俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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18・呉越同舟焼き鳥パーティー

第48話 山の中での遭遇

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 シルバー級冒険者として、出来うる限り目立たず生きていきたい僕である。
 だが、やはり等級というものは勝手に仕事を運んでくるものだ……。

「ナザルさん、ギルド本部から名指しであなたに、ファイブスターズとの境界近辺に立てた旗のメンテナンスの依頼が来ています」

「うわあ面倒くさい」

「シルバー級なんですからごちゃごちゃ言わずに受けてください」

 お下げの受付嬢は、僕の反論は受け付けてくれないのだ!
 ええい、なんということだ。
 報酬はそれなりに出るようだが、正直出張が絡む仕事はプライベートが潰されてよろしくない。

 僕は精一杯の抵抗として、コゲタ同伴を認めさせた。

「ナザルさんが従者にしているコボルドですよね? でしたら、冒険者の仲間ではなく装備として認められますから……」

 つまり、コゲタ分の報酬は出ないよというわけだ。
 けちめ!

 まあいい。
 僕はこの遠出をプライベートのように楽しむつもりだ。

 宿に帰り、出発の準備をする。

「ご主人、お出かけ?」

「そうだぞ、コゲタも一緒に行こう」

「行く! 行く!」

 コゲタが尻尾をぶんぶん振りながら、ぴょんぴょん飛び跳ねた。
 ははは、かわいいかわいい。

 こうしてコゲタを連れ、僕は旅立ったのだった。
 のんびりとしたものだ。
 食事は最小限。

 保存食と、水と粉。
 これだけあればいい。
 どうせ途中で狩りをするのだ。

 アーランから出て、ファイブスターズ方面へちょっと行ったところで、谷と山に向かう道が分かれる。
 今回は山道。
 緑が生い茂り、たくさんの動物たちがいる。

 つまり、食べ物いっぱいだ。
 僕は解体用の山刀とナイフくらいしか持っていない。
 狩りに道具は必要ないからだ。

「ご主人、鳥のにおい」

「食べられる鳥かい?」

「食べられる。コゲタ、前、食べた」

 コゲタの嗅覚によって獲物を探り、その経験から食べられることを知り。
 油を伸ばして鳥へと近づけていく。

 枝をしならせながら、僕らの様子を伺うその鳥は、それなりに大きい。
 生前の世界では、大きなカラスくらいはあるんじゃないだろうか。
 茶色とくすんだ緑の混じった羽は、なるほど枝葉に擬態してしまえば目立たない。

 逆に言えば、その鳥は俊敏に飛行することが苦手で、擬態して外敵をやり過ごすタイプだということである。
 木の幹を音もなく這い上がっていく油。
 やがて、油は鳥の足までたどり着くと……。

「捕縛!」

 一気に広がって、鳥を包みこんだ。
 鳥がギャアギャア叫びながら、飛び立とうとする。
 だが、油に包まれた翼は風をはらむことはない。

 落ちてきた。
 ここを、山刀でがつっと一撃。

 新鮮な鳥肉が手に入った。

「ご主人、すごい」

「まあね、さんざん、ギフトを私利私欲のために使ってるからね」

 流れ出る血を油に混ぜて吸い出してしまえば、血抜きもあっと言う間。
 ちょっと開けたところで羽をむしろうと思い、僕は山を登っていった。

 すると、降りる方へ続く獣道があるではないか。
 これはいい。
 登りと降りる獣道が交差する辺りでキャンプをしよう。

 本来ならば、獣が集まる場所だ。
 危険だと言えるだろう。
 だが、僕はギフトの力でその辺りは解決しているのだ。

 全ては油……!

 あとはコゲタが警戒してくれているしね。

 僕がテントと調理道具を背負い、コゲタは水と粉と保存食を担当している。
 荷物を下ろし、テントを立て……。

 さて、腰を落ち着けて羽をむしろう。
 これはなかなか食いでがある鳥だぞ。
 生前の世界のブロイラーよりは全然だが、それでも可食部がキログラム単位である。

 これを、この間覚えた焼き鳥にして食べる……。
 いいじゃないかいいじゃないか。

 山は調味料の宝庫でもあるので、僕はその辺りから刺激の強い香りを放つ木の実などを採取する。
 唐辛子もどきみたいなやつだ。
 一部の鳥だけがこれを食べることができて、それ以外の生き物には辛くて堪らない。

 好んで食べるのは、唐辛子もどきが種を運ばせたい鳥か、あるいは人間くらいのものだ。

 いやあ、好きなんだよね、この辛さ。
 コゲタがこの実を見て、「からから」と嫌そうな顔をした。

「僕だけに使うから。コゲタは辛いのなしね」

「コゲタ、からからいやー」

 うんうん、コボルドは嗅覚……すなわち味覚も鋭敏なので、こういう強烈な味のものが苦手なのだ。
 さて、この他に山椒っぽいものなどもゲットしたところで、いよいよ羽むしりの本番だ。
 バリバリとむしる。
 むしった後の羽を、コゲタがふわーっと空に浮かべて追いかけたりしている。

 平和だ。
 平和な時間だ。

 だが、そんな平和も長くは続かなかった。

「わんわん!!」

 コゲタが吠え始めた。
 なんだろう。
 僕がそちらを見ると……。

 山間から、ふらふらと数人の男が現れたところだった。
 あれは……ファイブスターズ側の兵士ではないだろうか。

 何をしているのだ。

「おお……! 人がいる……!」

「頼む! 助けてはくれまいか! 山に住むモンスターと戦って、怪我をした者がいるんだ……!」

 男たちの中の二人ほどがぐったりとし、一人は背負われ、一人は肩を借りてようやく歩いているところだ。
 なるほど、これは大変だ。
 冷戦中の敵国の兵士とは言え、眼の前で困っているものを見捨てるのも寝覚めが悪い。

「助けてもいい」

「おお!」

「だが……何か食材を提供してもらいたいな……!」

 全てはギブアンドテイクだ!

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