325 / 337
106・うなぎ料理と美少年
第325話 集えギルボウ亭! うな重来たる
しおりを挟む
向かった先はギルボウの店である。
もういつものところである。
今回はあらかじめ、シャザクとエリィを店に呼び出しておいた。
ここで食うのが一番美味いからだ。
さらに、知識神の神官も呼んでおいた。
で、呼んでもいないのにどこで嗅ぎつけたのか、リップルも来た。
大所帯である。
コゲタもアゲパンもハムソンもいる。
「コボルドたちにはハンバーグを出しておくからな」
「手をかけさせてスマンな」
「気にするな。あいつらは素直に美味いって言うから、俺は好きなんだよ」
三人のコボルドが、ハンバーグをもりもり食べながら「おいしい!」と言っている横で……。
うな重を囲む会が開かれたのだった。
「うなぎって、あの長い魚でしょ? 食べたことはあるけど、そんなに美味しくは無かったな」
エリィが首を傾げている。
もしかすると、うなぎのゼリー寄せみたいな食べ方しか知らないのではないか。
シャザクに至っては全く食べたこともないそうだ。
これはビータもツインも同じ。
「いい? うなぎって言うのは本来、庶民的な食べ物なの。血には毒があるからしっかり焼かなくちゃいけないし、小骨は多いし……とてもとても、そんな魅力的な食材じゃないわ」
「なるほど、アーランの常識ではそうだったわけだね」
「うっ、美食伯がそう言っているのを聞くと、私達が知らないうなぎの魅力があるような気がしてくるわ……」
あるのだ。
僕は既に、知識神の神官を通じて、神にレシピの伝授を願っている。
果たして神は奇跡を起こした。
うなぎ蒲焼の作り方が、僕の脳内にインスピレーションとして沸き起こったのである!
なお、知識神は僕の周辺に限り、スナック感覚で奇跡を起こす。
どうも他の神々からのチェックが、そこだけ薄いんだそうだ。
これはきっと、知識神が僕の死後、僕を神様に召し上げる予約をしているせいだろうな。
僕がレシピを伝えると、ギルボウは頷きながら猛烈な速度でメモをした。
そして僕に見せて確認し、修正。
それらを終えたら、メモをくしゃくしゃと丸めて捨てた。
「もう頭の中に入った。忘れねえよ」
そう言うなり、彼はうなぎの料理を開始したのだった。
ほう、腹開き!
関西風ですな。
その間に僕は、醤油ベースでタレを作っておく。
うな重のタレと言えば、本体とも言えるような重要な存在である。
だが、ギルボウは初の焼きで手一杯だ。
ここは僕が作業をせねばな。
最近、料理をし続けたお陰で腕も上がってきたしな。
もりもりとタレを作っていると、美味しそうなうなぎの香りがしてきた。
テーブルに並ぶ人々が大いに沸いている。
うなぎを焼く香りは気になるよな。
しかも、うな重のこれは蒸し焼きをしたものをさらに焼く。
その際に、このうなぎのタレを塗りながら焼くのだ!
「ギルボウ、こいつを頼む」
「おう! 甘辛いタレなんだな。醤油ベースで、砂糖と酒を混ぜて熱を加えてアルコールを飛ばしたか。ほうほう……いい味だ! どれどれ……?」
タレを塗ったうなぎが焼ける香りに、ざわつく一同。
悪魔的な香りであろう!
これはやばいぞ。
香りだけでご飯が食べられると言われた代物だ。
もちろん、米はつやつやのピカピカに炊いてある。
これを、箱型の器に盛って、そこにうなぎをドーン!
タレをたらーりたらり。
山椒はまだ発見されていないが、似た味のハーブならあった。
これをパラパラと振る。
完成……!
パルメディア初のうな重だ!
うなぎと米と醤油はあったのに、今まで生まれなかったのが不思議なくらいだな。
どうやら、うなぎは下魚というイメージが流布しすぎていて、美味しい料理にするという発想が出てこなかったようなのである。
果たして、こんがりとこげ茶色に焼けたうなぎが乗った、うな重が各人の前に供された。
「シャザク、これがうな重だ。ぜひ味わってくれ!」
「あ、ああ。どれどれ……?」
スプーンでうなぎを切ったシャザクは目を丸くする。
「柔らかい……!! 魚の身が、これほど柔らかいのか!? それに……中身は白い。どれ……?」
米と一緒に口に運ぶシャザク。
次の瞬間、彼の目が見開かれた。
「うおっ……うおおおおおおお!! 溶けた! うなぎの身が、口の中で溶けた!!」
「えっ!? これがうなぎ!? うなぎなの!? 嘘でしょう!? あの弾力が強い身が、どうやったらこんなに柔らかくてふんわりした上品な味になるの!? それにこのタレ、甘くて美味しい……。ご飯にも合う……」
「うわわわわっ、美味しい! 美味しいですよ師匠、これすっごく美味しい!」
「ああ、僕らが釣ったうなぎがこんなに美味しくなるんだなあ。これは凄い……」
神官氏は、ひたすら食レポを垂れ流しながら食べていた。
そしてリップルはうんうん頷きながら食べる。
「魚とお米だろう? 消化に良さそうだ! 素晴らしい」
なんておばあちゃんめいたことを言うのか。
「ナザルは別に食べなくてもいいんじゃないかい?」
「そりゃまたどうして」
「精がつく料理なんだろ? またカッとなるような過ちが起きたらお互い目も当てられない」
「なるほど、確かになあ……。だが僕にうな重を眼の前にして食べないという選択肢はないんだなあ! いただきます!」
「あーっ!!」
「美味い! うまいうまいうまい!!」
転生してから初めてのうな重。
こんなもん絶対に美味いに決まっているのだ!
もういつものところである。
今回はあらかじめ、シャザクとエリィを店に呼び出しておいた。
ここで食うのが一番美味いからだ。
さらに、知識神の神官も呼んでおいた。
で、呼んでもいないのにどこで嗅ぎつけたのか、リップルも来た。
大所帯である。
コゲタもアゲパンもハムソンもいる。
「コボルドたちにはハンバーグを出しておくからな」
「手をかけさせてスマンな」
「気にするな。あいつらは素直に美味いって言うから、俺は好きなんだよ」
三人のコボルドが、ハンバーグをもりもり食べながら「おいしい!」と言っている横で……。
うな重を囲む会が開かれたのだった。
「うなぎって、あの長い魚でしょ? 食べたことはあるけど、そんなに美味しくは無かったな」
エリィが首を傾げている。
もしかすると、うなぎのゼリー寄せみたいな食べ方しか知らないのではないか。
シャザクに至っては全く食べたこともないそうだ。
これはビータもツインも同じ。
「いい? うなぎって言うのは本来、庶民的な食べ物なの。血には毒があるからしっかり焼かなくちゃいけないし、小骨は多いし……とてもとても、そんな魅力的な食材じゃないわ」
「なるほど、アーランの常識ではそうだったわけだね」
「うっ、美食伯がそう言っているのを聞くと、私達が知らないうなぎの魅力があるような気がしてくるわ……」
あるのだ。
僕は既に、知識神の神官を通じて、神にレシピの伝授を願っている。
果たして神は奇跡を起こした。
うなぎ蒲焼の作り方が、僕の脳内にインスピレーションとして沸き起こったのである!
なお、知識神は僕の周辺に限り、スナック感覚で奇跡を起こす。
どうも他の神々からのチェックが、そこだけ薄いんだそうだ。
これはきっと、知識神が僕の死後、僕を神様に召し上げる予約をしているせいだろうな。
僕がレシピを伝えると、ギルボウは頷きながら猛烈な速度でメモをした。
そして僕に見せて確認し、修正。
それらを終えたら、メモをくしゃくしゃと丸めて捨てた。
「もう頭の中に入った。忘れねえよ」
そう言うなり、彼はうなぎの料理を開始したのだった。
ほう、腹開き!
関西風ですな。
その間に僕は、醤油ベースでタレを作っておく。
うな重のタレと言えば、本体とも言えるような重要な存在である。
だが、ギルボウは初の焼きで手一杯だ。
ここは僕が作業をせねばな。
最近、料理をし続けたお陰で腕も上がってきたしな。
もりもりとタレを作っていると、美味しそうなうなぎの香りがしてきた。
テーブルに並ぶ人々が大いに沸いている。
うなぎを焼く香りは気になるよな。
しかも、うな重のこれは蒸し焼きをしたものをさらに焼く。
その際に、このうなぎのタレを塗りながら焼くのだ!
「ギルボウ、こいつを頼む」
「おう! 甘辛いタレなんだな。醤油ベースで、砂糖と酒を混ぜて熱を加えてアルコールを飛ばしたか。ほうほう……いい味だ! どれどれ……?」
タレを塗ったうなぎが焼ける香りに、ざわつく一同。
悪魔的な香りであろう!
これはやばいぞ。
香りだけでご飯が食べられると言われた代物だ。
もちろん、米はつやつやのピカピカに炊いてある。
これを、箱型の器に盛って、そこにうなぎをドーン!
タレをたらーりたらり。
山椒はまだ発見されていないが、似た味のハーブならあった。
これをパラパラと振る。
完成……!
パルメディア初のうな重だ!
うなぎと米と醤油はあったのに、今まで生まれなかったのが不思議なくらいだな。
どうやら、うなぎは下魚というイメージが流布しすぎていて、美味しい料理にするという発想が出てこなかったようなのである。
果たして、こんがりとこげ茶色に焼けたうなぎが乗った、うな重が各人の前に供された。
「シャザク、これがうな重だ。ぜひ味わってくれ!」
「あ、ああ。どれどれ……?」
スプーンでうなぎを切ったシャザクは目を丸くする。
「柔らかい……!! 魚の身が、これほど柔らかいのか!? それに……中身は白い。どれ……?」
米と一緒に口に運ぶシャザク。
次の瞬間、彼の目が見開かれた。
「うおっ……うおおおおおおお!! 溶けた! うなぎの身が、口の中で溶けた!!」
「えっ!? これがうなぎ!? うなぎなの!? 嘘でしょう!? あの弾力が強い身が、どうやったらこんなに柔らかくてふんわりした上品な味になるの!? それにこのタレ、甘くて美味しい……。ご飯にも合う……」
「うわわわわっ、美味しい! 美味しいですよ師匠、これすっごく美味しい!」
「ああ、僕らが釣ったうなぎがこんなに美味しくなるんだなあ。これは凄い……」
神官氏は、ひたすら食レポを垂れ流しながら食べていた。
そしてリップルはうんうん頷きながら食べる。
「魚とお米だろう? 消化に良さそうだ! 素晴らしい」
なんておばあちゃんめいたことを言うのか。
「ナザルは別に食べなくてもいいんじゃないかい?」
「そりゃまたどうして」
「精がつく料理なんだろ? またカッとなるような過ちが起きたらお互い目も当てられない」
「なるほど、確かになあ……。だが僕にうな重を眼の前にして食べないという選択肢はないんだなあ! いただきます!」
「あーっ!!」
「美味い! うまいうまいうまい!!」
転生してから初めてのうな重。
こんなもん絶対に美味いに決まっているのだ!
31
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界ダンジョンの地下第7階層には行列のできるラーメン屋がある
セントクリストファー・マリア
ファンタジー
日本の東京に店を構える老舗のラーメン屋「聖龍軒」と、ファルスカ王国の巨大ダンジョン「ダルゴニア」の地下第7階層は、一枚の扉で繋がっていた。


どうも、賢者の後継者です~チートな魔導書×5で自由気ままな異世界生活~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「異世界に転生してくれぇえええええええええ!」
事故で命を落としたアラサー社畜の俺は、真っ白な空間で謎の老人に土下座されていた。何でも老人は異世界の賢者で、自分の後継者になれそうな人間を死後千年も待ち続けていたらしい。
賢者の使命を代理で果たせばその後の人生は自由にしていいと言われ、人生に未練があった俺は、賢者の望み通り転生することに。
読めば賢者の力をそのまま使える魔導書を五冊もらい、俺は異世界へと降り立った。そしてすぐに気付く。この魔導書、一冊だけでも読めば人外クラスの強さを得られてしまう代物だったのだ。
賢者の友人だというもふもふフェニックスを案内役に、五冊のチート魔導書を携えて俺は異世界生活を始める。
ーーーーーー
ーーー
※基本的に毎日正午ごろに一話更新の予定ですが、気まぐれで更新量が増えることがあります。その際はタイトルでお知らせします……忘れてなければ。
※2023.9.30追記:HOTランキングに掲載されました! 読んでくださった皆様、ありがとうございます!
※2023.10.8追記:皆様のおかげでHOTランキング一位になりました! ご愛読感謝!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる