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17・冒険者になりたいだって!?やめとけやめとけぇ
第46話 どうだゴミ拾いはつまらんだろう。えっ、なかなかおもしろい!?
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僕の作戦はこうだ。
ビータに冒険者の仕事の地味~なところをたっぷり体験してもらい、冒険者なんかキラキラしていなくて、臭くて汚くてきつくていいことなんか無いと思わせるのだ。
そうして、もっと堅い職業についてもらう。
見る者をメロメロにする美少年たるビータなら、わざわざ冒険者なんかにならなくても、将来の選択肢は無数にあるはずだ。
僕のように、なりゆきで冒険者になるような人生はよろしくない。
まあ僕は今という時間を大変にエンジョイしているのだが!
さて、僕らは麻袋を片手に、下町のゴミを拾っている。
主に、下町に落ちているゴミとは何か?
ここを通過する馬のフンや、犬のフンなどである。
食べ物なんか落ちているわけがない。
遺跡で野菜や家畜が育てられるとは言え、食べ物が貴重な世界だ。
一切何も残さずいただく。
さらに、木くずは燃やせるし、鉄くずは何かを研磨するために使える。
捨てるものなどない。
となれば、自然と集めるゴミは定まってくるというものだ。
「ううっ、これは臭いですね……! 兄上も馬を飼っていますが、自分で世話をなさっていました。ぼくは馬糞を見たことが無かった気がします……!」
ビータが育ちのいいことを言い出した。
ははは、現実というものを知ったかね。
世界は君が見ていたような、きれいなものばかりではないのだ。
むしろ汚いものが多い。
それ、犬のフンをゲットだ。
僕はトングを使って麻袋に放り込む。
この仕事は実入りはそこそこいい。
なぜなら、フンは遺跡一階の野菜の肥料として買い取られるためだ。
だが、フンを拾うイメージと臭さから、キラキラしたものを求めるアイアン級冒険者には敬遠されているのである!
馬鹿だなあ、こんな割の良い仕事は無いのに。
不思議と、治安がそこまで良くない下町でも、フンを拾う作業員は絶対に手出しされないのだ。
誰だってフンが転がってる道は嫌だもんな。
「あっ、ど、どうも。そちらにフンが? はい、ありがとうございます」
後ろでビータの声がする。
様子がおかしいぞ……。
僕が振り返ると、そこには信じられない光景が展開されていた。
下町でよく見る、ガラの悪い昼間から飲んだくれているでかいおっさんが、ビータの前ではデレデレしながら、こっちの方が効率がいいよなんて教えてあげているのだ。
なんだなんだ!?
いつもは日雇いでカネを稼いで、それをお姉ちゃんがいる店で一瞬で使い切るおっさんが、どうして美少年にデレデレと!?
やっぱりビータのあれは、ギフトだな。
チャームのギフトだ。
そしてギフトは、同じようにギフトを持つ者への効きが薄い。
僕もギフト使いと相対することになれば、どれだけ油が効果を及ぼせるか怪しいところである。
「ふう……たくさん集まりました……! ナザルさん! ゴミ拾いはなんていうか……やりがいがありますね!」
「い、いかーん!! ポジティブな印象を与えてしまった!!」
「ぼくが今まで見ていなかった世界です……。そうか、こうやって見えないところで、誰かが馬糞を拾ってくれていたから、僕らはきれいな道を歩けるんだ……。あ、すみません、道を開けてくれて。ありがとうございます」
今度は強面の兄ちゃんがデレデレしながらビータを通したぞ。
相手をある程度コントロールできるんじゃないか。
恐ろしいチャーム使いだな……!
むしろビータ、冒険者は天職かも知れない……。
これがアーランのスパイか何かになったら、ファイブスターズなんかあっという間に陥落させられるぞ。
悪用できない場所で平和に活躍していてもらいたい。
だが、今回の依頼は、ビータに冒険者の夢を諦めてもらうということである。
フンを買い取ってもらった僕らは、また宿の井戸周りでちょっと体を洗わせてもらい、またギルドに戻った。
宿の親父さんもおかみさんも、ビータをぽーっとしながら見てたな。
なんてことだ。
この美少年、危険すぎる。
幸い、ビータの心根は善だ。
完全無欠に善良。
これは……彼に冒険者を諦めさせるよりも、ボランティア的なこういう仕事をたくさん経験させるべきでは……?
いやいや、こんな善良な美少年を冒険者みたいな臭くて汚い仕事につかせるべきではない。
「次の仕事だが」
「はい!」
「冒険者は体が資本だ」
「はい!」
「馬が入れない路地に、資材を届ける仕事を行う」
「はい! ……はい?」
つまり、配達だ。
本来は配達業のコボルドやらがいるが、非人間タイプの異種族お断り!という家も少なくはない。
そういうところは、人間がやらねばならないのだ。
常に手は足りない。
「行くぞビータ! 顧客が僕らが届ける荷物を待っている!」
「は、はいぃ! お、お、重いーっ!!」
「持ち上げるんじゃない、ここの背負い籠を装備するんだ。僕が手伝ってやろう。なんだビータ華奢だなー。もっと筋肉をつけろ」
「は、はい!! 冒険者になるためですね!」
「うむ……いや、うむじゃない」
いかんぞー!!
どんどん冒険者になるための意志を固めさせているじゃないか!!
僕らは食料品などの荷物を背負い込み、商業地区の裏路地の家々に届ける仕事をした。
偏屈な老人が住んでいることで有名な家だったようだが……。
出てきたお年寄りは、ビータを見るなりデレデレになった。
「いい人ばかりですね……!」
「君がその心根を持っている限り、世界は善良な輝きに満たされるかも知れない……」
「えっ、なんですか?」
「なんでもない、なんでもないぞ!」
いよいよ僕も、ビータをどうしたらいいか分からなくなって来た!
さあ、次だ!
ビータに冒険者の仕事の地味~なところをたっぷり体験してもらい、冒険者なんかキラキラしていなくて、臭くて汚くてきつくていいことなんか無いと思わせるのだ。
そうして、もっと堅い職業についてもらう。
見る者をメロメロにする美少年たるビータなら、わざわざ冒険者なんかにならなくても、将来の選択肢は無数にあるはずだ。
僕のように、なりゆきで冒険者になるような人生はよろしくない。
まあ僕は今という時間を大変にエンジョイしているのだが!
さて、僕らは麻袋を片手に、下町のゴミを拾っている。
主に、下町に落ちているゴミとは何か?
ここを通過する馬のフンや、犬のフンなどである。
食べ物なんか落ちているわけがない。
遺跡で野菜や家畜が育てられるとは言え、食べ物が貴重な世界だ。
一切何も残さずいただく。
さらに、木くずは燃やせるし、鉄くずは何かを研磨するために使える。
捨てるものなどない。
となれば、自然と集めるゴミは定まってくるというものだ。
「ううっ、これは臭いですね……! 兄上も馬を飼っていますが、自分で世話をなさっていました。ぼくは馬糞を見たことが無かった気がします……!」
ビータが育ちのいいことを言い出した。
ははは、現実というものを知ったかね。
世界は君が見ていたような、きれいなものばかりではないのだ。
むしろ汚いものが多い。
それ、犬のフンをゲットだ。
僕はトングを使って麻袋に放り込む。
この仕事は実入りはそこそこいい。
なぜなら、フンは遺跡一階の野菜の肥料として買い取られるためだ。
だが、フンを拾うイメージと臭さから、キラキラしたものを求めるアイアン級冒険者には敬遠されているのである!
馬鹿だなあ、こんな割の良い仕事は無いのに。
不思議と、治安がそこまで良くない下町でも、フンを拾う作業員は絶対に手出しされないのだ。
誰だってフンが転がってる道は嫌だもんな。
「あっ、ど、どうも。そちらにフンが? はい、ありがとうございます」
後ろでビータの声がする。
様子がおかしいぞ……。
僕が振り返ると、そこには信じられない光景が展開されていた。
下町でよく見る、ガラの悪い昼間から飲んだくれているでかいおっさんが、ビータの前ではデレデレしながら、こっちの方が効率がいいよなんて教えてあげているのだ。
なんだなんだ!?
いつもは日雇いでカネを稼いで、それをお姉ちゃんがいる店で一瞬で使い切るおっさんが、どうして美少年にデレデレと!?
やっぱりビータのあれは、ギフトだな。
チャームのギフトだ。
そしてギフトは、同じようにギフトを持つ者への効きが薄い。
僕もギフト使いと相対することになれば、どれだけ油が効果を及ぼせるか怪しいところである。
「ふう……たくさん集まりました……! ナザルさん! ゴミ拾いはなんていうか……やりがいがありますね!」
「い、いかーん!! ポジティブな印象を与えてしまった!!」
「ぼくが今まで見ていなかった世界です……。そうか、こうやって見えないところで、誰かが馬糞を拾ってくれていたから、僕らはきれいな道を歩けるんだ……。あ、すみません、道を開けてくれて。ありがとうございます」
今度は強面の兄ちゃんがデレデレしながらビータを通したぞ。
相手をある程度コントロールできるんじゃないか。
恐ろしいチャーム使いだな……!
むしろビータ、冒険者は天職かも知れない……。
これがアーランのスパイか何かになったら、ファイブスターズなんかあっという間に陥落させられるぞ。
悪用できない場所で平和に活躍していてもらいたい。
だが、今回の依頼は、ビータに冒険者の夢を諦めてもらうということである。
フンを買い取ってもらった僕らは、また宿の井戸周りでちょっと体を洗わせてもらい、またギルドに戻った。
宿の親父さんもおかみさんも、ビータをぽーっとしながら見てたな。
なんてことだ。
この美少年、危険すぎる。
幸い、ビータの心根は善だ。
完全無欠に善良。
これは……彼に冒険者を諦めさせるよりも、ボランティア的なこういう仕事をたくさん経験させるべきでは……?
いやいや、こんな善良な美少年を冒険者みたいな臭くて汚い仕事につかせるべきではない。
「次の仕事だが」
「はい!」
「冒険者は体が資本だ」
「はい!」
「馬が入れない路地に、資材を届ける仕事を行う」
「はい! ……はい?」
つまり、配達だ。
本来は配達業のコボルドやらがいるが、非人間タイプの異種族お断り!という家も少なくはない。
そういうところは、人間がやらねばならないのだ。
常に手は足りない。
「行くぞビータ! 顧客が僕らが届ける荷物を待っている!」
「は、はいぃ! お、お、重いーっ!!」
「持ち上げるんじゃない、ここの背負い籠を装備するんだ。僕が手伝ってやろう。なんだビータ華奢だなー。もっと筋肉をつけろ」
「は、はい!! 冒険者になるためですね!」
「うむ……いや、うむじゃない」
いかんぞー!!
どんどん冒険者になるための意志を固めさせているじゃないか!!
僕らは食料品などの荷物を背負い込み、商業地区の裏路地の家々に届ける仕事をした。
偏屈な老人が住んでいることで有名な家だったようだが……。
出てきたお年寄りは、ビータを見るなりデレデレになった。
「いい人ばかりですね……!」
「君がその心根を持っている限り、世界は善良な輝きに満たされるかも知れない……」
「えっ、なんですか?」
「なんでもない、なんでもないぞ!」
いよいよ僕も、ビータをどうしたらいいか分からなくなって来た!
さあ、次だ!
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