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87・独り立ちを眺める夏
第266話 おお、コゲタがパーティを組んだのか
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「いってきます!!」
「あっ、コゲタ、ついに冒険者として仲間と一緒に……!」
「いってきます!!」
元気にコゲタが宣言してくれる。
おお、なんだろうこの喜び半分、寂しさ半分の心地は。
大切に育てていた子どもがついに独り立ちしてしまったような……。
いやいや、僕は現在も、前世でも独り者だったからそう言う気持ちは全然分からないんだが。
話を聞けば、コゲタは同じアイアン級の若者たちとパーティを組んで、今日は遺跡から職人街への資材運びの仕事をするらしい。
力がないコボルドでも、荷運び用のロバをちゃんと連れていければ問題がない。
コゲタは動物にとても好かれるので、最適な人材と言えよう。
他の若者たちも、この間チェックしたが気の良い連中だ。
コゲタと仲良くしてくれるだろう。
だがなんだこの寂しさは。
「いってらっしゃい!!」
だが!
送り出す瞬間は元気にやるべきであろう。
僕は空元気を振り絞り、コゲタを大きな声を出して見送ったのだった。
その後、しおしおっとなった。
「ナザル殿がしおしおになっておられる」
神官氏がやって来た。
宿屋一階の神殿に住んでいるので、まあご近所さんといえばご近所さんだ。
マルチーズコボルドのハムソンも元気に走ってきて、近くの椅子にぴょんと飛び乗る。
「コゲタが独り立ちしてしまった」
「ははあ、親の気持ちを味わいましたね。だが彼は仕事の後は帰ってくるのでしょう?」
「それはそうなんだが、今までずっと僕が連れ回してたからなあ。ついに自分で判断してパーティを組んで、仲間と冒険に出かけるほどに……」
「子どもはいつか育ち、巣立っていくものです」
「うーん」
「これは重症だ。ハムソン!」
「はいはーい! げんきげんき! げんきだーして! げんきげんき! げんきだーして!!」
ハムソンが僕の周りをぐるぐる巡りながら踊る。
なんか元気になってきた気がするぞう。
「あまり心配なようなら、ちょっと様子を見に行かれるのがよろしい。そもそもナザル殿も冒険者ですし、さらには遺跡に自分の畑を持つ実業家なのですから彼らの仕事を見に行くのは大変合理的なやり方なのです」
「なるほどー!! さすが知識神の神官だ……!! 凄い知恵が出てきたもんだ」
僕はすっかり感心してしまった。
ということで。
水田の様子を見るのと同時に、コゲタたちの仕事振りを偶然を装いながら観察しに行こうではないか。
僕はいそいそと出かける準備をした。
水田で仕事をしてもらうために雇った職人たちに、差し入れも準備だ。
ギルボウに頼んで、サッと食べられる美味しいカレー味の焼き肉を大量に作ってもらった。
これをケータリングみたいなケースに入れてだな。
出発である。
既にコゲタたちは遺跡の中に入っている。
僕が大量の荷物を抱えてやってくると、見張りの兵士たちが「おっ」という顔をした。
「ナザルさん、コゲタちゃんなら中で仕事してますよ」「仲間たちもみんなげんきで若々しくて、いやあ、いいもんですなあ……」
「なるほどなるほど……情報提供ありがとう」
僕は兵士たちに礼を言い、第一階層をもりもり歩いた。
おっ、いたいた……!!
そーっと遠くから眺めてみる……。
おお、なんか荷物をみんなで運び込んでいる。
コゲタがよたよた重そうに運んでいるのを、仲間が応援しているな。
いい空気だ!
ぶっちゃけ、運ぶだけならコゲタには不向きな仕事だ。
だがコゲタには動物との相性抜群という武器があるのだ!
ほら、ロバが動き出したらコゲタとおしゃべりしながらずんずん歩いていく。
なんとロバ二頭が荷車を引きながら、コゲタと一緒に歩くではないか。
たった一人で二頭をコントロールできる!
これがコゲタの強みだ。
どうですがうちの子は。優秀でしょう。
僕がニヤニヤしていると、コゲタが近くを通りかかり、鼻をくんくんさせた。
「ご主人のによいがする……」
「ナザルさんの? それは、ナザルさんは遺跡の中に畑まで持ってるすごい人だし、よく来るからでしょ」
「そっかー。でもちかくにいるみたい」
「お仕事で遺跡に来るのもよくあるでしょ」「ナザルさんもお仕事なら邪魔しちゃ悪いよ」
「そだね! いこー!」
わいわいと新人パーティは行ってしまった。
おお、コゲタ!
頑張っているじゃないか。
僕は感動で涙が出そうだよ。
ということで、テンション高く第四階層まで降りて来た僕。
水田での作業をもりもりやっている職人たちを集め、焼き肉を振る舞ったのだった。
僕が大きな背負子に満載するくらいの量の焼き肉だぞ。
「いやあ、いいオーナーだよなあ」「慣れない仕事でどうなるかと思ったけど、なかなかこの米ってのの栽培も奥深いし」「こんなに水を張るなんてなあ」
そうそう。
遺跡の中には、作物の受粉を助けるためにたくさんの昆虫が放されている。
彼らは遺跡の中に巣を作り、自らの糧を得る代わりに作物の実りを助けているのだ。
で、水田にも当然それはいるんだが……。
良からぬ虫も混じっていたり、あるいはどこから入り込んできたのか雑草まで出たりする。
ということで、この水田には合鴨みたいなのが放されているのだ!
こいつらがガアガア言いながら余計な虫や雑草をもりもり食べる。
用が済んだら職人たちがご飯にする……!
