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27・いざ、砂漠の国へ
第80話 最後の襲撃を終えて
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なんでハーピーがコゲタを狙ってたかと思ったら、昨夜のコゲタは商人氏からちょっと漬物を分けてもらったらしい。
それを大事に大事にしながらちょっとずつ食べていたら狙われたのだと。
なんということか。
本当に盗賊もモンスターも、漬物しか狙ってないんだな!
「そんなに漬物が美味しいんですか」
「どうも一度奪われた漬物が、モンスターたちの間で山分けされたようなんですよ。それで美味しさを知られてしまった」
おお、こんなことでモンスターたちが種族の垣根を超えて協力し合うようになってしまうとは……!
きっと、モンスターを調べている学者なんかもびっくりだろう。
アーランにはそういう仕事の人が数人いる。
たくさんいても飯が食える仕事じゃないので、貴族のパトロンを得て研究しているのだ。
例えば、ギルドのグランドマスターはモンスター学者のパトロンだ。
学問なんてのは、よほど世界が豊かにならないとそれだけで飯を食っていけるようにはならないからね。
芸術同様、スポンサーが必要なんだ。
今のところ、世の中には学者よりも吟遊詩人みたいな娯楽屋が必要とされているみたいだけど。
「なに? ナザルがなんか吟遊詩人とかぶつぶつ言ってるんだけど! これはあれね? 歌い手の練習もしてたあたしの美声を披露する時ね! 行くわよ! あんたらの小さい耳をかっぽじってよく聞きなさい!!」
キャロティが聞きつけて、勝手に歌い始めたぞ。
まあ美声と言われれば美声なのかも知れない。
本物のウサギは声が出ないが、彼女らウェアラビットはちょっと甲高い感じの声が出る。
歌い出したのは、最近流行りの叙事詩だな。
遥か南の大陸の神話らしいけど、神と戦った戦士の歌だ。
なんでサビの部分で、その戦士が寝そべったまま不思議な動きで移動するところが入ってるんだ?
分からん……。
「いやあ、大したものです! 無料で聞けてしまうとは! 吟遊詩人のプロではないのですから無料ですよね? お金が掛かるようなら耳を塞ぎますが」
「商人しっかりしてるわね!! いいわよ、タダで!」
「わんわん! キャロティおうた!」
「あら、コゲタも分かるのね! やっぱりコボルドは耳がいいものねえ!」
なんかキャロティが満足げだからいいか。
「どうよ」
とバンキンに聞いたら、彼は肩をすくめた。
「すげえ高い声で耳がキーンとしたわ」
「そうかー」
バンキンの好みではなかったようだ。
吟遊詩人も、男性の方が多いし、男の声に合った雄々しい歌が多いしな。
だが、僕は今後平和になるに連れ、女性の吟遊詩人はどんどん増えると睨んでいる。
絶対にニーズはあるね。
商人氏が次に歌ってもらう歌をリクエストしている。
流石に報酬をねだられ、漬物をくれることになったようだ。
あと、コゲタは順調に懐柔されている気がする……。
いかん、いかんぞ……。
「ナザルがすっごい目であたしを睨んでるわ! やばいわ! あいつやる気よ!!」
さすがの危機感知能力!!
僕も仲間に手を出すほどおかしくはない。
「キャロティ。分かっているね……? うちの犬とは節度のあるお付き合いをするように……」
「はいはい! 分かってるわよ! 何を心配してるんだか! 女の子同士で仲良くしたっていいでしょーにねー」
「わん!」
分かればよろしい。
その後でなんか言った気がしたが、僕はホッとしてあとは聞いていなかった。
さあ、もりもりと旅をして、その後に二度ほど襲撃があった。
馬に乗った盗賊。
これは油で馬ごと滑らせて退治した。
馬に罪はない……。
滑って転んでも、転んだところでまたツルリと滑るから、馬は無事だ。
「ヒートスから盗まれた馬でしょうな。連れていきましょう」
そういうことになり、大所帯になった。
馬たちは人に慣れており、のんびりついてきてはあちこちの草をもりもり食べる。
コゲタがべろりと滑られて、「きゃーん」とか悲鳴を上げていた。
キャロティはすぐに馬と仲良くなり、背中に乗ったりしているではないか。
コミュ力が高いなこのウサギは……。
「いい馬だな! 持ち主に交渉して譲ってもらったりできんもんか。いや、維持する金が大変だからやめておこう」
バンキンが悩んでいらっしゃる。
最後の襲撃は、地面から突き出してきた巨大な虫だった。
「サ、サンドワーム! 今回の旅は運が悪いぞ! 襲撃のオールスターじゃないか!!」
商人氏が悲鳴をあげる。
だが、まあ僕らは慣れたものなので。
サンドワームは巨大で、人間サイズでもひとのみにしてしまうお化けミミズみたいなやつだ。
これがグワーッと荷馬車に躍りかかろうとしたところで、横合いからバンキンが動いた。
「そぉーらよっと!!」
手斧を思い切り振りかぶって投げる!
回転した手斧は勢いよく、サンドワームの真横に深々と突き刺さった。
『もがーっ!?』
衝撃で攻撃がぶれるサンドワーム。
地面を頭でぶっ叩いた。
馬たちがびっくりして逃げ出す。
キャロティが馬の上からぎゃあぎゃあ言いながらガンドをガンガンぶっ放す。
大混乱でございます。
「サンドワームの生態は知らないが……皮膚呼吸してるでしょ? 全身油で覆ってやれ。僕の魔力はかなり増えてるんだ。それっ」
僕が油でぬるりとサンドワームを覆った。
時々隙間を作って、そこにガンドやらバンキンの攻撃が突き刺さる。
サンドワームがばたばたのたうち回る。
これは窒息しているんだね。
これを五分ほどやったら動かなくなった。
呼吸しないとモンスターも死ぬからね……。
「やっぱりミミズと同じ生態だった」
「本当に恐ろしい能力に育ったな、お前の油使い」
「こわいわねー! っていうかあんたたち手伝って! 馬が逃げちゃったじゃない!」
僕らは慌てて、あちこちに散った馬を呼び集めるのだった。
ここで、コゲタの鼻が大活躍。
見事に馬を全部集めることが出来た。
その後、僕らはちょっと北上し……。
「サンドワームが出たということは」
僕の疑問に、商人氏がにやりと笑った。
「そうです! すでにここは砂漠なんですよ。驚きましたか? ちょっと草木の姿が変わっていて、岩が多くなっているでしょう。草原も途切れてから随分経ちます。砂漠っていうのは、案外砂だらけじゃないものなんです」
なるほどなあ!
それを大事に大事にしながらちょっとずつ食べていたら狙われたのだと。
なんということか。
本当に盗賊もモンスターも、漬物しか狙ってないんだな!
「そんなに漬物が美味しいんですか」
「どうも一度奪われた漬物が、モンスターたちの間で山分けされたようなんですよ。それで美味しさを知られてしまった」
おお、こんなことでモンスターたちが種族の垣根を超えて協力し合うようになってしまうとは……!
きっと、モンスターを調べている学者なんかもびっくりだろう。
アーランにはそういう仕事の人が数人いる。
たくさんいても飯が食える仕事じゃないので、貴族のパトロンを得て研究しているのだ。
例えば、ギルドのグランドマスターはモンスター学者のパトロンだ。
学問なんてのは、よほど世界が豊かにならないとそれだけで飯を食っていけるようにはならないからね。
芸術同様、スポンサーが必要なんだ。
今のところ、世の中には学者よりも吟遊詩人みたいな娯楽屋が必要とされているみたいだけど。
「なに? ナザルがなんか吟遊詩人とかぶつぶつ言ってるんだけど! これはあれね? 歌い手の練習もしてたあたしの美声を披露する時ね! 行くわよ! あんたらの小さい耳をかっぽじってよく聞きなさい!!」
キャロティが聞きつけて、勝手に歌い始めたぞ。
まあ美声と言われれば美声なのかも知れない。
本物のウサギは声が出ないが、彼女らウェアラビットはちょっと甲高い感じの声が出る。
歌い出したのは、最近流行りの叙事詩だな。
遥か南の大陸の神話らしいけど、神と戦った戦士の歌だ。
なんでサビの部分で、その戦士が寝そべったまま不思議な動きで移動するところが入ってるんだ?
分からん……。
「いやあ、大したものです! 無料で聞けてしまうとは! 吟遊詩人のプロではないのですから無料ですよね? お金が掛かるようなら耳を塞ぎますが」
「商人しっかりしてるわね!! いいわよ、タダで!」
「わんわん! キャロティおうた!」
「あら、コゲタも分かるのね! やっぱりコボルドは耳がいいものねえ!」
なんかキャロティが満足げだからいいか。
「どうよ」
とバンキンに聞いたら、彼は肩をすくめた。
「すげえ高い声で耳がキーンとしたわ」
「そうかー」
バンキンの好みではなかったようだ。
吟遊詩人も、男性の方が多いし、男の声に合った雄々しい歌が多いしな。
だが、僕は今後平和になるに連れ、女性の吟遊詩人はどんどん増えると睨んでいる。
絶対にニーズはあるね。
商人氏が次に歌ってもらう歌をリクエストしている。
流石に報酬をねだられ、漬物をくれることになったようだ。
あと、コゲタは順調に懐柔されている気がする……。
いかん、いかんぞ……。
「ナザルがすっごい目であたしを睨んでるわ! やばいわ! あいつやる気よ!!」
さすがの危機感知能力!!
僕も仲間に手を出すほどおかしくはない。
「キャロティ。分かっているね……? うちの犬とは節度のあるお付き合いをするように……」
「はいはい! 分かってるわよ! 何を心配してるんだか! 女の子同士で仲良くしたっていいでしょーにねー」
「わん!」
分かればよろしい。
その後でなんか言った気がしたが、僕はホッとしてあとは聞いていなかった。
さあ、もりもりと旅をして、その後に二度ほど襲撃があった。
馬に乗った盗賊。
これは油で馬ごと滑らせて退治した。
馬に罪はない……。
滑って転んでも、転んだところでまたツルリと滑るから、馬は無事だ。
「ヒートスから盗まれた馬でしょうな。連れていきましょう」
そういうことになり、大所帯になった。
馬たちは人に慣れており、のんびりついてきてはあちこちの草をもりもり食べる。
コゲタがべろりと滑られて、「きゃーん」とか悲鳴を上げていた。
キャロティはすぐに馬と仲良くなり、背中に乗ったりしているではないか。
コミュ力が高いなこのウサギは……。
「いい馬だな! 持ち主に交渉して譲ってもらったりできんもんか。いや、維持する金が大変だからやめておこう」
バンキンが悩んでいらっしゃる。
最後の襲撃は、地面から突き出してきた巨大な虫だった。
「サ、サンドワーム! 今回の旅は運が悪いぞ! 襲撃のオールスターじゃないか!!」
商人氏が悲鳴をあげる。
だが、まあ僕らは慣れたものなので。
サンドワームは巨大で、人間サイズでもひとのみにしてしまうお化けミミズみたいなやつだ。
これがグワーッと荷馬車に躍りかかろうとしたところで、横合いからバンキンが動いた。
「そぉーらよっと!!」
手斧を思い切り振りかぶって投げる!
回転した手斧は勢いよく、サンドワームの真横に深々と突き刺さった。
『もがーっ!?』
衝撃で攻撃がぶれるサンドワーム。
地面を頭でぶっ叩いた。
馬たちがびっくりして逃げ出す。
キャロティが馬の上からぎゃあぎゃあ言いながらガンドをガンガンぶっ放す。
大混乱でございます。
「サンドワームの生態は知らないが……皮膚呼吸してるでしょ? 全身油で覆ってやれ。僕の魔力はかなり増えてるんだ。それっ」
僕が油でぬるりとサンドワームを覆った。
時々隙間を作って、そこにガンドやらバンキンの攻撃が突き刺さる。
サンドワームがばたばたのたうち回る。
これは窒息しているんだね。
これを五分ほどやったら動かなくなった。
呼吸しないとモンスターも死ぬからね……。
「やっぱりミミズと同じ生態だった」
「本当に恐ろしい能力に育ったな、お前の油使い」
「こわいわねー! っていうかあんたたち手伝って! 馬が逃げちゃったじゃない!」
僕らは慌てて、あちこちに散った馬を呼び集めるのだった。
ここで、コゲタの鼻が大活躍。
見事に馬を全部集めることが出来た。
その後、僕らはちょっと北上し……。
「サンドワームが出たということは」
僕の疑問に、商人氏がにやりと笑った。
「そうです! すでにここは砂漠なんですよ。驚きましたか? ちょっと草木の姿が変わっていて、岩が多くなっているでしょう。草原も途切れてから随分経ちます。砂漠っていうのは、案外砂だらけじゃないものなんです」
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