115 / 337
38・王家のプチ騒乱?
第115話 王家陥落
しおりを挟む どういうことであろうか。
良いお年になっている、アーランの国王オウザマス二世まで出てきてしまっている。
ここは、国賓を招いてパーティなどをできる会場である。
だだっ広いテーブルが用意されており、その上座にオウザマス二世、右手にソロス殿下、左手にデュオス殿下がいる。
お妃様は早逝されたそうで、いない。
なので、王子の左右にご家族が並んでいるのだった。
ほう、ソロス王子の奥方はなんか大人しそうな人だな。
権力欲とか全く無くて、家で刺繍とかしてるのが大好きな内向的な人らしいからな。
で、ソロス王子の息子がいる。
ははー、これはひと目でバカ王子……いや、バカ王孫というのが分かる。
テーブルを指先でカタカタ叩いてて、足がぶらぶらしている。
ソロス王子、これを守るためにデュオスの子であるツインを遠ざけたんだなあ。
いやあ、それは適切な対処ですわ。
ツインもここにいるが、全然役者が違う。
明らかにツインは王の器で、バカ王孫は知力も体力も気品も外見も全てで負けてるもんな。
第一王子の息子というところしか勝っているところがない。
「父上ー、なんで俺がここにいるんだ?」
「黙っていろウノ! お前が口を開くと色々具合が悪いことになるんだ」
「ほーん」
あっ、鼻くそほじってる!!
だが、それをポケットから取り出したハンカチにつけて、またしまった。
お行儀だけはいいな……。
「ナザルとやら」
「あっはい!」
いきなりオウザマス二世から声を掛けられたぞ!
ひえー。
僕はなんでこんな場所にいるんだ?
今回の人生は変なことをせずに、好き勝手に生きるはずだったのに。
僕が紹介したカルボナーラのせいで第二王子に謀反の疑いが掛かり、これを晴らすために動いたら王族勢揃いなのだ!
オウザマス二世は、王座を賭けた弟王子との決闘に勝ち、血をもって王座を得た武闘派だ。
なお、裏情報だがアーランを救った同時のリップルに惚れており、后になってくれと求婚したが振られたという過去があるらしい……。
本当かなあ……?
「そなたがデュオスに食べさせたという、恐ろしく美味い料理……。それが王子の生活を変えたと言うのは真か」
「はっ、真にございます!」
こんな場所で、そんなことあるわけ無いでしょーとか言えるか。
「良かろう。そなたがその料理……カルボナーラというのか? それを余とソロスに供するなら、王宮に混乱を巻き起こした罪を許す……。そなたがかの英雄と大変親しいという話も聞いているが、許す……」
あっ、これ、リップルを好きだったの本当だわ!
いい年して僕にちょっと嫉妬してるもん。
命が危ないぞ!
僕はペコペコと頭を下げて、厨房へ急いだ。
そこでは、ギルボウとシャザクがせっせとパスタを作っているではないか。
「シャザクさんもすっかり料理が上手くなって」
「これをやらねばアーランが危ないのだ……! 私とて、そのためなら厨房に立つ……!!」
かっこいいぞシャザクさん。
「くそっ、最高の調理環境だ! こんなん、どうやっても最高に美味いカルボナーラができちまうじゃねえか! こりゃあ……とんでもねえ……! 知らねえ、俺は知らねえぞ……!! 世界が変わっちまうぞ……!!」
おお、今まさに手延べパスタは茹で上がり……。
シャザクさんが作った最高に美味しいパスタソースが掛けられるのだ。
今回のメニューは特別に、毒見をせずに食べることになる。
安全のため、料理には僕とシャザクとギルボウ、それと第一王子派閥の貴族しかいない。
その貴族は、ちょっと味見をさせてもらったら……。
「はわあぁぁぁぁぁぁぁ……! なんだこれ、なんだこれ、こんなものがあっていいのか……! ぐううう……。これは、国を傾ける美味だあ……」
とか呟きながら腰を抜かして、あっちの壁際でへたり込んでいる。
そんなに。
だが、彼がいないと見張り役がおらず、毒が仕込まれたと疑われかねない。
なので、僕は床に油を敷いて、彼を押しながら移動することにした。
「ちゃんと証言してくださいよ」
「ううう、わ、分かっている……。あれを一皿食べるのか……殿下羨ましいなあ」
「後で食べさせますから」
「ほ、本当か? 本当だな?」
また一人、カルボナーラの魔力の前に……。
こうして食卓に並んだカルボナーラ。
王族のお歴々はごくりと唾を飲み……。
デュオス殿下と奥方とお嬢さんは涼しい顔。
勝手知ったるカルボナーラだからね。
「……これが。ふむ、なるほど。熱い料理などどれほどぶりか。これを口にし、余が命を落とした時は……分かっておろうな?」
ギロリとオウザマス二世が僕を睨んだ。
こえー。
そして、フォークで止め、ナイフでパスタを切ってから食べる国王。
食べ方のマナーが違うが、それを指摘できるほどの者はここには……。
「陛下ー、それ食べ方違いますよー」
お嬢さんが行ったー!!
「なに、そうなのか?」
「こうですよ、こう」
フォークを器用に使って、くるくるとカルボナーラを巻きつけるお嬢さん。
どうやらオリジナルで食べ方を開発したようで、スプーンを受けにしてそこで巻き取っているのである。
自らそこにたどり着くとは、天才か……?
「ふむ、この料理にもマナーというものがあるのだな。良かろう」
陛下、ちょっと眉尻が落ちてるので、孫娘には弱いらしい。
そしてパクっと一口。
もぐもぐ咀嚼しながら、「むううううううう!! むううううううううう!!」とか唸り始めた。
「へ、陛下!?」
「大丈夫ですか陛下!?」
大臣とか親衛隊とかがどかどか集まってくる。
明らかに異常事態だもんな!
だが、異常は続く。
オウザマス二世は、ひたすらにカルボナーラを食べ続けたのだ!
鼻息も粗く、目を血走らせ、パスタを巻き取っては口に運ぶ!
王族皆カルボナーラ計画は、ついにクライマックスを迎えるのだ。
良いお年になっている、アーランの国王オウザマス二世まで出てきてしまっている。
ここは、国賓を招いてパーティなどをできる会場である。
だだっ広いテーブルが用意されており、その上座にオウザマス二世、右手にソロス殿下、左手にデュオス殿下がいる。
お妃様は早逝されたそうで、いない。
なので、王子の左右にご家族が並んでいるのだった。
ほう、ソロス王子の奥方はなんか大人しそうな人だな。
権力欲とか全く無くて、家で刺繍とかしてるのが大好きな内向的な人らしいからな。
で、ソロス王子の息子がいる。
ははー、これはひと目でバカ王子……いや、バカ王孫というのが分かる。
テーブルを指先でカタカタ叩いてて、足がぶらぶらしている。
ソロス王子、これを守るためにデュオスの子であるツインを遠ざけたんだなあ。
いやあ、それは適切な対処ですわ。
ツインもここにいるが、全然役者が違う。
明らかにツインは王の器で、バカ王孫は知力も体力も気品も外見も全てで負けてるもんな。
第一王子の息子というところしか勝っているところがない。
「父上ー、なんで俺がここにいるんだ?」
「黙っていろウノ! お前が口を開くと色々具合が悪いことになるんだ」
「ほーん」
あっ、鼻くそほじってる!!
だが、それをポケットから取り出したハンカチにつけて、またしまった。
お行儀だけはいいな……。
「ナザルとやら」
「あっはい!」
いきなりオウザマス二世から声を掛けられたぞ!
ひえー。
僕はなんでこんな場所にいるんだ?
今回の人生は変なことをせずに、好き勝手に生きるはずだったのに。
僕が紹介したカルボナーラのせいで第二王子に謀反の疑いが掛かり、これを晴らすために動いたら王族勢揃いなのだ!
オウザマス二世は、王座を賭けた弟王子との決闘に勝ち、血をもって王座を得た武闘派だ。
なお、裏情報だがアーランを救った同時のリップルに惚れており、后になってくれと求婚したが振られたという過去があるらしい……。
本当かなあ……?
「そなたがデュオスに食べさせたという、恐ろしく美味い料理……。それが王子の生活を変えたと言うのは真か」
「はっ、真にございます!」
こんな場所で、そんなことあるわけ無いでしょーとか言えるか。
「良かろう。そなたがその料理……カルボナーラというのか? それを余とソロスに供するなら、王宮に混乱を巻き起こした罪を許す……。そなたがかの英雄と大変親しいという話も聞いているが、許す……」
あっ、これ、リップルを好きだったの本当だわ!
いい年して僕にちょっと嫉妬してるもん。
命が危ないぞ!
僕はペコペコと頭を下げて、厨房へ急いだ。
そこでは、ギルボウとシャザクがせっせとパスタを作っているではないか。
「シャザクさんもすっかり料理が上手くなって」
「これをやらねばアーランが危ないのだ……! 私とて、そのためなら厨房に立つ……!!」
かっこいいぞシャザクさん。
「くそっ、最高の調理環境だ! こんなん、どうやっても最高に美味いカルボナーラができちまうじゃねえか! こりゃあ……とんでもねえ……! 知らねえ、俺は知らねえぞ……!! 世界が変わっちまうぞ……!!」
おお、今まさに手延べパスタは茹で上がり……。
シャザクさんが作った最高に美味しいパスタソースが掛けられるのだ。
今回のメニューは特別に、毒見をせずに食べることになる。
安全のため、料理には僕とシャザクとギルボウ、それと第一王子派閥の貴族しかいない。
その貴族は、ちょっと味見をさせてもらったら……。
「はわあぁぁぁぁぁぁぁ……! なんだこれ、なんだこれ、こんなものがあっていいのか……! ぐううう……。これは、国を傾ける美味だあ……」
とか呟きながら腰を抜かして、あっちの壁際でへたり込んでいる。
そんなに。
だが、彼がいないと見張り役がおらず、毒が仕込まれたと疑われかねない。
なので、僕は床に油を敷いて、彼を押しながら移動することにした。
「ちゃんと証言してくださいよ」
「ううう、わ、分かっている……。あれを一皿食べるのか……殿下羨ましいなあ」
「後で食べさせますから」
「ほ、本当か? 本当だな?」
また一人、カルボナーラの魔力の前に……。
こうして食卓に並んだカルボナーラ。
王族のお歴々はごくりと唾を飲み……。
デュオス殿下と奥方とお嬢さんは涼しい顔。
勝手知ったるカルボナーラだからね。
「……これが。ふむ、なるほど。熱い料理などどれほどぶりか。これを口にし、余が命を落とした時は……分かっておろうな?」
ギロリとオウザマス二世が僕を睨んだ。
こえー。
そして、フォークで止め、ナイフでパスタを切ってから食べる国王。
食べ方のマナーが違うが、それを指摘できるほどの者はここには……。
「陛下ー、それ食べ方違いますよー」
お嬢さんが行ったー!!
「なに、そうなのか?」
「こうですよ、こう」
フォークを器用に使って、くるくるとカルボナーラを巻きつけるお嬢さん。
どうやらオリジナルで食べ方を開発したようで、スプーンを受けにしてそこで巻き取っているのである。
自らそこにたどり着くとは、天才か……?
「ふむ、この料理にもマナーというものがあるのだな。良かろう」
陛下、ちょっと眉尻が落ちてるので、孫娘には弱いらしい。
そしてパクっと一口。
もぐもぐ咀嚼しながら、「むううううううう!! むううううううううう!!」とか唸り始めた。
「へ、陛下!?」
「大丈夫ですか陛下!?」
大臣とか親衛隊とかがどかどか集まってくる。
明らかに異常事態だもんな!
だが、異常は続く。
オウザマス二世は、ひたすらにカルボナーラを食べ続けたのだ!
鼻息も粗く、目を血走らせ、パスタを巻き取っては口に運ぶ!
王族皆カルボナーラ計画は、ついにクライマックスを迎えるのだ。
33
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~
日之影ソラ
ファンタジー
十年前――
世界は平和だった。
多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。
誰もが思っただろう。
心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。
何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。
十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。
そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。
「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」
「クビ?」
「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」
めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。
彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。
そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。
一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。
順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる