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セブンセンス法国編

第121話 戦術・戦略・タクティクス

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 流石にハッスルし過ぎ、限界を超えたので俺も足腰がガクガクである。
 しかもかなり深みのある賢者モードだ。
 今日明日は賢者だな。

 なお、ルミイは腰が抜けたそうなので、しばらくベッドでぐうぐう惰眠をむさぼるらしい。

「あとでご飯持ってきてくださいね、あなた!!」

「あなた!!」

 夫婦みたいな呼び方に、俺は興奮して飛び跳ねた。
 賢者モード終わり!

 ウキウキして宿の階下に向かう。
 オクタゴンとカオルンと、大変悔しそうなアカネルと、きょとんとしているナルカがいた。

「あれ? ガガンは?」

『あいつは凄まじいショックを受けていてな。それを癒やすために今夜は慈愛神に仕える中でも、現在トップのお姉さんのところで傷を癒やすことになった。最高司祭からの粋な計らいというやつだな』

 いかん、早まってしまったか。
 ガガンがNTRに目覚めてしまったらどうしよう。

「マスター! 次、次は当機能が……!!」

「お? なんか分からないけど、次はカオルンなのだ。アカネルは三番目なのだー」

「うぎー」

 アカネルがめちゃくちゃ悔しそうにテーブルを叩いている。
 俺と一緒の時に先走りすぎたペナルティが発生してるな……!

「ははあ。晴れて夫婦ってわけかい。めでたいね! 死と生は繋がってるからね! ルサルカ様は生の営みを寿ぐ神でもあるんだよ」

 ナルカは、アカネルの動きに面食らいつつも、俺を祝福してくれる。
 いい娘である。

『さて、話を戻そう。明日、また慈愛神の最高司祭と会うことになっているぞ。今日も神殿建立に立ち会ってもらったが、そこに戦神の食客だろう異世界召喚者が仕掛けてきてな』

「いたのか、異世界召喚者」

『戦いの尖兵として、主に戦神と技巧神が召喚するそうだ。地面を水のように変化させて自在に泳ぎ、攻撃を仕掛けてくるやつだったのでそのまま地面を固めて生き埋めにして倒してやった。端末の俺様では、相手を狂気にする力が弱めだからな』

 事もなげである。
 なお、戦神の信者連中はカオルンとナルカが一掃したらしい。

「カオルン、強いんだねえ! 小さいのにあたいよりも強いんじゃないかと思ったよ! ありゃあ人間の動きじゃないねえ」

「うんうん、カオルンは強いのだ! ちょっと周りに異常なのが多いだけなのだ!」

 カオルン、褒められて嬉しそうである。
 最近、なんか活躍できなかったもんなあ。
 えっへんと胸を張っている。

『でな。その働きを見て、慈愛神の最高司祭が色々便宜を図ってくれる事になった。これは慈愛神本人からの接触もあった。間違いない。鍛冶神は聖女が直接来るらしい』

「デカい話になってきたなあ!」

『もともと、セブンセンスを巻き込んだ内戦を止める事を考えていただろう。どうやったって大きい話になるんだよ。それともあれか? 兄弟は他の宗教を全部ぶっ飛ばすつもりだったか』

「そんな気分だった気がする……。確かに味方につけられた方がいいか」

 オクタゴンはクールである。
 本体があの海辺にいるので、頭が冷えやすいのかもしれない。


 結局その日は解散ということになり、カオルン、アカネル、ナルカが女子部屋。
 俺は飯を持って来て、ルミイと一緒に食ったのである。
 いやあ、カロリーを使ったおかげか、ルミイの食うこと食うこと。

「こんなにお腹減るんですねえ! びっくりしました! とりあえずものすごく満足したので、わたしの心は広くなりそうです……」

「ルミイが菩薩のような顔をしている……」

 ムラムラするが、さすがに愚息が「丸一日休めて下さい」と言っているので今日はそのまま寝ることにした。
 二人で大きなベッドに大の字になり、お互いを蹴飛ばしあって寝たような気がする。

 起きると、ルミイの足が頭の上にあり、俺の腕がルミイの腹の上にあった。
 どういう寝相だ……?

 向かいの女子部屋が騒がしくなり、目覚めたな、と分かる。
 部屋から出て挨拶をしたところ、カオルンとアカネルとナルカ、熟睡したようでスッキリした顔だ。

「アカネルがいつまでも呪詛を吐いているので、気絶させて眠らせたのだなー」

「カオルン、強硬手段に出たか。しかし急がないとアカネルがヤンデレ落ちするな。猶予はない」

 機械だというのに、その辺誰よりも人間っぽいのはどうなのよ。

 ちなみにこの連れ込み宿は、一階が酒場になっている。
 ここでモーニングを食い、オクタゴンが出現したところで連れ立って慈愛神神殿へ向かった。

 慈愛神の神殿は、一見すると大きなお屋敷である。
 門扉があちこち破壊されたり、焼け焦げた跡があるのは最近の内戦のせいらしい。

 神殿の中では、男女だったり男男だったり女女だったりが、仲睦まじくお喋りしている。
 会話の内容は神への聖句を交えたものなので、あれ自体がお仕事なんだろう。
 しかし、多様な愛を許容する神である。

 奥まった会議室に通される。
 そこには、昨日会ったおばあちゃん最高司祭と、2mくらいありそうなガチムチの女性がいた。

 この人が鍛冶神の聖女ですか……。
 ガガンと殴り合えそうだな。

 オクタゴンが登場すると、二人はそれぞれの形で神への礼を行う。
 うちの兄弟、腐っても神だもんな。

『お互いが持っている情報を交換しよう。内戦の終わりは近いぞ。まず、技巧神教団は無力化された。あれは、技巧神がコンボの達人に敗れ、休眠状態に入ったためだ』

「コンボの達人……! とんでもない怪物が入り込んでおりましたな」

 おばあちゃんの声が震えているぞ。
 えっ、あの格闘キャラみたいなやつ、そこまで恐れられてるの?
 個人戦力で教団を脅かすレベルなんだなあ。さすが世界最強の一角。

「好都合であろう。積極交戦派の一角が潰れてくれた。我らに交戦の意志なし。コンボの達人は、戦わぬ相手には手出しをせぬ武人と聞く」

 鍛冶神の聖女が男らしい口調で告げた。
 ちなみにこの聖女、既に人妻であり、一男二女の子どもがいるんだって。

 既婚でも聖女いけるのだ。

「ああ、聖女はね、あり方そのものに神が力を与えているものなのですよ。だから、清らかな乙女だろうが、このようなババであろうが変わらんのですわ」

「ほうほう。じゃあ異世界召喚者にたぶらかされた、光輝神の聖女のアリスティアは?」

「光輝神様は恐らく、全然問題ないと仰ってると思いますがの。問題は頭の固い上の連中でしょう。このババが法皇であったときも、あやつらの石頭には閉口しておりました」

 なんだってー。
 つまり、アリスティアはバリバリ問題なしの光輝神の巫女だったわけである。

 悪いのは光輝神教団の上の方か。
 俺とオクタゴン、顔を見合わせてニヤリと笑う。
 排除すべき対象が見つかったな。

「ちなみに、もしかしてなんですが」

 アカネルが口を開く。

「内戦が行われているのは、異世界召喚者タクルによってもたらされた混乱を、各教団が相手の責任だと押し付けあってるからでは……?」

 おばあちゃんとガチムチ聖女が曖昧な笑顔になった。
 正解っぽい。

 しょうもねー!

 つまり、この内戦はプライドの話だったのだ!

 なお、積極交戦派と呼ばれる光輝神、戦神、技巧神、知識神は同盟を結んでいるわけではなく、バトルロワイヤル状態である。
 だが、最近はさすがにくたびれてきて、交戦も小競り合い程度になっている。
 そこをルサルカ教団が突いたので、この間のような塀の外での戦いが発生したわけだ。

「知識神はオクタゴン側についた。光輝神は上層部をどうにかする。最後は戦神か。異世界召喚者送り込んでくるレベルだから、教団単位で好戦的だぞ。だから、次は戦神教団を叩く。できれば戦神そのものを呼び出して叩く」

 俺は今日の方針を決めた。
 満場一致で可決する。

 本来ならば正気ではない策なのだ。
 戦を象徴する神そのものを倒すというわけだからな。

 だが、うちはオクタゴンもいるし、俺もチュートリアルすれば神とやりあえるだろ。
 ということで問題なし!

 なお、ルミイは後ろでニコニコしながら話を聞いているだけで、至ってマイペースなのだった。
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