俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
46 / 337
17・冒険者になりたいだって!?やめとけやめとけぇ

第46話 どうだゴミ拾いはつまらんだろう。えっ、なかなかおもしろい!?

しおりを挟む
 僕の作戦はこうだ。
 ビータに冒険者の仕事の地味~なところをたっぷり体験してもらい、冒険者なんかキラキラしていなくて、臭くて汚くてきつくていいことなんか無いと思わせるのだ。
 そうして、もっと堅い職業についてもらう。

 見る者をメロメロにする美少年たるビータなら、わざわざ冒険者なんかにならなくても、将来の選択肢は無数にあるはずだ。
 僕のように、なりゆきで冒険者になるような人生はよろしくない。
 まあ僕は今という時間を大変にエンジョイしているのだが!

 さて、僕らは麻袋を片手に、下町のゴミを拾っている。
 主に、下町に落ちているゴミとは何か?

 ここを通過する馬のフンや、犬のフンなどである。
 食べ物なんか落ちているわけがない。

 遺跡で野菜や家畜が育てられるとは言え、食べ物が貴重な世界だ。
 一切何も残さずいただく。
 さらに、木くずは燃やせるし、鉄くずは何かを研磨するために使える。
 捨てるものなどない。

 となれば、自然と集めるゴミは定まってくるというものだ。

「ううっ、これは臭いですね……! 兄上も馬を飼っていますが、自分で世話をなさっていました。ぼくは馬糞を見たことが無かった気がします……!」

 ビータが育ちのいいことを言い出した。
 ははは、現実というものを知ったかね。
 世界は君が見ていたような、きれいなものばかりではないのだ。

 むしろ汚いものが多い。
 それ、犬のフンをゲットだ。
 僕はトングを使って麻袋に放り込む。

 この仕事は実入りはそこそこいい。
 なぜなら、フンは遺跡一階の野菜の肥料として買い取られるためだ。
 だが、フンを拾うイメージと臭さから、キラキラしたものを求めるアイアン級冒険者には敬遠されているのである!

 馬鹿だなあ、こんな割の良い仕事は無いのに。
 不思議と、治安がそこまで良くない下町でも、フンを拾う作業員は絶対に手出しされないのだ。
 誰だってフンが転がってる道は嫌だもんな。

「あっ、ど、どうも。そちらにフンが? はい、ありがとうございます」

 後ろでビータの声がする。
 様子がおかしいぞ……。
 僕が振り返ると、そこには信じられない光景が展開されていた。

 下町でよく見る、ガラの悪い昼間から飲んだくれているでかいおっさんが、ビータの前ではデレデレしながら、こっちの方が効率がいいよなんて教えてあげているのだ。

 なんだなんだ!?
 いつもは日雇いでカネを稼いで、それをお姉ちゃんがいる店で一瞬で使い切るおっさんが、どうして美少年にデレデレと!?

 やっぱりビータのあれは、ギフトだな。
 チャームのギフトだ。

 そしてギフトは、同じようにギフトを持つ者への効きが薄い。
 僕もギフト使いと相対することになれば、どれだけ油が効果を及ぼせるか怪しいところである。

「ふう……たくさん集まりました……! ナザルさん! ゴミ拾いはなんていうか……やりがいがありますね!」

「い、いかーん!! ポジティブな印象を与えてしまった!!」

「ぼくが今まで見ていなかった世界です……。そうか、こうやって見えないところで、誰かが馬糞を拾ってくれていたから、僕らはきれいな道を歩けるんだ……。あ、すみません、道を開けてくれて。ありがとうございます」

 今度は強面の兄ちゃんがデレデレしながらビータを通したぞ。
 相手をある程度コントロールできるんじゃないか。
 恐ろしいチャーム使いだな……!

 むしろビータ、冒険者は天職かも知れない……。
 これがアーランのスパイか何かになったら、ファイブスターズなんかあっという間に陥落させられるぞ。
 悪用できない場所で平和に活躍していてもらいたい。

 だが、今回の依頼は、ビータに冒険者の夢を諦めてもらうということである。
 フンを買い取ってもらった僕らは、また宿の井戸周りでちょっと体を洗わせてもらい、またギルドに戻った。

 宿の親父さんもおかみさんも、ビータをぽーっとしながら見てたな。
 なんてことだ。
 この美少年、危険すぎる。

 幸い、ビータの心根は善だ。
 完全無欠に善良。
 これは……彼に冒険者を諦めさせるよりも、ボランティア的なこういう仕事をたくさん経験させるべきでは……?
 いやいや、こんな善良な美少年を冒険者みたいな臭くて汚い仕事につかせるべきではない。

「次の仕事だが」

「はい!」

「冒険者は体が資本だ」

「はい!」

「馬が入れない路地に、資材を届ける仕事を行う」

「はい! ……はい?」

 つまり、配達だ。
 本来は配達業のコボルドやらがいるが、非人間タイプの異種族お断り!という家も少なくはない。
 そういうところは、人間がやらねばならないのだ。
 常に手は足りない。

「行くぞビータ! 顧客が僕らが届ける荷物を待っている!」

「は、はいぃ! お、お、重いーっ!!」

「持ち上げるんじゃない、ここの背負い籠を装備するんだ。僕が手伝ってやろう。なんだビータ華奢だなー。もっと筋肉をつけろ」

「は、はい!! 冒険者になるためですね!」

「うむ……いや、うむじゃない」

 いかんぞー!!
 どんどん冒険者になるための意志を固めさせているじゃないか!!
 僕らは食料品などの荷物を背負い込み、商業地区の裏路地の家々に届ける仕事をした。

 偏屈な老人が住んでいることで有名な家だったようだが……。
 出てきたお年寄りは、ビータを見るなりデレデレになった。

「いい人ばかりですね……!」

「君がその心根を持っている限り、世界は善良な輝きに満たされるかも知れない……」

「えっ、なんですか?」

「なんでもない、なんでもないぞ!」

 いよいよ僕も、ビータをどうしたらいいか分からなくなって来た!
 さあ、次だ!
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~

日之影ソラ
ファンタジー
 十年前――  世界は平和だった。  多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。  誰もが思っただろう。  心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。  何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと…… ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。  十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。  そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。 「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」 「クビ?」 「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」  めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。  彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。  そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。    一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。  順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...