食物連鎖である。
ということで、僕はコゲタの仕事振りと水田の視察の2つを、同時に進めることが出来たのである。
「あっ、コゲタ、ついに冒険者として仲間と一緒に……!」
「いってきます!!」
元気にコゲタが宣言してくれる。
おお、なんだろうこの喜び半分、寂しさ半分の心地は。
大切に育てていた子どもがついに独り立ちしてしまったような……。
いやいや、僕は現在も、前世でも独り者だったからそう言う気持ちは全然分からないんだが。
話を聞けば、コゲタは同じアイアン級の若者たちとパーティを組んで、今日は遺跡から職人街への資材運びの仕事をするらしい。
力がないコボルドでも、荷運び用のロバをちゃんと連れていければ問題がない。
コゲタは動物にとても好かれるので、最適な人材と言えよう。
他の若者たちも、この間チェックしたが気の良い連中だ。
コゲタと仲良くしてくれるだろう。
だがなんだこの寂しさは。
「いってらっしゃい!!」
だが!
送り出す瞬間は元気にやるべきであろう。
僕は空元気を振り絞り、コゲタを大きな声を出して見送ったのだった。
その後、しおしおっとなった。
「ナザル殿がしおしおになっておられる」
神官氏がやって来た。
宿屋一階の神殿に住んでいるので、まあご近所さんといえばご近所さんだ。
マルチーズコボルドのハムソンも元気に走ってきて、近くの椅子にぴょんと飛び乗る。
「コゲタが独り立ちしてしまった」
「ははあ、親の気持ちを味わいましたね。だが彼は仕事の後は帰ってくるのでしょう?」
「それはそうなんだが、今までずっと僕が連れ回してたからなあ。ついに自分で判断してパーティを組んで、仲間と冒険に出かけるほどに……」
「子どもはいつか育ち、巣立っていくものです」
「うーん」
「これは重症だ。ハムソン!」
「はいはーい! げんきげんき! げんきだーして! げんきげんき! げんきだーして!!」
ハムソンが僕の周りをぐるぐる巡りながら踊る。
なんか元気になってきた気がするぞう。
「あまり心配なようなら、ちょっと様子を見に行かれるのがよろしい。そもそもナザル殿も冒険者ですし、さらには遺跡に自分の畑を持つ実業家なのですから彼らの仕事を見に行くのは大変合理的なやり方なのです」
「なるほどー!! さすが知識神の神官だ……!! 凄い知恵が出てきたもんだ」
僕はすっかり感心してしまった。
ということで。
水田の様子を見るのと同時に、コゲタたちの仕事振りを偶然を装いながら観察しに行こうではないか。
僕はいそいそと出かける準備をした。
水田で仕事をしてもらうために雇った職人たちに、差し入れも準備だ。
ギルボウに頼んで、サッと食べられる美味しいカレー味の焼き肉を大量に作ってもらった。
これをケータリングみたいなケースに入れてだな。
出発である。
既にコゲタたちは遺跡の中に入っている。
僕が大量の荷物を抱えてやってくると、見張りの兵士たちが「おっ」という顔をした。
「ナザルさん、コゲタちゃんなら中で仕事してますよ」「仲間たちもみんなげんきで若々しくて、いやあ、いいもんですなあ……」
「なるほどなるほど……情報提供ありがとう」
僕は兵士たちに礼を言い、第一階層をもりもり歩いた。
おっ、いたいた……!!
そーっと遠くから眺めてみる……。
おお、なんか荷物をみんなで運び込んでいる。
コゲタがよたよた重そうに運んでいるのを、仲間が応援しているな。
いい空気だ!
ぶっちゃけ、運ぶだけならコゲタには不向きな仕事だ。
だがコゲタには動物との相性抜群という武器があるのだ!
ほら、ロバが動き出したらコゲタとおしゃべりしながらずんずん歩いていく。
なんとロバ二頭が荷車を引きながら、コゲタと一緒に歩くではないか。
たった一人で二頭をコントロールできる!
これがコゲタの強みだ。
どうですがうちの子は。優秀でしょう。
僕がニヤニヤしていると、コゲタが近くを通りかかり、鼻をくんくんさせた。
「ご主人のによいがする……」
「ナザルさんの? それは、ナザルさんは遺跡の中に畑まで持ってるすごい人だし、よく来るからでしょ」
「そっかー。でもちかくにいるみたい」
「お仕事で遺跡に来るのもよくあるでしょ」「ナザルさんもお仕事なら邪魔しちゃ悪いよ」
「そだね! いこー!」
わいわいと新人パーティは行ってしまった。
おお、コゲタ!
頑張っているじゃないか。
僕は感動で涙が出そうだよ。
ということで、テンション高く第四階層まで降りて来た僕。
水田での作業をもりもりやっている職人たちを集め、焼き肉を振る舞ったのだった。
僕が大きな背負子に満載するくらいの量の焼き肉だぞ。
「いやあ、いいオーナーだよなあ」「慣れない仕事でどうなるかと思ったけど、なかなかこの米ってのの栽培も奥深いし」「こんなに水を張るなんてなあ」
そうそう。
遺跡の中には、作物の受粉を助けるためにたくさんの昆虫が放されている。
彼らは遺跡の中に巣を作り、自らの糧を得る代わりに作物の実りを助けているのだ。
で、水田にも当然それはいるんだが……。
良からぬ虫も混じっていたり、あるいはどこから入り込んできたのか雑草まで出たりする。
ということで、この水田には合鴨みたいなのが放されているのだ!
こいつらがガアガア言いながら余計な虫や雑草をもりもり食べる。
用が済んだら職人たちがご飯にする……!
食物連鎖である。
ということで、僕はコゲタの仕事振りと水田の視察の2つを、同時に進めることが出来たのである。
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