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Mとお姫さま結婚騒動編
第五十四話:ドMと祭りと結婚式
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準備期間は飛ぶように過ぎていった。
イリアーノ王国とフレート王国は、正式に互いの国の王子と王女が婚姻関係を結ぶことを発表したんだ。
そりゃもう、凄い騒ぎになった。
イリアーノはやる気満々だった戦争が聖王国に潰されて、すっかり意気消沈していたところ。
そこにめでたいお話が舞い込んだのだ。
国民の人たちの浮かれ方はすごかった!
まだ発表されたばかりなのに、屋台とかがたくさん出た。
どこで噂を聞きつけたのか、商人の人たちが集まってきて、郊外もちょっとしたバザーみたいになった。
その時々でたまーに不審な人死が出たり、人死の地区が死の大地になったりしたけど、そんなの些細な事だ。
「うふっ、やり過ぎちゃった」
「ハハハ、エリザベッタ様はおちゃめっすなあ」
「罪のない人は死んでない。たぶん」
僕たちはコソコソお城の裏口から帰ってくる。
城の中は飾り付けがされていて、もうじきやってくるエカテリーナ様の結婚式で、妙な緊張感と浮かれた雰囲気が漂っていた。
城下町だって同じような感じだ。
おめでたいイベントだから、城下町の酒場では一日酒代は王家が奢ってくれるというお触れが出るんだって。
お酒のみらしい人たちは、今からウキウキ気分で待っている。
「あっしも飲むっすぞ!」
「新聞屋はあれだね。喉元を過ぎると熱さを忘れるタイプだ!」
「また酔ってアミはハリイにキスしちゃうのね?」
「げげえっ!? エリザベッタ様あなたはあの時意識がなかったはずーっ……!?」
とかわいわいやってたら、なんか珍しい光景が見えた。
お城には食堂があるんだけど、そこで階さんがいたのだ。それだけなら珍しくないんだけど、階さんって基本友達がいないので、いつもぼっちでご飯を食べてるのだ。だけど、今日はヒゲの生えた男の人と二人でご飯を食べてる。
「ですから、歴史の伝承は言い伝えメインで行われていますが、人魔大戦で世界が一つになるのならそれぞれの言い伝えを集めて編纂が可能だと思うのです」
「おお、なるほど……! 君の発想は新しいな」
学者っぽい人だ。
「おっ、なんか階さんモテモテっすなー。……ていうか階さんがまともに人に相手されてるの初めて見るっすなあ」
「彼女変わりものだからねー」
類は友を呼ぶのかもしれない。
明らかに階さんの倍くらいの年の人なんだけど、僕たち日本人はこの世界だと見た目明らかに子供で、多分その人から見たら、階さんは完全に自分の娘位の年齢なのだ。
だけど、学者っぽい人は真剣に階さんの話を聞いている。
階さんはと言うと、普段の人を見下したみたいなしゃべり方じゃなくて、一生懸命自分の話したいことを伝えようとしている。
むむむっ。
「へえ、いい雰囲気ねえ」
エリザベッタ様は恋バナ大好き。
きっとあそこにもラブスメルを感じ取ったのかもしれない。だけど違うと思うなあ。
「あれは、同好の士が出会ってしまった図っすな。あのおっさんからも階さんと同じにおいを感じるっすよ!」
「ですがイリアーノでは知識に関する自由度が足りないかと……」
「いっそ聖王国に亡命……」
わっ、なんかすごくきな臭い話になってきてる!!
というか、階さんが僕たちの仲間を抜けるようなことになったら、彼女の能力である死んだ仲間たちのファイリングが失われてしまうのだ。
階さんがいないと、僕たちが元の世界に戻った時、完全に死んだままになってしまう奴が結構出てきてしまう。
……あれ? 僕は別にそれはそれでいいなあ。特に親しい訳じゃなかったし。
「恐ろしい話をしてるっすね! これはエカテリーナ様にチクったほうが……いや、あの方はもうフレートに輿入れするところだったっすな」
新聞屋も成長したものだ。
以前なら本能的に寝返っていただろうに、今はきちんと寝返る前に損得勘定ができるようになってる!
