209 / 337
70・南国に魚介類を食べに行こう
第209話 シーフードカレーについて考える
しおりを挟む
イカダの船が進みだした。
僕は船上で、タコやイカが捕れたらシーフードカレーも可能だなと考える。
では具材はいいとして、カレーのスパイスはどうやってゲットするのか?
僕が思うに、既にカレーを構成しうるスパイスは世界の各所に散逸しているのではないか。
今度、ツーテイカーのベンクマンに連絡を取り、スパイスを探してもらおう。
僕の頼みならば断るまい。
自分で言ってて一体僕は何者だ? 世界を裏から動かしてない? とか思ったが気にしないことにする。
僕は美味いものが食べたいだけなんだ……。
「ナザルさん、このあたりが漁場だよ。陶器を沈めてあるから……」
「あっ、タコツボ漁! この世界でもやってるんだなあ。感激だなあ」
プカプカと浮いているロープがある。
大きな魚の浮袋を利用し、ロープの先端を水上に出しているのだ。
これをみんなで掴んで、わっしょいわっしょい、と引っ張り上げる。
このわっしょいが面白いらしく、コゲタが「わっしょ! わっしょ!」と真似をしながらロープを引っ張っていた。
なお、ボクサーくんと女王陛下は浜辺で待っている。
陛下が乗り込むとマッチョの兄ちゃんたちはガチガチになって、漁の調子がよろしくなくなってしまうし、ボクサーくんはその陛下の護衛だからである。
なお、ボクサーくんよりもバルバラ女王の方が絶対つよい。
おっ、そうこうしているうちに、タコツボがするすると上がってきたぞ。
どれどれ?
「おおーっ! タコが入ってる! タコだなあ。イカははどうやって捕るの? えっ? 夜に釣るの? 似てるのに生態はぜんぜん違うんだな」
一つ勉強になってしまった。
タコは大漁だったので、これを食べようということになった。
イカダ船は陸に戻っていく。
海上にいたのは一時間にもならなかったな……。
陸に上がったのと同時に、体育座りして待っていたバルバラ女王陛下に聞いてみることにした。
「陛下、カレーってご存知です?」
「なんじゃそれ? もしや……美味いものなのか!?」
「むちゃくちゃ美味いです。タコやイカと合いますよ……。パンに載せても、麺に載せても美味い」
「そ、そ、それを作れるのかやナザル?」
「何が材料で必要なのかさっぱり分からなくて困っているんですよ……」
「そなたほどの男ですらそうか。おぬし、知識神の加護を受けているのじゃろう? 祈ってみるがよい」
「えっ? 僕は無神論者なんですが」
「そなたなー。そういうことは絶対口にしないほうがいいぞ。能天気に見えるファイブショーナンでも、民は月と慈愛の神を信仰しているしな」
「あっ、なーる……」
誰もが信仰を持っている世界というわけか。
「なお、わらわは人ではないので神を信じていない……。信仰とか分からん……。基本的に不老だし」
「おいぃ!」
思わず女王陛下に突っ込むところだった。
いかんいかん。
「つまりな、一般的な民は神を信じている。わらわやそなたほど強く無いからじゃ。それを否定することになるから、無神論だというのはあまり口にしてはならん」
「なるほどー」
「それに知識神は恐らく、祈られ待ちじゃぞ。自分から接触しまくってくるなんて、かなりテンションが高い状況じゃ」
「テンションが高い知識神……!!」
それはすごい話だ。
だけど、僕が知りたい知識を教えてくれる可能性も高い。
実際、リップルの枕に立った知識神は、お告げによって南国の手がかりを与えてくれたしな。
その日はタコを茹でて、みんなでタレをつけて食べた。
実に美味い。
肉厚で歯ごたえが素晴らしく、噛みしめるごとにタコの旨味が染み出してくる。
とても美味しいタコだった。
これは輸出してもかなり評価される!
「おいしー!!」
コゲタも大満足ですよ!
「この貿易は絶対に成功するだろう。ただ、タコは見た目がアレだからちゃんとプレゼンしようね」
僕の話を聞いて、ファイブショーナンの貿易担当者がふむふむと頷いていた。
「タコの見た目で忌避されやすいと。形が見えない状態まで調理して、ともに食べるのが良さそうですな。さすがは美食の伝道師……。我々だけでは、当然美味いものだという先入観でそのままお出しするところでした」
あるある。
納豆しかり、刺し身しかり、その形で食べる習慣がない地域にとっては、誰かの当然が異常に見えることは少なからずありうるからね。
この光景を見て、女王陛下は満足げにうんうん頷いているのだった。
その夜……。
隣のハンモックでコゲタがすぴすぴと寝ている。
僕は昼間、バルバラ陛下から聞いたアレを試してみるつもりだった。
「頼みますよ、知識神様。ちょっと信仰を捧げるのもやぶさかではないので、カレーの材料を教えて下さい」
そう願いながら目を閉じる僕なのだった。
すると……!
あっという間に、僕の意識がどこかに吹っ飛んでいった。
とんでもない浮遊感に思わず目を開くと……。
眼の前には、光り輝く巨大な男が浮かんでいたのだった。
その足元からは幹のようなものが伸び、全容を把握することすら困難な圧倒的スケールの何かに繋がっている。
『ようやく呼んでくれたな、ナザルよ。ファールディアは今まさに、大グルメ時代……! グルメとは知。美食は知。美食のあとのダイエットも知。全ては知識に繋がっている……!! 我が世の春が来た!!』
ブラボー!!と盛り上がるこの方はもしや!
「知識神様です?」
『その通り。私が知識神だ』
光り輝く巨大な存在は、グッとサムズ・アップしたのだった。
僕は船上で、タコやイカが捕れたらシーフードカレーも可能だなと考える。
では具材はいいとして、カレーのスパイスはどうやってゲットするのか?
僕が思うに、既にカレーを構成しうるスパイスは世界の各所に散逸しているのではないか。
今度、ツーテイカーのベンクマンに連絡を取り、スパイスを探してもらおう。
僕の頼みならば断るまい。
自分で言ってて一体僕は何者だ? 世界を裏から動かしてない? とか思ったが気にしないことにする。
僕は美味いものが食べたいだけなんだ……。
「ナザルさん、このあたりが漁場だよ。陶器を沈めてあるから……」
「あっ、タコツボ漁! この世界でもやってるんだなあ。感激だなあ」
プカプカと浮いているロープがある。
大きな魚の浮袋を利用し、ロープの先端を水上に出しているのだ。
これをみんなで掴んで、わっしょいわっしょい、と引っ張り上げる。
このわっしょいが面白いらしく、コゲタが「わっしょ! わっしょ!」と真似をしながらロープを引っ張っていた。
なお、ボクサーくんと女王陛下は浜辺で待っている。
陛下が乗り込むとマッチョの兄ちゃんたちはガチガチになって、漁の調子がよろしくなくなってしまうし、ボクサーくんはその陛下の護衛だからである。
なお、ボクサーくんよりもバルバラ女王の方が絶対つよい。
おっ、そうこうしているうちに、タコツボがするすると上がってきたぞ。
どれどれ?
「おおーっ! タコが入ってる! タコだなあ。イカははどうやって捕るの? えっ? 夜に釣るの? 似てるのに生態はぜんぜん違うんだな」
一つ勉強になってしまった。
タコは大漁だったので、これを食べようということになった。
イカダ船は陸に戻っていく。
海上にいたのは一時間にもならなかったな……。
陸に上がったのと同時に、体育座りして待っていたバルバラ女王陛下に聞いてみることにした。
「陛下、カレーってご存知です?」
「なんじゃそれ? もしや……美味いものなのか!?」
「むちゃくちゃ美味いです。タコやイカと合いますよ……。パンに載せても、麺に載せても美味い」
「そ、そ、それを作れるのかやナザル?」
「何が材料で必要なのかさっぱり分からなくて困っているんですよ……」
「そなたほどの男ですらそうか。おぬし、知識神の加護を受けているのじゃろう? 祈ってみるがよい」
「えっ? 僕は無神論者なんですが」
「そなたなー。そういうことは絶対口にしないほうがいいぞ。能天気に見えるファイブショーナンでも、民は月と慈愛の神を信仰しているしな」
「あっ、なーる……」
誰もが信仰を持っている世界というわけか。
「なお、わらわは人ではないので神を信じていない……。信仰とか分からん……。基本的に不老だし」
「おいぃ!」
思わず女王陛下に突っ込むところだった。
いかんいかん。
「つまりな、一般的な民は神を信じている。わらわやそなたほど強く無いからじゃ。それを否定することになるから、無神論だというのはあまり口にしてはならん」
「なるほどー」
「それに知識神は恐らく、祈られ待ちじゃぞ。自分から接触しまくってくるなんて、かなりテンションが高い状況じゃ」
「テンションが高い知識神……!!」
それはすごい話だ。
だけど、僕が知りたい知識を教えてくれる可能性も高い。
実際、リップルの枕に立った知識神は、お告げによって南国の手がかりを与えてくれたしな。
その日はタコを茹でて、みんなでタレをつけて食べた。
実に美味い。
肉厚で歯ごたえが素晴らしく、噛みしめるごとにタコの旨味が染み出してくる。
とても美味しいタコだった。
これは輸出してもかなり評価される!
「おいしー!!」
コゲタも大満足ですよ!
「この貿易は絶対に成功するだろう。ただ、タコは見た目がアレだからちゃんとプレゼンしようね」
僕の話を聞いて、ファイブショーナンの貿易担当者がふむふむと頷いていた。
「タコの見た目で忌避されやすいと。形が見えない状態まで調理して、ともに食べるのが良さそうですな。さすがは美食の伝道師……。我々だけでは、当然美味いものだという先入観でそのままお出しするところでした」
あるある。
納豆しかり、刺し身しかり、その形で食べる習慣がない地域にとっては、誰かの当然が異常に見えることは少なからずありうるからね。
この光景を見て、女王陛下は満足げにうんうん頷いているのだった。
その夜……。
隣のハンモックでコゲタがすぴすぴと寝ている。
僕は昼間、バルバラ陛下から聞いたアレを試してみるつもりだった。
「頼みますよ、知識神様。ちょっと信仰を捧げるのもやぶさかではないので、カレーの材料を教えて下さい」
そう願いながら目を閉じる僕なのだった。
すると……!
あっという間に、僕の意識がどこかに吹っ飛んでいった。
とんでもない浮遊感に思わず目を開くと……。
眼の前には、光り輝く巨大な男が浮かんでいたのだった。
その足元からは幹のようなものが伸び、全容を把握することすら困難な圧倒的スケールの何かに繋がっている。
『ようやく呼んでくれたな、ナザルよ。ファールディアは今まさに、大グルメ時代……! グルメとは知。美食は知。美食のあとのダイエットも知。全ては知識に繋がっている……!! 我が世の春が来た!!』
ブラボー!!と盛り上がるこの方はもしや!
「知識神様です?」
『その通り。私が知識神だ』
光り輝く巨大な存在は、グッとサムズ・アップしたのだった。
22
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~
日之影ソラ
ファンタジー
十年前――
世界は平和だった。
多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。
誰もが思っただろう。
心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。
何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。
十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。
そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。
「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」
「クビ?」
「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」
めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。
彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。
そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。
一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。
順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。
その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。
ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。
それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。
そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。
※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる