俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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85・カレーライス誕生?

第262話 第二王子の丼飯

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 せっかくだから丼を作ってもらった。
 いつものドワーフ職人、土器も作ってくれるんだな。
 しかも綺麗に釉薬を塗っているので、なんとも素晴らしい色合いだ。

 これの完成には大変時間がかかるので、ひとまず丼っぽい器を持ってデュオス殿下のお屋敷に行くことにした。
 もう米は、シェフたちの試食ぶんと殿下ご一家が食べる分しかないぞ。

 僕が訪れると、なんと殿下が玄関まで出てきた。

「ナザル!! 首を長くして待っていたぞ!! 遠い島に何日も掛けて旅をしてまで手に入れてきた作物なるもの。早く味わいたいものだ!!」

「殿下! また一回りマッチョになりましたね……。ご期待ください」

「おおーっ!!」

 雄叫びをあげるデュオス殿下なのだった。
 あまりに凄まじい咆哮だったので、兵士たちが慌てて振り返った。
 殿下、鍛えに鍛えましたねえ。 

 流石に王族に漬け丼はよろしくない。
 ということで、僕はここで新たな丼ものを開発することにした。

「ナザル殿ー!」

「おお、シェフたちー!!」

 彼らと再会を喜び合う。

「時に、これこれこう言うものを作ってくれ。ひき肉ならあるだろう?」

「ありますね」「ひき肉を粉やハーブや野菜と混ぜてこねて」「衣を作って揚げる? ふむふむ、我々がおやつで作る料理に近いですね。これは」

「メンチカツだ。メンチカツ丼で行こう」

 大変ジャンクなのだ!
 だが、揚げたてのそれに特製ソースを掛けて米の上に載せれば……!

「うおおおお白く輝く穀物!」「なんですかそれは!」「味は無味……!? いや、粘りがあって噛むほどにほのかに甘くなる……」「これ単体では力が足りない気がしますが……」

「メンチカツを載せてソースを掛けて召し上がれ……!」

「なんですと」「ふおおおおお」「サクサクの中に柔らかなひき肉が……」「溢れ出した肉汁がソースと絡み合ってこの穀物……米に染み込んでいく……」「あっ! 肉汁ソースの染み込んだ米が化けた!!」

 愕然とするシェフたち。
 そこに、シャザクが駆けつけた。

「ナザルーっ!! 米とやらを食べたそうじゃないか! どうだ? 美味いのか? 美味いっぽいな! 私にも試食を!! どれどれ……うほーっ!! うまあーい!!」

「元気だなー。だが、肉汁とソースが染み込んだ米も美味いし、まっさらなままメンチカツと一緒に食べても美味い! どれ、僕も試食を……うまーいっ!!」

 みんなで叫びながらガツガツとメンチカツ丼を平らげた。
 いやあ美味しかった。
 悪魔的な美味さだ。

 これを殿下に召し上がっていただかねばなあ。
 炊きたてご飯に揚げたてメンチカツを載せ、特製ソースをたっぷりと……。
 これを冷めぬよう蓋をして、シャザクとシェフたちとともに殿下たちの部屋を訪れるのだ。

「お待たせいたしました殿下! 奥方様! お嬢様!」

「ぬおおおおお! 楽しみにしていたぞ!」

「まあ、まあまあまあ! 蓋がしてあるのに美味しそうな匂いがしてくるわ!」

「はやく食べたあい!!」

 お嬢さんは野生化が進んでいないか?
 サーブされるメンチカツ丼。
 食べ方について、僕はレクチャーした。

「スプーンでメンチカツを割り、下に敷いてある米といっしょに食べて下さい。それだけです!」

「なるほど、この白くつやつや輝く細かなものが米か……。どれどれ……?」

 まずはデュオス殿下が先陣を切った。
 サクサクに上がった衣をスプーンが割ると、中からはたっぷり肉汁が溢れ出す。

「ぬおっ! こ、これと米を混ぜて……むむうっ!!」

 大きく口を開けて食べた殿下が目を見開いた。
 まだ何も言わず、咀嚼している。

 飲み下した後、用意された甘くないお茶を飲んだ後、殿下がはあ、とため息をついた。

「このメンチカツなる揚げ物だけなら、美味かろうがやや重い。ソースは爽やかな味だが、単体で食べるには味が濃い。だが……この無味のようにも感じる米がそれらを受け止めると、全てのバランスが取れるのだ……! これは……料理を支えるための脇役か? いや、この米こそが、料理の美味さを受け止めてそれを何倍にも強くするのだ! 美味い!! これは美味いぞ!! うーまーいーぞーっ!!」

 我慢できず、奥方ももりもり食べ始めた。

「あら! あらあらあら!! 本当に美味しいわ! 普段なら胸焼けしてしまいそうなのに、お米があるとどんどん食べられてしまうわ!」

「美味しいーっ! これ、お米って、何にでも合いそうよね。ねえナザル、お米がたくさん作れるようになったらいろんなものと組み合わせたものを献上なさいよ!」

「お嬢様、慧眼です。まさしく、米はこの姿のまま、どんなものと合わせても美味くなる! 例えば上質な酒と料理を合わせると、お互いの美味しさを増幅して何倍にも美味しくなります。米もまた同様。料理の良さを引き出し、その上で米自体も輝く……!!」

「た、食べたあい! でも今は眼の前の食事を食べるわ!!」

 第二王子一家に、お米は大好評だった。
 僕は基本的に、米をいかに美味しく食べるかという料理しか出さないからな……!!

 米の増産が成った後には、丼以外の食も味わっていただきたいものだ。

 ……何か忘れているような……。
 あっ、カレーライス作る前に精米した米を使い切ってしまった!!

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