「それは、アミが恋する乙女の気持ちを知ったからに違いないわよ」
「ぬわーっ!? エリザベッタ様全ての話をそっちにつなげるのは勘弁してほしいっすー!?」
ということで、僕たちは階さんと学者のおじさんを生暖かい目で見守りつつ、エリザベッタ様のもとにやってきたのだった。
そこでは、ドレスの採寸をとっているところだった。
男子勢が外で待機している。
馬井くんはここしばらく死んだような顔をしてたけど、最近ようやく吹っ切れたみたいだ。
「エカテリーナ様の結婚式を最高の式にするんだ……! それが俺にできる唯一のはなむけだ……!」
うひょー、吹っ切れてはいるけど、こう、痛々しいなあ。
富田くんが馬井くんの肩をぽんと叩いている。
すっかり二人は親友な感じだ。
ちなみに富田くんは豚っぽい顔になってしまったせいか、全く女性と縁がないらしい。
ただ、戦闘力が高いのは認められてるらしくて、兵士や騎士のお兄さんやおじさんたちと仲良く喋っているのをよく見かける。
それは馬井くんも同様なんだけど、彼の場合は女性にもモテる感じになってるので、実にこう、なんというか、うん、腹立たしい。
もげろ。
「ああ、エカテリーナ様は採寸中だよ。フレートで一番の仕立屋がやってきているらしい。ピエール王子の衣装はイリアーノの仕立屋が作るそうだ」
なるほどなるほど。
2つの国で花嫁と花婿に衣装を贈り合うんだ。
これはなかなか粋な習慣じゃないだろうか。
エカテリーナ様は今回の結婚で、国中の注目の的。
すっかり影が薄くなった第一王子たちは歯噛みしてるらしい。
ピエール王子は、普通に王位継承権第二位だそうで、実力から言っても王様になっておかしくないそうだ。
もしかすると、将来的にイリアーノの第一王子、自分がいじめた妹が同盟国の王妃になってるなんて状況になるのも十分すぎるぐらいあり得る。
それって笑える。
「どれどれ」
「どーれどれ」
「どーれ」
新聞屋とエリザベッタ様がずんずん中に入っていったので、僕も続いて入っていこうとした。
「ええい破廉恥な!!」
「ぎゃー」
新聞屋が僕を蹴り倒した。
『HPがアップ!』
『体力がアップ!』
『愛がアップ!』
「張井のそうやってしれっと覗きにいくところは心底すげえよな。なんでそんなに物怖じしねえんだよ……」
「見つかって蹴倒されてもご褒美だからね!」
「キメエ……っつうかむしろ尊敬するわ」
富田くんが僕をリスペクトしている!
なんだ、なにか悪いものでも拾い食いしたんじゃないか。
「してねえよ!? つうかなあ。この世界にきて必死で生きててさ、あっちの俺はなんかこう、ちっぽけな優越感とかで人をいじめたりして、なんてつまんねえ奴だったんだろうって思ってんだよ。で、いじめてたはずのお前が今、とんでもない冒険をしょっちゅうやってるって言うじゃねえか。なんだよそれ。死ぬかもしれないってのに怖くねえの?」
「ふーむ」
案外きちんとものを考えていたらしい富田くんの言葉に、僕は考えこんだ。
僕としては、行く先々で綺麗なお姉さんにいじめられて、楽しかった思い出しか無いのだ。
「住めば都と言いまして」
「難しいこと言ってんなあ」
文字通りなんだけど。
ちなみに馬井くんもさわやかな顔をしている。
「張井は率先して仲間たちを守るべく、敵の前に身を晒していたからな。本当のリーダーとは君のような奴なのかもしれないな」
それはどうかなー。
僕が男子チームでぺちゃくちゃやってると、部屋の中からわーっと女子の華やかな声が聞こえてきた。
なんだなんだ!
スッと覗いたら、新聞屋が採寸用のハサミを投げてきた。
『HPがアップ!』
『体力がアップ!』
『愛がアップ!』
痛い!
僕じゃなかったら大怪我だよ!!
「不敬を恐れず覗きを敢行するのは張井くんしかいないっすよ!」
「なるほどぉ」
名推理だ。
僕が納得してたら、
「ハリイたちにも入ってきてもらうといい。少々恥ずかしいが……男たちの目も通さねばな」
エカテリーナ様の声がした。
真っ先に呼ばれた名前が僕のだったので、馬井くんがちょっとだけガックリ来た感じだった。
僕ら男チームがぞろぞろ入ってくると、なんか仕立て屋さんがドヤ顔で振り返る。
あっ、この人も男じゃん!
「この世界の仕立屋は全員男らしいっすな」
「大丈夫よ。エッチな目で見たら不敬罪で大変なことになるから間違いは起きないわ」
出羽亀さんが恐ろしいことをおっしゃる。
「おお……お美しいです、エカテリーナ様……!」
馬井くん感動の面持ち。富田くんも横でうんうん頷いている。
なるほど、エカテリーナ様はすごく綺麗だった。
真っ白なドレス。
いわゆるウェディングドレスなんだけど、それにイリアーノの国旗に多く使われるカラーの青と緑をあしらってる。
装飾の宝石なんかは最小限で、胸元とか指先とか、ピンポイント。
髪を結い上げてドレスを纏ったエカテリーナ様は、なんだか本当にお姫様みたいだった。
本当のお姫様なんだけど。
「うん、すっごく綺麗だと思います!」
僕は正直に感想を述べた。
そしたら、委員長とマドンナがため息をついた。
「張井くんもいつもこれくらいストレートだったら……」
「あたしたちって男を見る目がないのかもねえ」
「間違いなくないっすな」
「あら、アミは見る目あると思うわよ」
「ええええエリザベッタ様やめて欲しいっすー」
な、なんだろう。
いろいろ身の危険を感じる。分かってはいるんだけど分かりたくない。
そんなこんなで花嫁衣装はこれから本格的にサイズを合わせていくんだそうだ。
そもそも採寸前に、こうやって出来上がったような形で持ってくるあたり、フレートの仕立て屋さんはなんか仕事が速いっていうか気が早いっていうか。
二国を挙げての結婚式まであとひと月。
それはあっという間にやってきてしまうのだ。
なんか、結婚式にアマイモンとかいうのが来る予定っぽいけど、今はその辺は考えないことにした。
イリアーノ王国とフレート王国は、正式に互いの国の王子と王女が婚姻関係を結ぶことを発表したんだ。
そりゃもう、凄い騒ぎになった。
イリアーノはやる気満々だった戦争が聖王国に潰されて、すっかり意気消沈していたところ。
そこにめでたいお話が舞い込んだのだ。
国民の人たちの浮かれ方はすごかった!
まだ発表されたばかりなのに、屋台とかがたくさん出た。
どこで噂を聞きつけたのか、商人の人たちが集まってきて、郊外もちょっとしたバザーみたいになった。
その時々でたまーに不審な人死が出たり、人死の地区が死の大地になったりしたけど、そんなの些細な事だ。
「うふっ、やり過ぎちゃった」
「ハハハ、エリザベッタ様はおちゃめっすなあ」
「罪のない人は死んでない。たぶん」
僕たちはコソコソお城の裏口から帰ってくる。
城の中は飾り付けがされていて、もうじきやってくるエカテリーナ様の結婚式で、妙な緊張感と浮かれた雰囲気が漂っていた。
城下町だって同じような感じだ。
おめでたいイベントだから、城下町の酒場では一日酒代は王家が奢ってくれるというお触れが出るんだって。
お酒のみらしい人たちは、今からウキウキ気分で待っている。
「あっしも飲むっすぞ!」
「新聞屋はあれだね。喉元を過ぎると熱さを忘れるタイプだ!」
「また酔ってアミはハリイにキスしちゃうのね?」
「げげえっ!? エリザベッタ様あなたはあの時意識がなかったはずーっ……!?」
とかわいわいやってたら、なんか珍しい光景が見えた。
お城には食堂があるんだけど、そこで階さんがいたのだ。それだけなら珍しくないんだけど、階さんって基本友達がいないので、いつもぼっちでご飯を食べてるのだ。だけど、今日はヒゲの生えた男の人と二人でご飯を食べてる。
「ですから、歴史の伝承は言い伝えメインで行われていますが、人魔大戦で世界が一つになるのならそれぞれの言い伝えを集めて編纂が可能だと思うのです」
「おお、なるほど……! 君の発想は新しいな」
学者っぽい人だ。
「おっ、なんか階さんモテモテっすなー。……ていうか階さんがまともに人に相手されてるの初めて見るっすなあ」
「彼女変わりものだからねー」
類は友を呼ぶのかもしれない。
明らかに階さんの倍くらいの年の人なんだけど、僕たち日本人はこの世界だと見た目明らかに子供で、多分その人から見たら、階さんは完全に自分の娘位の年齢なのだ。
だけど、学者っぽい人は真剣に階さんの話を聞いている。
階さんはと言うと、普段の人を見下したみたいなしゃべり方じゃなくて、一生懸命自分の話したいことを伝えようとしている。
むむむっ。
「へえ、いい雰囲気ねえ」
エリザベッタ様は恋バナ大好き。
きっとあそこにもラブスメルを感じ取ったのかもしれない。だけど違うと思うなあ。
「あれは、同好の士が出会ってしまった図っすな。あのおっさんからも階さんと同じにおいを感じるっすよ!」
「ですがイリアーノでは知識に関する自由度が足りないかと……」
「いっそ聖王国に亡命……」
わっ、なんかすごくきな臭い話になってきてる!!
というか、階さんが僕たちの仲間を抜けるようなことになったら、彼女の能力である死んだ仲間たちのファイリングが失われてしまうのだ。
階さんがいないと、僕たちが元の世界に戻った時、完全に死んだままになってしまう奴が結構出てきてしまう。
……あれ? 僕は別にそれはそれでいいなあ。特に親しい訳じゃなかったし。
「恐ろしい話をしてるっすね! これはエカテリーナ様にチクったほうが……いや、あの方はもうフレートに輿入れするところだったっすな」
新聞屋も成長したものだ。
以前なら本能的に寝返っていただろうに、今はきちんと寝返る前に損得勘定ができるようになってる!
「それは、アミが恋する乙女の気持ちを知ったからに違いないわよ」
「ぬわーっ!? エリザベッタ様全ての話をそっちにつなげるのは勘弁してほしいっすー!?」
ということで、僕たちは階さんと学者のおじさんを生暖かい目で見守りつつ、エリザベッタ様のもとにやってきたのだった。
そこでは、ドレスの採寸をとっているところだった。
男子勢が外で待機している。
馬井くんはここしばらく死んだような顔をしてたけど、最近ようやく吹っ切れたみたいだ。
「エカテリーナ様の結婚式を最高の式にするんだ……! それが俺にできる唯一のはなむけだ……!」
うひょー、吹っ切れてはいるけど、こう、痛々しいなあ。
富田くんが馬井くんの肩をぽんと叩いている。
すっかり二人は親友な感じだ。
ちなみに富田くんは豚っぽい顔になってしまったせいか、全く女性と縁がないらしい。
ただ、戦闘力が高いのは認められてるらしくて、兵士や騎士のお兄さんやおじさんたちと仲良く喋っているのをよく見かける。
それは馬井くんも同様なんだけど、彼の場合は女性にもモテる感じになってるので、実にこう、なんというか、うん、腹立たしい。
もげろ。
「ああ、エカテリーナ様は採寸中だよ。フレートで一番の仕立屋がやってきているらしい。ピエール王子の衣装はイリアーノの仕立屋が作るそうだ」
なるほどなるほど。
2つの国で花嫁と花婿に衣装を贈り合うんだ。
これはなかなか粋な習慣じゃないだろうか。
エカテリーナ様は今回の結婚で、国中の注目の的。
すっかり影が薄くなった第一王子たちは歯噛みしてるらしい。
ピエール王子は、普通に王位継承権第二位だそうで、実力から言っても王様になっておかしくないそうだ。
もしかすると、将来的にイリアーノの第一王子、自分がいじめた妹が同盟国の王妃になってるなんて状況になるのも十分すぎるぐらいあり得る。
それって笑える。
「どれどれ」
「どーれどれ」
「どーれ」
新聞屋とエリザベッタ様がずんずん中に入っていったので、僕も続いて入っていこうとした。
「ええい破廉恥な!!」
「ぎゃー」
新聞屋が僕を蹴り倒した。
『HPがアップ!』
『体力がアップ!』
『愛がアップ!』
「張井のそうやってしれっと覗きにいくところは心底すげえよな。なんでそんなに物怖じしねえんだよ……」
「見つかって蹴倒されてもご褒美だからね!」
「キメエ……っつうかむしろ尊敬するわ」
富田くんが僕をリスペクトしている!
