俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
263 / 337
86・コゲタ、アイアン級になる

第263話 成人おめでとう!

しおりを挟む
 コボルドの誕生日というのはどうなるのだろうか?
 良く分からない。
 とりあえず、他のコボルドに聞いてみてそろそろ大人かな~と判断される頃になったら、成人したとみなすみたいな感じになっている。

 つまり、今日をコゲタの誕生日とし、成人したとみなす!

「お誕生日おめでとうコゲタ!!」

「やったー!!」

 僕が鍛冶屋に頼んで作ってもらった、特製ワッペンを洋服の胸につけてあげた。
 コゲタの肉球をモデルにしていて、アーランの言葉でコゲタって書かれているぞ。

「かっこいー!!」

「かっこいいだろー。これでコゲタは大人だぞ」

「ほんとー!? コゲタおとな!?」

「そうだぞー」

「やったー!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねるコゲタなのだった。
 ということで、大人になったコゲタ。
 彼にはやるべきことがあるのだ。

「コゲタは冒険者にならなくちゃな。冒険者ギルドに登録するには、成人していないといけないんだ」

「おー、とうろく! ぼうけんしゃなる! ご主人といっしょにぼうけんするー」

「いいぞいいぞ。シルバー級がついてればそれなりの冒険にも参加できるからな」

 というわけで、一階に降りて朝食を摂った。
 朝からパスタである。

 おかみさんに、「今日からコゲタは成人なんですよ」と伝えた所、「まあ!! そりゃあお祝いしなくちゃねえ!」ということで香草と鳥肉のパスタを作ってくれたのだ。
 この香草はコボルドが好きな、爽やかな香りと酸味がするやつだね。
 オブリーオイルで味を整えてあるから、ちゃんと美味しい。

 コゲタは本日の冒険者ギルド登録に向けて、もりもりと食べた。
 大いに食べた。

 僕も食べた。
 うーん、優しいお味。

「ナザルは塩とピーカラ掛けるかい?」

「お願いします」

 最近の美食に慣れた舌には優しい味過ぎたな!
 というわけで気合を入れた僕ら。

 知識神の神殿で、ハムソンが神官服を来て見送ってくれた。

「うおー!! うおーうおー! かっこいいバッヂ! いいなー!」

「いいでしょー。ご主人にもらったのー」

「いいなー! すごいなー! かっこいーなー!」

 ハムソンに散々褒められて、コゲタはもうむふーっと鼻息も荒く、テンションはマックス。
 年上の威厳を見せるためか、踊りださないくらいの落ち着きは保っているが……尻尾が耐えきれずにピコピコと動き回っているではないか。

「よーし、じゃあ行こうなコゲタ! ハムソン、また後でな!」

「いってらっしゃーい!!」

 ぴょんぴょん跳ねながら両手を振るハムソンなのだった。
 元気元気。

 そして我が家のコゲタも元気さでは負けてはいない。
 スキップしながら僕より先を歩いていく。
 すぐに行き過ぎた事に気づいて、ちょっと戻ってきた。

「楽しみ?」

「たのしみ!」

 そりゃあ何よりだ。
 コゲタを連れて冒険者ギルドを訪れたら、いつもののっぽでメガネの受付嬢がいた。

「あらナザルさん、今日はどんな御用でしょうか」

「今日は僕の用事じゃないんだ。主役はこっちでね」

「コゲタです! ぼうけんしゃにとうろくにきました!」

 コゲタが元気に告げた。
 すると、古参の冒険者たちがこぞって、「おおーっ!!」「ついにか!」「そういえば初めて来た時に比べて大きくなったよなあ」「頑張れよコゲタ!」と声を掛けてくれる。

 コゲタは嬉しそうに尻尾をピコピコしながら、みんなに手を振った。
 やんややんや、古参たちが盛り上がる。
 コゲタももう、ギルドに顔を出して二年。

 僕のお供みたいな存在として馴染んでるもんな。
 僕が仕事を受けている間に、他の冒険者に撫でられたり肉球を触らせたりしているのを知っているぞ。

「なるほどー。ついに噂のコゲタさんが冒険者登録を! 我が冒険者ギルドは、本来なら春先に一挙にアイアン級を採用しています。ご存知とは思いますが」

「知ってる知ってる。でも、基本的にはいつデビューしても自由だろ?」

「ええ、原則的にはそうです。ですので、コゲタさんはアイアン級の採用試験を受ける資格を持っています。冒険者ギルドは誰にでも門戸を開いていますからね。後は……試験の先生を引き受けてくれる冒険者の方がいれば……」

 受付嬢がギルドを見回すと、古参の冒険者たちがニコニコ顔で一斉に手を上げた。
 これを見て、今年デビューした新人アイアン級たちがざわつく。

「あ、あのコボルド何者だ……!?」「すげえ人望……いや、犬望だ……!!」「先輩方がここまで期待するとは……」

 色々事情があって、犬やコボルドを家に置いておけない冒険者は多い。
 彼らにとって、ギルドに来たら可愛がれるコゲタはみんなの犬みたいな存在なのだ!

 大変ありがたい申し出なので、ベテランたちにちょっとずつ試験をしてもらうことにするのだった。
 試験官が受験生の十倍くらいいるぞ……!!

 しかもみんなニッコニコで、合格させる気満々だぞ。
 うーん、これは不正受験!

 ま、いいか。

 こうしてコゲタの冒険者ギルドデビューのため、アイアン級資格試験がスタートするのだった。

「頑張れよコゲタ!」

「がんばる!!」

「「「「「がんばれー!!」」」」」

 いやいや、試験官がみんなで応援したらダメだろ!

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...