコしながら、持ってきた包を開く。
 その中から、湯気を立てるスープと、それに浸かった麺が出てきた。

「お弁当のスープパスタです! 食べ終わったらそこに置いといて下さい! あ、ウーサー、頑張ってる? なんか倒れてるけど! えっ、その大きい剣を!? 振って!? いやいやいや、まだウーサーの体格だと無理でしょー」

「くっそー」

 俺は大変悔しがった。
 店主が、俺とミスティを交互に何度も見る。
 
「じゃ、またね、ウーサー! ファイトー!」

 入り口でガッツポーズするミスティなのだった。
 くっそー、可愛い。

「ははーん」

「なんだよー」

「お前、あの娘に気があるのか。なるほどなあ……。てか、年上って言うけどほとんど年の差ねえじゃねえか」

「でも俺のこと少年って言うんだよ! くうーっ、ちゃんと男として見られたい!」

「なるほどなあ。こりゃ、俺もお前を応援したくなってきたわ」

 店主がニヤニヤした。
 そんなこんなで、何日か働く。

 店主が紹介してくれるというバーバリアンはなかなか姿を見せない。
 まだか。
 まだなのか。

 焦るな俺よ。
 焦る心を抑えるため、一心不乱に武器を磨く。

 最近、剣や槍、斧や槌、弓矢と言った武器をよく触るため、構造や仕組み、重さなんかも把握してきた。
 これなら、硬貨があれば再現できそうだな。

 以前再現した錠前は、見た目こそちゃんとしてたが、中身は全然ダメだった。
 くっついたまま、錠の部分が動かなかったのだ。
 多分これ、俺が再現するものをよく知ってないといけないのだ。

 両替、変な能力だよなあ。

 店主に見えない所で、銅貨三枚をダガーに変化させたりする。
 完璧なダガーになった。
 それをまた銅貨に戻す。

「なんか成長してる気がする。前よりも高いものも、再現できるんじゃないか」

 俺が呟いていたら、店の奥で「ウーン」という唸り声が聞こえた。
 店主だ。

「どうしたんすか」

「おうウーサー。あのな。ちょっと前に国から武器を発注されてるんだがな。それが揃わねえ」

「揃わない? なんで?」

「武器ってのは平時は使わないもんだ。で、兵士たちは訓練でしか武器を使わないから、壊れる数も少ない。つまり、買い替えが少ないんだ」

「はあ、そうなんすか」

「そうなんだよ。だから鍛冶屋連中は、武器じゃなくて日用品を作らないと暮らしていけないわけだ。んでな、その日用品がまあまあ売れてる。国外でだ。今は日用品を作るので手一杯で、武器まで手が回らねえと来た」

「あー、そりゃ仕方ないよなあ……。確実に金もらえる仕事をするもんだもん」

「だよなあ」

 そしてまた店主、頭を抱えてしまった。
 店を開ける前に、鍛冶屋の工房に行ってちょこちょこ交渉しているらしいのだ。
 だけど、鍛冶屋は武器を生産する余裕はない、の一点張りだとか。

 普通の王国なら、国の強権で言うことを聞かせられるだろうが、エルトー商業国は有力商人たちが協議しながら治めてる国らしくて、強制的に云々はできないらしい。
 お陰で、店主が唸ることになっている。

 この人にはこれからも世話になりそうだしなあ。

「じゃあすんません店主」

「おう」

「俺が手伝うんだけど、これ秘密にしててください」

「お前が? 手伝いはありがてえが、何ができるんだ」

「えっと、俺、こういうことができて」

 銅貨を取り出し、店主の目の前で両替してみせた。
 銅貨三枚が、同じ値段のダガーに変わる。

 店主の目が丸くなった。

「は? な、な、な、なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「俺、必要な金さえあれば、そいつを道具に変えられるんですよ。あと、金を細かくしたり、もっと価値のある硬貨にしたりとかできます。金貨はまだ触ったことないんで無理だけど」

「マジか。マジかよ! おいおいおい、これなら行けるぞ!」

 テンションが上がってくる店主。

「よっしゃ、一つ頼むぞウーサー! 近々戦争があるそうだ。それに合わせて、武器をどっさりこさえてくれ! これはお前にしかできない仕事だ!」

「うす! 任せてくれ店主!」

「俺の事はアキサクと呼んでいいぜ!」

「アキサクさん、任せてくれ!」

 こうして、店主と仲良くなる俺なのだった。
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