168 / 337
58・ツーテイカーからの誘い
第168話 ツーテイカーへ
しおりを挟む
揚げパン、素晴らしいカロリーの味がした。
午後いっぱい活動できるだけのエネルギーを得たと言えよう。
「どうしてだろう……。俺、今とっても眠いんだ……」
「いかん、寝るなシズマ! それは血糖値スパイクだ!」
倒れているシズマの頬をピシピシする。
面白がって近寄ってきたコゲタとアララちゃんが、シズマの顔をぺたぺたする。
「うーん肉球がひんやりして気持ちいい……ちょっと目が醒めた。恐ろしい威力だな、揚げパン……」
「最近は糖質多めの食事ができるとは言え、揚げパンはちょっとランクが違うからな……」
二人で揚げパンが血糖値を揚げるパワーに戦慄するのだった。
なお、飼い主氏は寝ていた。
ワーッと駆け寄るコゲタとアララちゃん。
また顔を肉球でぺたぺたして起こしたようだ。
「食べると眠くなってしまう食事とは……。なんとも恐ろしいものだ」
「すまんな、血糖値爆揚げ……いや爆上げモンスターを作ってしまって……」
だが、揚げパンのパワーは凄い。
僕らはここから、本日分の移動範囲までを楽々踏破した。
以前にコゲタと一緒に旅したときよりも、全然進めるぞ。
それほど凄まじいエネルギーが揚げパンには秘められていたのだ。
森にほど近い辺りに到着したので、ここを本日のキャンプ地とする。
「任せてくれ。沈め、森よ」
シズマがクールに告げると、森の一角が沈み込んでいった。
そこに更地が出現する。
「どういう力なんだ……? ギフト使いの力は色々見てきたが、ナザルさんの油使いと言い、シズマさんの沈める力と言い、原理が全く分からない」
原理が分からない力こそがギフトなんだよな。
僕もシズマも、特に原理となるものが存在しない力を行使してる。
前はマナがコストだと思ってたけど、これどうも違う気がするな……。
「シズマはどうなの」
「沈められる量に限界があるから、沈めたのをまた浮かび上がらせないと新しく沈められないんだ」
「ははあ。では沈められる量は……」
「ファイブスターズの一国くらいなら」
「恐ろしい!!」
飼い主氏が震え上がった。
そりゃあ怖い。
一国を滅ぼせる男だシズマは。
それはそれとして、ちょうどキャンプ地ができた。
僕らはここにテントを張り、飯を食う……。
「揚げパン連続は流石に不味い。消化が悪いことに慣れているこの世界で、あの栄養効率はヤバい。蕎麦にしよう」
僕の決定で蕎麦となった。
茹でたあとのお湯は蕎麦湯にしてそのまま飲める。
無駄がない!
蕎麦を茹で、つゆを作り、保存食などを刻んでかき揚げにして載せて食べた。
いやあ、美味い美味い。
「スープとパスタが一緒になっているとは……。パスタの元になっているのが蕎麦!? 蕎麦はこんな食べ方ができたのか……」
飼い主氏が驚愕している。
そしてシズマは「うまいうまいうまい!」と叫びながらひたすらつるつる食べているのだ。
ちょっと涙ぐんでいる。
まさか異世界で蕎麦が食えると思わないもんな。
だが残念ながら、まだまだ蕎麦は研究が足りないのだ。
この世界の人々も蕎麦切りを再現するまでには至っていない。
コボルドのおちびたちは、むしゃむしゃーっと食べて、薄めにしてあるつゆをごくごくーっと飲んでいる。
人間からするとかなり薄いが、嗅覚に優れた彼らならこれで十分。
コボルド基準にしていると事故がなくてよろしい。
人間用はここに色々足せばいいからね。
「なるほど……。パスタと比べるとちょっとボソボソしているが、これはこれで蕎麦自体の味が強くて楽しい。この塩味と甘味のあるスープもいい味だねえ」
「これを、蕎麦を茹でた湯で割って飲むわけで……」
「なるほど新しい……!」
大好評ですな。
さらにかき揚げも評判だった。
「なるほど、そのままならサクサク、スープに浸せばしっとりとして味も付き、これもまた美味しい」
「でしょう……。しかもかき揚げには、ツーテイカーの名産品であるキノコを使っても美味しい」
「なんと!? ということは、それはツーテイカー発の名物料理になるのでは……」
「なるね」
「素晴らしい! 頼む、ナザルさん! これを私の手柄にさせてもらっていいだろうか!」
「構わないよ」
「ありがたい!!」
ということで、恐らくツーテイカーの偉い人たちにキノコのかき揚げを振る舞うことが決定したのだった。
この世界、いよいよグルメで回ってきているな。
その日は蕎麦を食って寝て、朝になる。
出発した僕らの後ろで、沈んでいた森が浮かび上がってくるところだった。
いやあ不思議な能力だ……。
そうしてしばらく行くと……フォーゼフが見えてきた。
僕的には夢の都市国家フォーゼフ。
一体あそこには、まだどれだけの種類の作物が存在しているんだ……。
「フォーゼフは日の当たりが強いので、野菜類がよく育つからね……。ツーテイカーは日の当たりが悪いから強みを探した……」
飼い主氏、複雑な思いを抱いているのだな……。
さらにしばらく行くと……。
その日の昼食は蕎麦をガレットにして食べ、ついに日暮れ頃に到着!
