召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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フィフスエレ帝国跡編

第136話 地図とフラグと目覚めのチュー

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 バーバリアンと合流し、膨れ上がった俺たち。
 この集まりをなんと呼べばいいのか。

「君の能力にちなんでチュートリアル連合とか名付ければいいんじゃないかな」

「頭いいな義兄」

 双子にナイスな提案をされたので、これを採用する。
 我らチュートリアル連合は、並み居る魔獣を粉砕しつつ、フィフスエレ帝国をひたすら横断。
 この国はそこそこな広さがあるのだが、ちょうど国土がくびれている部分があるのだ。

「上空から見るとこのような光景に。俺たちは既に半ばを過ぎており、この速度なら明後日にはシクスゼクスに抜ける」

 ヘルプ機能から展開した地図を空に浮かべ、チュートリアル連合の首脳陣に見せるのである。
 時間はドミニクに合わせて夜。

 空の地図を見て、みんなが「オー」とどよめくのだった。

「どういう魔法なのかは知りませんが、これは分かりやすい。残り日数も明確ならば、信徒たちの士気も保てましょう」

 うんうん頷くドミニク司祭。

「なーるほどな。お前はちょうど、この通りやすいところを狙ってたってわけか。頭が切れる男だ」

 バルクもまた、感心して唸った。
 この地図が正確であることは、双子が風の精霊を纏って舞い上がり、上空から確認済みだ。

 うちの義兄たちはなんでもできるな。
 なんて便利なんだ。

「わたしも色々できますよう!」

 ルミイが横でぷんすか怒っている。
 君は色々できるかもしれないが、全面的に仕事を任せるのはどうも不安でな……!

「夜なのだー! カオルンのお仕事タイムなのだー!」

 昼寝をしていたカオルンが目覚めて動き出す。
 ドミニク司祭、アンデッドたちが活躍するのは、夜間の警備だ。

 彼らとカオルンが合わされば百人力である。

「ドラゴンでも出て来ない限りは大丈夫だな。こっちの戦力がとても強い。だがこういうことを言ってるとドラゴンが出てくるんだ」

 地図を見る集まりが終わった後、一人でフラグについてぶつぶつ言う俺である。
 そうしていると、横にアカネルがやってきて腰掛けた。

「マスター、当機能は思い出したのですが」

「なんだなんだ」

「フィフスエレにはルミイのお姉さんがいるはずでは」

「あっ、そうだったっけ」

 その名はエリイ。
 恋を求めて、単身フィフスエレに乗り込んだ女豪傑。
 凍土の王国で聞いたような……。

 兄弟の順番的に、双子の王子が一番目と二番目。
 エリイがルミイの一個年上の姉……ということは、外見年齢はアカネルと同い年くらいか。
 末っ子のルミイが続くと。

 凄い兄妹である。
 近々全員揃いそうな予感もする。

 バルクもきっと、エリイを探していたのだろうが、今のところは見つけられていない。

 双子の義兄曰く、

「エリイは魔法はからっきしだけど、何故か精霊と仲が良くってね。お願いで言う事を聞かせられるんだ」

「身体能力は父のそれに近いね。女性としては凍土の王国最強じゃないかな」

「兄妹にまだ恐ろしい逸材が残ってたんだな……。ルミイはルリファレラ似で、エリイがバルク似か」

「そうなるね」

 両親のいいところを全部受け継いだ双子がそう言って笑うのだ。
 ちなみに夜間は馬車は止まり、バーバリアンたちは地面で雑魚寝である。

 襲撃があれば起きてきて戦う。
 なければずっと寝ている。

 双子も例外ではない。
 バルクだけはドミニク司祭の馬車に寝泊まりしているが、これは司祭からの好意であると同時に、彼が外に出ているときの棺の守りを任せる意味もある。

 そろそろ、周りのバーバリアンもぐうぐうと寝始めた。
 俺も寝る頃合いである。

「よしアカネル、寝よう寝よう」

「寝ましょうか。これが淫靡な意味合いの寝るだったら当機能の胸もときめくのですが、ロマンチックではない場所での初体験を望みませんので」

「さいですか」

 なんかぺちゃくちゃ言っているアカネルを連れて馬車に入ると、ルミイは完全に爆睡している。
 よく食べ、よく寝る子だ。

 俺とアカネルも横になり、夢の世界に落ちていくところで、遠くから剣戟が聞こえてきたのだった。
 おお、やっとるやっとる。
 だが、真・カオルンが活躍している。何も心配することはあるまい。

 明け方頃に目が覚めると、御者台で寝ていたナルカがごそごそと起き出すところである。

 ルミイも目覚め、なんだか二人で連れ立って木々の間に移動していく。
 あれは朝に出すものを出すやつだな。
 女子は仲良く一緒に行動するのかもしれん。

 というか、いつの間に仲良くなったのだ。

 二人がいない間に、アカネルを起こすなどする。
 そうしている間に、ひと仕事終えたカオルンが戻ってきて、俺を発見した。

「マナビー! 頑張ったのだ! 魔獣が割りとたくさん出てきたのだ! でも、ちょっとずつ襲撃は減ってるのだなー」

「あっちも痛い目に遭い続けて覚えたんだろう。おつかれおつかれ。ゆっくり寝るといい」

「ウンウン、朝ごはん食べたら寝るのだー。あと、先にお休みのキスをしとくのだ!」

 ということで、大変濃厚なチューをされてしまった。
 キス魔だ!

 あまりにキスの時間が長いので、横で寝ていたアカネルがカッと目を見開いてこれを見ているではないか。

「な、なな、なんということですか! 当機能の目覚めに脳を破壊してくるようなシーンを見せつけるなんて! 当機能は猛烈に抗議します! そしてマスターとのキスを要求します! えいやー!!」

「ウグワー!」

 アカネルに押し倒されて、猛然とチューをされる俺である。
 そうすると、今度はルミイが戻ってきて。

「あっ、みんなでマナビさんにキスしてるんですか? じゃあわたしもやります! マナビさーん。あなたー。おはようのチューですよー」

「ウグワー!」

 ということで大変なことになってしまったのだった。

 これを、ナルカが呆れ顔で眺めているのである。

「モテる男は大変だねえ……。体を壊さないようにがんばんなよ……」

 その体を壊さないように、には複数の意味が込められているよな?
 こうして、旅はフィフスエレ横断最終日へ。

 お約束と言うかなんというか。

 ここで俺たちは、ドラゴンと邂逅することになるのだ。
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