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52・コゲタ、特訓する
第149話 グレート・ティーチャー・バンキン
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コゲタを冒険者として登録しようと思ったら、彼を特訓せねばならない。
この時、困った問題が出てくる。
「僕は才能だけでやりくりしてる特殊な魔法使い系だから、コゲタに教えることができないなあ」
そういうことである。
ギフトである油使いがあるからこそ、僕はスッとアイアン級になれて、その上でスライドするようにカッパー級になったのだ。
「コツコツ努力することを知らないのだ。僕は感覚だけで冒険者をやっている……」
「お前は天才タイプだからなあ。手抜きしまくってシルバー級だろ? しかもカッパー級でずっと踏ん張ってたし」
「バンキンはコツコツ努力して上がってきたんだろ?」
「そりゃそうよ。あ、トーフだけどよ、魚醤で食うと酒に合うな……」
「分かってくれたか!! ……いや、それは今の主題ではない……」
「ああ、コゲタの話だったな。よし、じゃあ俺とお前の仲だ。俺が訓練をつけてやる。どうせ暇だし」
「暇だったのか……」
「暇だぞー。それで美味いもの食いながら転がってたら腹に肉がついてきたら、慌てて仕事してるんだ。そのついででコゲタに訓練をつけてやる」
「ありがたい!」
そういうことになった。
なお、バンキンからは、「トーフはヘルシーなんじゃなかったのか? なんで食っちゃ寝してたら太るんだよ」とか理不尽な文句をつけられた。
まさかお前、豆腐にはちみつ掛けなくなったのは太ったからじゃないだろうな……?
翌日。
「よろしくおねがいします!!」
「おう、俺は厳しいが、無理なく実力をつけられるようにコツコツ訓練をつけてやるぞ」
僕は後ろから、コゲタとバンキンを見守るのである。
ついでに、二人の飯でも作っていてやろう。
最近はずっと大豆関係をいじり続けていたのだが、こうして特訓するとなったら欲しいのは動物性タンパクだ。
「訓練が終わった時のために、肉料理を用意しておく。……唐揚げで行こう」
冒険者ギルドの訓練施設でやってもいいのだが、コゲタはまだアイアン級でもない素人コボルドのため、そこを使用できない。
なので今回は森の入口で行う。
僕はお弁当の材料を探しに森に踏み込んだ。
おっ、鳥発見。
油を伸ばして捕えるのだ。
三羽ゲットしたのでこれでよし。
戻ってくると、コゲタが素振りをしていた。
「いいぞいいぞ! 体幹がしっかりしてる! ナザルについていって修羅場をくぐった経験が生きてるな!」
「えいっ! えいっ! えいっ!」
「いいぞいいぞ! ナイスな振りだ! その一撃を受けたらゴブリンも砕かれちまうだろう! 世界を制する素振りだ! パワー! スピード! タイミング! キュート! 全てがハイレベルだ!!」
「えいっ! えいっ! えいっ!」
バンキン、褒めて伸ばすタイプだったのか……。
ジムのトレーナーみたいだな。
彼らが頑張る横で、僕は鳥の羽根をむしり、皮に残った羽の根を焼いて落としていく。
そして火を用意し、囲いを作り、たっぷりの油で揚げる……。
「おいしいによいがする……」
「腹が減る匂いだな……」
あっ、訓練をやめた二人が近づいてきた。
唐揚げが揚がるスメルはあまりにも魅力的すぎたか……。
二人が座り込んで、唐揚げをじっと待つ。
僕は神妙な顔をしながら揚がり具合を確認するのだ。
「きつね色になった……。今っ!!」
ここで取り出すのは僕のオリジナルアイテムの菜箸。
懇意にしている鍛冶屋のドワーフについでに作ってもらったのだ。
ドワーフ凄いね。
鍛冶仕事がメインなのに、簡単な箸を削り出すところまでやってくれちゃうんだもん。
唐揚げを網の上に取り分けていく。
この網も、鍛冶屋に作ってもらった。
余計な油をここでサッと落とし、熱が冷めないうちに皿に盛る!
そして持ってきた、葉野菜の漬物を添えるのだ。
「お待たせ! おあがりよ!」
「やったー!」
「きたーっ!!」
訓練に勤しんでいた二人は、猛烈な勢いで唐揚げに食いついた。
他にパンも用意してあるので、これに乗せて食べてもらってもよい。
おお、肉と漬物とパンが猛烈な勢いで消えていく……!!
僕も唐揚げとパンを合わせて食べた。
ほどよくお腹が膨れたので、二人が落ち着くまでのんびりする。
ほぼほぼお弁当が無くなった頃合いで、ようやく二人とも人心地ついたようだ。
コゲタ、小さいのにたくさん食べたなあ!
げぷー、とか言って寝転がっている。
寝ちゃいそう。
「寝ていいぞー。栄養を体に行き渡らせるんだ。俺はここで寝たら腹の肉になる……」
血糖値スパイクに身を任せていいのは若者だけだからな。
「で、バンキン。どうだ? 忖度なしでコゲタを鍛えた感想を聞きたい」
「おうそうだな。まあ、コボルドならこんなもんだろう。根本的な腕力が低いから、小型のモンスターくらいにしか通用しないだろう。だが、姿勢がいい。それに足腰が強い。普段から良い物を食って大事にされてるんだろうな。教えた内容を身につけられる素養と素質がある」
「おおーっ、べた褒めじゃないか」
「お前んところのコボルドだぞ? 大金持ちのコボルドよりもいいもの食ってる可能性がある。肉体ってのは食ったものでできるからな。で、体ができてるやつなら強くなれる。コボルドの中では割といい感じのところまでは行けるぞ」
「ということは……。アイアン級になれるか」
「もうちょっと頑張ればいけるだろうな」
ありがたい!
コゲタを冒険者にする計画、かなりイケそうである。
この時、困った問題が出てくる。
「僕は才能だけでやりくりしてる特殊な魔法使い系だから、コゲタに教えることができないなあ」
そういうことである。
ギフトである油使いがあるからこそ、僕はスッとアイアン級になれて、その上でスライドするようにカッパー級になったのだ。
「コツコツ努力することを知らないのだ。僕は感覚だけで冒険者をやっている……」
「お前は天才タイプだからなあ。手抜きしまくってシルバー級だろ? しかもカッパー級でずっと踏ん張ってたし」
「バンキンはコツコツ努力して上がってきたんだろ?」
「そりゃそうよ。あ、トーフだけどよ、魚醤で食うと酒に合うな……」
「分かってくれたか!! ……いや、それは今の主題ではない……」
「ああ、コゲタの話だったな。よし、じゃあ俺とお前の仲だ。俺が訓練をつけてやる。どうせ暇だし」
「暇だったのか……」
「暇だぞー。それで美味いもの食いながら転がってたら腹に肉がついてきたら、慌てて仕事してるんだ。そのついででコゲタに訓練をつけてやる」
「ありがたい!」
そういうことになった。
なお、バンキンからは、「トーフはヘルシーなんじゃなかったのか? なんで食っちゃ寝してたら太るんだよ」とか理不尽な文句をつけられた。
まさかお前、豆腐にはちみつ掛けなくなったのは太ったからじゃないだろうな……?
翌日。
「よろしくおねがいします!!」
「おう、俺は厳しいが、無理なく実力をつけられるようにコツコツ訓練をつけてやるぞ」
僕は後ろから、コゲタとバンキンを見守るのである。
ついでに、二人の飯でも作っていてやろう。
最近はずっと大豆関係をいじり続けていたのだが、こうして特訓するとなったら欲しいのは動物性タンパクだ。
「訓練が終わった時のために、肉料理を用意しておく。……唐揚げで行こう」
冒険者ギルドの訓練施設でやってもいいのだが、コゲタはまだアイアン級でもない素人コボルドのため、そこを使用できない。
なので今回は森の入口で行う。
僕はお弁当の材料を探しに森に踏み込んだ。
おっ、鳥発見。
油を伸ばして捕えるのだ。
三羽ゲットしたのでこれでよし。
戻ってくると、コゲタが素振りをしていた。
「いいぞいいぞ! 体幹がしっかりしてる! ナザルについていって修羅場をくぐった経験が生きてるな!」
「えいっ! えいっ! えいっ!」
「いいぞいいぞ! ナイスな振りだ! その一撃を受けたらゴブリンも砕かれちまうだろう! 世界を制する素振りだ! パワー! スピード! タイミング! キュート! 全てがハイレベルだ!!」
「えいっ! えいっ! えいっ!」
バンキン、褒めて伸ばすタイプだったのか……。
ジムのトレーナーみたいだな。
彼らが頑張る横で、僕は鳥の羽根をむしり、皮に残った羽の根を焼いて落としていく。
そして火を用意し、囲いを作り、たっぷりの油で揚げる……。
「おいしいによいがする……」
「腹が減る匂いだな……」
あっ、訓練をやめた二人が近づいてきた。
唐揚げが揚がるスメルはあまりにも魅力的すぎたか……。
二人が座り込んで、唐揚げをじっと待つ。
僕は神妙な顔をしながら揚がり具合を確認するのだ。
「きつね色になった……。今っ!!」
ここで取り出すのは僕のオリジナルアイテムの菜箸。
懇意にしている鍛冶屋のドワーフについでに作ってもらったのだ。
ドワーフ凄いね。
鍛冶仕事がメインなのに、簡単な箸を削り出すところまでやってくれちゃうんだもん。
唐揚げを網の上に取り分けていく。
この網も、鍛冶屋に作ってもらった。
余計な油をここでサッと落とし、熱が冷めないうちに皿に盛る!
そして持ってきた、葉野菜の漬物を添えるのだ。
「お待たせ! おあがりよ!」
「やったー!」
「きたーっ!!」
訓練に勤しんでいた二人は、猛烈な勢いで唐揚げに食いついた。
他にパンも用意してあるので、これに乗せて食べてもらってもよい。
おお、肉と漬物とパンが猛烈な勢いで消えていく……!!
僕も唐揚げとパンを合わせて食べた。
ほどよくお腹が膨れたので、二人が落ち着くまでのんびりする。
ほぼほぼお弁当が無くなった頃合いで、ようやく二人とも人心地ついたようだ。
コゲタ、小さいのにたくさん食べたなあ!
げぷー、とか言って寝転がっている。
寝ちゃいそう。
「寝ていいぞー。栄養を体に行き渡らせるんだ。俺はここで寝たら腹の肉になる……」
血糖値スパイクに身を任せていいのは若者だけだからな。
「で、バンキン。どうだ? 忖度なしでコゲタを鍛えた感想を聞きたい」
「おうそうだな。まあ、コボルドならこんなもんだろう。根本的な腕力が低いから、小型のモンスターくらいにしか通用しないだろう。だが、姿勢がいい。それに足腰が強い。普段から良い物を食って大事にされてるんだろうな。教えた内容を身につけられる素養と素質がある」
「おおーっ、べた褒めじゃないか」
「お前んところのコボルドだぞ? 大金持ちのコボルドよりもいいもの食ってる可能性がある。肉体ってのは食ったものでできるからな。で、体ができてるやつなら強くなれる。コボルドの中では割といい感じのところまでは行けるぞ」
「ということは……。アイアン級になれるか」
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