290 / 337
96・油使い、伝説となる
第290話 国王、ぶっ倒れる
しおりを挟む
国王陛下がぶっ倒れた。
寝込んでしまい、これは国政に支障が出る。
それにそろそろ判断も怪しくなってきていたということで、王位継承が行われたのだった。
なんか陛下も「余はもうだめだ」とか気弱な事を言っているので、第一王子のソロス殿下があとを継ぐことに異論はないらしい。
ソロス殿下、嫉妬深いが基本的には帝王学をきちんと身につけたお人だからね。
「陛下が倒れたそうじゃないか。大変なことになっているね」
リップルもギルドで噂を聞いたようで、夕食の席で話題になった。
「なぜ倒れたんだろう。いや、人間では七十歳はもういい年齢だろう。陛下はむしろあのお年までよく頑張ったほうだ」
うんうん、と一人納得するリップルなのだった。
「おうさまたいへんなの?」
「そうだぞコゲタ。王様をやるのはとっても大変なんだ。だから王子が次の王様になるわけだな。若くて元気な王様が出てくるぞ」
「ほえー」
コゲタはポカーンとして感心した後、お皿に盛られた料理をぱくぱく食べた。
うんうん、よく食べるのはいいことだ。
そしてリップルは無自覚だが、国王陛下の在位にとどめを刺したのは僕らであろう。
つい昨日、使者がリップル妊娠! との報を王宮に持ち帰ってすぐに国王陛下がぶっ倒れたのだった。
どこから漏れたのか、この国の一大事を告げる報はアーラン中を駆け抜けた。
いやあ、本当に今が平和な時代で良かったね。
そうでなければ、他の国が侵攻してきたかも知れない。
だが、いつそういう事態が起きるとも知れない。
アーランは早急に政治の空白を解消すべく、王位継承を決めたのだった。
まあ、前々からそういうつもりではあったのだが、思ったよりも陛下が元気なのでずっと棚上げになっていたのだそうだ。
その時間を僕とリップルが加速させた……!
いや、加速しちゃいかんのだが。
ということで、王位継承の儀が行われることになった。
各国の首脳を招いての儀式は3ヶ月後だが、形式的にでも王位を継承しておく実務は来週。
これには国家の重鎮がみんな参加するのではないか。
そんな事を考えながら、日々が過ぎた。
僕はナザル農園の主なので、ちょこちょこ遺跡の中の農園に出かけていって成果を調べる。
以前僕の貞操を狙ってきていた女子たちは、
「側女でもいいんですけど!」「二人目はいかがですか?」
とかたくましい。
いらない!
いらないからね!!
作物の育成状況は順調。
なにせ、遺跡はとんでもない栽培チート環境だ。
この場所では土を休ませる必要などなく、連作障害も起きない。
なのでガンガンに作物が育てられている。
一応、大豆や一部の作物のみ育成ができないということで、そういったものは輸入に頼ることになる。
そして輸入せねばならない作物がある場合、対抗としてこちらでしか育てられな作物などを輸出してバランスを取る必要がだな……!
ということで、僕はこの国で大変重要な役割を受け持っていることになる。
美食アンバサダーなどという謎の役職を持っているが、遺跡内の特殊農産物を受け持つ大規模農場の主であり、それらの輸出と国内流通を管理する大臣みたいな役職もやっているのだ……。
完全に国のシステムに組み込まれてしまったな?
「ではナザル様、本日は泊まっていかれては……」
「ちゃんと日帰りします!! 基本的に僕は管理のためにこっちに来てるんだからね」
ということで、きちんとその日の内に帰る。
一日に一箇所チェックが限界だな……。
本当なら泊まり込みたいところだが、危険過ぎる、僕の貞操が。
「妻が大事な時期なので帰りますね……」
職人たちが見送ってくれた。
「お疲れ様です。そのうち、リップル様と一緒にいらっしゃってください!」
「その手はありだなあ」
彼らとしては僕とリップルにいい印象を持ってもらうことで、扱いを良くしてもらう……みたいなところを期待しているのかも知れないが。
遺跡の中は環境も安定しているので、子どもが生まれたら連れてくるのもよかろうう。
家に戻ると既にリップルがおり、何か考え込んでいる風だった。
「どうしたどうした」
「これ見てくれナザル。招待状だ」
「招待状と言うと……王位継承の儀の?」
「そうなる。身内の儀式ですからカジュアルな格好でどうぞと書いてあるが……。私が推理するにこれは罠だな」
「間違いない、罠だ。王家の儀式にカジュアルな格好で行くバカはいないからね」
急いでそれっぽい服を仕立てねばということになった。
くそー、こういう大きな会に誘われることが増えたのだが、お陰で出費が増える!
貴族というのは意外とお金がなく、日々のやりくりに汲々としているのだと聞いたことがある。
こういうことだったんだな……。
なお、僕は王国にとって大いなる利益をもたらす作物を一手に握っているからな。
金はあるのだ……。
だが金があるからこそできる金遣いに慣れてしまってはならない。
絶対に身を滅ぼす。
「可能な限り予算控えめで礼服を用意しよう。なんなら貴族からレンタルするのでもいいから」
「そうしようか」
そういうことになったのだった。
寝込んでしまい、これは国政に支障が出る。
それにそろそろ判断も怪しくなってきていたということで、王位継承が行われたのだった。
なんか陛下も「余はもうだめだ」とか気弱な事を言っているので、第一王子のソロス殿下があとを継ぐことに異論はないらしい。
ソロス殿下、嫉妬深いが基本的には帝王学をきちんと身につけたお人だからね。
「陛下が倒れたそうじゃないか。大変なことになっているね」
リップルもギルドで噂を聞いたようで、夕食の席で話題になった。
「なぜ倒れたんだろう。いや、人間では七十歳はもういい年齢だろう。陛下はむしろあのお年までよく頑張ったほうだ」
うんうん、と一人納得するリップルなのだった。
「おうさまたいへんなの?」
「そうだぞコゲタ。王様をやるのはとっても大変なんだ。だから王子が次の王様になるわけだな。若くて元気な王様が出てくるぞ」
「ほえー」
コゲタはポカーンとして感心した後、お皿に盛られた料理をぱくぱく食べた。
うんうん、よく食べるのはいいことだ。
そしてリップルは無自覚だが、国王陛下の在位にとどめを刺したのは僕らであろう。
つい昨日、使者がリップル妊娠! との報を王宮に持ち帰ってすぐに国王陛下がぶっ倒れたのだった。
どこから漏れたのか、この国の一大事を告げる報はアーラン中を駆け抜けた。
いやあ、本当に今が平和な時代で良かったね。
そうでなければ、他の国が侵攻してきたかも知れない。
だが、いつそういう事態が起きるとも知れない。
アーランは早急に政治の空白を解消すべく、王位継承を決めたのだった。
まあ、前々からそういうつもりではあったのだが、思ったよりも陛下が元気なのでずっと棚上げになっていたのだそうだ。
その時間を僕とリップルが加速させた……!
いや、加速しちゃいかんのだが。
ということで、王位継承の儀が行われることになった。
各国の首脳を招いての儀式は3ヶ月後だが、形式的にでも王位を継承しておく実務は来週。
これには国家の重鎮がみんな参加するのではないか。
そんな事を考えながら、日々が過ぎた。
僕はナザル農園の主なので、ちょこちょこ遺跡の中の農園に出かけていって成果を調べる。
以前僕の貞操を狙ってきていた女子たちは、
「側女でもいいんですけど!」「二人目はいかがですか?」
とかたくましい。
いらない!
いらないからね!!
作物の育成状況は順調。
なにせ、遺跡はとんでもない栽培チート環境だ。
この場所では土を休ませる必要などなく、連作障害も起きない。
なのでガンガンに作物が育てられている。
一応、大豆や一部の作物のみ育成ができないということで、そういったものは輸入に頼ることになる。
そして輸入せねばならない作物がある場合、対抗としてこちらでしか育てられな作物などを輸出してバランスを取る必要がだな……!
ということで、僕はこの国で大変重要な役割を受け持っていることになる。
美食アンバサダーなどという謎の役職を持っているが、遺跡内の特殊農産物を受け持つ大規模農場の主であり、それらの輸出と国内流通を管理する大臣みたいな役職もやっているのだ……。
完全に国のシステムに組み込まれてしまったな?
「ではナザル様、本日は泊まっていかれては……」
「ちゃんと日帰りします!! 基本的に僕は管理のためにこっちに来てるんだからね」
ということで、きちんとその日の内に帰る。
一日に一箇所チェックが限界だな……。
本当なら泊まり込みたいところだが、危険過ぎる、僕の貞操が。
「妻が大事な時期なので帰りますね……」
職人たちが見送ってくれた。
「お疲れ様です。そのうち、リップル様と一緒にいらっしゃってください!」
「その手はありだなあ」
彼らとしては僕とリップルにいい印象を持ってもらうことで、扱いを良くしてもらう……みたいなところを期待しているのかも知れないが。
遺跡の中は環境も安定しているので、子どもが生まれたら連れてくるのもよかろうう。
家に戻ると既にリップルがおり、何か考え込んでいる風だった。
「どうしたどうした」
「これ見てくれナザル。招待状だ」
「招待状と言うと……王位継承の儀の?」
「そうなる。身内の儀式ですからカジュアルな格好でどうぞと書いてあるが……。私が推理するにこれは罠だな」
「間違いない、罠だ。王家の儀式にカジュアルな格好で行くバカはいないからね」
急いでそれっぽい服を仕立てねばということになった。
くそー、こういう大きな会に誘われることが増えたのだが、お陰で出費が増える!
貴族というのは意外とお金がなく、日々のやりくりに汲々としているのだと聞いたことがある。
こういうことだったんだな……。
なお、僕は王国にとって大いなる利益をもたらす作物を一手に握っているからな。
金はあるのだ……。
だが金があるからこそできる金遣いに慣れてしまってはならない。
絶対に身を滅ぼす。
「可能な限り予算控えめで礼服を用意しよう。なんなら貴族からレンタルするのでもいいから」
「そうしようか」
そういうことになったのだった。
22
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~
日之影ソラ
ファンタジー
十年前――
世界は平和だった。
多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。
誰もが思っただろう。
心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。
何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。
十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。
そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。
「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」
「クビ?」
「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」
めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。
彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。
そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。
一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。
順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる