俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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70・南国に魚介類を食べに行こう

第208話 手伝ってやろう、えっ、油禁止!?

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 兵士たちとともに、ワイワイと移動した。
 兵士の中に、なんとコボルドの兵士もいるではないか。

 これは南国に適応したボクサー種のコボルド……。
 普通に僕の肩くらいの背丈があるぞ。

「おっきいねー」

「きみはちいさいねー」

 おっ、でも言語能力はコゲタと変わらんな。
 コボルド同士で、ぺちゃくちゃお喋りしている。

「大型種のコボルドは戦闘力も高いんですよ。我々よりもずっと足も早いですし、いざとなれば噛みつき攻撃もある」

「おお、強い!」

 身の回りにちっちゃいコボルドしかいなかったからな。
 コゲタはほどほどの背丈までは育つタイプらしい。
 いや、豆柴種なら今くらいがマックスか。
 
 どうなるんだろうなー。

「ごしゅじーん! コゲタもおっきくなりたい!」

「コゲタは小さいままでも可愛くていいのだが!」

「えー」

 コゲタが面白い顔をしたので、ボクサー種の彼がわはははと笑っていた。
 兵士たちもわははと笑った。
 仲良しではないか。

「実は女王陛下の提案で、コボルド兵を受け入れてまして。彼は近隣でぶらぶらしてたのでスカウトしたんです」

「ぼくはご主人をもつことがゆめだったので、じょおうへいかがご主人になってくださったんです」

「なるほどなあ」

 ボクサーくん、真面目ないい子ではないか。
 幼い頃に両親とはぐれ、それからはフォーゼフの家畜の世話とか、畑の手伝いなんかをして暮らしてきたらしい。
 だが見た目が怖いということで、大きくなった彼は職を追われた。

 犬も見た目の時代か……!
 そんなボクサーくんを拾ったのが、バルバラ陛下だったのだ!
 なんかコゲタを見てて羨ましくなったらしい。

 外遊が多いバルバラ陛下は、ボクサーくんの持つ種族的戦闘力に目をつけ、護衛にするため兵士として鍛えているのだ。

「ところでボクサーくん、耳がちょっと垂れているね……」

「ぼくのおとうさんはみなみのくにからきたのです」

「なるほどなあー! まさに僕らは南の国に行くところなのだ!」

「ぼくのふるさとです! おみやげほしいです!」

 言語化能力が高いぞボクサーくん。
 コゲタは近くで尻尾を振りながら、僕とボクサーくんを交互に見ながら舌を出しているというのに。
 いや、コゲタはこれで完成している無類の可愛さ。これでいいのだ。

 そんな感じで、ボクサーくんにインタビューしてたらファイブショーナンに到着してしまったぞ。
 今回の旅の大きな収穫だったなあ。

「コゲタは新しいお友達ができてしまったな」

「うん! ボクサーくん!」

「ぼくのなまえは、ご主人がむつかしいなまえをつけてくれたんですけど」

 難しすぎて覚えきれないらしい。
 ボクサーくんが簡単でいいかもな。
 よし、女王陛下に上申しておこう。

「かえったら、ご主人にあいにいくのです」

「そっか。じゃあ僕らも行こう」

 ボクサーくんと一緒に、コゲタを連れて宮殿へ向かう。

「おお、ナザルではないか! 最近よく会うのう……」

 女王陛下は、宮殿の入口で階段に腰掛けて涼んでいた。
 なんちゅうところに最高権力者がいるの。

「この国は全てわらわの所有物じゃ。わらわがどこにいてもいいのじゃ。おおー! ジャベルブホルスキー戻ってきたか!」

「ひどい名前だ」

 そりゃあ覚えられないよ。
 僕はバルバラ女王に、彼の名をボクサーくんにすべきだと熱弁した。
 女王はハッとする。

「そうか、覚えられぬということを忘れておった。ではナザルが言うことじゃから、ボクサーという名でよかろう」

 ということで、ボクサーくんはボクサーくんとなった。
 コゲタがいぇーい、とジャンプしてタッチを要求したので、ボクサーくんもちょっとかがんでタッチをしてあげたのだった。
 優しい子だなあ。

「いざ戦いとなれば苛烈じゃぞ。戦闘種のコボルドであろうな」

「やはりボクサー犬ですからね……。ところで陛下」

「なんじゃ。そなたが来た理由なら予想がついておるぞ。これから我が国が輸出する品を先につまみ食いに来たのであろう」

「鋭い……。僕から申し上げることは本当に何もなくなってしまった」

「わかり易すぎるのじゃ。そなた、あまりにも裏表がない。では、漁をしているのを見に行くぞ」

 女王陛下とボクサーくんとともに、一旦国を出る。
 何せ、ファイブショーナン周辺は全て切り立った崖だ。
 ここから船を出すことは不可能なのである!

 ということで、国を一旦出て、港専用に作られた場所で漁を行うのだ。
 ファイブショーナン本国は、ながーい糸を用いた釣りしかできないからね。

 では漁船はというと……。

「あれじゃ!」

「あっ!! でかいイカダ!!」

 それは大変大きなイカダであった。
 なんと素朴な船であろうか。
 中身を掘ってカヌーみたいにするとかそういうことはしないのね。

「陛下ー!」

 むきむきのお兄ちゃんたちが漁船の上にいて、手を振っている。
 そしてボクサーくんとコゲタを見て、

「いぬー!」

 とニコニコしながら手を振った。
 犬が大好きなんだな。
 なんと気の良い連中だろうか。

「そなたら! ここにおる男を知っておるかや? この者こそ、美食の伝道師ナザルなのじゃ!」

 陛下が僕を紹介したら、ムキムキお兄ちゃんたちが「オー」と驚いた。
 イカダ船から次々降りてきて、

「あなたが紹介してくれたキーウリに味噌をつけたやつ、最高に美味しいです」

「もう、もろきゅうなしじゃ生きられない」

 握手やハグを求めてくる!
 も、もしやファイブショーナンでは、もろきゅうが空前のブームだったのか!!

 もろきゅうの爽やかな水気と塩気は、常夏の国に必要なものが全てあるからな……。

「ありがとうみんな。僕が漁を手伝いましょう。新鮮なタコやイカを刺身で食べたい」

「あっ、噂に違わぬ人格」

 僕の発言を聞いて、お兄ちゃんたちがドン引きした。
 刺身文化はなかったか……。

 いや、魚の刺身は食べてた気がするから、頭足類の刺身を食べる習慣が無いだけに違いない。
 どーれ、僕が美味さを教えてやろう。

「ああ、そうじゃナザル!」

「なんですかね」

「漁で油は厳禁じゃぞ。必要なだけ捕るのが漁。そなたの油は捕りすぎる」

 な、な、なんだってー!!
 僕のアイデンティティーが!!

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