俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
211 / 337
71・遺跡第五層へハーブを探しに

第211話 殿下! ちょっとお願いが!!

しおりを挟む
 知識神のお告げを得た僕とコゲタは帰ることにした。
 女王陛下とボクサーくんが見送ってくれる。

「カレーとやらができたら、わらわに絶対食べさせるのじゃぞ」

「もちろんです。カレーはその土地の具材を使うことで、各地のオリジナルカレーになるのですよ。ファイブショーナンならばシーフードカレーになることでしょう……」

「う、う、美味そうな響きに感じるのじゃ……!!」

「ご期待ください!!」

「うおー!」

 陛下がテンション高まって吠えている横で、コゲタとボクサーくんは握手してにこやかに別れていた。

「またね、ボクサーくん!」

「うん、またねコゲタ。げんきでね」

 小型種と大型種だけど、そんなの関係なく友情は成立するのだなあ。
 肉球のある手で、にぎにぎしあって、二人はパッと手を離した。

 後で聞いたら、

「によいでいっぱいわかるから、あんまおしゃべりしないの!」とのこと。
 なるほど、コボルドはにおいで分かり合うのだな。

 こうして僕らは帰還する。
 一番危険だったはぐれギルマンを全滅させたので、帰りは本当に平和だった。

「ご主人ー! ボクサーくんからわざならった!」

「ほうほう!」

 途中のキャンプで、コゲタがマスターしたという技を教えてもらった。

「ぼうをねー、えいやー!」

「おおーっ、槍のように突き出してすぐに戻す! 的確だなあ」

 コゲタのようなちびっこは、リーチが短い。
 これは近接戦だと致命的だ。
 だが、長い棒を持てば問題なくなる。

 重くなくても、その長さが武器になるのだ。
 先端でモンスターをつつけば、軽いコゲタならそれを起点にして回避もできる。
 つつく場所がモンスターの目や鼻の穴なら、ダメージだって与えられる。

 それに振り回して当てれば、遠心力でそこそこな威力にもなるだろう。
 何より棒ならコゲタが危なくない。

「いいじゃないかいいじゃないか、かっこいいぞコゲター」

「やったー!」

 ぴょーんと喜んで跳ねたコゲタ、着地のときに棒が引っかかって、しなった棒にびよーんと弾かれた。

「ああ~」

「コゲター!」

 棒も気をつけないといけないな!

 そして、アーランへ無事到着!
 僕はその足で冒険者ギルドへ向かう。

 おっ、今日はエリィがいるな。
 で、何故かメガネでのっぽの受付嬢と一緒にやってきた。

「それで、ギルマンはやっつけたんですか?」

「はいこれ。ヒレ四つ」

「相変わらず手練れですよねえナザルさん……」

「すごい……! 一人ではぐれギルマンを四体も倒したんですか!? シルバー級としてもトップクラスの実力ですよ、それは」

「ちょっと! この人にあまり感心したり感情を向けたりしないほうがいいわよ!」

「そうなんですか? 先輩?」

「そうよ! いろいろ心を弄ばれるから!」

「なんて人聞きの悪い。そしてのっぽさんはエリィの後輩だったのか……」

 ギルドの受付嬢は、それなりにコネがないとなれない。
 下町では最高レベルの職場であり、本部ともなればお役所系の仕事のてっぺんだ。
 ここより上は、王宮務めしかなく、王宮に仕えるには地位が必要だ。

 こののっぽさん、きっといいところのお嬢さんなんだろうなあ。

 エリィに色々まくしたてられて、「はぁ、なるほど、はぁ」と頷いている。
 いや、いい感じで聞き流しているな……。

 僕は報酬を受け取ると、すぐさま王城へ向かった。
 コゲタは宿に預けた!

 僕の顔を見ると、門番たちが「ナザルさんだ」「ナザルさんどもっす!」と挨拶しながら通してくれる。
 顔パスである!

 これはデュオス殿下の口利きもあるんだけどね。
 で、すぐさま殿下にアポを取って、準備してもらう。

 殿下はちょうど、宮殿の運動場で乗馬をしているところだったらしい。
 すぐ呼んで参れ、ということで、僕は馳せ参じるのだった。

「殿下! まずは報告致します。いい情報と、未来がキラキラと輝く情報の二つがあります」

「なにっ!!」

 殿下が大きな声を出したので、馬が驚いて立ち上がった。
 だが、日々の鍛錬でマッチョになっているデュオス殿下。
 落馬することなく、見事に馬を乗りこなして着地させた。

 悠然と降りてくる殿下。
 こうして外で乗馬服姿だと、ムキムキになっているのが分かるな。
 殿下、美食で体を壊さないためとはいえ、鍛え過ぎでは……?

 向こうでは奥方もポニーみたいな馬に乗っている。
 優雅にパカポコ走らせているが、奥方もなんか体がきゅっと引き締まってない?

 美食のために体を作り上げた第二王子夫妻だ。

「ナザル、まずは……いい情報から話すが良い。キラキラの方は後の楽しみにする」

「かしこまりました。いい情報はですね。ファイブショーナンより入ってくる海産物を口にして参りました。スープにしてよし、茹でたものをビネガーで締めると、これも酒の当てとして無上の美味さです」

「なるほどなるほど……!! 有用な情報だな。でかしたぞナザル! して、もう一つの情報とは……?」

「実は、知識神様がお告げをくださいまして」

「なんだと!? 知識神様の声を聞いたというのか!」

「はっ! 新たな、そして究極の美食の知識を授けられました。その名は……カレー……!!」

「カレー!!」

「スープにしてよし、そのままパンを付けてよし、パスタにかけてもよし、蕎麦にかけてもよし、具材は自由自在……」

「なんと!? そのようなものが……!!」

「これをアーランへ産み出すため、許可をいただきたいのです。遺跡第五階層攻略の許可を!!」

「な、なにぃーっ!! ところでどうして、第四階層の攻略が終わったことを知っているのだ? これは先ごろ、こちらに報告が上がってきたばかりなのだが」

 うっ!! 

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界ダンジョンの地下第7階層には行列のできるラーメン屋がある

セントクリストファー・マリア
ファンタジー
日本の東京に店を構える老舗のラーメン屋「聖龍軒」と、ファルスカ王国の巨大ダンジョン「ダルゴニア」の地下第7階層は、一枚の扉で繋がっていた。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

どうも、賢者の後継者です~チートな魔導書×5で自由気ままな異世界生活~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「異世界に転生してくれぇえええええええええ!」  事故で命を落としたアラサー社畜の俺は、真っ白な空間で謎の老人に土下座されていた。何でも老人は異世界の賢者で、自分の後継者になれそうな人間を死後千年も待ち続けていたらしい。  賢者の使命を代理で果たせばその後の人生は自由にしていいと言われ、人生に未練があった俺は、賢者の望み通り転生することに。  読めば賢者の力をそのまま使える魔導書を五冊もらい、俺は異世界へと降り立った。そしてすぐに気付く。この魔導書、一冊だけでも読めば人外クラスの強さを得られてしまう代物だったのだ。  賢者の友人だというもふもふフェニックスを案内役に、五冊のチート魔導書を携えて俺は異世界生活を始める。 ーーーーーー ーーー ※基本的に毎日正午ごろに一話更新の予定ですが、気まぐれで更新量が増えることがあります。その際はタイトルでお知らせします……忘れてなければ。 ※2023.9.30追記:HOTランキングに掲載されました! 読んでくださった皆様、ありがとうございます! ※2023.10.8追記:皆様のおかげでHOTランキング一位になりました! ご愛読感謝!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...