周囲はどんよりと曇り、空気はじめじめ……。
全体的に灰色の光景。
ここがツーテイカーだ!
なるほど、キノコが育ちそうだ。
午後いっぱい活動できるだけのエネルギーを得たと言えよう。
「どうしてだろう……。俺、今とっても眠いんだ……」
「いかん、寝るなシズマ! それは血糖値スパイクだ!」
倒れているシズマの頬をピシピシする。
面白がって近寄ってきたコゲタとアララちゃんが、シズマの顔をぺたぺたする。
「うーん肉球がひんやりして気持ちいい……ちょっと目が醒めた。恐ろしい威力だな、揚げパン……」
「最近は糖質多めの食事ができるとは言え、揚げパンはちょっとランクが違うからな……」
二人で揚げパンが血糖値を揚げるパワーに戦慄するのだった。
なお、飼い主氏は寝ていた。
ワーッと駆け寄るコゲタとアララちゃん。
また顔を肉球でぺたぺたして起こしたようだ。
「食べると眠くなってしまう食事とは……。なんとも恐ろしいものだ」
「すまんな、血糖値爆揚げ……いや爆上げモンスターを作ってしまって……」
だが、揚げパンのパワーは凄い。
僕らはここから、本日分の移動範囲までを楽々踏破した。
以前にコゲタと一緒に旅したときよりも、全然進めるぞ。
それほど凄まじいエネルギーが揚げパンには秘められていたのだ。
森にほど近い辺りに到着したので、ここを本日のキャンプ地とする。
「任せてくれ。沈め、森よ」
シズマがクールに告げると、森の一角が沈み込んでいった。
そこに更地が出現する。
「どういう力なんだ……? ギフト使いの力は色々見てきたが、ナザルさんの油使いと言い、シズマさんの沈める力と言い、原理が全く分からない」
原理が分からない力こそがギフトなんだよな。
僕もシズマも、特に原理となるものが存在しない力を行使してる。
前はマナがコストだと思ってたけど、これどうも違う気がするな……。
「シズマはどうなの」
「沈められる量に限界があるから、沈めたのをまた浮かび上がらせないと新しく沈められないんだ」
「ははあ。では沈められる量は……」
「ファイブスターズの一国くらいなら」
「恐ろしい!!」
飼い主氏が震え上がった。
そりゃあ怖い。
一国を滅ぼせる男だシズマは。
それはそれとして、ちょうどキャンプ地ができた。
僕らはここにテントを張り、飯を食う……。
「揚げパン連続は流石に不味い。消化が悪いことに慣れているこの世界で、あの栄養効率はヤバい。蕎麦にしよう」
僕の決定で蕎麦となった。
茹でたあとのお湯は蕎麦湯にしてそのまま飲める。
無駄がない!
蕎麦を茹で、つゆを作り、保存食などを刻んでかき揚げにして載せて食べた。
いやあ、美味い美味い。
「スープとパスタが一緒になっているとは……。パスタの元になっているのが蕎麦!? 蕎麦はこんな食べ方ができたのか……」
飼い主氏が驚愕している。
そしてシズマは「うまいうまいうまい!」と叫びながらひたすらつるつる食べているのだ。
ちょっと涙ぐんでいる。
まさか異世界で蕎麦が食えると思わないもんな。
だが残念ながら、まだまだ蕎麦は研究が足りないのだ。
この世界の人々も蕎麦切りを再現するまでには至っていない。
コボルドのおちびたちは、むしゃむしゃーっと食べて、薄めにしてあるつゆをごくごくーっと飲んでいる。
人間からするとかなり薄いが、嗅覚に優れた彼らならこれで十分。
コボルド基準にしていると事故がなくてよろしい。
人間用はここに色々足せばいいからね。
「なるほど……。パスタと比べるとちょっとボソボソしているが、これはこれで蕎麦自体の味が強くて楽しい。この塩味と甘味のあるスープもいい味だねえ」
「これを、蕎麦を茹でた湯で割って飲むわけで……」
「なるほど新しい……!」
大好評ですな。
さらにかき揚げも評判だった。
「なるほど、そのままならサクサク、スープに浸せばしっとりとして味も付き、これもまた美味しい」
「でしょう……。しかもかき揚げには、ツーテイカーの名産品であるキノコを使っても美味しい」
「なんと!? ということは、それはツーテイカー発の名物料理になるのでは……」
「なるね」
「素晴らしい! 頼む、ナザルさん! これを私の手柄にさせてもらっていいだろうか!」
「構わないよ」
「ありがたい!!」
ということで、恐らくツーテイカーの偉い人たちにキノコのかき揚げを振る舞うことが決定したのだった。
この世界、いよいよグルメで回ってきているな。
その日は蕎麦を食って寝て、朝になる。
出発した僕らの後ろで、沈んでいた森が浮かび上がってくるところだった。
いやあ不思議な能力だ……。
そうしてしばらく行くと……フォーゼフが見えてきた。
僕的には夢の都市国家フォーゼフ。
一体あそこには、まだどれだけの種類の作物が存在しているんだ……。
「フォーゼフは日の当たりが強いので、野菜類がよく育つからね……。ツーテイカーは日の当たりが悪いから強みを探した……」
飼い主氏、複雑な思いを抱いているのだな……。
さらにしばらく行くと……。
その日の昼食は蕎麦をガレットにして食べ、ついに日暮れ頃に到着!
周囲はどんよりと曇り、空気はじめじめ……。
全体的に灰色の光景。
ここがツーテイカーだ!
なるほど、キノコが育ちそうだ。
33
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界ダンジョンの地下第7階層には行列のできるラーメン屋がある
セントクリストファー・マリア
ファンタジー
日本の東京に店を構える老舗のラーメン屋「聖龍軒」と、ファルスカ王国の巨大ダンジョン「ダルゴニア」の地下第7階層は、一枚の扉で繋がっていた。


ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうも、賢者の後継者です~チートな魔導書×5で自由気ままな異世界生活~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「異世界に転生してくれぇえええええええええ!」
事故で命を落としたアラサー社畜の俺は、真っ白な空間で謎の老人に土下座されていた。何でも老人は異世界の賢者で、自分の後継者になれそうな人間を死後千年も待ち続けていたらしい。
賢者の使命を代理で果たせばその後の人生は自由にしていいと言われ、人生に未練があった俺は、賢者の望み通り転生することに。
読めば賢者の力をそのまま使える魔導書を五冊もらい、俺は異世界へと降り立った。そしてすぐに気付く。この魔導書、一冊だけでも読めば人外クラスの強さを得られてしまう代物だったのだ。
賢者の友人だというもふもふフェニックスを案内役に、五冊のチート魔導書を携えて俺は異世界生活を始める。
ーーーーーー
ーーー
※基本的に毎日正午ごろに一話更新の予定ですが、気まぐれで更新量が増えることがあります。その際はタイトルでお知らせします……忘れてなければ。
※2023.9.30追記:HOTランキングに掲載されました! 読んでくださった皆様、ありがとうございます!
※2023.10.8追記:皆様のおかげでHOTランキング一位になりました! ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる