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41・息抜き依頼

第123話 夜釣りとリザードマン

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 昼過ぎから日暮れまで寝た。
 こうやって、いつでも熟睡できるのは冒険者として必要な能力だよな。

 与えられた小屋で、僕とバンキンが大の字になって寝ており、バンキンの足を枕にしてキャロティが、僕のお腹を枕にしてコゲタが寝る。
 で、サルシュは僕らの足元で平たくなって寝ていた。

 全員熟睡!
 そして日が暮れた頃合いに、船乗りが僕らを起こしてくれた。

「やあやあ、起きる時間ですよ」

「あっ、ダイフク氏! そういえば君は船乗りだった」

「そういうことです。我ら船乗り、荒事も多少はできますがそっちはプロではないので、今夜の見回りと護衛みたいなのはよろしくお願いしますよ」

「任された」

 まだ半分寝ぼけている頭をボリボリ掻きながら、ダイフク氏に手を振る僕なのだった。
 そうしたらコゲタが飛び起きて、トテテテテーッと扉まで走っていった。

「おさかな!」

「ノーノー」

 昼のやりとりを繰り返してる。
 その後、目覚めたサルシュとダイフク氏が挨拶し合っているのなどを見た。
 カエル人間とリザードマンの邂逅だなあ。

 起き上がったバンキンは既に釣り竿を準備している。
 こいつ、もう夜釣りをするつもりだぞ。

 寝覚め用に海産物のスープをご馳走してくれるというので、みんなでぞろぞろと外に出た。
 様々な海産物を猛烈に煮込んだスープ。
 適当に干し魚とか海藻とかをぶち込んで食べていいやつだ。

 睡眠で失われていた塩分と水分が補給されていく~。
 滋味溢れるお味です。
 塩を減らせばコゲタでも美味しくいただけるしな。

「コゲタは減塩が基本なのに、キャロティは普通に塩が多くてもいけるのか」

「あら! ウェアラビットは塩を体の外に出すのが得意なのよ!」

「そうだったのか……」

「よーし、じゃあ見回りするやつと夜釣りするやつ決めようぜ。一巡したら入れ替わりな」

 バンキン、早速釣りをする気満々だな。

「じゃんけんで決めよう。じゃーんけーん」

 この世界にもじゃんけんがある。
 グーチョキパーではなく、剣と槍と盾だ。
 剣は盾をかいくぐるから盾に勝ち、槍は剣の間合い外から攻撃するから剣に勝つ。盾は槍を防いで折るから盾が勝つ。

 結果は僕とサルシュが勝った。

「ぐわああああ俺の夜釣りぃぃぃぃぃ」

 嘆きながら、キャロティと一緒に見回りに出るバンキンなのだった。
 頑張ってこいよ。
 その間、釣りは僕が担当してやろう。

「ワタクシめも釣りをやってみましょうか」

「サルシュも釣り竿を?」

「いえ、ワタクシめはこれです」

「糸を直接吊るすのかあ」

 二人で桟橋に並び、糸を垂らして魚を待つ。
 港湾部は真夜中になってもあちこちに灯りがついており、魚が集まってくる。
 そこを狙って釣るわけだな。

「サルシュは司祭だって言うけど、普段は何をしてるの」

「そうですなあ。神に祈ったりもしますが、そんなものは一日にほんの少しの時間です」

「司祭がそんなこと言っていいのか」

「いいのですぞ。バルガイヤーは寛大な神。祈りにかまけて日常をおろそかにするなと仰られています。ワタクシめは祈りの後、都市を巡り、植え込まれた植物が十分に太陽の光を浴びられているかどうかをチェックして回ります。伸びすぎた枝葉を切り、植え込みを管理し」

「植木屋みたいなもんじゃないか」

「似たようなことをしておりますな」

 謎が多いぞ、至高神教団。
 ツインみたいな神の祝福を受けた物語主人公みたいなのがいたと思ったら、サルシュみたいな飄々とした変人もいる。
 懐が深い。さすがはアーラン最大の教団だな……。

 どこかの流行り病みたいな自由の神フリーダスとは大違いだ。
 そう言えばもうそろそろ春だから、フリーダス信者が元気になる頃なんだな。

「ご主人! なんかきた!」

「なにい!」

 ちびっこ用の釣り竿を垂らしていたコゲタが、手応えを感じて僕の応援を求めてきた。
 よーし、後ろからコゲタをキャッチだ。

「コゲタ、釣り竿をぎゅーっと握ってるんだぞ。僕もちょっと釣り竿引っ張るから」

「が、がんばる~!」

「なるほど、ワタクシめも協力しましょう。ほいやー!」

 サルシュの尻尾が僕に巻き付いてきた。
 うおお、三人のパワーで引っ張るぞ!
 来い、大物!

 気合を入れて引っ張ったところ……。
 抵抗は一瞬。
 スポーンと何かが跳ねてきた。

 おや、これは……?

 平たくて長い、不思議な魚がかかっている。

「オビウオですな。この平たい体を全身ヒレのように使い、さらにうねって水を絡めてかなりの抵抗力があるのですが……。奴が力を入れる寸前に引っこ抜いたようです」

「海釣りにも詳しいねサルシュ」

「恐縮ですぞ。海は太陽の恵みを大いに浴びられる場所ですからな」

 桟橋の上でピチピチ跳ねるオビウオ。
 コゲタが恐る恐る近づいて、つん、とつついたらオビウオは激しく動いたので、コゲタが「きゃあー」と慌てて逃げて僕の後ろに隠れた。

「ははは、びっくりしたなあコゲタ」

「びっくりしたあ」

「サルシュ、オビウオは美味い?」

「小骨が多いですが、丸ごと煮込むと実にいい出汁が取れますぞ。それに、じっくり煮れば骨もぐずぐずに柔らかくなるので丸ごと食べられますな。どれ、寸胴を借りて来て煮込みましょう。どうせ夜明けまで見回りを順繰りでやります。煮込むのも半日仕事ですし、連れた魚を片っ端から放り込みましょうぞ」

「そうするか!」

 バンキンとキャロティが帰ってくるまでの間、僕らは数匹の微妙な魚を釣り上げては鍋に放り込むのだった。

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