俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
155 / 337
54・蕎麦に関する冒険

第155話 森の奥の職人に聞く

しおりを挟む
 その他、オウルベアともすれ違った。
 森の食べ物が潤沢にあるようで、彼らも人間に興味を示さない。
 というか僕を見たらスッと離れていって、目を合わそうともしなかった。

 なんだなんだ。

「ご主人、こわがられてる!」

「そんなばかな」

 僕のどこが恐ろしいというのだ。
 僕の何を知っていると言うんだ。
 だが戦いを避けられたことは良いことだ。

「もりのどうぶつ、ご主人さけてる!」

「そんなばかな。僕が何をやったというんだ。いや、やったな……大いにやった」

 森で大立ち回りというか、油の力を使って暴れること数回。
 きっと彼らはそれを見ていたのだろう……。

 悪いことはするべきではない。
 いや、悪いことじゃないんだが。

「ご主人どうするのー?」

「そうだなあ。蕎麦の香りが分からないようなら、森の奥にいる職人たちを訪ねてみようか。彼らは入口の職人たちと違ってグルメに浸ってはいないだろう……」

 一縷の望みをかけて、森の奥へ奥へと向かったのだった。
 ちなみに、森はそれなりに広大だ。
 只中で一泊することにする。

「夜に襲撃されないように備えなくちゃな」

「ご主人のによい、どうぶつたちこわがる! こないよ!」

「そうなの!?」

 コゲタから衝撃的な話を聞いてしまった。
 コボルドは人間と動物の間くらいの存在だから、双方の気持ちみたいなのを察することができるのかも知れない。

 では、テントを立ててコゲタと一泊する。
 夕食は持ってきたパスタを、戻した干し肉と合わせてトマドで和えたやつだ。
 僕のにはちょっと塩を振る。

「いっしょのごはんたのしみね!」

 コゲタがお料理が出来上がるさまを見つめて、ウキウキしている。

「そうだなあ。一緒に食べるとさらに美味しくなるもんな」

「おいしい、すきー!」

 ということで。
 二人でパスタをもりもり食べ、その後、コゲタが昼間見つけたものについて色々お話をしたいらしいので、それを聞くなどした。
 ほうほう、食べられる草のにおいがたくさんしたと。
 だが、その中に蕎麦の存在はなかった。

 このあたり、土が割と肥沃なので、蕎麦が生えにくいのかもしれないな。
 森は広葉樹が茂っているのだが、古い樹木はオウルベアが押し倒したり、ヴォーパルバニーが試し切りで倒すのだ。
 お陰で、日差しが差し込む場所が森のあちこちに出来上がり、木々の新陳代謝を呼んでいる。

 で、倒れた木々や枯れた草花は分解され、森の掃除屋が土に変えてくれるわけだ。
 なるほど、肥沃なはずだ。

 どこかの国では、森を切り開いてそのまま畑に使えてしまうらしいしな。

 蕎麦はもっと地面が痩せているところを探すのがいいのかもなあ……。
 そんな事を考えてたら眠くなってきた。

 コゲタは喋り疲れて、うとうとしている。

「コゲタ、寝るならテントの中で寝るんだぞ」

「はぁい」

 ふらふらテントに入っていたコゲタは、尻尾と後ろ足が入りきってないのにぐうぐう寝始めてしまった。
 仕方ないなあ。
 僕は彼を持ち上げて、テントの奥の方に寝かせる。
 そして隣で僕も寝転がった。

 テントの外からは虫の声がする。
 なんとものどかな森の夜。
 こんなに緊張感の無いキャンプを楽しむことができるとは……。

 僕のにおいが強くて危険なモンスターが寄ってこないなら、それを最大限に利用させてもらおう。
 朝まで無防備に爆睡してやるのだ。

 明け方。
 コゲタの尻尾が顔をパタパタしてきたので目覚めた。

「うおー」

 なんだか、もさもさしたもので全身をはたかれる夢を見た。
 なるほど、コゲタが僕の上で大の字になって寝ていたんだな。
 しかも上下逆だ。

「コゲター。コゲター」

 足の裏をむにむにする。

「ふわわわわ」

 コゲタがぷるぷるし始めた。
 犬がご主人よりも長く寝ていてどうするんだ。
 一緒くらいの睡眠時間で行こう。

 コゲタがころんと横に転げて、パッと起き上がった。

「おきた!」

「起きたかー。朝ご飯食べたらまた出かけような」

 近場の川から水を汲んできて、煮沸する。
 で、お茶にして飲むのだ。

 あー、朝のお茶が美味い。
 そう言えば茶そばというものがあったな。
 お茶でそば粉を練るのかな……。

 蕎麦が食いたいな……!

 小麦を練り、無発酵パンというかチャパティを作って食べた。

「おいしー」

「コゲタはなんでも美味しく食べられるから偉いなあ」

 僕はコゲタの眉間をもみもみした。
 ちょっと食休みをした後、テントを片付けてまた出発だ。

 森の奥までは、およそ半日で到着した。
 詰め所の前で職人たちが材木を加工している。

「おーい、おーい」

「おや、ナザルじゃないか!」「久々だなあ」「また何か仕事のついでに来たのか?」

 客人が珍しい場所なので、職人たちが集まってくる。

「実はやんごとなき事情がありまして」

「事情……?」

「蕎麦を探しているんだ。こう、栄養のなさそうな土地で育つ植物から採れるやつで、ボソボソしてて、灰色で、食えなくもない味みたいな……」

「むう……」「食ったことがあるような」「いや、確かに食ったことはあるぞ。粉が尽きちまった時に、代用で食った」「ああー、あれかあ!!」

「知っているのか!!」

 ついに蕎麦の手がかりが得られた!!
 どこだどこだ!

「いや、ナザル。お前も見たことがあるだろう。去年、国の旗を立てに森の外れに行っただろ。あそこの崖に山ほど生えてる……」

「な……なんだってー!!」

 ごくごく身近なところに、蕎麦はあったのだ!

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~

日之影ソラ
ファンタジー
 十年前――  世界は平和だった。  多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。  誰もが思っただろう。  心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。  何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと…… ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。  十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。  そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。 「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」 「クビ?」 「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」  めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。  彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。  そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。    一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。  順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

処理中です...