上 下
130 / 196
セブンセンス法国編

第130話 一夜・花火・次の朝へ

しおりを挟む
 いつ頃に、フィフスエレへ出発するのか。
 その辺りの話し合いをルミイに任せつつ、セブンセンスは内戦の終わりを告げるお祭りみたいなものが始まっていた。

 法国の住民もバーバリアンも交えての大騒ぎである。
 いい顔をしない住民ももちろんいる。
 戦神とか知識神の信者たちだ。

 だが、光輝神と慈愛神と鍛冶神が賛同しており、しかもバーバリアン側の主神が光輝神と慈愛神の別側面の神なのである。
 おおっぴらに反対する理由がない。

 後々ひと悶着はあるかもだが、今は平和ということだ。

 みんな、大いに飲み食いしている。
 晴れて知識神最高司祭となったグラーシズも、しかめっ面をしながら骨付き肉をむしゃむしゃやっていた。

「技巧神の信者たちが、せっせと商売をしていますね……。自らの神が世に混乱をもたらした張本人だというのに……」

「リアリストなんだろう。あちらからすると、悪さをしたのは技巧神の一側面に過ぎないそうだぞ」

「確かに、光輝神と蛮神が同一である事を知ると、その言葉に納得せざるを得ませんね。では、知識神側はその理論を世の中に広めます」

 グラーシズは協力的だ。
 彼曰く、「せっかく得た平和を、すぐに壊してしまうのはもったいないですから。それに平和な方が存分に文献の研究ができます」だと。

 ということで、お祭りの料理も運営も技巧神の信者たちがやっているのだった。
 これを以て、彼らへの禊とするわけだ。
 蛮神バルガイヤーこと、光輝神アクシスの発案だな。

 なんだ、アクシスはめちゃくちゃ頭が柔らかいじゃないか。
 頭が硬かったのは、技巧神が成り代わっていたからだったのか。

「ふいー。3日くらい猶予がもらえました! たくさん飲み食いしましょう!」

 ルミイがポテポテ走ってきて、すぐさまむしゃむしゃごくごくやり始めた。
 こりゃあ止まらんぞ。

 そして、アカネルと今後について、飯を食いながらのお話を始める。
 そんな二人が、俺とカオルンをちらっと見た。

 カオルンは実に美味そうに、料理をちょっとずつ食べているのだ。

「こんなに美味しかったのだなー。カオルン、全然気付かなかったのだ。食べるのは楽しいのだー」

 新生カオルンにとって、世界の何もかもが新鮮である。
 で、なんか俺にぴっとりくっついている。

 彼女が生まれ変わって判明したことなのだが、カオルンはハグ魔である。
 何かある度に抱きついてくる。
 ほっそりしているけど柔らかいところも多くて、大変心地よいが人目が気になる……。

 なので、食事中も妙に距離が近い。

「カオルンさん、距離が近くはないですかね……!」

「そうなのだ? あ、マナビの口の端にお肉がついてるのだ。ちょっとまってね。んむ……」

 ウワーッ!!
 それは実質キスでは!!

 あと、カオルンはキス魔である!
 気を抜くとチュッチュッとしてくる。

 いきなり愛情が深くなり過ぎでは無いですかね……!
 嬉しいけど!

「マナビさんとカオルンはー。そろそろお出かけしたらどうですかねー?」

「そうですよ。当機能たちにとって目の毒です! しっしっ!」

 なんか二人が俺たちを追っ払ってくる。
 これを見て、対面で飯を食っていたナルカが苦笑した。

「焼きもちだねえ。だけど、二人きりにしようって優しさだと思うよ。甘えちゃいなよ、マナビ」

「分かったのだ」

 カオルンみたいな喋り方でうなずく俺である。

「カオルン、そろそろ」

「ん、分かったのだ」

 ということで!
 行ってきます。

 慈愛神の運営するお宿の、一番大きい部屋を使わせてもらえたのである。
 窓がでかい!

 夜闇の中、お祭り会場が明々と照らされていて、やんややんやと騒ぎの声が聞こえてくる。
 これはこれで風情があるではないか。

 俺はここで、カオルンとエッチなことをした。
 経験者である俺は、初回からなんとかいけたぞ!
 くっそー、まだ余裕がねえ!

「うん、ちょっと痛かったのだ。だけど大丈夫なのだ。もっとマナビの好きにしていいのだ……。だって、カオルンはマナビとずっといっしょにいるって決めたのだ」

「ヒエー、愛が深い!」

 今までの淡白だった時間を塗りつぶすように、大変濃厚な時間を過ごしてしまった。
 とりあえずカオルンは軽いから、抱き上げたりしつつ窓からベランダに出て、お祭りを二人で眺めながら励んだりできるのはいいな。
 色々な体勢を試した結果、カオルン的には俺の顔が見えるのが一番いいらしい。お祭り、俺しか見えなくなるけどいいの?

 ルミイは色々重いからな……。抱き上げたりして励むのは、いや、ギリギリいけるか?
 アカネルならばいけそうだ。

「マナビ、今はカオルンのことだけ見てるのだ!」

 ということで、キス魔の彼女に分からせられてしまった。
 カオルンとのエッチは、バトル感覚というか、ルミイの湿度と粘度が高い行為と全然違っていてスポーティーだった。
 いやあ、人によって変わるもんだなあ……!

 お陰で、明らかに一回ごとがルミイより短い。
 しかし運動量は明らかに倍以上あり、体力は使う!
 あと、なんか全身にキスマーク付けてくるこの娘!

 こうして、四回戦目が終わって二人でぐったり、ベランダ前のソファにもたれて外を眺めていたら、花火みたいなのが上がった。
 あれはなんだ。

「あー、あれはルミイがやってるのだー。精霊の魔力が凄く働いてるのだ。ルミイ、魔法を本気で使ったらとても強いのに、全然使わないのだ。なんでなのだ?」

 疲れから、眠そうになっているカオルン。
 ぼそぼそとそんな事を聞いてきた。

「性格がとことん、戦いに向いてないんだろう。だけど、そのぶんはパワーアップしたカオルンが全部やってくれるだろ」

「うんー、やるのだー。カオルンにおまかせなのだ」

 彼女はもぞもぞと動いて、俺の頬にキスをした。
 それから、しなしなと崩れて、俺の膝の上に頭をコテンと倒すと、ぐうぐう寝てしまった。
 彼女の耳の下に俺の愚息が!!

 まあいいか……。
 今夜こそ、もう賢者モードだ。

 俺はのんびり花火を眺めつつ、「このまま寝たら風邪引くよな……」とか呟くのだった。

(セブンセンス法国編 終わり)
 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき
ファンタジー
「あたしの能力は運命の女。関わった者に世界を変えられる運命と宿命を授けるの」 能力者養成孤児院から、両替スキルはダメだと追い出され、スラム暮らしをする少年ウーサー。 冴えない彼の元に、異世界召喚された少女ミスティが現れる。 彼女は追っ手に追われており、彼女を助けたウーサーはミスティと行動をともにすることになる。 ミスティを巡って巻き起こる騒動、事件、戦争。 彼女は深く関わった人間に、世界の運命を変えるほどの力を与えると言われている能力者だったのだ。 それはそれとして、ウーサーとミスティの楽しい日常。 近づく心の距離と、スラムでは知れなかった世の中の姿と仕組み。 楽しい毎日の中、ミスティの助けを受けて成長を始めるウーサーの両替スキル。 やがて超絶強くなるが、今はミスティを守りながら、日々を楽しく過ごすことが最も大事なのだ。 いつか、運命も宿命もぶっ飛ばせるようになる。 そういう前向きな物語。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...