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89・水田の中心で収穫を叫んだ油使い
第270話 水田での仕事に向かう
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「コゲタ。お前が一人前になったから、僕は断腸の思いで水田に単身赴任するぞ……!!」
「ご主人……!! いってらっしゃい!」
「寂しくならない?」
「さびしくなるー。アララとハムソンのところにじゅんばんにおとまりする!」
「ううっ、たくましくなったなコゲタ!」
「ご主人~!」
ひしっと抱き合う僕らなのだった。
くう、別れがつらい!
数ヶ月くらい、僕は水田に籠もるのだ。
米を育てるためには、遺跡に住み着いて作業に集中せねばならない!
こうして僕はアーランを後にした。
頑張るんだぞコゲタ!
アイアン級冒険者となり、パーティの一員となった今。
コゲタには以前のような自由さとかは許されなくなっているのだ!
だが、そこで得たものは責任と大人としての権利!
大いにこれを振るい、次に会うときには一回りも二回りも大きなコゲタになっていてくれ!
サイズじゃなくて心根の大きさね。
持っていくものは着の身着のまま。
あっちに全部あるし、なんと遺跡の中で経済圏あるからね……。
遺跡そのものが、アーランの衛星都市でもあるのだ。
さて、アーランを出ると季節はもうすぐ夏。
戻ってくる頃には晩秋であろうか。
収穫が終わった頃になるだろう。
そこで、アーランには僕のこれまでの集大成をお見せすることになる。
第四層まで降りてくると、知らせを聞いていた職人たちが出迎えてくれた。
「ナザルさん! お待ちしてました!」「これから一緒に働けるんですね!」「世界の食を変えた美食の革命児、ナザルさん! 一緒に働けて光栄です!」
凄い二つ名があるぞ!!
さて。ぐるりと水田を見させてもらうことにする。
青々と茂った稲が、等間隔でずらりと並んでいるではないか。
知識神から授かった田植えから育成までの流れを、職人たちに伝えた通りだ。
「なかなかシビアでしたよ! こんなデリケートな作物なんすねえ」
「いやあ、もっと雑にやってもいいんだが、これが最大の収穫量が得られる方法なんだよ。最適解ってやつをやってもらってる」
「ははあ、最適解……!」「美食の風雲児は言うことも賢そうだ」「やっぱり違うねえ」「頭でっかちの魔法使いや学者と違って、このお人は自ら体現してくださってるからなあ」
やたら持ち上げてくるじゃん!!
背中がむずむずするぞ。
こういう現場叩き上げの職人っていうのは、上から来たインテリの上司を馬鹿にしたり邪険にしてたりするもんじゃないのか。
「だってナザルさん、自分の足で歩き回ってあらゆる食材を探してきて、それをアーランに流通させたでしょう」「最初に全部自分で味わって、料理も自分で考えてからプロの料理人にやり方を伝授したって聞いてますよ」「あなたがアーランに広めた料理が何種類あると思ってるんですが。こんなの尊敬するなって言うほうが無理ですよ」「知力と体力と労働、成果、栄誉をすべて持っている天下の油男ですよ。巷では吟遊詩人の歌にも謳われてるんですから」
「なんだってー!! し、知らんかった。どうりで冒険者ギルドに行ったり酒場に行ったりするとやたら注目を浴びるわけだ」
特に僕は特徴的な外見をしているからな。
アーランでこの姿をしている人間は他にいない。
それで僕はめちゃくちゃ尊敬されているのか……。
「しかも現場に来て、これから収穫まで俺等と寝食をともにするわけじゃないですか」「上の階層で仕事してる娘たちの間じゃ、ナザルさんが来るって話題でもちきりだったんですよ」「夜這いされますぜ夜這い」
「や、やめてくれえー」
「おや、男性の方がお好きで……」
「いや、普通に女性が好きだが、もともとそういう欲が薄いのだ」
「色よりも食!!」「まさに食の伝道師だぜ!」「その心身を全て食の伝道に捧げる……!!」「信じられるお人だー!!」
職人は男性陣ばかりなのだが、大いに盛り上がっている。
「あっ、向こうでうちのかああと娘が仕事してるんで呼んできます」「みんなでナザルさんに挨拶するんで……」
「まだ挨拶が終わらないの!?」
とんでもないことになってしまったぞ。
そして結論から言うのだが、その日は夕方まで面通しし続けた。
さらにさらに、職人の娘さんたちから凄い熱視線を浴びせられてしまったのだった。
恐ろしい恐ろしい。
僕の貞操のピンチである。
油の城塞を作って眠るとしよう。
夜には宴が行われた。
完全に解放された第三層が経済特区みたいになっており、ここに地上から様々なものが運び込まれているのだ。
「普通に酒の肴として漬物とか野菜の味噌漬けが出てくるんだが? あっ、大豆の煮物が……。和風だなあ。僕が味噌と醤油をこの国に広めたんだったな……」
あらゆるメニューに味噌と醤油を感じる。
合わせられる酒は蒸留酒を割ったやつだ。
今後、この位置を日本酒が占めることになるであろう!!
味噌と醤油には日本酒が合うんだからな。
「見ろよ、ナザルさんが不敵な笑みを浮かべてるぜ」「こりゃあ俺達が育てた米が予想通りの出来上がりで会心の笑みなんだ」「なんて安心感を与えてくれるんだ」
なにかする度に持ち上げてくるのはなんだろうねここは!
