238 / 244
79・上陸! 南の島!
第238話 見えてきた! ケーキのような島だ
しおりを挟む
「見えてきたぞー!!」
朝、そんな叫び声で目を覚ました。
船に取り付けられたドラがジャーンジャーン!と鳴らされる。
これは本来、海のモンスターや海賊が現れた時に鳴らすものなのだが……。
こうやって大きなイベントが起こった際にも鳴らすのだ。
「リップル、起きるんだ」
「う、ううーん。もう少しだけ……」
「毎日ハンモックでゴロゴロしててお腹に肉が付いてきてるんじゃないか」
「なにおう」
目覚めた。
やっぱり気にしてるんじゃないか。
日々寝転がってて、よく夜も眠れるものだ。
コゲタはドラが鳴る前に飛び起きて、トテトテトテーッと甲板を見に行ったようだった。
マキシフがコゲタをリードしてくれているので安心。
持つべきものは良き先輩だなあ。
僕も着替えてホイホイと出てくる。
船の上では、水夫たちが体を洗っているところだった。
リップルの力で大量の真水に恵まれた今回の航海。
船員たちは毎日体が洗えると大喜びだった。
で、僕が出てくるとみんなが「ナザルさんだ!」「おはようナザルさん!」「ついに島だぜ!」と親しげに話しかけてくる。
ははは、僕の人望かな。
まあ、僕が美味しいものをやたらと彼らに提供したからだと思うのだが。
マキシフにリードを握ってもらいつつ、コゲタが甲板のあちこちをトテトテ走っている。
島への到着で沸き立つ船員たちに紛れて、わあわあ騒ぐのた楽しいらしい。
あっちに行ってはぴょんぴょん跳ねて、こっちでは船員とハイタッチしている。
お祭り好きだなあ。
「すまんねマキシフ」
「いえ、妹が小さかった頃を思い出します」
ははあ、マキシフはお兄ちゃんだったか!
子供コボルドの世話はお手の物ということだ。
まあ、コゲタは人間に換算すると多分13~4歳くらいで、この天真爛漫さは種族が本来持っている特徴なんだろう。
野生だとそういう性質は抑えられるが、人間と一緒に暮らしていると小型コボルドはものすごく明るくなる。
「ごしゅじーん!」
「おうコゲター。島だなー」
「しま! しま! いっぱいはしるの!」
「船の中だと危なくてあんまり走れなかったもんなー」
水平線に、小さいものが見えている。
あれが目的の島か。
まだ遠いようだが、追い風を上手く捉えたのでぐんぐん近づいているそうだ。
これは楽しみだ。
コゲタと並んで、島が近づいてくる様をじっと眺める。
厨房係が朝食を運んできてくれた。
「悪いね!」
「いえいえ、航海中はお世話になりましたからね、これくらい! 最高の眺めで最高の朝食をどうぞ!」
干し肉のスープとパンという、いつものメニューだ。
これに酸っぱい果実を絞った汁がついてくる。
だが、ぐんぐん近づく島影を見ながら食べる朝飯は美味い!
味と香りだけではなく、目から入ってくる情報もまた美味しさになるのだなあ。
「ふおーい」
「ねぼすけなハーフエルフが来たぞ」
ふらふら歩いてくるリップル。
もう、航海の始まった頃のまま、リップルに好色な目線を向ける男はいない。
みんな敬意に満ちた目で、アーラン最強の魔法使いを見ているのだ!
またモテから遠ざかったな……!!
なんか敬礼までされてるじゃないか。
リップル、おざなりに礼を返しながら歩いてくる。
そして僕らの横にどっかり座った。
サッとやってきた調理係氏が、リップルの分の朝食を用意する。
パンはなしで、スープと果汁だけ。
好みを分かっておられる。
リップルは干し肉を戻したしょっぱいスープを飲んで、「うー」とか唸った。
そして酸っぱい果汁を飲み干して、「ひー」とか呻いた。
目が覚めたらしい。
「陸が近いんだって?」
「ようやく会話できるようになったな。あれだよ、あれ。どんどん近づいてくる。僕の目にはこう……空に向かって伸びる円錐状の島に見えるんだが」
「ああ、円錐みたいな形をしている島だねえ」
「イメージしてたのはのどかな南の島だったので、全然違った。というか思ったよりもずっと大きいぞ、あの島。円錐は山か。てっぺんが雲に隠れるくらい高くて、半分が真っ白だ。あれは雪だな……? で、麓に森と、金色に揺れる草原みたいなものが……」
ここまで見えているものを言語化した後、僕は気付いた。
あれは、黄金の草原などではない!!
あの色は、風に揺られる黄金色の作物は……!
「米……!! 米だあれは!! 米が、この世界にあった……!!」
思わず立ち上がっていた。
なんということだ!
島の正面の七割を覆う黄金。
大量に作られた田んぼがそこには存在しており、僕を出迎えるように揺れているのだった。
「ご主人うれしい!? うれしい!?」
「嬉しい! すごく嬉しいぞ! うおおおおおテンションが上がってきたああああ!! はるばる海をわたってここまで連れてきてもらった甲斐があったぞー!!」
僕が大喜びしていると、船主が出てきた。
「米というのは、あの島で作っているあの白っぽい食べ物だろう? 茹でてもらったが、味がしなくて、そこまで旨いものでは無かったと思うが……」
「ははは、食材はどれも食べ方というのがあるんですよ。僕がそれをお目にかけましょう」
どんな米があるのか?
それを考えるだけで、ワクワクしてくる。
こうして往路は終わる。
目的としている、米と垂れ耳コボルドの島に、僕らは到着したのだ。
朝、そんな叫び声で目を覚ました。
船に取り付けられたドラがジャーンジャーン!と鳴らされる。
これは本来、海のモンスターや海賊が現れた時に鳴らすものなのだが……。
こうやって大きなイベントが起こった際にも鳴らすのだ。
「リップル、起きるんだ」
「う、ううーん。もう少しだけ……」
「毎日ハンモックでゴロゴロしててお腹に肉が付いてきてるんじゃないか」
「なにおう」
目覚めた。
やっぱり気にしてるんじゃないか。
日々寝転がってて、よく夜も眠れるものだ。
コゲタはドラが鳴る前に飛び起きて、トテトテトテーッと甲板を見に行ったようだった。
マキシフがコゲタをリードしてくれているので安心。
持つべきものは良き先輩だなあ。
僕も着替えてホイホイと出てくる。
船の上では、水夫たちが体を洗っているところだった。
リップルの力で大量の真水に恵まれた今回の航海。
船員たちは毎日体が洗えると大喜びだった。
で、僕が出てくるとみんなが「ナザルさんだ!」「おはようナザルさん!」「ついに島だぜ!」と親しげに話しかけてくる。
ははは、僕の人望かな。
まあ、僕が美味しいものをやたらと彼らに提供したからだと思うのだが。
マキシフにリードを握ってもらいつつ、コゲタが甲板のあちこちをトテトテ走っている。
島への到着で沸き立つ船員たちに紛れて、わあわあ騒ぐのた楽しいらしい。
あっちに行ってはぴょんぴょん跳ねて、こっちでは船員とハイタッチしている。
お祭り好きだなあ。
「すまんねマキシフ」
「いえ、妹が小さかった頃を思い出します」
ははあ、マキシフはお兄ちゃんだったか!
子供コボルドの世話はお手の物ということだ。
まあ、コゲタは人間に換算すると多分13~4歳くらいで、この天真爛漫さは種族が本来持っている特徴なんだろう。
野生だとそういう性質は抑えられるが、人間と一緒に暮らしていると小型コボルドはものすごく明るくなる。
「ごしゅじーん!」
「おうコゲター。島だなー」
「しま! しま! いっぱいはしるの!」
「船の中だと危なくてあんまり走れなかったもんなー」
水平線に、小さいものが見えている。
あれが目的の島か。
まだ遠いようだが、追い風を上手く捉えたのでぐんぐん近づいているそうだ。
これは楽しみだ。
コゲタと並んで、島が近づいてくる様をじっと眺める。
厨房係が朝食を運んできてくれた。
「悪いね!」
「いえいえ、航海中はお世話になりましたからね、これくらい! 最高の眺めで最高の朝食をどうぞ!」
干し肉のスープとパンという、いつものメニューだ。
これに酸っぱい果実を絞った汁がついてくる。
だが、ぐんぐん近づく島影を見ながら食べる朝飯は美味い!
味と香りだけではなく、目から入ってくる情報もまた美味しさになるのだなあ。
「ふおーい」
「ねぼすけなハーフエルフが来たぞ」
ふらふら歩いてくるリップル。
もう、航海の始まった頃のまま、リップルに好色な目線を向ける男はいない。
みんな敬意に満ちた目で、アーラン最強の魔法使いを見ているのだ!
またモテから遠ざかったな……!!
なんか敬礼までされてるじゃないか。
リップル、おざなりに礼を返しながら歩いてくる。
そして僕らの横にどっかり座った。
サッとやってきた調理係氏が、リップルの分の朝食を用意する。
パンはなしで、スープと果汁だけ。
好みを分かっておられる。
リップルは干し肉を戻したしょっぱいスープを飲んで、「うー」とか唸った。
そして酸っぱい果汁を飲み干して、「ひー」とか呻いた。
目が覚めたらしい。
「陸が近いんだって?」
「ようやく会話できるようになったな。あれだよ、あれ。どんどん近づいてくる。僕の目にはこう……空に向かって伸びる円錐状の島に見えるんだが」
「ああ、円錐みたいな形をしている島だねえ」
「イメージしてたのはのどかな南の島だったので、全然違った。というか思ったよりもずっと大きいぞ、あの島。円錐は山か。てっぺんが雲に隠れるくらい高くて、半分が真っ白だ。あれは雪だな……? で、麓に森と、金色に揺れる草原みたいなものが……」
ここまで見えているものを言語化した後、僕は気付いた。
あれは、黄金の草原などではない!!
あの色は、風に揺られる黄金色の作物は……!
「米……!! 米だあれは!! 米が、この世界にあった……!!」
思わず立ち上がっていた。
なんということだ!
島の正面の七割を覆う黄金。
大量に作られた田んぼがそこには存在しており、僕を出迎えるように揺れているのだった。
「ご主人うれしい!? うれしい!?」
「嬉しい! すごく嬉しいぞ! うおおおおおテンションが上がってきたああああ!! はるばる海をわたってここまで連れてきてもらった甲斐があったぞー!!」
僕が大喜びしていると、船主が出てきた。
「米というのは、あの島で作っているあの白っぽい食べ物だろう? 茹でてもらったが、味がしなくて、そこまで旨いものでは無かったと思うが……」
「ははは、食材はどれも食べ方というのがあるんですよ。僕がそれをお目にかけましょう」
どんな米があるのか?
それを考えるだけで、ワクワクしてくる。
こうして往路は終わる。
目的としている、米と垂れ耳コボルドの島に、僕らは到着したのだ。
32
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!
あけちともあき
ファンタジー
無能テイマーとしてSランクパーティをクビになったオース。
モフモフテイマーという、モフモフモンスター専門のテイマーであった彼は、すぐに最強モンスター『マーナガルム』をテイムするが……。
実はオースこそが、Sランクパーティを支える最強メンバーだったのだ。
あらゆるモンスターへの深い知識。
様々なクラスを持つことによる、並外れた器用さ。
自由になったオースは、知識の力で最高の冒険者へと成り上がっていく。
降って湧いた凶悪な依頼の数々。
オースはこれを次々に解決する。
誰もがオースを最高の冒険者だと認めるようになっていく。
さらに、新たなモフモフモンスターが現れて、仲間も増えて……。
やがて、世界を巻き込む陰謀にオースは関わっていくのだ。
シスコンリーマン、魔王の娘になる
石田 ゆうき
ファンタジー
平凡なサラリーマン白井海は、ある日、異世界の女の子と体が入れ替わってしまう。その女の子とは、魔王の娘であるお姫様だったのだ。しかし魔王の死後、領地のほとんどを失い、二ヶ月には戦争がおこるというギリギリの状況だった。海は愛する妹が待つ日本に戻ろうと奮闘することになる。
本作品は、小説家になろうにも投稿しています
これがホントの第2の人生。
神谷 絵馬
ファンタジー
以前より読みやすいように、書き方を変えてみました。
少しずつ編集していきます!
天変地異?...否、幼なじみのハーレム達による嫉妬で、命を落とした?!
私が何をしたっていうのよ?!!
面白そうだから転生してみる??!
冗談じゃない!!
神様の気紛れにより輪廻から外され...。
神様の独断により異世界転生
第2の人生は、ほのぼの生きたい!!
――――――――――
自分の執筆ペースにムラがありすぎるので、1日に1ページの投稿にして、沢山書けた時は予約投稿を使って、翌日に投稿します。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移の……説明なし!
サイカ
ファンタジー
神木冬華(かみきとうか)28才OL。動物大好き、ネコ大好き。
仕事帰りいつもの道を歩いているといつの間にか周りが真っ暗闇。
しばらくすると突然視界が開け辺りを見渡すとそこはお城の屋根の上!? 無慈悲にも頭からまっ逆さまに落ちていく。
落ちていく途中で王子っぽいイケメンと目が合ったけれど落ちていく。そして…………
聞いたことのない国の名前に見たこともない草花。そして魔獣化してしまう動物達。
ここは異世界かな? 異世界だと思うけれど……どうやってここにきたのかわからない。
召喚されたわけでもないみたいだし、神様にも会っていない。元の世界で私がどうなっているのかもわからない。
私も異世界モノは好きでいろいろ読んできたから多少の知識はあると思い目立たないように慎重に行動していたつもりなのに……王族やら騎士団長やら関わらない方がよさそうな人達とばかりそうとは知らずに知り合ってしまう。
ピンチになったら大剣の勇者が現れ…………ない!
教会に行って祈ると神様と話せたり…………しない!
森で一緒になった相棒の三毛猫さんと共に、何の説明もなく異世界での生活を始めることになったお話。
※小説家になろうでも投稿しています。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる