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5・新人面接手伝い
第12話 三人の面接官
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下町、商業地区の冒険者ギルドを総動員した半グレ掃討作戦は成功を収めたらしい。
盗賊ギルドの全面協力が強かった。
どうやら、盗賊ギルド内には数名の間者が入り込んでいたようで、彼らも一掃された。
半グレは言うなれば、盗賊ギルドに所属できないような、最低限のルールも守れない底辺の犯罪者やギルドに届け出ずに犯罪を行っているもぐりだったりする。
彼らを組織化しようという人物が現れて今回のような事件を起こしたそうだが……。
「みんな盗賊神の治める地獄に送ってやった」
緑色のバンダナの人が、事もなげに言った。
ゴールド級冒険者のアーガイルさんだ。
盗賊ギルドの幹部でもあるらしいのだが……。
今は乾き物をつまみつつ、酒を少し口にしては実に不味そうな顔をしている。
ところで、どうして安楽椅子冒険者と同席しているんだろう……?
僕の疑問をアーガイルさんは感じ取ったらしい。
「おい、このお人はな。かつてアーランを襲ったレッサードラゴンをただ一人で退治し、それ以降、この国に守り神として住み着いた大魔法使い様なんだぞ」
「うっわ、目がマジだ」
このゴールド級、本気でリップルを尊敬してるぞ。
「なんだその顔は。まさかお前……リップルさんを舐めてるんじゃないだろうな……? いくら油使いのナザルと言えど、許せることと許せねえことがあるぞ……!」
「はっはっは、モテる女はつらいねえー」
リップル、これはモテじゃないから。
そしてアーガイルさんはマスターが出してきた酒を飲んで、また悲しそうな顔をした。
「なんでここの酒はこんなに不味いんだ……」
「やる気がないからです」
マスターが身も蓋もない事を言った。
そうだね。
マスターの店はお茶が美味しい酒場だもんね。
ということで、結局僕とリップルとアーガイルさんで、並んでお茶を飲むという奇妙な光景が広がることになった。
異様な雰囲気なので誰も近づいてこないのだが。
一人、勇気ある人物が話しかけてきた。
「あのう」
誰あろう、いつも受付にいる、おさげの受付嬢だ。
「ナザルさん、実はお仕事をお願いしたくてですね」
「はいはい。この季節のお願いということは……今年もあれだね?」
「はい。春先ということで田舎から上京してきた新人の面接のお手伝いをお願いします」
「油使い、そんな事を毎年やっていたのか……」
「ええ。ベテランカッパー級ですからね」
「自慢できないだろそれは……」
アーガイルさんは色々常識人だな。
結局、アーガイルさんは半グレの件を片付けた手柄を得たことで、ちょっとした休日なんかの裁量権を得たそうで。
「俺も休みを利用して参加しよう」
「えっ、ゴールド級のアーガイルさんが!?」
驚くおさげの受付嬢。
「なんだなんだ、なんだか楽しそうに見えてきたじゃないか。私も参加するぞ」
「えっ、安楽椅子冒険者を名乗る人が!?」
驚くおさげの受付嬢。
一瞬うんうん頷いたリップルは、すぐにムキーッと怒った。
「なんで私はプラチナ級って言わないんだー!!」
それが人徳というものだぞリップル。
さて、冒険者ギルドの新人面接だが。
基本的に、ギルドはやって来た全ての人間を受け入れる。
新人は全てアイアン級となり、そこから冒険者として食べていけるカッパー級を目指すことになるのだ。
面接は、下町地区、商業地区のどちらに配置するかを決定するものだ。
新人の八割は食べていけなくて、冒険をやめてアーランで日雇いの仕事を始めるか、無茶して死ぬ。
無事に里帰りできるのが一割くらいか。
周辺の田舎からは、アーランは若者を吸い込んで帰さない蟻地獄と呼ばれたりもしている。
畑を継げなかった次男坊以下が出ていって、そのうち九割は永遠に戻ってこないんだもんね。
冒険者、そう考えると危険な仕事だなあ。
ちなみに、商業地区だとちょっとしたお使いや短距離の護衛などの仕事が多い。
安全そうでしょう?
お使いと護衛失敗すると、罰金が発生することがあるのね。
下町の方が、命の危険はあるけど金銭的には安全だから。
金は命より重い。
それが、アイアン級冒険者なのだ……!
ということで、僕の仕事は、中途半端な気分で冒険者になろうとする若者を脅し、怖がらせ、辞退させることである!
これを聞いて、アーガイルさんもリップルも悪い笑みを浮かべた。
どうやら僕らはご同輩だったらしい。
「お、お、お手柔らかにお願いしますね? 素晴らしい才能がある方もいるかも知れませんし、その方が辞退したらギルドの損失ですから……!」
あわわわわ、と震えるおさげの受付嬢なのだった。
今回の冒険者ギルド新人面接は、面接官にビッグゲストを迎えて開催されるということで、ちょっとした話題になった。
このギルドには、僕が面接した冒険者も何人かいるからね。
「ナザルさんがめっちゃ脅してくるけど、そんなん嘘やろって思ってアイアン級になったら一通り経験したからなあ」
「まあまあ誇張だったけど、ちょいちょい誇張の中に洒落にならない真実が混じってるんだよな」
「たちが悪いわよね、ナザルさんの脅し。バカにしてると死ぬけど、真に受けると動けなくなるもんね……」
「僕は君たちの新たな人生が順調な滑り出しを迎えるよう、足元に油をまいてあげたんだよ……」
「スリップして死ぬやつ!!」
「お陰でバランス感覚身につけて未だに生きてるわ」
良かった良かった。
今回も、こういう有望な若者たちを迎え入れたいところだ。
盗賊ギルドの全面協力が強かった。
どうやら、盗賊ギルド内には数名の間者が入り込んでいたようで、彼らも一掃された。
半グレは言うなれば、盗賊ギルドに所属できないような、最低限のルールも守れない底辺の犯罪者やギルドに届け出ずに犯罪を行っているもぐりだったりする。
彼らを組織化しようという人物が現れて今回のような事件を起こしたそうだが……。
「みんな盗賊神の治める地獄に送ってやった」
緑色のバンダナの人が、事もなげに言った。
ゴールド級冒険者のアーガイルさんだ。
盗賊ギルドの幹部でもあるらしいのだが……。
今は乾き物をつまみつつ、酒を少し口にしては実に不味そうな顔をしている。
ところで、どうして安楽椅子冒険者と同席しているんだろう……?
僕の疑問をアーガイルさんは感じ取ったらしい。
「おい、このお人はな。かつてアーランを襲ったレッサードラゴンをただ一人で退治し、それ以降、この国に守り神として住み着いた大魔法使い様なんだぞ」
「うっわ、目がマジだ」
このゴールド級、本気でリップルを尊敬してるぞ。
「なんだその顔は。まさかお前……リップルさんを舐めてるんじゃないだろうな……? いくら油使いのナザルと言えど、許せることと許せねえことがあるぞ……!」
「はっはっは、モテる女はつらいねえー」
リップル、これはモテじゃないから。
そしてアーガイルさんはマスターが出してきた酒を飲んで、また悲しそうな顔をした。
「なんでここの酒はこんなに不味いんだ……」
「やる気がないからです」
マスターが身も蓋もない事を言った。
そうだね。
マスターの店はお茶が美味しい酒場だもんね。
ということで、結局僕とリップルとアーガイルさんで、並んでお茶を飲むという奇妙な光景が広がることになった。
異様な雰囲気なので誰も近づいてこないのだが。
一人、勇気ある人物が話しかけてきた。
「あのう」
誰あろう、いつも受付にいる、おさげの受付嬢だ。
「ナザルさん、実はお仕事をお願いしたくてですね」
「はいはい。この季節のお願いということは……今年もあれだね?」
「はい。春先ということで田舎から上京してきた新人の面接のお手伝いをお願いします」
「油使い、そんな事を毎年やっていたのか……」
「ええ。ベテランカッパー級ですからね」
「自慢できないだろそれは……」
アーガイルさんは色々常識人だな。
結局、アーガイルさんは半グレの件を片付けた手柄を得たことで、ちょっとした休日なんかの裁量権を得たそうで。
「俺も休みを利用して参加しよう」
「えっ、ゴールド級のアーガイルさんが!?」
驚くおさげの受付嬢。
「なんだなんだ、なんだか楽しそうに見えてきたじゃないか。私も参加するぞ」
「えっ、安楽椅子冒険者を名乗る人が!?」
驚くおさげの受付嬢。
一瞬うんうん頷いたリップルは、すぐにムキーッと怒った。
「なんで私はプラチナ級って言わないんだー!!」
それが人徳というものだぞリップル。
さて、冒険者ギルドの新人面接だが。
基本的に、ギルドはやって来た全ての人間を受け入れる。
新人は全てアイアン級となり、そこから冒険者として食べていけるカッパー級を目指すことになるのだ。
面接は、下町地区、商業地区のどちらに配置するかを決定するものだ。
新人の八割は食べていけなくて、冒険をやめてアーランで日雇いの仕事を始めるか、無茶して死ぬ。
無事に里帰りできるのが一割くらいか。
周辺の田舎からは、アーランは若者を吸い込んで帰さない蟻地獄と呼ばれたりもしている。
畑を継げなかった次男坊以下が出ていって、そのうち九割は永遠に戻ってこないんだもんね。
冒険者、そう考えると危険な仕事だなあ。
ちなみに、商業地区だとちょっとしたお使いや短距離の護衛などの仕事が多い。
安全そうでしょう?
お使いと護衛失敗すると、罰金が発生することがあるのね。
下町の方が、命の危険はあるけど金銭的には安全だから。
金は命より重い。
それが、アイアン級冒険者なのだ……!
ということで、僕の仕事は、中途半端な気分で冒険者になろうとする若者を脅し、怖がらせ、辞退させることである!
これを聞いて、アーガイルさんもリップルも悪い笑みを浮かべた。
どうやら僕らはご同輩だったらしい。
「お、お、お手柔らかにお願いしますね? 素晴らしい才能がある方もいるかも知れませんし、その方が辞退したらギルドの損失ですから……!」
あわわわわ、と震えるおさげの受付嬢なのだった。
今回の冒険者ギルド新人面接は、面接官にビッグゲストを迎えて開催されるということで、ちょっとした話題になった。
このギルドには、僕が面接した冒険者も何人かいるからね。
「ナザルさんがめっちゃ脅してくるけど、そんなん嘘やろって思ってアイアン級になったら一通り経験したからなあ」
「まあまあ誇張だったけど、ちょいちょい誇張の中に洒落にならない真実が混じってるんだよな」
「たちが悪いわよね、ナザルさんの脅し。バカにしてると死ぬけど、真に受けると動けなくなるもんね……」
「僕は君たちの新たな人生が順調な滑り出しを迎えるよう、足元に油をまいてあげたんだよ……」
「スリップして死ぬやつ!!」
「お陰でバランス感覚身につけて未だに生きてるわ」
良かった良かった。
今回も、こういう有望な若者たちを迎え入れたいところだ。
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