なんだ、なにか悪いものでも拾い食いしたんじゃないか。
「してねえよ!? つうかなあ。この世界にきて必死で生きててさ、あっちの俺はなんかこう、ちっぽけな優越感とかで人をいじめたりして、なんてつまんねえ奴だったんだろうって思ってんだよ。で、いじめてたはずのお前が今、とんでもない冒険をしょっちゅうやってるって言うじゃねえか。なんだよそれ。死ぬかもしれないってのに怖くねえの?」
「ふーむ」
案外きちんとものを考えていたらしい富田くんの言葉に、僕は考えこんだ。
僕としては、行く先々で綺麗なお姉さんにいじめられて、楽しかった思い出しか無いのだ。
「住めば都と言いまして」
「難しいこと言ってんなあ」
文字通りなんだけど。
ちなみに馬井くんもさわやかな顔をしている。
「張井は率先して仲間たちを守るべく、敵の前に身を晒していたからな。本当のリーダーとは君のような奴なのかもしれないな」
それはどうかなー。
僕が男子チームでぺちゃくちゃやってると、部屋の中からわーっと女子の華やかな声が聞こえてきた。
なんだなんだ!
スッと覗いたら、新聞屋が採寸用のハサミを投げてきた。
『HPがアップ!』
『体力がアップ!』
『愛がアップ!』
痛い!
僕じゃなかったら大怪我だよ!!
「不敬を恐れず覗きを敢行するのは張井くんしかいないっすよ!」
「なるほどぉ」
名推理だ。
僕が納得してたら、
「ハリイたちにも入ってきてもらうといい。少々恥ずかしいが……男たちの目も通さねばな」
エカテリーナ様の声がした。
真っ先に呼ばれた名前が僕のだったので、馬井くんがちょっとだけガックリ来た感じだった。
僕ら男チームがぞろぞろ入ってくると、なんか仕立て屋さんがドヤ顔で振り返る。
あっ、この人も男じゃん!
「この世界の仕立屋は全員男らしいっすな」
「大丈夫よ。エッチな目で見たら不敬罪で大変なことになるから間違いは起きないわ」
出羽亀さんが恐ろしいことをおっしゃる。
「おお……お美しいです、エカテリーナ様……!」
馬井くん感動の面持ち。富田くんも横でうんうん頷いている。
なるほど、エカテリーナ様はすごく綺麗だった。
真っ白なドレス。
いわゆるウェディングドレスなんだけど、それにイリアーノの国旗に多く使われるカラーの青と緑をあしらってる。
装飾の宝石なんかは最小限で、胸元とか指先とか、ピンポイント。
髪を結い上げてドレスを纏ったエカテリーナ様は、なんだか本当にお姫様みたいだった。
本当のお姫様なんだけど。
「うん、すっごく綺麗だと思います!」
僕は正直に感想を述べた。
そしたら、委員長とマドンナがため息をついた。
「張井くんもいつもこれくらいストレートだったら……」
「あたしたちって男を見る目がないのかもねえ」
「間違いなくないっすな」
「あら、アミは見る目あると思うわよ」
「ええええエリザベッタ様やめて欲しいっすー」
な、なんだろう。
いろいろ身の危険を感じる。分かってはいるんだけど分かりたくない。
そんなこんなで花嫁衣装はこれから本格的にサイズを合わせていくんだそうだ。
そもそも採寸前に、こうやって出来上がったような形で持ってくるあたり、フレートの仕立て屋さんはなんか仕事が速いっていうか気が早いっていうか。
二国を挙げての結婚式まであとひと月。
それはあっという間にやってきてしまうのだ。
なんか、結婚式にアマイモンとかいうのが来る予定っぽいけど、今はその辺は考えないことにした。
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