俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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92・結婚準備が思いの外大規模だぞ

第280話 コゲタは何が食べたい?

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「あっ、ご主人いる!」

「そっか、じゃあコゲタはここでバイバイだな」

「うん! またねー!」

 コゲタが仲間たちに別れを告げて、アーラン入口を駆け下りてくるぞ。
 速い速い。
 ピューッと走ってきて、僕に飛びついてきた。

「うおー、キャッチ!」

「ごしゅじーん! ただいま!」

「おかえりー。今日も仕事を頑張ったみたいだね」

「うん! ににちにいっかいおしごとしてる!」

「偉いなー」

「ふんふん……ご主人おさけのんだでしょ?」

「あっ、分かってしまったか」

 コボルドの鼻はごまかせない!

「いいのよー。コゲタはおとなになったから、ちょっとのおさけはゆるしたげる」

「ほんと? コゲタの心が広くて助かっちゃったなあ」

「すっかり父と娘じゃないか」

「そうかなあ」

 リップルに言われて、僕は首を傾げた。

「でもどうして娘?」

「君、今の今までずっと気づいてなかったのかい? コゲタは女の子だよ?」

「な、なんだってー!!」

 僕はコゲタを抱っこしたまま飛び上がって驚いた。
 そうだったのか……。
 ずっと男の子だと思っていた。
 コボルドの性別はさっぱりわからんからな。

 だが、それはそれだ。
 コゲタが女子だからと言って、付き合い方はこれまでと変わらない。
 コボルドは頭がよくておしゃべりできる犬だからね。

「コゲタは僕らの結婚式で何が食べたい?」

「たべるのー? うーんうーん」

 コゲタが首を左右に傾げる。
 ずっと抱っこしててもあれなので、下ろしてあげた。
 するとアララちゃんも隣にやってきて、二人で逆方向に首を傾げている。

 うーんかわいい。

「アララはね、おにくがすき」

「コゲタもおにくすきよ!」

「おにくいいね!」

「いいねー」

「なるほどー。コゲタとアララちゃんのオーダーを確かに受け取ったよ」

「ナザル、肉なんてごくありふれたものじゃないのかい? 何を作ろうと言うんだい?」

「子どもが大好きな肉料理を思い出したんだよ。ひき肉と野菜を混ぜて作るから、柔らかくて食べやすいぞー」

 そう、ハンバーグだ!!
 子どもも大人も大好き!

 この世界にも屑肉を細切れにして、集めて焼く料理はある。
 だが、主に屑肉はスープに入れてしまうパターンが多いのだ。

 あのように、かっちりした形にひき肉を形成する料理が無い。
 ここはいつものところで開発するとしよう。

「おーいギルボウ!」

「なんだなんだ。夫婦と子どもで来やがったな」

「まだ結婚はしていないぞ」

「確定事項だろ? それに先に子どもがいるんじゃねえか。で、今度はなんだ」

「ひき肉を野菜と混ぜて固めて焼くやつだ」

「よしきた」

 理解が早い!

「既にここに、この間のインディカ米を精米する道具があってな」

「完成していたのか……」

「その試作品で、穴がでか過ぎたやつがある。こいつで肉をひき肉にできるんだ」

「おおーっ! じゃあ早速やってみよう」

 そういうことになった。
 料理で余った部位の屑肉を、片っ端からひき肉にする。
 さらにクズ野菜をみじん切りにして混ぜ、つなぎに卵と粉を使ってだな……。

「これ、肉の種類を統一しなくていいのか?」

「種類も部位もめちゃくちゃに混ぜていいんだよ、そういう食べ物だ」

「ほー! こりゃあ、下町でも作りやすそうだな。これを揚げるのか?」

「焼く! こうだ!」

 鍋に油を引いて、熱してから肉を乗せる!
 表面と裏面に焦げ目がつくくらいに焼いたあと、弱火でじっくりと中に火を通す……。

「よし、ハンバーグの完成だ!! でけえ!」

 わらじハンバーグになってしまった。
 素晴らしい大きさだ。

 厚みは薄めにして、火を通りやすく。
 サイズを大きくして切り分けるのがいいだろうか。

 焼き上がったものを皿に移した。

「ふーん、ナザルが考案したものにしては普通だねえ……」

「見た目はね。表裏を焼くことで肉汁を中に閉じ込めてある。カットしてみようじゃないか」

「どれどれ……?」

 ギルボウが包丁で、わらじハンバーグを切り分けた。
 中からはじゅわっと肉汁が溢れ出す。

「おおーっ!!」

「いいによい! おいしそー!」

 これはコゲタも安心して食べられるように、本体の味付けは最小限にしてあるのだ!
 ソースや塩、ハーブをかけて召し上がっていただきたい。

 それでは、ハンバーグを実食!

「おっ!! 悪くねえ!」

「表はしっかり焼けているのに、中はジューシーだねこれ。それに野菜も混じっているからあまり重くない……。いいねえこれ」

「おいしー! コゲタこれすき!」

 やはり大好評か、ハンバーグ!
 ギルボウがフームと唸った。

「屑肉にクズ野菜でここまで美味くなる料理だと? 最高じゃねえか。作るのも難しくねえし、粉だってどこにでもある。卵を混ぜるってのが新しい発想だったな。それに……焼いてても全然肉が崩れねえ」

「卵と粉がつなぎになってるんだ。肉と野菜をつなぎ、一塊ににしてくれる」

「なるほどなあ! こいつはいい! うちの定番メニューにさせてもらっていいか? こいつは食材のムダも省けて、何もかも美味しく食ってしまえる最高の料理だ!」

 ギルボウ絶賛!
 なるほど、料理人ならではの着眼点だなあ。

 料理をしていると、どうしても使いきれない食材が余ってしまう。
 これを一網打尽にした上で、美味しく食べられる僕の肉野菜ハンバーグ。
 ギルボウに大いに刺さったようだ。

「で、どうだったリップル?」

「お腹にもたれなくていいねえこれ。それに、種族を問わずみんなで食べられる、これは優れモノだよ。君が今まで作った料理の中で、恐らくあらゆる種族に響く逸品と言えるだろう」

「ハンバーグの評価が高い!!」

「その証拠に、わたしたちと同じものをコゲタも食べているだろう? 塩の分量とか、素材とか、何も変えていない同じものを」

「あ、確かに!」

 それは盲点だった。
 こうして、披露宴に出す料理ができあがったのだった。
 ハンバーグはメインディッシュにしてもいいし、カレーに乗せてもいいな。

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