「ご主人……!! いってらっしゃい!」
「寂しくならない?」
「さびしくなるー。アララとハムソンのところにじゅんばんにおとまりする!」
「ううっ、たくましくなったなコゲタ!」
「ご主人~!」
ひしっと抱き合う僕らなのだった。
くう、別れがつらい!
数ヶ月くらい、僕は水田に籠もるのだ。
米を育てるためには、遺跡に住み着いて作業に集中せねばならない!
こうして僕はアーランを後にした。
頑張るんだぞコゲタ!
アイアン級冒険者となり、パーティの一員となった今。
コゲタには以前のような自由さとかは許されなくなっているのだ!
だが、そこで得たものは責任と大人としての権利!
大いにこれを振るい、次に会うときには一回りも二回りも大きなコゲタになっていてくれ!
サイズじゃなくて心根の大きさね。
持っていくものは着の身着のまま。
あっちに全部あるし、なんと遺跡の中で経済圏あるからね……。
遺跡そのものが、アーランの衛星都市でもあるのだ。
さて、アーランを出ると季節はもうすぐ夏。
戻ってくる頃には晩秋であろうか。
収穫が終わった頃になるだろう。
そこで、アーランには僕のこれまでの集大成をお見せすることになる。
第四層まで降りてくると、知らせを聞いていた職人たちが出迎えてくれた。
「ナザルさん! お待ちしてました!」「これから一緒に働けるんですね!」「世界の食を変えた美食の革命児、ナザルさん! 一緒に働けて光栄です!」
凄い二つ名があるぞ!!
さて。ぐるりと水田を見させてもらうことにする。
青々と茂った稲が、等間隔でずらりと並んでいるではないか。
知識神から授かった田植えから育成までの流れを、職人たちに伝えた通りだ。
「なかなかシビアでしたよ! こんなデリケートな作物なんすねえ」
「いやあ、もっと雑にやってもいいんだが、これが最大の収穫量が得られる方法なんだよ。最適解ってやつをやってもらってる」
「ははあ、最適解……!」「美食の風雲児は言うことも賢そうだ」「やっぱり違うねえ」「頭でっかちの魔法使いや学者と違って、このお人は自ら体現してくださってるからなあ」
やたら持ち上げてくるじゃん!!
背中がむずむずするぞ。
こういう現場叩き上げの職人っていうのは、上から来たインテリの上司を馬鹿にしたり邪険にしてたりするもんじゃないのか。
「だってナザルさん、自分の足で歩き回ってあらゆる食材を探してきて、それをアーランに流通させたでしょう」「最初に全部自分で味わって、料理も自分で考えてからプロの料理人にやり方を伝授したって聞いてますよ」「あなたがアーランに広めた料理が何種類あると思ってるんですが。こんなの尊敬するなって言うほうが無理ですよ」「知力と体力と労働、成果、栄誉をすべて持っている天下の油男ですよ。巷では吟遊詩人の歌にも謳われてるんですから」
「なんだってー!! し、知らんかった。どうりで冒険者ギルドに行ったり酒場に行ったりするとやたら注目を浴びるわけだ」
特に僕は特徴的な外見をしているからな。
アーランでこの姿をしている人間は他にいない。
それで僕はめちゃくちゃ尊敬されているのか……。
「しかも現場に来て、これから収穫まで俺等と寝食をともにするわけじゃないですか」「上の階層で仕事してる娘たちの間じゃ、ナザルさんが来るって話題でもちきりだったんですよ」「夜這いされますぜ夜這い」
「や、やめてくれえー」
「おや、男性の方がお好きで……」
「いや、普通に女性が好きだが、もともとそういう欲が薄いのだ」
「色よりも食!!」「まさに食の伝道師だぜ!」「その心身を全て食の伝道に捧げる……!!」「信じられるお人だー!!」
職人は男性陣ばかりなのだが、大いに盛り上がっている。
「あっ、向こうでうちのかああと娘が仕事してるんで呼んできます」「みんなでナザルさんに挨拶するんで……」
「まだ挨拶が終わらないの!?」
とんでもないことになってしまったぞ。
そして結論から言うのだが、その日は夕方まで面通しし続けた。
さらにさらに、職人の娘さんたちから凄い熱視線を浴びせられてしまったのだった。
恐ろしい恐ろしい。
僕の貞操のピンチである。
油の城塞を作って眠るとしよう。
夜には宴が行われた。
完全に解放された第三層が経済特区みたいになっており、ここに地上から様々なものが運び込まれているのだ。
「普通に酒の肴として漬物とか野菜の味噌漬けが出てくるんだが? あっ、大豆の煮物が……。和風だなあ。僕が味噌と醤油をこの国に広めたんだったな……」
あらゆるメニューに味噌と醤油を感じる。
合わせられる酒は蒸留酒を割ったやつだ。
今後、この位置を日本酒が占めることになるであろう!!
味噌と醤油には日本酒が合うんだからな。
「見ろよ、ナザルさんが不敵な笑みを浮かべてるぜ」「こりゃあ俺達が育てた米が予想通りの出来上がりで会心の笑みなんだ」「なんて安心感を与えてくれるんだ」
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