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73・カレーコを求めて
第221話 その名はカレーコ
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全ての義務を果たし、ここからは趣味と実益を兼ねた本番。
カレーコを探すよ!!
まあ、場所は知識神に聞いてある。
なので掘るだけなのだ。
僕を手伝うために、砂漠の王国の兵士と執政官までやってきている。
えっ、執政官も地面を掘るんですかね!?
「手伝わせてください! 我々がすぐ近くにありながら気づかなかったハーブ、カレーコ……! 知識神のお告げを受けたというナザル殿しか発見できぬものなのでしょう。この目で見たい!」
「すっかり執政官殿はナザル殿のファンになってしまったようだ」
ツインが言う通りっぽい。
なんたることか。
「では皆さん、必要な道具はこれです。つるはし!!」
「つるはし!? ハーブなのに!?」
「ナザル殿のやることは常に予想がつかないからね。さあみんな、言われた通り、つるはしを用意しよう!」
「準備万端ですよ~」
「いこー!」
ツイン、ルリア、うちのコゲタはもう準備が終わっているのだ。
兵士たちも慌ててつるはしを持ってきた。
執政官までつるはしを担いでいるではないか。
そんなわけで、僕らは一列に並んで岩石砂漠へと繰り出した。
なんと、砂漠の王国からほんの数百メートルという場所。
「こんな近くにカレーコが!?」
「あるみたいですねえ。知識神のお告げなんで絶対にありますよ。これでありがたいなーって思ったら、ぜひ砂漠の王国に知識神のほこらを建ててあげてください」
「もちろんだ! しかし、一体どこに……」
「あ、ついたついた。ここです!」
「ここ!?」
到着した場所を見て、執政官が目を剥いた。
さもありなん。
それは、巨大な岩石の山のようにしか見えないからだ。
「私が生まれた頃からずっと、この岩山はあった気がしますぞ……。もちろん、植物など苔くらいしか生えていない。これがどうして……」
「こういうことですよ。ツアーッ!!」
僕は裂帛の気合とともにつるはしを叩き込んだ。
それは、苔が生えている場所である。
つるはしが突き刺さると、カツーンという音ではなく。
ぬるりっとそこの岸壁が剥がれ落ちた。
「あっ!!」
誰もが声をあげた。
剥がれた岸壁は、なんと鮮やかな金色をしていたのである。
しかもちょっと湿っている。
「ま……まさか……! まさかこの岩山そのものが……!!」
「その通り。ここは岩石砂漠ではなかったんですよ。カレーコ砂漠です」
「な、なんだってー!!」
砂漠の王国の民たちが、一斉に叫んだのだった。
カレーコは掘り方にコツがある。
表面はまさに岩石を纏い、とんでもない硬度である。
刃はとても立たないし、ハンマーだろうがつるはしだろうが跳ね返してしまう。
だが、カレーコが呼吸をするために開いている場所があるのだ。
それが、苔に見える部分。
そこに的確につるはしを叩き込むと、ペロッと剥げる。
ただ、でかく育ったカレーコはほんの僅かな外側しか剥ぐことができない。
必要な分だけ剥ぎ取って、あとは放置してもらうべきなのだ。
そうしていると、一年ほどでまた剥いだ跡が育つ。
みんながガンガンと剥ぎ取って、とりあえずかなりの量が採れた。
かなりの重さだ。
「とあー!」
コゲタが苔のところをコンコン叩いている。
そうしたら、ペロッと剥がれた。
「やったー!!」
「上手上手!」
僕はコゲタをワシャワシャ撫でて褒めた。
なお、ツインは恐らく物理的な硬度関係なく、光の刃で削り落とすことができるだろうが……。
「ははは、これは楽しいもんだなあ!」
ちゃんとみんなに合わせて、つるはしのみで剥ぎ取っている。
マナーを守る男!
ルリアはいまいちやり方が分からないらしくて、コンコンっとずっと岩壁を叩いていた。
さて、めぼしい苔の部分はなくなったから、これ以上の採集は常識的な方法では不可能だろう。
「うわっ、凄い香りが漂ってきた! なんだこれは……!?」
執政官と兵士たちが驚愕している。
岩石砂漠……いや、カレー粉砂漠を覆い尽くさんばかりに、凄まじい濃厚さのカレースメルが溢れ出してきたのである!
「では、みんなで運搬します! あ、ごめん、運搬の話を忘れてたな。ええと、岩石の重さなんで車が必要になる!」
ここで、みんなでまた砂漠の王国まで戻り……。
らくだが引く荷車がたくさんやってきた。
そこへ、カレーコをどんどん積み込む。
一枚一枚がずっしりした重さだ。
小さな欠片を、コゲタが拾ってペロッと舐めていた。
「ぴゃー! からいー」
「カレーの結晶みたいなもんだから、直接舐めたらいけないぞー」
「あーん」
辛がっているコゲタに、水を飲ませつつ。
荷車と並んで王国へ戻る僕らなのだった。
砂漠の王国の広場に、カレーコがガラガラと積み上げられていく。
とんでもない量だ。
恐らく、砂漠の王国だけでは一年掛かっても消費しきれまい。
ノーザンス大陸の隅々まで行き渡るには、十分なだけの量がある。
凄いカレーの香りに、王国の民たちがぞろぞろ集まってきた。
なんだなんだと見ている。
ついには、他の執政官に、どうやらたくさんの騎士を従えている王様まで現れた。
「では皆さん! ここにある素晴らしいハーブ、カレーコを使い……。カレーという最高に美味しい料理が誕生します! よくご覧あれ!」
さあ、調理開始である。
カレーコを探すよ!!
まあ、場所は知識神に聞いてある。
なので掘るだけなのだ。
僕を手伝うために、砂漠の王国の兵士と執政官までやってきている。
えっ、執政官も地面を掘るんですかね!?
「手伝わせてください! 我々がすぐ近くにありながら気づかなかったハーブ、カレーコ……! 知識神のお告げを受けたというナザル殿しか発見できぬものなのでしょう。この目で見たい!」
「すっかり執政官殿はナザル殿のファンになってしまったようだ」
ツインが言う通りっぽい。
なんたることか。
「では皆さん、必要な道具はこれです。つるはし!!」
「つるはし!? ハーブなのに!?」
「ナザル殿のやることは常に予想がつかないからね。さあみんな、言われた通り、つるはしを用意しよう!」
「準備万端ですよ~」
「いこー!」
ツイン、ルリア、うちのコゲタはもう準備が終わっているのだ。
兵士たちも慌ててつるはしを持ってきた。
執政官までつるはしを担いでいるではないか。
そんなわけで、僕らは一列に並んで岩石砂漠へと繰り出した。
なんと、砂漠の王国からほんの数百メートルという場所。
「こんな近くにカレーコが!?」
「あるみたいですねえ。知識神のお告げなんで絶対にありますよ。これでありがたいなーって思ったら、ぜひ砂漠の王国に知識神のほこらを建ててあげてください」
「もちろんだ! しかし、一体どこに……」
「あ、ついたついた。ここです!」
「ここ!?」
到着した場所を見て、執政官が目を剥いた。
さもありなん。
それは、巨大な岩石の山のようにしか見えないからだ。
「私が生まれた頃からずっと、この岩山はあった気がしますぞ……。もちろん、植物など苔くらいしか生えていない。これがどうして……」
「こういうことですよ。ツアーッ!!」
僕は裂帛の気合とともにつるはしを叩き込んだ。
それは、苔が生えている場所である。
つるはしが突き刺さると、カツーンという音ではなく。
ぬるりっとそこの岸壁が剥がれ落ちた。
「あっ!!」
誰もが声をあげた。
剥がれた岸壁は、なんと鮮やかな金色をしていたのである。
しかもちょっと湿っている。
「ま……まさか……! まさかこの岩山そのものが……!!」
「その通り。ここは岩石砂漠ではなかったんですよ。カレーコ砂漠です」
「な、なんだってー!!」
砂漠の王国の民たちが、一斉に叫んだのだった。
カレーコは掘り方にコツがある。
表面はまさに岩石を纏い、とんでもない硬度である。
刃はとても立たないし、ハンマーだろうがつるはしだろうが跳ね返してしまう。
だが、カレーコが呼吸をするために開いている場所があるのだ。
それが、苔に見える部分。
そこに的確につるはしを叩き込むと、ペロッと剥げる。
ただ、でかく育ったカレーコはほんの僅かな外側しか剥ぐことができない。
必要な分だけ剥ぎ取って、あとは放置してもらうべきなのだ。
そうしていると、一年ほどでまた剥いだ跡が育つ。
みんながガンガンと剥ぎ取って、とりあえずかなりの量が採れた。
かなりの重さだ。
「とあー!」
コゲタが苔のところをコンコン叩いている。
そうしたら、ペロッと剥がれた。
「やったー!!」
「上手上手!」
僕はコゲタをワシャワシャ撫でて褒めた。
なお、ツインは恐らく物理的な硬度関係なく、光の刃で削り落とすことができるだろうが……。
「ははは、これは楽しいもんだなあ!」
ちゃんとみんなに合わせて、つるはしのみで剥ぎ取っている。
マナーを守る男!
ルリアはいまいちやり方が分からないらしくて、コンコンっとずっと岩壁を叩いていた。
さて、めぼしい苔の部分はなくなったから、これ以上の採集は常識的な方法では不可能だろう。
「うわっ、凄い香りが漂ってきた! なんだこれは……!?」
執政官と兵士たちが驚愕している。
岩石砂漠……いや、カレー粉砂漠を覆い尽くさんばかりに、凄まじい濃厚さのカレースメルが溢れ出してきたのである!
「では、みんなで運搬します! あ、ごめん、運搬の話を忘れてたな。ええと、岩石の重さなんで車が必要になる!」
ここで、みんなでまた砂漠の王国まで戻り……。
らくだが引く荷車がたくさんやってきた。
そこへ、カレーコをどんどん積み込む。
一枚一枚がずっしりした重さだ。
小さな欠片を、コゲタが拾ってペロッと舐めていた。
「ぴゃー! からいー」
「カレーの結晶みたいなもんだから、直接舐めたらいけないぞー」
「あーん」
辛がっているコゲタに、水を飲ませつつ。
荷車と並んで王国へ戻る僕らなのだった。
砂漠の王国の広場に、カレーコがガラガラと積み上げられていく。
とんでもない量だ。
恐らく、砂漠の王国だけでは一年掛かっても消費しきれまい。
ノーザンス大陸の隅々まで行き渡るには、十分なだけの量がある。
凄いカレーの香りに、王国の民たちがぞろぞろ集まってきた。
なんだなんだと見ている。
ついには、他の執政官に、どうやらたくさんの騎士を従えている王様まで現れた。
「では皆さん! ここにある素晴らしいハーブ、カレーコを使い……。カレーという最高に美味しい料理が誕生します! よくご覧あれ!」
さあ、調理開始である。
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