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85・カレーライス誕生?
第259話 アーランよ、僕は帰ってきた!
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船の旅はのんびりだった。
米が手に入ったので、僕は船員たちに漬け丼などを振る舞った。
生魚はちょっと……と抵抗を見せた船員たちだったが……。
「よく見るんだ。こうして塩っ辛いタレの中にずーっと漬け込んでおく。そうすると、魚の肉の中にまでこの塩辛さが染み込んでだな……。耐えられなくなった寄生虫が浮いてくる。というかこいつらも浸透圧で死ぬ!! ただのタンパク質だよ」
「恐ろしいお人だ……!!」「そうか、生魚はこうやって食えるようになるのか!」
高濃度食塩水は体についた寄生虫を取る効果があるからね。
ここで使用したのは船に積載されていた魚醤だ。
それを煮詰めてむちゃくちゃに塩辛くしてある。
「だがよナザルさん、こんなに塩辛いんじゃ食えたもんじゃないぜ」「そうだそうだ」「ビスケットじゃ受け止めきれねえ」
「任せてくれ。そのための米だ! 厨房係くん、炊き終わったかな?」
「へい! もうバッチリです! うわーっ、ナザルさんの言う通り炊いたら、こんなふっくらと炊きあがるのか! 最後に蒸らすんですねえ!」
ちょっと胚芽が混じっているとは言え、白い米がみちみちになった鍋を見て、他の船員たちもどよめいた。
「オー!」「なんだあれは!!」「俺達が食った米じゃねえ!!」「い、いや落ち着け!」「米なんか味がしなかったじゃねえか」
「ハハハハハ、それは君たち、米の真価を知らなかったんだ。こいつを皿に盛るだろう。そこに、この塩辛い魚醤タレに漬けた刺し身をこう並べていく……」
「あっ、タ、タレが白い飯に染み込んでいく!」「なんだ!? 妙に美味そうな気がしてくる……」「だが、真っ白に炊けた飯はどう食うんだ?」
「模範演技をみせてやろう! こうだ!!」
僕はフォークを使ってむしゃあっ!!と飯を食った。
塩辛い刺身ごとだ!
うんうん、本当なら醤油を使うべきなのだろうが、魚醤でも十分に美味い。
ファイブショーナンの魚醤はなんというか癖がなくて食べやすいな。
「まあ漬け丼と言っていいだろう。美味いぞ……!」
「あ、あんたほどの男がそう言うなら……」「食べる気か!?」「勇者だ!!」
一人の船員が進み出て、僕の真似をして米にガっとフォークを突き立てた。
「うおっ! 一気に掬える! すげえ粘りだぞ! これを魚といっしょに……」
ムシャアッと食べた船員は、もぐもぐやるうちに目の色が変わってきた。
「おっ、おっ、おぉっ!? う、美味いんじゃないかこれ!? 味が無い米が塩辛い魚をちょうどよく受け止めてて食べやすくなってる! それに……噛むとしょっぱくなっていた米が……甘い!?」
出たな食レポ。
これが知識神の加護であることはよく分かっているんだ。
仲間からの思わぬ好評を聞き、船員たちが我も我もと漬け丼に群がった!
「あっ、普通に美味い!」「生の魚でこんなに美味くなるのか!?」「未知と未知が組み合わさった未知の料理なのになんか食える!!」
そうだろうそうだろう。
僕は漬け丼をこの船に伝授した。
寄生虫は根気よく取り除く。そうすれば刺身も食えるようになる。
川魚よりは全然少ないしな。
ただし、まだ冷凍技術が普及してないからイカとかサケはやめておくんだぞ。
船員たちは競って様々な魚を釣り上げる。
これをみんなで捌く。
そして漬け丼にして食う。
何が美味いか、これは漬けに合う、こっちは漬けに合わない……などなど、知見が溜まっていったぞ。
あっという間にこの船の船員たちは、この世界で二番目に漬け丼に詳しくなった。
なお、この塩分の量でも大丈夫なのは常に労働し、汗をかくためだ。
地上で提供するなら、もう少し減塩しないとな……。
僕が広めるグルメは全て諸刃の刃である。
健康な運動習慣が無い限り、もれなく生活習慣病へといざなう。
美食とは厳しいものなのだ……!!
なお、漬け関係はコボルドにはちょっと塩分が多すぎるので、魚醤少なめの漬け丼を出すのだった。
「おおーっ! もちもちのおこめはじめてー!!」
ハムソンがむしゃむしゃむしゃーっと食べ、コゲタがそれを見て、ちょっと上品な感じで食べている。
年上の威厳を見せつけている!
なお、マキシフは他の船員たち同様、豪快に飯を食う。
「どう?」
「美味しいですね! 僕らコボルドは生肉も食べますが、その欲を存分に満たしてくれます。これは満腹度以上に、僕らの心を満たしてくれている気がします」
「頭のいい食レポだ!」
なお、漬け丼は脂っこくないのでリップルにも好評であった。
そしてダイフク氏は生魚をそのまま呑んだ。
「喉越しの人め」
「ハハハ、様々な喉越しが日々味わえて楽しいですぞ」
帰りの船は、すっかりあらゆる魚を漬けにする旅になってしまったな。
とても楽しく、そしてお米を堪能できた。
そして行きよりもずっと早い体感で、僕らは帰ってきたのである。
「アーランだー! アーランが見えるぞー!!」
銅鑼がジャーンジャーンジャーン!と鳴る。
舳先の向こう、水平線近くに見えたのは、周囲よりも盛り上がった遺跡の姿。
その上にあるのがアーランだ。
懐かしきホームタウン!
僕は帰ってきたぞ!
米が手に入ったので、僕は船員たちに漬け丼などを振る舞った。
生魚はちょっと……と抵抗を見せた船員たちだったが……。
「よく見るんだ。こうして塩っ辛いタレの中にずーっと漬け込んでおく。そうすると、魚の肉の中にまでこの塩辛さが染み込んでだな……。耐えられなくなった寄生虫が浮いてくる。というかこいつらも浸透圧で死ぬ!! ただのタンパク質だよ」
「恐ろしいお人だ……!!」「そうか、生魚はこうやって食えるようになるのか!」
高濃度食塩水は体についた寄生虫を取る効果があるからね。
ここで使用したのは船に積載されていた魚醤だ。
それを煮詰めてむちゃくちゃに塩辛くしてある。
「だがよナザルさん、こんなに塩辛いんじゃ食えたもんじゃないぜ」「そうだそうだ」「ビスケットじゃ受け止めきれねえ」
「任せてくれ。そのための米だ! 厨房係くん、炊き終わったかな?」
「へい! もうバッチリです! うわーっ、ナザルさんの言う通り炊いたら、こんなふっくらと炊きあがるのか! 最後に蒸らすんですねえ!」
ちょっと胚芽が混じっているとは言え、白い米がみちみちになった鍋を見て、他の船員たちもどよめいた。
「オー!」「なんだあれは!!」「俺達が食った米じゃねえ!!」「い、いや落ち着け!」「米なんか味がしなかったじゃねえか」
「ハハハハハ、それは君たち、米の真価を知らなかったんだ。こいつを皿に盛るだろう。そこに、この塩辛い魚醤タレに漬けた刺し身をこう並べていく……」
「あっ、タ、タレが白い飯に染み込んでいく!」「なんだ!? 妙に美味そうな気がしてくる……」「だが、真っ白に炊けた飯はどう食うんだ?」
「模範演技をみせてやろう! こうだ!!」
僕はフォークを使ってむしゃあっ!!と飯を食った。
塩辛い刺身ごとだ!
うんうん、本当なら醤油を使うべきなのだろうが、魚醤でも十分に美味い。
ファイブショーナンの魚醤はなんというか癖がなくて食べやすいな。
「まあ漬け丼と言っていいだろう。美味いぞ……!」
「あ、あんたほどの男がそう言うなら……」「食べる気か!?」「勇者だ!!」
一人の船員が進み出て、僕の真似をして米にガっとフォークを突き立てた。
「うおっ! 一気に掬える! すげえ粘りだぞ! これを魚といっしょに……」
ムシャアッと食べた船員は、もぐもぐやるうちに目の色が変わってきた。
「おっ、おっ、おぉっ!? う、美味いんじゃないかこれ!? 味が無い米が塩辛い魚をちょうどよく受け止めてて食べやすくなってる! それに……噛むとしょっぱくなっていた米が……甘い!?」
出たな食レポ。
これが知識神の加護であることはよく分かっているんだ。
仲間からの思わぬ好評を聞き、船員たちが我も我もと漬け丼に群がった!
「あっ、普通に美味い!」「生の魚でこんなに美味くなるのか!?」「未知と未知が組み合わさった未知の料理なのになんか食える!!」
そうだろうそうだろう。
僕は漬け丼をこの船に伝授した。
寄生虫は根気よく取り除く。そうすれば刺身も食えるようになる。
川魚よりは全然少ないしな。
ただし、まだ冷凍技術が普及してないからイカとかサケはやめておくんだぞ。
船員たちは競って様々な魚を釣り上げる。
これをみんなで捌く。
そして漬け丼にして食う。
何が美味いか、これは漬けに合う、こっちは漬けに合わない……などなど、知見が溜まっていったぞ。
あっという間にこの船の船員たちは、この世界で二番目に漬け丼に詳しくなった。
なお、この塩分の量でも大丈夫なのは常に労働し、汗をかくためだ。
地上で提供するなら、もう少し減塩しないとな……。
僕が広めるグルメは全て諸刃の刃である。
健康な運動習慣が無い限り、もれなく生活習慣病へといざなう。
美食とは厳しいものなのだ……!!
なお、漬け関係はコボルドにはちょっと塩分が多すぎるので、魚醤少なめの漬け丼を出すのだった。
「おおーっ! もちもちのおこめはじめてー!!」
ハムソンがむしゃむしゃむしゃーっと食べ、コゲタがそれを見て、ちょっと上品な感じで食べている。
年上の威厳を見せつけている!
なお、マキシフは他の船員たち同様、豪快に飯を食う。
「どう?」
「美味しいですね! 僕らコボルドは生肉も食べますが、その欲を存分に満たしてくれます。これは満腹度以上に、僕らの心を満たしてくれている気がします」
「頭のいい食レポだ!」
なお、漬け丼は脂っこくないのでリップルにも好評であった。
そしてダイフク氏は生魚をそのまま呑んだ。
「喉越しの人め」
「ハハハ、様々な喉越しが日々味わえて楽しいですぞ」
帰りの船は、すっかりあらゆる魚を漬けにする旅になってしまったな。
とても楽しく、そしてお米を堪能できた。
そして行きよりもずっと早い体感で、僕らは帰ってきたのである。
「アーランだー! アーランが見えるぞー!!」
銅鑼がジャーンジャーンジャーン!と鳴る。
舳先の向こう、水平線近くに見えたのは、周囲よりも盛り上がった遺跡の姿。
その上にあるのがアーランだ。
懐かしきホームタウン!
僕は帰ってきたぞ!
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